こんなこと、私にさせないでよ。
課されたことが面倒で、やりたくない時に使うこともある。
これは文字通りの用途なので、ここでは取り上げない。
単なる怠惰によらないケースをご紹介する。
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<主な使用場面>
(1)本人の立場・力量に課題が釣り合わない場合
(2)相手に忠告しなければならない場合
共通点は、気乗りしない発言者の不愉快。
自分がやらねばならないことが納得できない。
渋々こなすのも癪に触り、我慢ならない。
とにかく文句言わずにはいられない。
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(1)本人の立場・力量に課題が釣り合わない場合
気持ちは「ばかにするな」。
発言相手は、課題を命じた人だから、
目上が多いだろう。職場なら、上司か同僚。
役不足の仕事などを押し付けられ、
プライドを傷つけられた時の不服である。
本音は <ふざけんなよ>。
-「なんでこの私が、こんなのやるの」
-「他の人にやらせるべきだろ」
面と向かって浴びせる憎まれ口なので、
命令者への反抗にも聞こえるだろう。
腹に据えかねた際の悪態である。
(2)相手に忠告しなければならない場合
気持ちは「こっちの身になって考えてみな」。
発言相手は、忠告しなくてはならない人だから、
目下が多め。職場なら、同僚か部下。
先生や親の発言にもありうる。
わざわざ自分から注意したくないのに、
立場上、しなければならない。
本音は <あなたの未熟さが迷惑なんだよ>。
-「もっと自覚し、努力しろよ」
-「そうすれば、お互い嫌な思いしないで済むのに」
嫌々ながらにもかかわらず、(2)の場合、
ある種の愛情を婉曲的に示す苦言である。
「こんなこと、私にさせないでよ」の後には、
<本当は、こんなひどいこと言いたくないのに>
との気持ちが続いたりする。
その人の成長の可能性を信じている節があり、
悪口に終始する(1)と異なる。
【関連表現】
“I know you can do better than that. ”
https://mickeyweb.info/archives/5664
(あなたなら、もっとよくできると分かっています。)
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直訳は「私にこれをさせることをしてはならない」。
助動詞 “Don’t”(してはならない)+
他動詞 “make”(させる)+
人称代名詞 “me”(私に)+ 他動詞 “do”(する)+
代名詞 “this”(これ)
口頭なので、怒りを込めて和訳する。
例えば、
“don’t make me” → 私にさせるなよ
“this” → こんなこと
「こんなこと、私にさせないでよ」
「こんなこと、俺にさせんなよ」
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特に組織で働いていると、
不本意なタスクを課せられることは珍しくない。
給料で雇われている以上、まあしかたがない。
黙して耐え、業務遂行するのが正しいだろう。
だが、感情的な不満を表出することも、
長期的には大切だったりする。
時々のガス抜きは、精神衛生によい。
信用を失わない程度に抑える必要はあるものの、
お互い様の範囲であれば、許されるだろう。
よほど嫌なら、おそらくその仕事は合っていない。
転職するのも手。