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蔵書の「自炊」記録(2)

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 2 minutes

幼少期から読書が好きだったものの、 私は
「 ビブリオマニア 」 ( 蔵書癖のある人 )ではない。

利用価値を認めない書籍類は、 すべて処分してきた。

それでも、 なお 4,000冊以上を擁する理由は、
自分の職業及び再読習慣のためである。

では、 なぜ 「 自炊 」 実行までの準備に、
6年 ( 2010~2015年 ) も費やしたのか。

それは、 以下3点の検討に手間取ったからである。

1)  選択肢
2) 「 自炊 」 方法
3) 「 自炊代行 」 訴訟の行方


それぞれ説明してみたい。

 

1)  選択肢

2010年( 平成22年 )は、 日本の「 電子書籍元年 」とされる。

電子書籍市場が活況を呈し始めたのが、 ちょうどこのころである。

キンドル( 米2007年 ~ )は未上陸で、 iPadも発売されたばかり。

ハード面もソフト面も、 一向に先が見えない状況であった。

日本における電子書籍の可能性を見出そうと、 私なりに必死だった。

電子書籍にもし未来があるならば、 わざわざ「 自炊 」しなくても、
時間が解決してくれるだろうと考えた。

この場合、 電子書籍で買い直す費用がかかる。

しかし、「 自炊 」にもかなりのコストがかかる。

外注するにせよ、 自分で行うにせよ、
時間を含む相当なコストが伴う点は疑いない。

不案内の市場において、 素人が対費用効果の算用を試みるのは、
今から考えると無理があった。

 

2) 「 自炊 」 方法

「 自炊 」のメリット・デメリットを学ぶため、
本とインターネットで関連知識を漁りまくった。

2010年時点で、 数点しか出版されていなかった < 自炊解説書 > は、
2015年には、 電子書籍を含めて10点以上発売されている。

この6年間で、 主な解説書とめぼしいネット記事すべてに目を通したと思う。

「 自炊 」の利点はすぐに理解できた。

場所をとらない、検索可能、どこででも読書できるなど、
夢のような世界が広がることは容易に想像できる。

「 マイ本棚 」を持ち歩くかのようで、読書好きにはたまらない。

欣喜雀躍、 まさに飛び跳ねる喜びだ。

一方、 問題点については、 コスト面を除き、 イメージしにくかった。

PDFは読み慣れているので、 電子読書に真新しさはなく、
目が疲れるくらいだろうと想像した。

大切な蔵書を裁断するのはつらいが、 じき慣れるはずだと判断した。

結果的に、「 自炊 」への期待が上回り、 否定要素は急速にしぼんだ。

次なる検討は、 外注か自力かである。

自分で行うためのノウハウを、 着々と収集し続けた。

2011年4月には、 スキャナー「 ScanSnap S1500 」を購入した。

「 アクロバット9 」 がバンドルされていた。

 

3) 「 自炊代行 」 訴訟の行方

「 自炊 」の法的問題は、 2010年以前より議論されていた。

劣化しない   電子コピーと著作権との関連  である。

他のデジタル媒体と同様、 「 私的利用目的 」 の範囲内で、
かつ自ら電子化するならば問題はない、 と解説されていた。

ところが、 リサーチを重ねるうちに、 自分で行うには時間がかかりすぎる、
自力で数千冊は無謀、 やはりプロに任せようという思いが芽生えてきた。

2011年後半には、 専門業者に依頼( 外注 )しようとの意思が固まった。

けれども、 時期同じくして勃発したのが、 作家が起こした行動である。

  •  自炊代行業者への質問状 ( 2011年9月 )
  •  東京地裁 : 業者2社を提訴 ( 2011年12月 )
  •  業者の「 認諾 」 ( 2012年4月、5月 )
  •  業者廃業で訴訟終結 ( 2012年5月 )
  •  東京地裁 : 業者7社を提訴 ( 2012年11月 )
  •  知財高裁判決 : 業者側の控訴棄却 ( 2014年10月 )
  •  最高裁判決 :「 自炊 」代行は著作権侵害 ( 2016年3月 )


【 参考 】    ※  外部サイト
http://www.patentsalon.com/topics/self_scanning
https://www.nikkei.com/article/DGXLASDG17HA3_X10C16A3CR8000/

 

◆  複数の著名作家による裁判沙汰は、 私の想定外の展開である。

訴訟に伴い、 零細・中小企業を中心とする自炊代行業者が、
事業縮小や廃業に追い込まれていった。


【 参考 】    ※  外部サイト
https://www.bookfire.net

 

なんだか雲行きが怪しい。

外注で電子化した蔵書の権利関係が不安定になると困る。


さらに、 児童ポルノの単純所持 ( 児ポ法 第七条 ) みたいに、
罪に問われたらたまらない。

しばし様子を見守ろうと判断するに至った。

 

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