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Scam

      2020/05/23

詐欺

「詐欺」と言えば、”fraud” が基本。

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

語源は、ラテン語「詐欺」(fraudem)。
成り立ちからして、立派。

早くも14世紀から英語として使われ、
法律英語として確立している。

抽象的な「詐欺」の意味では、不可算名詞である。
具体的な「詐欺行為」の場合、可算名詞となる。

fraud    名詞のみで、動詞はない

“fraud” 及びその派生語の形容詞 “fraudulent” は、
関係法令や手順にも正式採用されている。

専門知識のない一般人が認識できる「詐欺」の総称。

  オレオレ詐欺 → “telephone scams” の一種  



◆ 一方の “scam”。

【発音】  skǽm  (1音節)

こちらも「詐欺」全般を意味する。

scam  →  名詞に加えて、動詞もある

– 他動詞「だまし取る」
– 自動詞「詐欺を働く」

“scam” を働く者は、”scammer“。
“fraud” を働く者は、”fraudster“。

いずれも、可算名詞。

  • “Unemployment claims are the latest target
    for coronavirus fraudsters
    (コロナウイルス詐欺師の最新の標的は失業保険申請)
    2020年5月18日付    The Washington Post
  • “Feds Suspect Vast Fraud Network Is Targeting
    U.S. Unemployment Systems”
    (米失業保険制度を狙う大規模詐欺ネットワークを
    連邦捜査局が疑う)
    2020年5月16日付    The New York Times


本稿では、名詞としての “scam” を取り上げる。

◆ “fraud” も “scam” も、日常英語 (everyday English words)である。

中学生以上の平均的な英語ネイティブであれば、
難なく認識できるレベル。

最大の違いは、法律用語としての信用度

“scam” は、法律辞典にまともに取り上げられていない(後述)。

さらに、”fraud” に比べて、”scam” は英単語として非正式。

4大学習英英辞典(EFL辞典)すべてにおいて、

informal” と表記があるのが “scam

  • LDOCE6” ロングマン現代英英辞典 第6版
  • OALD9” オックスフォード現代英英辞典 第9版
  • CALD4” ケンブリッジ現代英英辞典 第4版
  • COBUILD9” コウビルド英英辞典 第9版
    ※ 2017年8月1日 初稿時点における各最新版

informal” とは、「くだけた表現」「非正式」。
formal“(堅めの表現、正式)の対をなす、辞書の凡例用語である。

“fraud” が、ラテン語「詐欺」(fraudem)由来であり、
いわば正統派の英単語なのは、既述の通り。

それに引き換え、”scam” の出自は、なんだか怪しい。

< ”scam” 初出と語源 >

1963。もとはカーニバル隠語。
一説には “scheme” の転化。

ランダムハウス英和大辞典 第2版

※  “scheme” = 策謀(可算名詞)

 

◆ アメリカには、有力な法律辞典が存在する。

Black’s Law Dictionary
=
ブラックス法律辞典


Amazon Japan / Amazon US


1891年に発刊され、100年以上の歴史を誇る。
判例などに最も引用される辞典である。

英米法を学ぶ学生で知らない者は皆無レベルの存在感

現時点(2017年8月 初稿時点)における最新版
第10版、2014年刊)では、”fraud” の解説に
2ページ以上(775~777頁)を割いている。

こんな具合。

Black’s Law Dictionary, 10th Edition
p. 775 – 777  (West Group 2014)

ところが、この「第10版(2014年刊)」には、

  “scam” の項目はない。

正式扱いされていないと考えられる。

◆ どちらも「詐欺」を表す日常語

fraud正式な法律用語
scam正式な法律用語に満たない

にもかかわらず、名詞 “scam” の方を表題に掲げた
理由は、日本で学ぶ機会が少ないと考えるからである。

 

【追記】 2019年12月11日付
2019年6月に「第11版」が発行されました。
Black’s Law Dictionary, 11th Edition

Amazon Japan / Amazon US

この「第11版(2019年刊)」を確認したところ、

相変わらず、

  “scam” の項目はない。

※ 2014年発行の旧版「第10版」に基づく本稿に、
「第11版」を加味し、近日中に改訂いたします。

◆ “scam” は、インターネットに日々飛び交う言葉。

日常的には “fraud” 同然 に使われている

事件の規模は関係なく、被害が金銭中心の詐欺事件では、
“scam” が好まれる傾向が若干見られるくらい。

錚々たるメディアでも、以下の表現は年中見かける。

例えば、経済誌 “Forbes” や “The Economist“、そして高級紙
とされる “The New York Time” や “The Times“。

