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Scam

      2024/03/08

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 12 minutes

詐欺

「 詐欺 」と言えば、 ” fraud ” が基本。

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

語源は、 ラテン語 「 詐欺 」( fraudem )。

生まれからして、 立派。

早くも14世紀から、 法律英語として確立している。

抽象的な 「 詐欺 」 の意味では、 不可算名詞 である。

個別具体的な 「 詐欺行為 」 の場合、 可算名詞となる。

■  fraud    名詞のみ で、 動詞はない


” fraud ”  及び その派生語の形容詞  ” fraudulent
は、 関係法令や手順にも正式採用されている。

【発音】  frɔ́dʒələnt
【音節】  fraud-u-lent  (3音節)

  •  fraudulent election ( 不正選挙 )
  •  voter fraud ( 不正投票 )

専門知識のない一般人が認識できる 「 詐欺 」 の総称。

  オレオレ詐欺  →  ” telephone scams ” の 一種  



◆  一方の  ” scam “。

【発音】  skǽm  (1音節)

こちらも 「 詐欺 」 全般を意味する。

けれども、

■  scam  →  名詞 に加えて、 動詞もある


–  他動詞 「 だまし取る 」
–  自動詞 「 詐欺を働く 」

  •  ” I’ve been scammed.”    ※ 現在完了形 ( present perfect )
  •  ” I was scammed.”    ※  過去形 ( past tense
    ( 詐欺に遭いました。)

    ◇  「 完了形 」「 過去形 」 相違点  →  ” better place ”  に詳述
  •  ” How can you avoid being scammed ?
    ( どうすれば詐欺の被害を防げるか。)

【活用形】  scam – scammed – scammed – scamming

  •  ” This website scams people into paying for access to jobs.”
    ( これは求人情報にお金を支払わせる詐欺サイトです。)
  •  ” scam ”  を働く者は  scammer
  •  ” fraud ”  を働く者は  fraudster

いずれも、可算名詞。

  • Cyberscammers  : Pay Up or We’ll Infect Your Family With Coronavirus ”
    ( サイバー詐欺師 : 支払わなければ、ご家族をコロナに感染させます )
    2020年4月29日付    The Daily Beast
    D–
  • ” Feds Suspect Vast Fraud Network Is Targeting
    U.S. Unemployment Systems ”
    ( 米失業保険制度を狙う大規模詐欺ネットワークを連邦捜査局が疑う )
    2020年5月16日付    The New York Times
  • ” Unemployment claims are the latest target
    for coronavirus fraudsters
    ( コロナウイルス詐欺師の最新の標的は失業保険申請 )
    2020年5月18日付    The Washington Post

◆  形容詞  ” scammy ”  も見聞きするが、 俗語扱いが一般的。

市販辞書はもちろん、 オンライン辞書にもあまり出てこない。

【発音】 ˈskæmɪ
【音節】  scam-my  (2音節)

名詞  ” scam ” に、 接尾辞( suffix ) ” y ” をつけた形容詞。

  •  “This is a scammy product.”
    (これは詐欺まがいの製品だわ。)
    (これは詐欺めいた製品だ。)
    (これは詐欺っぽい製品ね。)

 

◆  本稿では、名詞の ” scam ” を取り上げる。

  •  “Don’t buy this product.  Most likely it’s a scam. “
    (この製品を買ってはいけない。 詐欺に違いない。)
  • ” Is it legit or a scam ?
    ( それは合法か詐欺か ? )

▲  詐欺診断サイト

https://www.scamadviser.com/

※  2024年2月9日 アクセス

◆  ” fraud ” も ” scam ” も、日常英語 ( everyday English words )。

中学生以上の平均的な英語ネイティブであれば、
難なく認識できる水準。

最大の違いは、 法律用語 としての信用度


” scam ”  は、法律辞典にまともに取り上げられていない。–  ※  後述

その上、 ” scam ”  は、” fraud ” に比べて「 英単語 」としても非正式。

4大学習英英辞典( EFL辞典 )すべてにおいて、

informal ” 表記のあるのが、” scam

  • LDOCE6 ”  ロングマン現代英英辞典 第6版
  • OALD9 ”  オックスフォード現代英英辞典 第9版
  • CALD4 ”  ケンブリッジ現代英英辞典 第4版
  • COBUILD9 ”  コウビルド英英辞典 第9版
    ※  2017年8月1日  初稿時点における各最新版

informal ” とは、「 くだけた表現 」「 非正式 」。

formal “( 堅めの表現、正式 )の対をなす、
英語辞書の凡例用語である。

fraud ” が、ラテン語「 詐欺 」( fraudem )由来であり、
いわば正統派の英単語なのは、 既述の通り。

それに引き換え、” scam ”  の出自は、なんだか怪しい。

 

