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Hooked

      2020/10/23

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 4 minutes

夢中になる、はまる、中毒になる

I’m hooked on YouTube.
(ユーチューブにはまっています。)

若い人中心に使われる表現。

【発音】  hʊkt
【音節】  hooked  (1音節)

同じく若い人が多用する日本語の「はまる」
と使用場面が酷似する。

若い人中心と書いたが、堅すぎない内容の
ニュースやエッセイ、時事評論にも出てくる。

口頭が多いが、文面にもOK。

「はまる」が動詞なのに対し、表題の “hooked”
形容詞

形容詞ゆえ、「be動詞」に続くのが一般的。

<基本パターン>

1)
自動詞 “get”、“become” または be動詞
を直前に置く。


◇  形容詞が「be動詞」に続く理由は、
aware”、”vocal about”、”conclusive” で詳述。

※ 「be動詞」= be、am、was、been、will be、is、were、are

2)
目的語がある場合、対象の前置詞 “on
(~について) を直後に置く。

目的語がある場合、冒頭の一文のように、対象の
前置詞 “on” をつけるケースが目立つ。

目的語がない例は、

  • “I got hooked right after watching the first scene.”
  • “I became hooked right after watching the first scene.”
  • “I was hooked right after watching the first scene.”
    (最初のシーンを観て、すぐ夢中になった。)

対象の良し悪しを問わず、何かにのとりこに
なった様子が “hooked”。

「状態」なので形容詞。

この用法の “hooked” は、”informal” 表記の対象
となるのが原則。

すなわち「非正式」「くだけた」言い回しである。

◆  3大学習英英辞典の “LDOCE”、”OALD”、”CALD” を含む、
次の6つのオンライン英英辞典では、マムミランを除く5つに
“informal” との記載があった。

6分の5だから、83%。

原則 “informal” と結論づけてよいだろう。

◆  冒頭に記したように「良し悪し」不問である。

“hooked” の基準は本人の主観。
この点、日本語の「はまる」と使い方がそっくり。

 はまる【填まる・嵌まる】

4. 夢中になる。ひどく熱中して同じことばかり
したり、同じものを好んだりする。
(広辞苑 第七版)

※  語釈該当引用

“hooked”
enjoying something so much that you are 
unable to stop having it, watching it, doing it,
etc.
(ケンブリッジ、CALD4)

【発音】  hʊkt
【音節】  hooked  (1音節)

ただし、1点注意。

はまる対象が薬物(drug)の場合

病みつきになる状態は一緒なのだが、薬物については、
先の英英6点全て(100%)が書き分けている

改めて “drug” 専用の語釈を設けているということ。

形容詞 “hooked” は内容不問が原則とはいえ、
薬物は明らかに<悪>なので、取り立てて “drug”
を明記しているのか。

文法上の扱いは同じで、前置詞 “on” が続くのが通例。
使い方は、一般用の “hooked” と実質的に変わらない。

◆  3大学習英英辞典の語釈は以下の通り。

hooked

unable to stop taking a drug.
(ケンブリッジ、CALD4)

if you are hooked on a drug, you feel a strong
need for it and you cannot stop taking it.
(ロングマン、LDOCE6)

needing something that is bad for you,
especially a drug.
(オックスフォード、OALD9)

【発音】  hʊkt
【音節】  hooked  (1音節)


この場合の同義語として、LDOCE6とOALD9では、
それぞれ “addicted“、”addiction” を挙げる。

通常は「中毒になる」「中毒」または
「依存症になる」「依存症」。

addicted əˈdɪk.tɪd  /   形容詞
【音節】  ad-dict-ed  (3音節)


addiction əˈdɪk.ʃən  /   可算名詞・不可算名詞
【音節】  ad-dic-tion  (3音節)

 

ちゅうどく【中毒】

2. 身近にあることになれすぎて、無感覚になること。
また、それなしにはいられなくなること。

(広辞苑 第七版)

※  語釈該当引用、下線は引用者

しかし、2語とも、日常的には<悪>以外でも用いる。

日本語と同じである。

  • “I’m addicted to reading.”
    (私は活字中毒です。)

日本語の「中毒」は、とかく誤解を招きやすい。

現行の医学では大量摂取などで毒性が生じている状態を指し、
反復的使用の場合は「 依存症 」を採用している。

英語では “dependence” だが、一般人の日常会話では
“addiction” や “addicted” が普通である。

  • “Erika was vulnerable to drug addiction.”
    (エリカは薬物依存症に弱かった。)
    (エリカは薬物依存症に負けやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に屈しやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に陥りやすかった。)
    (エリカは薬物依存症になりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にかかりやすかった。)
    (エリカは薬物依存症に冒されやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にやられやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にむしばまれやすかった。)
    (エリカは薬物依存症にとりつかれやすかった。)