  • financial scam
    (金融詐欺)
  • Internet scam
    インターネット詐欺
  • insurance scam
    (保険金詐欺)

  • imposer scam
  • impersonation scam
    (なりすまし詐欺)
  • investment scam
    (投資詐欺)
  • lottery scam
    (宝くじ詐欺)
  • tax scam
    (税金詐欺)

  • romance scam
    (恋愛詐欺)

  • job offer scam
    (就職あっせん詐欺)


  • social media scam
    (ソーシャルメディア詐欺)


  • credit card scam
    (クレジットカード詐欺)

  • charity scam
    (義援金詐欺)

  • ticket scam
    (チケット詐欺)
  • government grant scam
    (給付金詐欺)
  • housing scam
    (不動産詐欺)
  • upfront fee scam
  • advance fee scam
    (前金詐欺、手付金詐欺)
  • timeshare scam
  • upfront fee scam
    タイムシェア詐欺
  • offshore scam
    (オフショア詐欺)

  • phishing scam
    フィッシング詐欺)
  • student loan scam
    (学生ローン詐欺)

  • Nigerian Scam
    ナイジェリア詐欺
  • scam site
    (詐欺サイト)
  • employment scam
    (雇用詐欺)
  • online job scam
    (オンライン求人詐欺)
  • college admissions scam
  • college admissions cheating scam
    (大学入試詐欺)※ 裏口入学の一種

    <例>
    2019 college admissions scam
    Everything We Know About the College Admissions Scam
    14 Days Behind Bars in Admissions Scam

【参照】

  • Common Scams and Frauds
    (「よくある詐欺」 米国政府の公式サイト)
  • Business Email Compromise(BEC)
    (ビジネスメール詐欺)

詐欺注意!

【出典】 https://www.fbi.gov/image-repository

 

【参考記事】   ※ 外部サイト

世界のビジネスメール詐欺(BEC)の損失額、5年弱で125億ドルに
2018年7月17日付

巧妙すぎて防げるわけがない!  ビジネスメール詐欺はここまで来た
2019年8月21日付

【PDF】

・『ビジネスメール詐欺「BEC」に関する事例と注意喚起
ーー独立行政法人情報処理推進機構、2017年刊、8MB

一般人にとっては、堅苦しい専門用語よりも、
発音しやすい同義語の方が親しみやすかったりする。

  専門家でないため、正確性は二の次  

こうして、語感や字面重視で普及することは珍しくない。

世間一般においては、こんな流れの方が、むしろ
自然に定着したりする。

結果的に、非公式の言葉が目立つことになる。

“scam” はその好例。

◆ 片や “fraud” は、れっきとした法律用語。

歴史もはるかに長く、使用頻度は上回る。
正式には、やはり “fraud” なのである。

<使用頻度>   

【出典】  コウビルド(COBUILD)/ Collins

fraud トップ 10,000語以内   /  scam 30,000語以内


https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/fraud
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/scam

LDOCE6(ロングマン)の指標比較

名詞 “fraud

  • 重要:<6001~9000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

 

名詞 “scam

  • 重要:9000語圏外
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  skǽm  (1音節)

2語とも、「詐欺」関連では欠かせないものの、
英単語全体から見れば、さほど重要でも頻出でもない。

◆ なお、“scum”(浮きかす) と混同しない ことは大切。

俗語としては、「精液」「人間のくず・かす」を指す。

“scam” と重なる、ネガティブイメージ。

スペルも酷似し、平板なカタカナ発音(スカム)では、
一緒に聞こえてしまいがち。

→  両方とも「1音節(one syllable)」。

ゲロする勢いで、「」と一気に吐き出す。

「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。

“scum” も、日常的に見聞きする。

しかし、品格がぐっと下がる。

卑語でも禁忌語でもないが、”scam” と異なり、
上記メディアには、めったに出てこない。

推して知るべし。

 

【関連表現】

“deceptive”
https://mickeyweb.info/archives/8375
(1)人をだまそうとする (2)誤解を招く

詐欺師

 

 

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