< ” scam ”  初出 と 語源 >


1963。
もとはカーニバル隠語。

一説には  ” scheme ” の転化。

ランダムハウス英和大辞典 第2版

◇  ” scheme ” = 策謀(可算名詞)

【発音】  skíːm  (1音節)


” scheme” は、 投資詐欺の 「 ポンジ・スキーム 」 が有名かも。

ねずみ講 ( pyramid scheme ) の一種で、 詐欺には違いない。

◆  米国には、 有力な法律辞典が存在する。

Black’s Law Dictionary
=
ブラックス法律辞典


Amazon Japan / Amazon US


1891年に発刊され、130年以上の歴史を誇る。

判例などに最も引用される辞典である。

英米法を学ぶ学生で、知らない者は皆無レベルの 存在感

本稿の初稿時点( 2017年8月 )における最新版
第10版、 2014年刊 )では、” fraud ” の解説に
2ページ以上を割いていた。

こんな具合。


Black’s Law Dictionary, 10th Edition
pp. 775 – 777.  (Thomson Reuters 2014).

画像の拡大

※  枠線は引用者


ところが
、この「 第10版 」( 2014年刊 )には、

 ” scam ” の項目はない。


正式扱いされていないと考えられる。

◇  どちらも 「 詐欺 」 を表す日常語

  fraud 正式な法律用語
  scam 正式な法律用語に満たない


にもかかわらず、名詞 ” scam ” の方を表題に掲げた
理由は、日本で学ぶ機会が少ないと考えるからである。


◆  次いで、 2019年に発行された 「 第11版 」 も確認。


Amazon Japan / Amazon US


Black’s Law Dictionary, 11th Edition
pp. 802 – 805.  (Thomson Reuters 2019).

画像の拡大

※  枠線は引用者


” fraud ” と ” fraudulent ” の説明に、顕著な改訂はみられない。

そして、相変わらず、

 ” scam ” の項目はない。


埋め合わせに、世界最大の英語辞典  ” OED ” 記載の
” scam ” を、 本稿末尾に全文掲載した。

◆  ” scam ” は、 インターネットに日々飛び交う言葉。

  日常的には  ” fraud ” 同然  に使われている


事件の規模は関係なく、被害が金銭中心の詐欺事件 では、
” scam ” が好まれる傾向が若干見られるくらい。

錚々たるメディアでも、 以下の表現は年中見かける。

例えば、経済誌  ” Forbes ”  や  ” The Economist “、さらに
高級紙とされる  ” The New York Time ”  や  ” The Times “。

▲  普遍的な恋愛詐欺

( 2024年2月 )

  • romance scam  
    ( 恋愛詐欺 )

  • cryptocurrency scam
  • crypto scam
    ( 暗号通貨詐欺、 仮想通貨詐欺     ※  後述

  • NFT ( non-fungible token ) scam
    ( 非代替性トークン詐欺 –  


  • job offer scam
    ( 就職あっせん詐欺 )


  • cash app scam
    ( 現金アプリ詐欺 )
  • social media scam
    ( ソーシャルメディア詐欺 )


  • credit card scam
    ( クレジットカード詐欺 )

  • charity scam
    ( 義援金詐欺 )

  • ticket scam
    ( チケット詐欺 )
  • government grant scam
    ( 給付金詐欺 )
  • housing scam
    ( 不動産詐欺 )
  • upfront fee scam
  • advance fee scam
    ( 前金詐欺、 手付金詐欺 )
  • timeshare scam
    タイムシェア詐欺
  • offshore scam
    ( オフショア詐欺 )

  • phishing scam
    フィッシング 詐欺 )
  • student loan scam
    ( 学生ローン詐欺 )