 

<悪>の “hooked” は薬物に限らない。

違法ではないが、ギャンブル、アルコール、タバコ
も<悪>寄りかもしれない。

実際に、大々的な啓蒙キャンペーンも行われている。

 

◆  2007年、英保健省(The Department of Health)
が行った一連の禁煙運動。

その公式ポスターと動画をご紹介したい。
日本の官製広告には、ありえない図柄と発想であろう。

Don’t Get Hooked on Smoking” の意味。

名付けて、

Get Unhooked


こちらが女性版。

“NHS” = National Health Service (英国民保険サービス)

 

釣り針 “hook” に引っ掛かった人々。
他動詞 “hook” は「魚を釣る」。

その過去分詞 “hooked” で「針に掛かった」の意。
過去分詞の形容詞的用法である。

“hook” の語源は、古英語 “hōc”。

引っ掛けるためのかぎを表し、「釣り針」も含む。

名詞・他動詞・自動詞があり、多義であるものの、
語源の「引っ掛ける」イメージを帯びる意味が多い。

先の広告は、“shock advertising” の名作とされる。
インパクト満載の「ショック広告」である。

痛々しく苦しそうだが、どこか間抜けな表情も印象的。

The average smoker needs over
five thousands 
cigarettes a year.
Get unhooked.

(平均的な喫煙者は、年間5,000本以上
のタバコを必要とする。
喫煙習慣から外れよう。)

“need” という強めの動詞を用いているのもポイント。

【参考】  “need” と “want” は、非常に感情的

「それがないと生きていけない」のニュアンス込みで、
上掲の「中毒」下線部と重なる。まさに依存状態。

間抜けな表情には、喫煙者の愚かさを揶揄する意図
が見え見え。

趣旨はこんな具合か。

自ら喫煙を選択した人の未来は、これほど悲惨。

喫煙にはまりhooked)、健康という自由を失った結果、
針に掛かって釣り上げられたhooked)かのような
惨めな姿こそ、喫煙者の成れの果て。

こうなりたくなければ、喫煙習慣から外れなさい

Get unhooked

大胆な掛詞が素晴らしい。

“unhooked” は、”hooked”(針に掛かった)の反意語。
否定の接頭辞 “un“(~がない)を加えた形容詞である。

【発音】  uhn·hukt
【音節】  un-hooked  (2音節)

先に触れた “Don’t Get Hooked” と “Get unhooked
の意味が同じであることは、中級学習者であれば、
難なく理解できるはず。

 

◆  当時、「子どもが怖がっている」など相当数の抗議
寄せられた。

そのため、広告規制局(Advertising Standards Authority)
より禁止(ban)された。

それでも、宣伝は成功したと英保健省は結論づけている。

 

◆  このような使用例を見ると、辞書において “drug”
のみが別格扱いなのが不思議に思える。

その一因に、可算名詞 “hook” は「麻薬駐車用の針」
も指すことが挙げられる。

そこから俗語で「ヘロイン」を意味するようになり、
さらに派生していった。

シンプルなスペル、1音声の発音しやすさが、
多義につながったのは、想像に難くない。

何かにふけっている時の脳の反応は、良し悪し問わず、
類似しているとの有力説もある。

三大神経伝達物質のドーパミンという快楽物質が
過剰分泌され、人生までも支配するのが依存症。

次の本に詳しい。

『快感回路-なぜ気持ちいいのか なぜやめられないのか』
デイヴィッド・J・リンデン (著) 河出書房新社、2012年刊
https://amzn.to/2GIRYpm

  • “76% kids below age 13 are hooked on YouTube.”
    (13歳未満の76%がユーチューブに血道を上げている。
  • “I got hooked on a drama right before exams.”
    (試験直前に、あるドラマにはまってしまった。)
  • “My father become hooked on golf.”
    (父がゴルフに懲り始めた。)
  • “He is hooked on her.”
    (彼は彼女にうつつを抜かしている。)
  • ”She spent several years hooked on heroin.”
    (彼女は数年間をヘロイン浸けで過ごした。)
  • “They were hooked on power.”
    (彼らは権力にのめり込んでいた。)
  • “Watch this and you will be hooked.”
    (これを観れば、きっと夢中になるさ。)

【類似表現】

“be into – ”
https://mickeyweb.info/archives/22466
(〜に熱中する、~に夢中になる、~にはまる)

“in the zone”
https://mickeyweb.info/archives/12844
(極めて集中して絶好調な状態)

“What is your thing ? ”
https://mickeyweb.info/archives/19507
(今、はまっていることは?)

“obsessed with – ”
https://mickeyweb.info/archives/26219
(~に取りつかれる、~で頭が一杯になる)

 

 

 

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