悪口、罵倒
子ども同士の喧嘩からビジネスマンによる罵詈雑言
まで、「悪口」全般をカバーする不可算名詞。
使用場面は、幼稚園からニュースまで幅広い。
一見簡単な単語だが、予め意味を知らないと
誤解しやすい 。
動詞で言い換えると、
“call one’s names“。
この用途では複数形が通例(後述)
額面通りに受け取ると「名前を呼んでいる」。
何ら毒気のない言葉に感じられる。
とんでもない。
悪意満載だ。
小学校の先生が親を呼び出す原因として、
どこの国にも常住するのが “name-calling”。
“name-calling”
- the act of using rude or insulting words
about somebody.
(オックスフォード、OALD9)
– - the act of using offensive names to
insult someone.
(メリアム ウェブスター)
– - abusive or insulting language referring to
a person or group, a verbal abuse.
(Wikipedia)
“name-calling” の特色は、既述の通り、
「悪口」であれば、子どもから大人まで
網羅する点。
日本語の場合、大人は「中傷」「罵倒」など、
状況に応じて置き換えるのが一般的だが、
“name-calling” は年齢・地位を問わない。
ニュースに使われるくらいだから、
ネガティブ言葉にありがちな下品さはなく、
邪推を受けにくい。
だから、名詞「悪口」= “name-calling”
と覚えておけば間に合う。
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◆ “name-calling” は、名詞2語をハイフンで
つないだ「複合名詞」(compound noun)。
“name” には、名詞・他動詞・形容詞がある。
語源は、古英語の「名前」(nama)。
基本的意味は、語源に沿う。
– 名詞「名前」「呼称」「評判」(可算・不可算)
– 他動詞「命名する」「指名する」「述べる」
– 形容詞「有名な」「名にちなんだ」
“name-calling” の “name” は、可算名詞。
実は、これは基本的意味から外れる用法。
名詞「名前」には違いないのだが、複数形 “names”
となる。
複数形 “names” には、「名前」の複数形に加えて、
「悪口」「蔑称」
という独自の意味がある。
この用途の場合、複数形が常。
よって、本来なら “names-calling” となるはずだが、
“name-calling” で定着した。
既記の “call one’s names“(~の悪口を言う)
の “one’s” には、人称代名詞の目的格を入れる。
同じく目的格を用いて換言して、”call names at XX”。
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◆ 最も多用される単数の目的格を入れると、こうなる。
- “call him names“
- “call her names” ※ 所有格の “her” ではない
- “call names at him“
- “call names at her”
(~の悪口を言う)
文法通りなら、目的格に合わせて、
“name” も単数になるはず。
ところが、この用途の “name” は複数。
ここがポイント。
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◆ 複数「彼らの悪口を言う」でも目的格となる。
- “call them names” ※ 所有格 “their” ではない
- “call names at them“
「名前を呼ぶ」所有格
-
call my name
(私の名前を呼ぶ) -
call his name
(彼の名前を呼ぶ) -
call her name
※ “her” は、所有格・目的格が同形 -
call their names
(彼らの名前を呼ぶ)
「悪口を言う」目的格
-
call me names
(私の悪口を言う) -
call him names
(彼の悪口を言う) -
call her names
(彼女の悪口を言う) -
call them names
(彼らの悪口を言う)
よって、複数形 “names” 以外でも判別可能。
日常的に見聞きするケースは、
単数 “his” または “her” が大半。
◆ “calling” は、名詞のみの単語。
可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
語源は、「神の召命」。
主な意味は次の3つ。
- 呼ぶこと
- 天職
- 衝動
ここでは「呼ぶこと」で、不可算名詞。
◆ 以上より、表題 “name-calling” は、
可算名詞 “name” と 不可算名詞 “calling”
をハイフンで結んだ不可算名詞の複合名詞となる。
ハイフンなしの “name calling” や “namecalling”(1語)
の表記もあるが、意味は同じ。
- “No more name-calling.”
(悪口はもうやめよう。)
– - “I don’t care, but it’s just name-calling.”
(構わないよ。単なる悪口だから。)
– - “Name-calling won’t make you happy.”
(悪口があなたを幸せにすることはない。)
– - “Don’t resort to name-calling.”
(悪口に頼るな。)––––
※ “resort” = 自動詞「手段に訴える」
– - “My friends used to call me names.”
(私はかつて友達に悪口に言われていた。)
– - “School bullying always includes name-calling.”
(学校のいじめは常に悪口を含む。)
– - “Bullies called all sort of names at her.”
(いじめっ子たちは、彼女にあらゆる悪口を浴びせた。)
<「中傷する」類語5選 > ”dis“(ディスる、ディする)
- insult (他動詞・自動詞・名詞)
- bad-mouth (他動詞・名詞) ※ 口頭中心
- slander (他動詞・自動詞・名詞)
- defame (他動詞)
- libel (他動詞・自動詞・名詞) ※ 主に法律用語
「ディスる」「ディする」の “dis“(”diss” と表記することもある)
は、他動詞 “disrespect“ より。
俗語だが、卑語ではない。
【発音】 dís
【活用形】 dis – dissed – dissed – dissing