Well-liked
2024/07/26
人に好かれている、人気がある
人を褒めることは、 容易ではない。
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特に組織においては、 関係者への気遣いが 必須であり、
特定の人を手放しで褒めちぎることは難しい。
また、 双方の立場と表現次第で、周囲に与える印象
が左右されたりする。
「 誉め殺し 」 などの邪悪な動機がなくても、当てこすり
をかすかに覚え、額面通りに受け取れない場合もある。
塵労に揉まれ、斜に構えた大勢の社会人の前で、 個人を
褒める行為は、ある種の危険を伴う。
思いもよらない嫉妬を招き、 仕事がしずらくなるなどして、
褒められた側が迷惑を被るケースも珍しくない。
とりわけ、 我が国の文化は称賛しあうような色合いに乏しく、
受け手の嫉妬・ひがみを刺激しない工夫が必要となる。
【参照】
” integrity “、 ” stand tall “、 ” dazzling “、 ” against all odds ”
◆ 褒めたり、褒められたりを喜べる素直さは大切だろう。
しかし、そんな無邪気さは、早ければ幼少期に喪失する。
こうして人間心理は複雑で、厄介なものである。
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その複雑さに、的確に対応する伝達手段を学ぶのが語学。
他者との無用な波風を避けるべく、嫌でも頭を使う。
外国語の学習が < 老化防止 >< 認知症予防 >
に効果があると検証されたのは、当然に思える。
【参照】 「 自分の世界 」 が広がる英語
いくつになっても学べるのは、幸せなことであろう。
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◆ ” well-liked ” は、比較的よく使われる褒め言葉。
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メディアによる好意的な人物評及び生徒・学生の通知表や
推薦状に活用される。
他意や嫌味の生じる余地が少ないため、使い勝手がよい。
「 多くの人から好かれている 」状態を指す。
すなわち「 人気がある 」こと。
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にんき【人気】名詞
2. 世間の、それを好ましいものとして迎える感情。
人々の気受け。世間の評判。じんき。(精選版 日本国語大辞典)
日本語 「 人気 」は、 名詞。
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片や、 英語 ” well-liked ” は、 形容詞( adjective )。
「 人気のある 」という「 状態 」なので、 形容詞。
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品詞が異なるので、要注意。
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【参照】
・ “ aware ” は動詞でなく、 形容詞
・ “ vocal ” は動詞でなく、 形容詞
・ “ sick ” は名詞でなく、 形容詞
・ “ limbo ” は形容詞でなく、 名詞
・ “ dead ” は動詞でなく、 形容詞
・ “ necessary ” は動詞でなく、 形容詞
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◆ 今回調べた英英辞典7点のうち、4点が
” well-liked ” または ” well liked ” で項目立てしていた。
なんと、 4辞書すべての語釈が完全一致している。
liked by many people.
・ CALD4、ケンブリッジ
・ Collins English Dictionary 12th Edition、コリンズ
・ Macmillan Dictionary、マクミラン
・ Merriam-Webster、メリアム ウェブスター
※ コリンズは ” popular ” も併記する
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◆ 一方、
・ LDOCE6 ( ロングマン )
・ OALD9 ( オックスフォード )
・ COBUILD9 ( コウビルド )
には、項目立てされていなかった。
” well-liked ” と ” well liked ” は、両方とも 形容詞。
ハイフンなしは、名詞などの後に置く場合 ( post-positive )。
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普段使いでは厳密に区別されていない模様。
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” well-liked ” の方が一般的であるため、 表題に
据えた上、 本稿中の表記もハイフン入りで統一した。
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私たちは英語学習者であるから、 ハイフンの基礎知識 は
押さえておきたい。
【発音】 háifn
【音節】 hy-phen (2音節)
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◆ では、いつものように、表題を分解してみたい。
“well-liked” は、 2語をハイフンでつないだ
「 複合形容詞 」( compound adjectives )。
2語以上の語が他の語を修飾する場合、
その2語以上の語をハイフンで結び、
「 複合修飾語 」( compound modifier )と呼ぶ。
特に、修飾される語が名詞の場合が 「 複合形容詞 」。
表題もこれに該当。
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◇ 「 複合形容詞 」 の例
“laid-back“、”unheard-of“、”fill
“self-explanatory“、”
“well-done“、”so-called“、”life-threatening”
”unhea
“long-overdue“、”shell-shocked”、”self-inflicted“、
“hassle-free”
※ 複合名詞( compound nouns )兼用も含む
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” well-liked ” の構造は、複合形容詞の基本に沿う。
