やります。
社内会議などで耳にする返事。
【発音】ˌkæn ˈduː
以下いずれかの省略形である。
- “I can do that.”
- “I can do it.”
主な使用場面は、二つ返事で引き受ける時。
「やりまっせ」という感じ。
“All right.” よりも、主体的で乗り気な印象。
その心は、
- ええ、できます!
- はい、喜んで!
- 任せなさい!
- いいとも!
「あなたはこれを担当して」とアサインされた際、
“Can do.” と間髪を入れず返す流れ。
威勢がよく、好印象なのは言うまでもない。
少々くだけた表現である。
ー
しかし、身内同士の堅すぎないビジネストークならOK。
例えば、平常時の定例会議で使える。
実際に私が耳にするのは、そのような場である。
ー
◆ 主要な英英辞典にあるのは、形容詞 “can-do” ばかり。
ー
今回調べた英英辞典9点のすべてに、項目立てされている。
ところが、応答用の “Can do.” は一切載っていない。
両者は重なる要素も多いので、本稿で一緒に取り上げたい。
同源であり、意味合いも同じようなもの。
ともに、溢れんばかりのポジティブ言葉なので、
一気に身につけてしまおう。
–
◆ まずは、英英辞書からのけ者扱いされた
“Can do.” から見ていく。
総スカンを食らっていても、ここは “Can do.” を
優先すべき。
なぜなら、成り立ちから考えれば、”can-do” は
二の次になるからである。追って説明する。
冒頭の通り、”Can do.” は省略形。
- “I can do that.”
- “I can do it.”
指示代名詞 “that” や 人称代名詞 “it” 以外も成立しうる。
「できる」対象を示すのが目的であるから。
例えば、次のようなケース。
- “I can do her task.”
(彼女の仕事は私ができます。)
– - “I can do all of them.”
(それ全部できます。)
つまり、対象となる目的語は、理論上何でもあり。
「できます」「やります」と躊躇なく応じている
のだから、頼もしい限りである。
機会があれば、社内会議などで使ってみるとよい。
ー
省略形とはいえ、”I can do that.” などの略。
通常、問題ない点には既に触れた。
ー
◆ 次いで “can-do”。
英英9点全部に掲載されているのだから、なかなかだ。
とはいえ、重要でも頻出でもない。
辞書の指標では、そろってノーマークかつランク外。
辞書には欠かせないものの、特筆に値しない凡庸な
形容詞ということか。
全体的な位置づけはともあれ、称賛や鼓舞の場面
で重宝されるのが “can-do”。
この単語を見聞きすると、全身のエネルギーが高揚
し、得も言われぬ快感を覚える英語ネイティブも
少なくないらしい。
では、ノンネイティブの私たちでも、感じ取れるだろうか。
“can-do” を目にして、前向きな気分が沸き起こるか。
反応を自らご確認いただきたく、全語釈を挙げる。
“can-do”
【発音】ˌkæn ˈduː
■ informal
willing to try anything and expect that
it will work.
(LDOCE6、ロングマン)
■ informal
willing to try new things and expecting that
they will be successful.
(OALD9、オックスフォード)
■ If you have a can-do character or way of
dealing with a problem, you are very positive
about your ability to achieve success.
(CALD4、ケンブリッジ)
■ Informal, Approval
If you say that someone has a can-do attitude,
you approve of them because they are confident
and willing to deal with problems or new tasks,
rather than complaining or giving up.
(COBUILD9、コウビルド)
■ keen to do difficult jobs and confident of success.
(Macmillan Dictionary)
■ characterized by eager willingness to accept
and meet challenges.
(Merriam-Webster、メリアム ウェブスター)
■ Informal
having or showing an ability to do difficult things.
(Merriam-Webster’s Learner’s Dictionary)
→ ”Merriam-Webster” 提供の英語学習者向けサイト
■ confident and resourceful in the face of
challenges.
(Collins English Dictionary, 12th edition)
■ Informal
characterized by enthusiasm and confidence
in taking on tasks or challenges.
(Webster’s New World College Dictionary,
5th edition)
※ 下線は引用者
COBUILD9 の “approval” とは「褒め言葉」を指す。
凡例用語で、英英辞典によっては “approving” と記す。
反意語は、”disapproval” または “disapproving“。
- “approving”
praising someone or something.
– - “disapproving”
used to express dislike or disagreement
with someone or something.
(CALD4の凡例より)
【発音】
・ “approval” /əˈpruː.vəl/
・ “approving” /əˈpruː.vɪŋ/
・ “disappoval” /ˌdɪs.əˈpruː.vəl/
・ “disapproving” /ˌdɪs.əˈpruː.vɪŋ/
以上9点のうち、下から4点は英語ネイティブ向け。
これが日本語であれば「国語辞典」と総称されるもの。
それ以外の5点は、英語学習者向け英英辞典(EFL辞典)。
ざっと一読し、だいたいご理解できただろうか。
体に活力がみなぎってきただろうか。
ー
活力はともかく、中級学習者の実力があれば、
読み取れる難易度である。
それぞれ個性のある語義で、ポジティブ一辺倒。
下線部は、各辞書が起用したポジティブ語。
先の高揚心の源泉となるキーワードであり、
自信と意欲の表れに他ならない。
<語源>
形容詞 “can-do” の初出は、1903年。
“I / we can do it.“ から。
- https://www.etymonline.com/search?q=can-do
→ オンラインの有力な語源辞典 - 『ランダムハウス英和大辞典 第2版』
「チャレンジを引き受け、それを達成する
自信のある、積極的な」の意味。
「成せば成る」「進取の気性」にも通じる
コンセプトだが、もともとは質問や依頼など
に対する肯定的な返事の Can do (= I can do it.)
から来ている(その反対は、No can do. である)。
『やさしいビジネス英語 実用フレーズ辞典』
p.138、杉田 敏 (編集)、NHK出版、2003年刊
※ “No can do.” = 無理です。
英英9点は、形容詞のみ示す。
一方、英和辞典には、名詞も併記するものがある。
不可算名詞である。
例えば、
“can-do”
■ n. やる気、行動力
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
■〈口〉力もやる気もあること、できること
Can do! 依頼・命令に対する応答
(リーダーズ・プラス)
【発音】ˌkæn ˈduː
2つの緑ハイライトから、形容詞 “can-do” は
“Can do.” から来ているとの説が確認できる。
すなわち、助動詞 “can” と 動詞 “do” をハイフンで
つないだ複合形容詞である。
繰り返し述べているように、上掲9点の英英辞書
に “Can do.” は見当たらなかった。
そのため、この説の適否を英英辞典から検証
することはできない。
だが、インターネットの調査結果から、有力説
のひとつであると結論できた。
とすれば、もてもての “can-do” を差し置いて、
総スカンの “Can do.” を表題に据えた判断は、
適切であると考えることができる。
“Can do.”
- “Will you do this research ? ”
“Can do.”
(このリサーチやってくれる?)
(もちろんです。)
– - “I’d like to ask you to do this.”
“Can do.”
(これをやってもらいたいのですが。)
(ええ、やります。)
– - “This has to be done by tomorrow. ”
“Can do.”
(明日までに終えてもらいたいのだが。)
(ええ、できます。)
“Can-do”
→ 辞書の例文は “spirit” と “attitude” 中心
- “They are full of can-do spirit.”
(彼らはやる気満々です。)
– - “She always has a can-do attitude.”
(彼女はいつだって意欲がある。)
– - “We should focus on a can-do approach.”
(我々はできる方法に集中すべきである。)
– - “His can-do spirit was revered by all of us.”
(彼のなせばなる精神は、私たち全員から敬われていた。)