法に従う、遵法な
ニュースで年中見聞きする形容詞、
“law-abiding”。
名詞の頭に付けて、それが遵法
(じゅんぽう、法を守ること)
であることを示す。
“abiding” とは、自他動詞 “abide” の変形。
ここでは自動詞「遵守する」。
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“law-abiding” =
respectful of the law and obeying it.
(ロングマン、LDOCE6)
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◆ 最頻出は、次の2つ。
– “law-abiding citizens”
(法に従う国民)
– “law-abiding immigrants”
(法に従う移民)
日本人の感覚からは、なぜ、わざわざ
“law-abiding” を冠するのか、不思議かもしれない。
法に従うのは、当然のことと思えてしまうのだ。
この疑問が生じる一因は、日本が
<普通の国民は、法を守っている>
と信じられる安寧秩序に恵まれているからだろう。
移民や人種の課題を背負う国の住民は、
母国語・文化・国籍が多岐に渡る。
背景や教育程度に大差があるのも珍しくない。
その結果、常識は一様でなく、
法令遵守も単純な話ではないようだ。
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◆ “law-abiding” が使われる主な趣旨は、当事者の
立場・権利の正当性の強調にあると私は考える。
<法令をきちんと守って、平穏に生活している>
状況にあり、「一般市民」に似た響き。
<法に従うまっとうな生活者ゆえに、
市民・国民として正当な権利がある>
ことを強調する形容詞が “law-abiding”。
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“law-abiding” の反意語の代表例は、”rebellious”(反抗的)、
“misbehaving”(不品行な)、”unruly”(規則に従わない)。
“illegal”(不法、違法) は反意語にならない点に注意する。
【注記】
『ジーニアス英和大辞典』は、反意語に “law-breaking”
(法律違反、形容詞・名詞)を明記する。しかし、英米の
主な英語辞典(英英辞典)のオンライン版を調べると、
いずれも “law-breaking” は反意語に入っていない。
私個人も、”illegal” と同じく、”law-breaking” は
反意語とは言えないと考える。
“illegal immigrants” の逆は、
“law-abiding immigrants” でなく、
“legal immigrants”(合法的移民)である。
※ “illegal” は、本人が意識せずして
違法状態になっている場合も含む。
「違法移民」は “illegal immigrants”。
(時に、”unlawful immigrants” または
“unauthorized immigrants”)
広義では、ビザが切れて滞在している人も含む。
“law-abiding” のような奇妙な表現に接すると、
最初はすっきり理解できなかったりする。
だが、関連情報や背景をいろいろ調べていくと、
段々分かってくる。
こうして英語学習は楽しくなり、喜びになっていく。
“law-abiding refugees”
(法に従う難民)
“law-abiding people”
(良民)=善良な民(広辞苑 第六版)
“law-abiding majority”
(法に従う大多数)
“law-abiding tourists”
(法に従う旅行者)