行き詰まる、動けない
プライベートではめったに使わないが、
混乱を来たしたビジネス現場に似合う句動詞。
【発音】 bɑ́g dáun
ビジネス英語集にもよく出てくる。
使用場面が限られるため、頻出に至らない
ものの、ビジネス英語としては覚えておく
べき句動詞。
文面でも口頭でも使う。
字面からは意味を推測しにくいため、
ご紹介したい。
基本パターンは明確。
多用される表現は、この4つ。
- be動詞 +bogged down
- get bogged down
- bog down in
- bog down with
“bog down” の意味を理解していれば、
4つとも基礎文法でまかなえる。
“bog down” は多義でなく、イメージも単純。
英文法のおさらいを兼ねて、学んでしまおう。
–
◆ “bog” には、名詞・自動詞・他動詞がある。
語源は、アイルランド語「柔らかい」(bog)。
またはゲール語「柔らかい地面」(bogach)。
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ここから、”bog” の基本的意味は、
- 名詞「沼地」「湿地」—※ 可算・不可算兼用
- 自動詞「泥沼にはまり込む」「行き詰る」
- 他動詞「泥沼にはまり込ませる」「行き詰らせる」
◆ 流れはこんな感じ。
「沼」→「沼にはまる」→
「身動きがとれない」→「行き詰る」
青字は比喩的だが、これらが主要な用途である。
ネガティブな印象が原則。
ー
◆ “bog down” の “down” は副詞。
低いところへ下がる意味合いを基盤としつつ、
さらに「底へ沈む」様子を示す強意の副詞。
“bog down” は、上掲の自他動詞 “bog” の意味を
そのまま引き継ぐ点で、「句動詞」の基本定義(※)
から外れると考えることもできる。
※ 前置詞または副詞と一緒に用いることで、
元々の動詞とは異なる意味となる複数の単語
つまり、”down” の有無で、大きな違いは
生じないということ。
しかも、自他動詞とも引き継ぐため、”bog down”
は句自動詞と句他動詞になる。
“bog down someone / something”
to prevent someone or something from
moving on or progressing.
(ケンブリッジ、CALD4)
【発音】 bɑ́g dáun
英語学習者にとっては、分かりやすくてよい。
「基礎文法でまかなえる」一因である。
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◆ では、黄枠の4表現を順に見ていこう。
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1. be動詞+bogged down
複数の英英・英和辞典を調べると、”bog down”
の原則は受動態(passive)とある。
英語の受動態の基本形は、
<主語+be動詞+過去分詞>
この 1. が該当する。
「be動詞」= be、am、was、been、will be、is、were、are
動詞 “bog” の語形変化は、
<bog – bogs – bogging – bogged>
で、過去分詞は “bogged”。
- “She was bogged down in the scandal. ”
(彼女はスキャンダルで動きが取れなくなっていた。)
– - “We are bogged down with many regulations.”
(たくさんの規制のため、行き詰っている。)
– - “Parents were bogged down with endless worries.”
(親たちは際限ない心配事に動きがとれなくなった。)
– - “The government is bogged down with wasteful spending.”
(無駄な支出で、政府はにっちもさっちもいかない。)
– - “She is bogged down with silly ideas.”
(ばかげた考えに彼女はとらわれている。)–
–
- “Management is bogged down with HR problems.”
(マネジメントは人事問題で行き詰っている。)
–
- “The leader is bogged down in the war.”
(そのリーダーは戦争にはまり込んでいる。)
– - “The tools had been bogged down in the mud.”
(道具は泥沼に沈んでいた。)
– - “Her future has been bogged down in confusion.”
(彼女の将来は混乱で行き詰まっていた。)
–
- “This smartphone is bogged down with
unnecessary features.”
(このスマホは不要な機能にはまっている。)
–
2. get bogged down
自動詞 “get“「される」。
受動態の変形で、動作の変化を強調する。
「~の状態になる」の意。
補語に過去分詞を伴うため、
1 と同じく “bogged down” を用いる。
- “The truck got bogged down in the mud.”
(そのトラックは沼にはまった。)
– - “Don’t get bogged down in the details ! ”
(細かいことにこだわりすぎるな!)
– - “She keeps getting bogged down in politics.”
(彼女は政治にはまってばかりいる。)
– - “Let’s not get bogged down in legal matters.”
(法律問題に深入りしないようにしよう。)
–– - “I got bogged down with complaints.”
(クレームで身動きが取れない。)
–
- “My computer has gotten bogged down with viruses.”
(コンピュータがウィルスでやられた。)
– - “My email has been getting bogged down with spams.”
(私のメールがスパムで立ち行かなくなっている。)
– - “The website has gotten bogged down with comments.”
(ウェブサイトはコメントだらけになってしまった。)
– - “I don’t want to get bogged down in such matter.”
(こんなことにはまりたくない。)
ー - “We should not get bogged down with those people.”
(そのような人たちに深く関わりたくない。)
1、2から分かることは、句動詞の過去分詞とはいえ、
実質的には形容詞に近い点。
1、2ともに<はまり込んで、動きがとれなくなる>
状態を示しており、”be動詞” や 自動詞 “get” に
続く点も形容詞の特徴である。
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3. bog down in
この “in” は、場所・範囲の前置詞「~において」。
動きが取れなくなる場所・範囲・対象を表す。
ー
例文は、1と2を参照のこと。
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4. bog down with
この “with” は、原因・理由の前置詞「~のために」。
動きが取れなくなる原因を示す。
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例文は、1と2を参照のこと。
【類似表現】
“knee-deep” —※ 形容詞
(身動きとれない)
【語源】 膝まで浸かっている
【発音】 ˈnē-ˈdēp
- “I’m knee-deep in trouble.”
(問題を抱えて身動き取れない。)
– - “I was knee-deep in my work.”
(仕事で行き詰まっていた。)ー
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