賛否、是非
原形は、単数 “pro and con“。
前置詞で換言すると、“for and against“。
※ 後述
接続詞 “and”(及び)を接続詞 “or(または)
に置き換えると、
“pro or con“「賛否いずれか」「賛成または反対」
◆ “pro” も “con” も、語源はラテン語
初出は16世紀。
- pro
前置詞 “prō“(~を支持して)
前置詞 “for” と同義
– - con
前置詞 “contrā“(~に反対して)
前置詞 “against” と同義
通例ペアで使われる
- 単数 “pro and con“
- 複数 “pros and cons“
- 長所短所
- 利点欠点
- 是非
- 良し悪し
などを意味する。
–
◆ 4大学習英英辞典(EFL辞典)によると、
“pros and cons“
- the advantage and disadvantages of something.
(LDOCE6、ロングマン)
– - the pros and cons of something are its advantages
and disadvantages, which you consider carefully
so that you can make a sensible decision.
(CALD4、ケンブリッジ)
–
“the pros and cons“
- the advantage and disadvantages of something.
(OALD9、オックスフォード)
– - advantages and disadvantages.
(CALD4、ケンブリッジ)
【発音】ˌprəʊz ən ˈkɒnz
※ 下線は引用者
4辞書の語釈は、軒並み2語(下線)でまとまっている。
※ クリックで発音
- advantages(利点)
- disadvantages(不利)
■ “advantage” とは、「アドバンテージ」のこと。
「有利」「利点」「利益」「得」「優勢」「優位」
の意味で、日本社会にも定着しているだろう。
テニス・卓球・サッカー・ラグビー・ハンドボール
の「アドバンテージ」もこれで、「有利な状況」
との意味合いは同じ。
■ “disadvantage” は、”advantage” に「否定」の
接頭辞 “dis“(無、不、非)を加えた名詞。
“advantage” を否定するので、その反対となり、
「不利」「不利益」「損」「劣勢」「不都合」
名詞 “advantage” 同様に、可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
–
–
なぜなら、「賛否」も「長短」も、たいてい複数あるから。
–
以下のように、前置詞・副詞・形容詞で使う用法もある。
「〜に賛成して」「〜に反対して」。
–
これらの品詞の境界はあいまいで、解釈は分かれる。
–
【副詞】
- “I want to think about this issue pro and con.”
(この問題について、賛否双方から考えてみたい。)
【前置詞】または【形容詞】
- “He is pro the new bill.”
※ 前置詞 “for” と同じ
(彼は新しい法案に賛成している。)
– - “She is con the idea.”
※ 前置詞 “against” と同じ
(彼女はその案に反対している)
–
◆ 上記は比較的マイナー用法で、頻出なのは名詞。
–
比較項目として使う場合、上掲 “OALD9” と “CALD4” の
項目が示す通り、冠詞 “the” をつけるのが一般的。
この用法では、可算名詞となる。
【名詞】
- “The pros and cons of late marriage”
(晩婚の是非)–
–
- “The pros and cons of working long hours”
(長時間労働のメリット、デメリット)
– - “The pros and cons of early retirement.”
(早期退職の利点と欠点)
– - “I made a list of the pros and cons of quitting my job.”
(仕事を辞める上での是非を一覧にしてみた。)
– - “I compared the pros and cons of studying abroad.”
(留学のメリットとデメリットを比較してみた。)
– - “We discussed the pros and cons of having kids.”
(私たちは子どもをもつことの是非を話し合った。)
– - “Parenthood has both its pros and cons.”
(親になることにはプラス面とマイナス面の両方がある。)––
プラス面とマイナス面の比較衡量は、誰しも行っている。
自分の言動は、無意識にも大方こうして決めているだろう。
–
◆ 両側面を分析し視覚化するのが、メディアの役割のひとつ。
–
“pros and cons” は、時事ニュースにおいて年中取り上げられる。
例えば、政治経済の堅い内容であっても、
“pros and cons” の図示により面白みが加わる。
–
記事に華を添える効果があるのだ。–
清濁併せた多角的比較は、なかなか楽しい。
–
特に、人物比較は芸能人並みの興味をそそる。
そのため、選挙戦や政権交代の時期には欠かせない。
- “The pros and cons of having him as the President.”
(彼を大統領に迎えることの賛否両論)
– - “We need to discuss the pros and cons of his Cabinet.”
(彼の閣僚の良し悪しについて議論する必要がある。)
– - “Pros and Cons of Both Candidates”
(両候補者の良い点、悪い点) ※ 見出し(headline)
※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語
◆ なお、表題の “pro” は、アマチュアの反対「プロ」と無関係。
これは “professional” の短縮語で、”profession”(職業)由来。
“profession” は、ラテン語「公言」「宗門に入る誓約をする」
(professiō)が語源。
◆ 同じく、”con” は “con man“(詐欺師)と無関係。
こちらは、”confidence man” の縮約語。
映画や雑誌に出てくる俗語である。
“con” の初出は、19世紀。
“con game“(詐欺) と “con artist“(詐欺師)も同様で、
いずれも “confidence”(信用)が語源。
【発音】 kɑ́nfidəns
よって、それぞれ次に換言できるものの、”con” の方が一般的。
“confidence game” と “confidence artist“。
「信用させて」悪事を犯すから「信用詐欺」。
とにかく<詐欺系>は、語源から何から “pros and cons” とは別物。