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Attire

      2024/01/22

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

服装   

  •  What should I wear as  business attire
    in Japan ?

  •  What is appropriate  business attire
    in Japan ?

( 日本のビジネスの場では、どのような服装をすればよいのでしょうか。)


初来日を控えた、ビジネス相手からのお問い合わせである。

こうした質問をしてくるのは、業務委託契約 を結んでいる、
フリーランス契約業者( contractors )がほとんど。

【発音】   kɑ́ntræ̀ktər
【音節】  con-trac-tor  (3音節)

仕事で初来日するのは、百戦錬磨のビジネスパーソンにとっても、
重圧がかかるらしい。

組織所属のサラリーマンにはめったに感じない、
張り詰めた焦慮と緊張感が、文面からひしひし伝わる。

この類の質問を初めて受けた時分、若く生意気だった私は、
本当に冗談かと思ったものだ。

日本のビジネスウェアはこんな感じ、とビートルズ来日時の
はっぴ 」姿を送ってあげようかと考えたほど。

今にして思えば、相手の焦燥感が分かっていなかった。

その後、海外顧客と関わる機会が増えるにつれ、
服装の大切さを徐々に理解していくこととなる。

基本は「 郷に入れば郷に従え 」である。

  • ” When you are in Rome,  do as Romans do. “
  • ” Do as Romans do. “

服装について確認を入れてくる来日予定者は、
インターネット時代の昨今も珍しくない。

検索しまくっても、相当の不安が残る模様。

外観を説明するのは難しいため、男女別、職位別に、
見本写真をいくつか用意し、案内するようにしている。

夏は 「 クールビズ 」 も忘れない。

◆  それでは、” attire ” について見ていこう。

いきなり冒頭の質問をされた場合、相手の
尋ねている内容がその場でつかめるだろうか。

成否を分けるポイントは、” attire “。

これ以外は、単語も文法も基本レベル。

中級学習者 ならば、わけないはず。

たとえ未習であっても、ここで覚えておけば、
次回は難なく自力でいける。

◆  ” attire ” には、名詞と他動詞がある。

【発音】   ətáiər
【音節】  at-tire  (2音節)


語源は、 古期フランス語 「 装う 」( atirier )。

–  名詞 「 服装 」「 衣装 」
–  他動詞 「 装う 」「 盛装する 」

名詞は不可算名詞。

この点、同義語の  ” clothing ” と等しい。

【発音】   klóuðiŋ
【音節】   cloth-ing  (2音節)

同じく同義語の  ” clothes ”  は、複数扱いを
基本とする「 複数名詞 」( plural noun )。

【発音】   kloʊðz
【音節】   clothes  (1音節)

3大学習英英辞典 ( EFL辞典 )には、すべて  ” formal ” とある。

つまり、 堅めで正式な言い回し が、” attire “。

” attire “

  • formal
    clothes.
    (ロングマン、LDOCE6)
  • formal
    clothes.
    (オックスフォード、OALD9)
  • formal
    clothesespecially of a particular
    or formal type.
    (ケンブリッジ、CALD4)

【発音】   ətáiər
【音節】   at-tire  (2音節)

※  下線は引用者


シンプルこの上ない語釈。

その他3冊の英英辞典を調べたが、
いずれも ” formal ” の記載が見られた。

  ” clothing ”    ” clothes ”  は、普段着から衣装、
盛装まで、 服装全般を幅広く指す 一般名称。

  類語の  ” outfit ” も、服装全般を表すものの、
本来は、 目的別にコーディネイトされた服装一式の意。

そのため、 帽子・手袋・靴・アクセサリー類も加えた、
上下揃いの服装全体を表現するのが原則。

【発音】   áutfìt
【音節】   out-fit  (2音節)

  ” attire ” は、 特定場面での服装
( 上掲 CALD4 下線部 ) を指すことが多い。

◇  ” dressed in – “ ( ~ を着ている )


【発音】   drés
【音節】   dress
  (1音節)

” dress ”  は、 英語でも女性のドレスの印象が強めだが、
もとより中性的な意味合い。

語源は、 ラテン語 「 まっすぐにした 」 ( dīrēctus )。

  • dress formally
    ( 正装する )
  • in full dress
    ( 正装で )