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連結形 “ well- “ (よく、十分に)
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動詞の過去分詞 “ liked “ (好まれた)
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” liked ” は、 他動詞 ” like ” の過去分詞形。
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前置詞 ” like “(~に似て、~のように)とは、
語源の異なる別物。
【参照】 ” like you’ve done for me “、 ” and the like ”
- 動詞 「好き」 → 古英語 「喜びを与える」(līcian)
- 前置詞 「~のように」 → 古英語 「似ている」(gelīc)
発音は完全に同じで、1音節の「ライク」( láik )。
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◆ 「好き」の “like ” には、 自他動詞と名詞がある。
– 他動詞 「 好き 」「 好く 」「 好む 」「 望む 」
– 自動詞 「 好む 」「 望む 」
– 名詞 「 好み 」 ※ 通常は 複数形 ” likes ”
” well-liked ” では、 他動詞「 好く 」の過去分詞 なので、
「 好かれた 」。
上掲赤枠の通り、 これに連結形 ” well “(よく、十分に)
を加えて、「よく好かれた」で、「人気がある」。
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◆ 先述したように、” well-liked ” は褒め言葉として多用される。
◇ 連結形 ” well- ” と結合した
形容詞は、 総じてポジティブ
「 よく、 十分に 」の意味が加わるからである。
日本語でも「 よく、 十分に 」ときたら、プラスの内容を
期待する傾向がみられる。
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◆ 日頃頻繁に見聞きする複合形容詞を、16件挙げる。
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中級学習者であれば、きっと一度は目にしている。
- well-balanced ( バランスのとれた)
- well-behaved (行儀よい)
- well-done (よく焼けた、よくできた)
- well-dressed (身なりのよい)
- well-educated (教養のある)
- well-established (確立した、定評のある)
- well-fed (栄養十分な)
- well-founded (根拠の確実な)
- well-informed (精通している)
- well-intentioned (善意の)
- well-kept (隠し通された、手入れされた)
- well-known (有名な)
- well-meant (善意の)
- well-off (裕福な)
- well-paid (給料のよい)
- well-regarded (高い評価の)
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構造は、 連結形 ” well- ” に動詞の過去分詞 を足したもの。
意味は、概ね動詞を継承する。
だから、推測しやすい。
理解は難しくないだろう。
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◆ 留意すべきは、 “ well- ” が 「 接頭辞 」でない点。
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連結形( combining form )が正しい。
日本の参考書の一部は、 2つを混同して説明している。
独立した副詞・形容詞 “ well ” から生じた点で、
単独使用できない接頭辞と異なる。
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■ 「 接頭辞 」 prefix
単語の 意味を変えたり、広げたり する。
【例】 ” un ” ( 否定する )
■ 「 連結形 」 combining form
組み合わせて 新しい用語を作りだす。
技術・科学・医学など、理系の専門分野で重宝される
【例】 ” self “( 自ら )
※ ” well-established ” より再掲
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普段は意識しなくても問題ないものの、 英文法上は、
「 連結形 」 と 「 接頭辞 」 は区別すべきものである。
- “He is a well-liked leader.”
(彼は人気のあるリーダーです。)
– - “She is well-liked by students.”
(彼女は学生に人気がある。)
– - “He was well-liked and respected.”
(彼は人気があり、尊敬されていた。)
– - “Your son is well-liked by his friends.”
(息子さんは友達から好かれています。)
– - “This is a well-liked library.” ※ 名詞を修飾
(これは人気のある図書館です。)
– - “X is a well-liked amusement park.” ※ 名詞を修飾
(Xは人気のある遊園地です。)
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◆ ” well-liked ” は、形容詞。
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よって、 直接名詞を飾る場合( 上の例文 5、6 )でなければ、
” be動詞 ” ( 例文 1~4 下線部 ) に続くパターンが最も一般的。
※ 「 be動詞 」 = be、am、was、been、will be、is、
この理由は、” aware ” で事細かに取り上げている ( 図入り )。
英文法の基本なので、ぴんとくる ことがなければ、
この機会におさらいしていただけると幸い。
本稿で触れなかった形容詞の2つの用法も、 ” aware ” に詳説した。
- 「 叙述的用法 」( predicative use )
→ 「 名詞+動詞 」の後、 または 「 名詞 」 の後で名詞を説明
– - 「 限定的用法 」( attributive use )
→ 「名詞 」 の前で、 名詞を直接修飾