蔵書の「自炊」記録(7)
2021/01/10
こちらの連載でお伝えしたいのは、
蔵書と自炊全般についての <考え方>
である。
スペース維持の点では共通するものの、
いわゆる「断捨離」や「ミニマリスト」、
さらに効率化を追求する「ライフハック」
とは、自炊の趣旨が異なる。
スキャナーを使った具体的な自炊方法は、写真満載の
他サイトや YouTube で存分に説明されている。
ハウツーを必要とされる方は、上記リンクをご高覧ください。
◆ この連載の想定読者様とは …
日常生活に本が欠かせない読書家、
及び多数の蔵書を要する職業に就く方々を、
主な読者層に想定している。
単なる「娯楽」を超えて、
「読書=人生」の
<本読み> のための
本との付き合い方
を真剣に考察したい。
–
◆ 本人以外には不用で、処分に困るのが蔵書である。
蔵書は、属人的な性質が強い。
–
そのため、蔵書に対する他者の理解は、望むべくもないのかもしれない。
有名作家の死後、貴重な蔵書が四散した例は枚挙に暇がない。
多くの場合、古本屋に引き取られるか、廃棄処分されている。
これは、文学史が証明する事実(史実)である。
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◆ 作家の生前の資力や人気は、さほど関係ないらしい。
ほとんどの遺族にとって、大量の本は迷惑千万
文筆稼業を支えた道具なのに、実に不条理な話である。
一部の作家の蔵書のみが、「〇〇文庫」などと称されて、
大学や自治体に引き取られる。
このような幸運なケースとて、永年死蔵される運命が
待ち構えていたりする。
利用者が少ない割に、維持管理費がかさみ、ありがた
迷惑ばりに邪険にされる「○○文庫」さえ少なくない。
総じて、これが実態なのである。
◆ 「司馬遼太郎記念館」(東大阪市)に収められた、
作家蔵書の活用事例は、稀有な例外である。

高さ11メートルの書架に、約2万冊の蔵書
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◆ 2017年に発行された紀田順一郎(1935~)
の著書には、蔵書3万冊を生前処分するに至った苦しい
事情が詳述されている。
鬼籍に入った知人作家の蔵書が散逸したことを慨嘆。
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そして、汗牛充棟もただならぬ自らの蔵書にも、
同じ運命が定まったことを受け入れざるない老境の悲哀。
読んでいて、涙が出る。
◆ 一般人の蔵書については、言を俟たない。
文化的価値や資産的価値はないに等しい。
もはや 「ゴミ」扱い 。
そんなものに、時間と大金をかける方がどうかしている。
–
「くだらない」
読書に親しまない人なら、一笑に付しても無理はない。
◆ しかし、他人の思惑など、どうでもいい。
ー
■ 本読みが目指すべきは、
<自分が読みたい本>を、
いつでもどこでも読める状態。
蔵書の 「自己コントロール権」 を確保し、
自由気ままに、読書を楽しむため、生涯役立つ
【システム構築】 である。
–
◇ 手間隙かけて作った 自作の電子ライブラリ
→ 読書家にとって< 人生の支え >となりうる
自炊し電子化することで、この取り組みの実効性
は高まり、将来の見通しが立ちやすくなる。
万一の際の取り扱いについても、電子データであれば、
心配無用。
なぜなら、データの性質上、「古本の山」や「散逸」
とは無縁だからである。
不要であれば、即刻削除できる。
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- 物理的スペースが不要だと、
ものすごく気楽
—
- 引っ越しや地震の面で心強い
—
- 保管場所の心配のない 解放感・爽快感
これが、約2,900冊( 2021年1月 現在 )を自炊後の実感。
この「さわやかな気分」こそ、
電子化の最大級の利点
あふれる蔵書に悩む本読みの皆様にも、
ぜひ味わっていただきたい快感である。
◆ 自炊導入のポイント
切断しても、支障のない本から着手
少しでも気がかりな本は、すべて対象外にする。
蔵書の一部を電子化するだけでも、相当変わる。
もし心理的に抵抗があるならば、蔵書ではなく、
1冊100円未満の古本を10冊ほど購入
して試すとよい。
専門業者に依頼しても、自分でスキャンしてもOK。
自宅にスキャナー・裁断機がなければ、レンタル業者
や「キンコーズ」などのビジネスセンターを活用する。
ネット検索すれば、簡単に調べられる。
◇ まずは、10冊くらい自炊して、様子を見よう。
それから考え始めても、十分間に合う。
なんとなく感触を得たら、本腰を入れて検討すればよい。
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◆ いずれの方法でも、お試し予算は1万円以内。
各種ノウハウは、ネット上に転がっている。
自炊解説書(電子書籍含む)は、10冊以上も市販されている。
「 国立国会図書館デジタルコレクション 」もかなり参考になる。
発行当時の姿のまま、マイクロフィルム処理またはスキャン
されたものが、インターネットで無料公開されている。
【例】
” What is the significance of – ? ” の 『哲学字彙』(1884年刊)
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■ 「マイ本棚」を持ち歩ける毎日は、
–< 喜び >と< 自信 >をもたらす。
なにより、楽しい。
日日是好日。
◆ 私なりの結果と効果が、以下の通り。
電子化した「マイ本棚」の成果物が、弊サイト
きっと、人生と読書生活が、もっと楽しくなります。
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◇ この連載は今後も続きます。