目が回る、頭がくらくらする
体調が優れず、頭がくらくらすることがある。
目まいがする時「目が回る」と表す。
これを “I rolled my eyes.” と英訳するとまずい。
なぜなら、”roll one’s eyes“(”one’s” は所有格)
と聞けば、まず浮かぶのは「あきれる」の意。
If you roll your eyes, you move them so that
you are looking up, to show that you consider
someone or something stupid or silly.
(CALD4、ケンブリッジ)
※ 下線は引用者
「こいつバカ?」といった軽侮の「あきれる」
を指す。
相当感じ悪い。
誤解され、トラブルのもとになる。
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◆「目が回る」は、”My head is spinning.”。
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この<4語ワンセット>で押さえるとよい。
単語も文法も基本で、シンプルな言い回し。
「マイ ヘッド イズ スピニング」。
カタカナ発音でも通じるだろう。
頭がスピンするイメージ。
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スピン
名詞(英 spin)
1. 回ること。回転。旋回。
2. 飛行機の錐揉(きりもみ)効果。
3. フィギュアスケートで、氷上の一点でこまの
ように、体を旋回させること。
4. テニスや卓球などで、球に回転を与えること。
また、その回転。
5. ダンスで、足の親指のつけ根のふくらんだ部分
で回転すること。
6. 糸をつむぐこと。
7. 電子または他の素粒子の自動運動に伴う角運動量
のこと。その粒子固有の値をもつ。
(精選版 日本国語大辞典)
くるくる回る様子が特に伝わる語義を、ハイライトしてみた。
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◆ “spin” には、他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 spín–
【語形変化】 spin – spins – spun – spinning
語源は、古英語「糸をつむぐ」(spinnen)。
※ 上記表の6に重なる
– 他動詞「つむぐ」「クモ・カイコが糸を吐く」「回転させる」
– 自動詞「回転する」「つむぐ」「目まいがする」
– 名詞「回転すること」「急落」
名詞は、可算・不可算を兼ねる。
上掲の国語辞典の語釈は、英語の名詞とも共通する。
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◆「頭がスピン」と言えば化け物みたいだが、無論、
「頭の中がスピン」のこと。
日本語にも、例えば「頭がこんがらがる」との表現がある。
こちらも、本来は「頭の中が」。
こう略すケースは珍しくなく、母語であれば通常意識しない。
「なぜ、頭の中がこんがらがるでないの?」などと思わない。
ところが、こと外国語になると、一転して突き当たる。
「なぜ、頭の中でないのか」と疑問が生じたりする。
母語では追及しないのに、ひたすら不思議に感じる。
だが、一旦その表現に慣れれば、英語でも無意識に転じる。
もはや疑問に感じない。それこそ不思議な変化である。
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◆「目が回る」の用途は、主に3つある。
- 実際に目がくらんで、気分が悪い
- 衝撃的な話を聞いたりした際のたとえ(比喩)
【例】値段が高すぎる、試験が難しすぎる - 非常に忙しい
3の「多忙」では、表題はあまり使われない。
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目まいの同義語 “dizzy“(形容詞)の方が一般的。
【発音】 dízi
- at / with dizzying speed(目まいのする速度で)
- get dizzy from overwork(過労で目まいがする)
- a dizzy speed(目まいのする速度)
もっとも、”My head is spinning” では、
2の<比喩>が幅を利かせる。
「目が回るほど~」と広範に応用できる。
したがって、多忙に使っても問題はない。
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◆ 今回調べた英英辞書8点のうち、表題で
項目立てしていたのは次の2点。
“somebody’s head is spinning”
(also the room is spinning)
if your head or the room is spinning, you
feel as if you might faint (=become unconscious)
because you are shocked, excited, or drunk.
(LDOCE6、ロングマン)
“someone’s head is spinning”
used to say that someone feels dizzy.
(Merriam-Webster、メリアム ウェブスター)
※ 下線は引用者
下線部「ショック、興奮、酔い」は例示で
あるが、「目が回る」のが体調不良に限らない
ことが分かる。
また、”the room is spinning”(部屋が回っている)が
併記されているものの、”head” より頻出度は落ちる印象。
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私自身、直接見聞きした記憶はない。
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◆ ハイフンを挟み、複合形容詞として、
“head-spinning” と表すこともある。
- at head-spinning speed(目まいのする速度で)
- a head-spinning day(目が回るような一日)
◆「目が回る」機会は人それぞれである。
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先述の通り<比喩>としての応用力が高いため、
使用場面は使い手次第と考えることもできる。
とにかく「目が回る」「頭がくらくらする」は、
“My head is spinning.”。
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“dizzy” と一緒に、この一文を覚えておくとよい。
【関連表現】
“spin one’s wheels”
https://mickeyweb.info/archives/21928
(空回りする、空費する)