当初は、 もともとは、 出身は
仕事でもプライベートでも、事情説明の際に、
「当初は」という言葉を用いることがよくある。
■ 今は違うが、最初は こうだった
との意味合い。
時に言い訳がましく聞こえるが、ビジネスでは
論理的な弁解を要する場面が少なくない。
相手にどう聞こえようとも、きっちり説明しなくて
はならない機会は多々生じる。
◇ ” originally ” は、経緯 を説明するのに
便利な副詞。
【発音】 ərídʒənəli
【音節】 o-rig-i-nal-ly (5音節)
「 当初は 」 同様、その糸口をつかむのに役立つ。
相手にとっても、話頭が過去に遡ることが分かる。
–
◆ “originally” は副詞のみ。
形容詞・名詞 “original” に、接尾辞 “ly” を加えたもの。
“original” の語源は、ラテン語「原典」(orīgināle)。
基本的意味は、語源に沿ったものばかり。
– 形容詞 「最初の」「独自の」「初公開の」「原文の」
– 名詞 「原本」「実物」
様態の接尾辞 “ly” を足して、副詞 “originally” に。
◆ “originally” は、上記を一部引き継ぐ。
– 副詞 「最初は」「当初は」「本来は」「そもそも」「独自に」
“originally”
in the beginning, before other things happened
or before things changed.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 ərídʒənəli
【音節】 o-rig-i-nal-ly (5音節)
–
◆ ビジネス用途の例を挙げる。
“originally” は、文頭・文中・文末で使うことができる。
- “It was originally scheduled for last year.”
(それは当初は昨年用に予定されていた。)
– - “This song was originally performed by X.”
(この歌は、もともとXが歌ったものである。)
– - “They deleted the plan that was originally proposed.”
(当初提案されていた計画を彼らは削除した。)
– - “This was written in Japanese originally .”
(これはもともと日本語で書かれていた。)
–
- “This story originally appeared on P.”
(この記事の初出は、P誌に掲載されたものです。)
– - “This article originally appeared in The New York Times.”
(この記事の初出は、ニューヨークタイムズ紙です。)
–
- “That dictionary originally belonged to me.”
(あの辞書はもともと私のものでした。)
– - “She originally refused to sign on the paper.”
(当初、彼女は署名を拒否した。)
–
- “I originally planned to stay for just a day.”
(当初は一泊の予定だったのですが。)
– - “The outcome was better than what we originally expected.”
(我々の当初の予測より、よい結果が出た。)
–
- “Originally, we had ten members in our team.”
(当初、このチームには10名いた。)
–
- “The term is originally US military slang.”
(その表現は、米軍のスラング由来である。)
–
- “That book was originally published in 2016.”
(あの本はもともと2016年に出版されている。)
– - “Showa Day was originally established as Greenery Day
to celebrate the birthday of Emperor Showa.”
(「昭和の日」は、もともと「みどりの日」として、
昭和天皇の誕生日を祝うために設けられた。)
– - “This company was originally very small.”
(この会社は最初はとても小さかった。)
さらに、
人間について用いる場合は「出身は」。
語源「原典」に従い、人の由来を表す。
人の「最初」なので、「出身は」「生まれは」。
- “She originally came from Tokyo.”
“Originally she came from Tokyo.”
(彼女は東京出身です。)
– - “The family originally came from Japan.”
“Originally the family came from Japan.”
(その一家は日本から来ました。)
–
- “Originally, he was born in New York.”
(彼はニューヨーク出身です。)
– - “Jack was named as John originally.”
(ジャックはもともとジョンという名前だった。)
–
- “Originally she was born in a Catholic home.”
(彼女はカトリックの家庭で生まれた。)
– - “Originally he was born as a wealthy prince.”
(彼は金持ちの王子として生まれた。)
– - “He was originally put up for adoption and
brought back home years later.”
(彼はもともと養子に出され、数年後に生家に
連れ戻されている。)
このような人物紹介は、“originally” の独擅場。
最頻出に近い使い道である印象。
日常的な “originally” の場合、この用途が目立つ。
◆ ところで、人の外観などから、出生やバックグランド
を直接尋ねることの是非は、<ケースバイケース>と考える。
副詞 “originally” をきっかけに、ここで考察してみたい。
Where are you from originally ?
Where are you originally from ?
(ご出身はどちらですか?)
過去40年以上で、何十回と耳にした言葉である。
使い手と受け手の両方の立場から接してきた。
小・中学生の頃は、平然と口にしていた質問。
動機は相手のエキゾチックな容姿への憧れ。
実に無邪気なものである。
数十年もの月日が流れた今では、そうはいかない。
様々な事情によって、出自に神経質な人は少なくない。
例えば、1970年代、80年代の米国には、”boat people”
(ボートピープル)と称される移民が多数存在した。
ベトナムなどからの難民である。
何人かと親しくさせていただいたが、ご自分の故郷について、
うれしそうにべらべら話す人もいれば、口をつぐむ人もいた。
戦禍から逃れてきた人たちが、一様ではないことを直に学んだ。
人知れず苦しみと痛みを長年抱え、
自分の生まれ育ちを断固語らずに、
忍んで生きている人々は数多い。
ごく普通そうに見える日本人にも大勢いる。
複雑な生い立ちを、負い目に感じている人も珍しくない。
現在では、先の質問を “ a sensitive topic ”
( 慎重な取り扱いを要する話題 )として私はとらえている。
「マナー」というよりは、大人の「常識」かもしれない。
そのため、相手の個性をよく知った上で伺うことにしている。
–
そもそも、自分には関係ないこと
性質的に、知る必要がないこと
( Don’t need to know )
典型的な ” DNTK ” ( ← 頭文字語 initialism )に他ならない。
きつめで、感情的な単語 ” need ” を起用。
【参照】 ” I hope you understand. ”
とにかく、根掘り葉掘り、ほじくってよい内容ではない。
したがって、
迷った場合は、一切触れない
この判断を見誤り、気まずい思いをしたことが何度かある。