危機一髪
That was a close call !
(今のは間一髪だった!)
いろんな場面で耳にする歓呼である。
事故・災害・敗北を危うく免れた時、
本人または周囲が使う。
「あぁ、危なかった…」
ほっと安堵した際に漏れたりもする。
ニュースやスポーツ以外にも、一般人の
ちょっとした日常ハプニングにも出てくる
“a close call”。
“call” は可算名詞なので、不定冠詞 “a” がつく。
初出は、1881年 “Harper’s Magazine“。
1850年刊、今なお続く文芸総合誌である。
定訳は2つ。「危機一発」と「間一髪」。
実際には、「危機一髪」「間一髪」からの
<脱出>を表すために起用されることが多い。
「危機一髪」
髪の毛1本ほどのわずかな差のところまで
危機がせまること。あぶないせとぎわ。
「間一髪」
(髪の毛ひと筋のほどのごくわずかなすきまの意から)
物事が非常に切迫しているさま。あやういところ。
(広辞苑 第六版)
“close call”
a narrow escape from danger.
Webster’s New World College Dict., 4th Ed.
類似語で挙げられる英語表現も
紋切型で、次の11個のいずれか。
- a close shave
- a close squeak
- a narrow escape
- a narrow shave
- a narrow squeak
- a near shave
- a near squeak
- a near miss
- a near escape
- a hairbreadth escape
- a close thing
“shave” と “squeak”(skwíːk) は、
可算名詞「かろうじて逃れること」。
“hairbreadth”(ˈhɛːbrɛdθ)は、
可算名詞「髪の毛1本ほどの幅」。
“a close shave” は「深ぞり」の意味
もあり、「一髪」につながるニュアンス。
“a close shave“
when the hair on someone’s face is
cut very close to to the skin.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
◆ “close” には、形容詞と副詞がある。
語源は、ラテン語「閉じられた」(clausum)。
そこから「近い」「親密な」「接近した」の意に。
ここでは、形容詞「近い」。
◆ “call” には、他動詞・自動詞・名詞がある。
語源は、古英語「大声で叫ぶ」(ceallian)。
“close call” の場合、”call” が可算名詞なのは
確実だが、具体的に何を指すかは論が分かれる。
最有力説は、”judgment“(判定)または
“decision”(決定)。
◆ 用法の基本文型は2つのみ。
1. 他動詞 “have”(経験する)
2. be動詞
に続くパターン。
- “have a close call”
- “be動詞 a close call.”
–
「危機一髪で逃れた」
「間一髪で脱出する」
「九死に一生を得る」
他動詞 “have” の活用形は、
has – had – had – having 。
be動詞は、 be、am、was、been、
will be、is、were、are。
いずれも、基礎文法の範囲内にあるため、
“a close call” の使い方は難しくない。
◆ このフレーズの意味からして、
すれすれの危機を逃れた後、その状況を
振り返りつつ描写することが多い。
そのため、過去形が中心となる。
次の下線の通り。
“I had a close call with a shark.”
(間一髪で鮫から逃げたよ。)
“It really was a close call.”
(本当に危機一髪だったね。)
“I nearly left my wallet behind.
That was a close call.”
(財布を置き忘れかけた。
すごく危うかったな。)
“She overslept and getting on the train
on time was a close call for her.”
(寝坊した彼女は、いつもの電車に
ぎりぎりで乗り込んだ。)
“My doctor told me later that
it was a close call.”
(本当に危なかったと、主治医に後から
言われました。)
“That snowboarder just missed the
tree. What a close call.”
(あのスノボの人、間一髪で木に衝突しそうだった。)
“It was a close call between military planes.”
(軍用機同士のニアミスであった。)
◆ なお、スポーツや競争でも使われるが、
ほとんどが「勝敗が際どい審判」または
「接戦」を指す。
“It was a close call. They’ve decided that
she is the winner after all.”
(際どかったけど、結局、彼女に軍配を上げた。)
”This election will be a very close call.”
(今回の選挙はかなりの接戦になるはず。)