  • Nigerian Scam
    ナイジェリア詐欺
  • scam site
    ( 詐欺サイト )
  • sugar daddy  scam
    パパ活詐欺
    ※  援助交際 ( 援交 ) は、 ” no need ”  で言及 ( 動画入り )

  • employment  scam
    ( 雇用詐欺 )
  • online job scam
    ( オンライン求人詐欺 )
  • online dating scam
    ( 出会い系サイト詐欺 )
  • college admissions scam
  • college admissions cheating scam
    ( 大学入試詐欺 )    ※  裏口入学の一種

    <例>
    2019 college admissions scam
    Everything We Know About the College Admissions Scam
    14 Days Behind Bars in Admissions Scam

【参考】    ※  外部サイト ( 英文 )

 

詐欺注意!

https://www.fbi.gov/image-repository

 

【参考】    ※  外部サイト  ( 和文 )

 

【 PDF 】

・『 ビジネスメール詐欺「 BEC 」に関する事例と注意喚起
ーー独立行政法人情報処理推進機構、 2017年刊、 全27頁、 8MB

 

フィッシング詐欺かも

 


◆  一般人にとっては、堅苦しい専門用語よりも、
発音しやすい同義語の方が親しみやすかったりする。

  専門家でないため、正確性は二の次  


こうして、語感や字面重視で普及することは珍しくない。

世間一般においては、こうした流れの方が、むしろ
自然に定着したりする。

結果的に、非公式の言葉がそれなりに目立つことになる。

” scam ” はその好例。

◆  片や  ” fraud ” は、れっきとした法律用語。

歴史もはるかに長く、使用頻度は上回る。

正式には、やはり ” fraud ” なのである。

< 使用頻度 >   

【出典】  コウビルド(COBUILD)/ Collins

fraud  トップ 10,000語以内   /  scam  30,000語以内

 



https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/fraud
https://www.collinsdictionary.com/dictionary/english/scam

※  赤枠は引用者


◆  2語とも、「 詐欺 」関連では欠かせないものの、
英単語全体から見れば、 さほど重要でも頻出でもない。

LDOCE6( ロングマン )の指標比較

  名詞  “ fraud

  • 重要:<6001~9000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  frɔ́ːd  (1音節)

 

  名詞  “ scam

  • 重要:9000語圏外
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】  skǽm  (1音節)

 

◆  なお、” scum “( 浮きかす ) と混同しない  ことは大切。

俗語としては、「  精液  」「 人間の ) くず・かす 」を指す。

” scam ” と重なる、ネガティブイメージ。

スペルも酷似し、 平板で、 均一なリズムの「 カタカナ発音 」の

」( 3音節 )では、一緒に聞こえてしまいがち。

英語では、両方とも「 1音節( one syllable )」。

1音節だから、 腹の底から  ゲロする  勢いで、

キャ

と一気に吐き出す。

日英の音は、 舌・唇・歯・呼吸間の相互作用が
まったく違います

  英   語 「 息の音 」
  日本語 「 声の音 」


キャ

 

「 音節 」( syllable、シラブル ) とは、 発音の最小単位

1音節は 「 発音の最小単位 」 に切れ目がないため、 ゲロ凄みが出る。

日本語の場合、 原則として 「 仮名一字が1音節 」。

そのため、 音節を意識する機会は乏しい。

「 音声 」「 音節 」の詳細と日英比較は、” integrity ” で深掘りした

( 図入り、 動画入り )。


日本語母語話者にとって、

英語の発音は動物の鳴き声に近い。

日本語で表記しがたいのは言うもおろか。

犬猫の声と一緒で、 そもそも日本語では書き起こし

きれないのに、 英語音を無理くり邦文で表現しようとする。

等しく不条理だからアプローチを変える。

口周りをまじまじと見据えて、 模倣する。

※  やり方は、 ” integrity ”  へ  ( 図入り、 動画入り )

【参考】    ※  外部サイト

 

◆  ” scum ” も、 日常的に見聞きする。

しかし、品格がぐっと下がる。

卑語でも  禁忌語  でもないが、” scam ” と異なり、
上記メディアには、 めったに出てこない。

推して知るべし。

 

【参照】  ” deceptive

詐欺師

  • “The scammer scammed me for $95.”
    (その詐欺師から95ドルを巻き上げられた。)
  • “She is a con artist who scammed me twice.”
    (彼女は私に二度も詐欺にかけた詐欺師です。)
  • “I was scammed on the telephone by a fraudster.”
    (詐欺師からの電話で詐欺に遭った。)

 

◆  “ The Oxford English Dictionary ” ( OED )  の ” scam ” 全文がこちら。

“Scam.”  The Oxford English Dictionary.  2nd ed. 1989.


