素晴らしい、見事な、感動的な
“impressive” は形容詞のみの単語であり、
英和辞典では「印象的な」が筆頭に挙がる。
【発音】 imprésiv
だが、日常では「素晴らしい」「見事な」「感動的な」
の方が的確な場面が多い。
プライベートでもビジネスでも、褒め言葉に多用される。
根っからのポジティブ単語。
3大EFL辞典(学習英英辞典)でも明らか。
“impressive”
- something that is impressive makes you admire
it because it is very good, large, important etc.
(ロングマン、LDOCE6)
– - (of things or people) making you feel admiration,
because they are very large, good, skillful, etc.
(オックスフォード、OALD9)
– - If an object or achievement is impressive, you admire
or respect it, usually because it is special, important,
or very large.
(ケンブリッジ、CALD4)
–
【発音】 imprésiv
※ 下線は引用者
日常使用の “impressive” の語感は、
「すごい」「さすが」に近い。
「素晴らしい」「見事な」「感動的」もあり。
3大EFL辞書とも、”large” を明記している(下線)。
すなわち、「見事な」「立派な」の要素が欠かせない。
にもかかわらず、大半の英和辞典では「印象的」
が幅を利かせる。
「印象的」
- 強い印象を与えるさま
(広辞苑 第六版)
– - 外界の事物が与えた影響が強く心に残るさま。
(明鏡国語辞典 第二版)
– - 人に特別の感じを強く与えるようなさま。
あざやかな印象を感じさせること。
〔普通術語辞彙(1905)〕
(精選版 日本国語大辞典)
「印象的!」と日本語で褒め称える人は珍しい。
◆ そもそも「印象的」が和訳トップを飾る理由は、
“impressive” の成り立ちからくる。
動詞 “impress” + 接頭辞 “ive”
で、形容詞 “impressive”
動詞 “impress” の語源は、ラテン語「押しつける」
(impressus)。
「押しつける」ことで、”impress” は「印象づける」
「銘記させる」の意味に。
– 他動詞「印象づける」「感動させる」
– 自動詞「よい印象をもたらす」
– 名詞「刻印」「影響」
“press” の語源は、古フランス語「押す」(presser)。
“press”(押す)、”oppress”(圧迫する)、
“suppress”(抑圧する)、compress(圧縮する)
に共通する意味合い
接尾辞 “ive” は、「~の性質をもつ」の形容詞を作る。
助詞「的」と同じ機能である。
よって “impressive” は、「印象的」「感動的」。
先述の通り、”large” が重要なので「見事な」「立派な」。
この意味は、不動産業界では不可欠な形容詞である。
フランスの19世紀後半の芸術運動「印象主義」は、
英語で “impressionism“。
「印象派」は、”impressionist” または “impressionistic“。
この流れも、日本で “impress” = 「印象」が定着する契機
となった。
ところが、”impressive” を「印象的」と解釈すると、
不自然になることが多々生じる。
上記のように、日常で多用される褒め言葉として
「印象的」は馴染みが薄いのが主な理由である。
「素晴らしい」「見事な」「感動的な」。
口語なら「すごい」「さすが」。
この方がしっくりくる場面で、「印象的」と和訳されている
ケースは少なくない。残念なことである。
先のELF辞典のどれを見ても、「印象的」がまず浮かぶ
ことはないだろう。
典型的な<英和辞典の難点>である。
それを補うために、英英辞典が役立つ。
◆ “impressive” 自体はポジティブであるものの、
漠然とした表現のため、無難でもある。
他者を褒める際の持ち言葉に加えておこう。
“Your programming skill is impressive.”
(あなたのプログラミング能力はすごい。)
“Their wedding ceremony was impressive.”
(彼らの結婚式は感動的だった。)
“Her speech was impressive.”
(彼女のスピーチは立派だった。)
(彼女のスピーチは感動的だった。)
“He is an impressive student.”
(彼は優等生である。)
(彼は印象的な生徒である。)
“The team has been impressive this season.”
(そのチームは今シーズンは好調だった。)
“Her growth has been impressive over the past few years.”
(ここ数年の彼女の成長ぶりは見違えるものであった。)
“impressive” の和訳は文脈によって決まる。
そのため、解釈がいくつもできる場合が少なくない。
意味が「漠然とした」とはそういうことでもある。