    ※  いずれも男女不問

他動詞 ” dress ”  抜きで、  

◇  ” in – “ ( ~ を着ている )

  • formal attire
    ( 正装、 フォーマルな服装 )
  • holiday attire
    ( 晴れ着 )
  • baseball attire
    ( 野球の装い )
  • tennis attire
    ( テニスの装い )
  • formal evening attire
    ( 夜会服、 イブニングドレス )
  • proper attire
    ( ふさわしい服装 )
  • Calvin Klein attire
    ( カルバン・クラインの服 )
  • casual attire
    ( カジュアルな服装 )
    ≒  句自動詞  ” dress down

※  いずれも男女不問


◆  一般社会の  ” dress code ” ( 服装規定 ) は、 正装に近い順に、

  • formal
  • semi-formal
  • informal
  • casual
  • sportswear

ざっくり分類するとこうなる。

警察官や軍人などの制服着用は、 ” in uniform “。

ごく普通の普段着 ( 平服 ) は、 ” proper civilian attire ”  など。

大まかなビジネス用途なら、 男女問わず  business attire

ところが、 21世紀に入っても、 次のような語釈が掲載されている。

business attire ”  =  背広

 


ジーニアス英和大辞典
大修館書店、2001年刊 ( アプリ版 )
<大修館書店HP>

※  黄枠線は引用者


” attire ”  全文である。

” business attire ”  の和訳に着目。


business ~  背広.


甚だ 時代遅れ の感。

なぜなら、 「 背広 」 は、 通常は男性用。

” business attire ”  は女性用も含む。

したがって、「 business attire  =  背広 」
は、 言葉足らずな説明と考える。

business attire for women ” は、
昔から存在する話題であり、 日本でも
女子就活生がよく頭を悩ませている。

◆  ところで、 「 背広 」は「 セビロ 」の当て字
であることをご存知だろうか。

  セビロ【背広】

  ( civil clothes の略訛か。また、ロンドンの
洋服商の街サヴィル・ロー(Savile Row)からとも)
テーラード・カラーで腰丈までの上着と、共布
で作ったズボンとを一組とする男性服。
本来はチョッキを組ませた三つ揃いである。
サックスーツ。

( 広辞苑 第七版 )

 語源については、
(イ) 背筋に縫目がないところから背広の義
(ロ) 英語 sack coat の訳語でゆったりした上衣の意
(ハ) 市民服の意の英語 civil clothes から
(ニ) セビロ服を売り出した店のあるロンドン
の高級洋服店街 Savile Row から
(ホ) 良質の羊毛・服地の産地 Cheviot から
などの説があるが、これまで(ハ)が有力と
されてきた。

( 精選版 日本国語大辞典 )


上掲『 精選版 』の本家本元に当たる『 日国 』全文はこちら。

日本最大規模の国語辞典 の名を誇る、 全14巻( 全13巻+別巻 )。

黄枠内で、 語源をさらに深掘りしている。



日本国語大辞典 第二版 』  第7巻、 p. 1434.
小学館( 2001年刊 )

※  傍線・枠線は引用者


成り立ちがどうであれ、 「 背広 」 は男性服が社会通念。

 

business attire

 

ビジネスに適した服装

 

→  男女不問


たとえ定評のある大辞典であっても、
鵜呑みにすると、まずいことがある。

その一例と考えられる。


◆  男女差別には、 常日頃から気をつける必要がある。

人種差別 と同様、 国内ではもちろん、 海外でもそう。

性の多様性を尊重する 「 LGBTQI+ 」 も併せて留意。

差別された側が、 受けた侮辱を根に持つこともある。
当のご本人が、 どのタイミングで花開くかは未知数。

未来は誰にも分からない

目上になる可能性すらありうる。

ここぞとばかりに、 思わぬ場面で足をすくわれかねない。

因果は巡る

これから世界に羽ばたく、年若き俊英の皆様は、
特に念頭に置いておかれるとよいかもしれない。

【参照】  ” racial slur “、 ” I hope you understand.

 


 

【参考】    ※  外部サイト

 

【関連表現】

” Don’t judge – ”
https://mickeyweb.info/archives/23068
( ~ を勝手に判断するな。  ~ を勝手に評価するな。 )

 

 

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