初出は「 1963年 」とある。

前記の『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』と合致する。

◆  既に挙げた ” fraud ” との相違点を繰り返すと、

■  fraud    名詞のみ で、 動詞はない

■  scam  →  名詞 に加えて、 動詞もある


名詞  ” sb. “( substantive )も、動詞 ” v. “( verb )も、
まず  ” slang ” ( スラング )と明示されている。

◇  ” sb. ”  =  substantive

「 実質的な 」「 かなりの 」に加え、文法用語としては、
名詞の 」「 名詞的な 」を意味する形容詞。


これまで何度も強調してきた通り、 由緒正しい ” fraud ”
よりは、格下の位置づけであることを裏打ちする印象。

◆  “ The Oxford English Dictionary ” ( オックスフォード英語辞典 ) は、
OED “ ( オーイーディー ) の略称で知られる。

[ 公式サイト ]  →   http://www.oed.com/

1884年にイギリスで刊行が始まり、 最新版の第2版は1989年刊。

全20巻、 2万1730頁、 29万1500の見出し語、 62kg。

世界最大の英語辞典である。

語義の配列は、 頻出順ではなく、 発生順の 「 歴史主義 」。

成り立ちを、 系統的にたどれる利点がある。

▼ 「 縮刷版 」 及び 「 CD-ROM版 」 も発売されている  ▼

[ 両方入手済み ]  →   辞書の「自炊」と辞書アプリ

“ OED ” 編集主幹の  James Murray  博士  ( 1837-1915 )
については、 ” in place ”  で触れている ( 写真入り )。

 

 

【参考】    ※  外部サイト ( 英文 )

【発音】  kríptoukʌ̀rənsi
【音節】  cryp-to-cur-ren-cy  (5音節)

 


  ウクライナ紛争に便乗した、暗号通貨詐欺が増加中

( 2022年3月 )

 


▲  ブラウザ通知が 詐欺を働くことも

( 2022年10月 )


▲  エネルギー価格の高騰も 詐欺の手口

( 2022年11月 )

 


▲ 
の注文 による詐欺も 世界的に増えている

( 2022年12月 )

 


▲  クリスマス前、 お客に注意喚起

( 2022年12月 )

※  下線は引用者

 


▲ 
ソーシャルメディアでは 金銭詐欺 が目立つ

( 2023年6月 )

 


▲ 
大手サイトも狙われている

( 2023年10月 )

 


▲  宅配便の
詐欺も

( 2023年12月 )

 


▲  本物かと見紛うニュース

( 2024年1月 )

 


▲  米国政府から 送付されてきた 税申告書類

だまされるな ! 」   「 電話を切れ !

( 2023年1月 )


  拡大図

※  下線は引用者

 

  •  Do not be fooled !
  •  Don’t be fooled !
    ( だまされるな
      他動詞  ” fool ”
  •  Do not be a fool !
  •  Don’t be a fool !
    ( ばかになるな !
    ( ばかな真似はよせ !
      可算名詞  ” fool ”
  •  I made a fool of myself.
    ( 恥をさらしたわ。 )
      可算名詞  ” fool ”

【発音】  fúːl  (1音節)

【活用形】  fools – fooled – fooled – fooling


” fool ”  の語源は、 ” fraud ” と同じく、 ラテン語。

ラテン語の 「 ふいご 」( follis ) が、 ” fool ”  の語源。

「 ふいご 」 とは 「 送風機 」 みたいなもの。

「 ふいご 」  →  「 ふくらませた頬 」 →  「 ばかづら 」

または、

「 空気袋 」  →  「 中身がない 」 →  「 頭からっぽ 」

 

 

 

 

 

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