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A long time coming

      2018/03/06

長い時間がかかった  

<4語ワンセット>の形容詞イディオム。

“a long time in coming” の省略形だが、
“in” 抜きで普及している。

“long in coming” と “long coming” も同義。

“in” 入りは、今では<文語扱い>されるほど
後退しており、この由来を知らない英語ネイティブ
も多い。

◆ 頻出には至らないものの、見聞きする機会は
珍しくない形容詞句。
口頭でも文面でも、ごく普通に出てくる。

にもかかわらず、このイディオムを説明する
一般辞書は非常に少ない。

主要な英和・英英辞典もろとも見つからなかった。
1語ごと(word by word)と異なり、
<4語ワンセット>では、なかなか載っていない。

だから、ここで取り上げたい。

有名どころのオンライン英英辞典で、唯一記載
されていたのが『メリアム ウェブスター』。

a long time coming” =
arriving or happening after a lot of time has passed.
Merriam-Webster

この直訳は「長い時間をかけて達した、または生じた」。
時間的に「長い道のり」だったことを示している。

苦労したけれど、今ようやくたどり着いたよ
こんな安堵の気持ちが含まれることの多い表現である。
finally it is coming” という感じ。

主格となる内容は、必ずしも有益なものとは限らない。
ただ、この4語を用いた当事者にとっては、その価値を認める
からこそ、「長い時間をかけて」追求し続けている。

その気持ちは、上記直訳には明確に表出されていない。
だが、使用例を多数確認すると、その大半に喜びと安堵が
含まれている様子。
とすれば、そうした場面に使われるのが一般的と推測できる。
よって、和訳時は、その心情を適宜考慮して訳出する。

英文和訳は、
直訳で間に合うものと、含意を読みとるべきもの
とに大きく分けることができる。

“a long time coming” は後者であり、
暗に意味する要素も表現する方が的確になるケースが多い。

これは「解釈」というよりも、実質的な意味合いとなる。
恣意的に推量し、付け加えているのではなく、この形で
常用されているのであれば、その方が自然という流れ。
辞書には、カッコ入りで記載される箇所である。
この辺りが言語の難しさで、学習者を悩ませる。

日本語でも同様だろう。

「長い時間をかけて到達した」と見聞きすれば、
これに伴う喜怒哀楽がいろいろ浮かび上がる。

「やっとこさ」「辛うじて」「つらかった」「よくやった」
「遅すぎ」「ぐず」「怠慢」「弱虫」「遅刻」「負け犬」

最適解は文脈次第。
この点、”long overdue“(延び延びになっている)
と意味も用法もよく似ている。

“a long time coming” の場合、少なくとも使い手にとって
の含意は「喜び」「安堵感」。
「やっとこさ」「よくやった」という感情。

和訳は、必要に応じてニュアンスを反映させる。

<分かりやすい>翻訳には大切な考え方である。
「直訳」が分かりづらい一因は、この部分が足りないため

その度合いは状況によるが、主観的すぎるのはご法度
<原文が主、翻訳は従>の主従の原則は変わらない。

いわゆる「超訳」は、この原則を崩したもの。
読みやすいはずである。

◆ 冒頭に記したように、”a long time coming” は、

“a long time in coming” の省略形

不定冠詞 “a”
形容詞 “long”(長い)
可算名詞 “time”(時間)
前置詞 “in”(~の状態)※ 省略
形容詞 “coming”(来るべき)

a long time + in + coming  →  形容詞句
 名詞句     前置詞   形容詞

この中で、焦点となるのは、形容詞 “coming”。

“coming” には、形容詞と名詞がある。
自動詞・他動詞・名詞の “come” から派生した。

形容詞 “coming” の主な意味は2つ

(1)「来るべき」「今度の
※ “upcoming” とほぼ同義

(2)「新進の」「有望な 
※ “up and coming” 参照

ここでは、(1)「来るべき」。
したがって、直訳は「長い時間をかけて来るべき状態」。
先述の「長い時間をかけて達したまたは生じた」
Merriam-Webster)と重なる。

◆ 使用上は、be動詞の直後が基本となる。
すなわち、be、am、was、been、will be、is、were、are
に続く。

  • “True success is a long time coming.”
    (真の成功には時間がかかる。)
  • The answers to all your questions
    will be a long time coming.
    I’ll get back to you
    later.”
    (あなたの質問すべてに回答するには
    長い時間がかかります。
    後ほど、ご連絡いたします。)

  • “My father’s promotion was a long time coming.”
    (父の昇進には長い時間がかかりました。)※ 過去形

  • “We hired a new employee.
    It’s been a long time coming.”
    (新たに従業員を雇用した。
    長い時間がかかりました。) 現在完了形

  • “I passed the exam at last.
    It was a long time coming.”
    (ついに試験に合格しました。
    ここまで長い道のりでした。)※ 過去形

  • “Finally I got a new car.
    It’s been a long time coming.”
    (やっと新車を手に入れた。
    ものすごく時間がかかった。) 現在完了形

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◆ be動詞の直後が基本なので、文法上は比較的単純。
ニュアンスの問題も、既に述べた。

引っかかるとすれば、<時制>だろう。
特に、例文にもある「過去形」と「完了形」。
→「」のある最後の4文

私たち日本人学習者には、この区別が難しい。
特に勘案しないで訳すと、同じ和訳になってしまうが、
どちらも間違っていない。

  • “it was a long time coming”
    過去形(長い時間がかかった)
  • “it’s been a long time coming”
    現在完了形(長い時間がかかった)
    ※ it’s = it has

「完了形」は、日本語には存在しない概念に近い。

英語ネイティブであっても、本来の「完了形」の代わりに、
シンプルな「過去形」で口頭表現することは少なくない。
日本人が<時制>が苦手でも、何ら不思議はないのだ。

I’ve had it” で説明したように、日本語から縁遠い
時制の文法は、原文で慣れるのがベスト

基本をしっかり学んだ後は、
文法の教科書から早めに
離れ
ひたすら英文を多読して慣れてしまう方が早い。

<時制>復習のためのお勧めサイト ↓
【永久保存版】12種類の英語の時制を徹底解説

 

 

 

 

 

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