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Revere

      2020/10/22

尊敬する、敬愛する

人物紹介記事で目にする褒め言葉の動詞。

【発音】  rivíər

口頭よりは文面中心。

主要な英和辞書には「あがめる」とある。
次の「大辞典」3冊とも、「あがめる」を筆頭に挙げる。

・ 新英和大辞典 第6版
・ ランダムハウス英和大辞典 第2版
・ 新編 英和活用大辞典

また「崇敬する」をトップに置くのが、
・ ジーニアス英和大辞典

英語の専門家なら、誰もがご存知の4冊。
押しも押されもせぬ「大辞典」である。

「あがめる」は、漢字で「崇める」。
表外音訓(ひょうがいおんくん)である。

常用漢字表にない読み方を指し、
「常用外」とも称す。

  あがめる【崇める】
1. 非常に尊いものとして扱う。
2. 寵愛する。

  すうけい【崇敬】
あがめうやまうこと。

  ちょうあい【寵愛】
特別に愛すること。

  けいあい【敬愛】
うやまい、親しみの心を持つこと。

(広辞苑 第七版)

日本語で「あがめる」「崇敬する」と聞くと、
こんなイメージが浮かぶ。

 

 

「アイドルをあがめる」とも重なる。

いずれも、一般人の日常にそぐわない情景かもしれない。
少なくとも「あがめる」「崇敬する」は、
日本語の常用語とは言い難い。

もし、”revere” の使用場面がこんな具合であれば、
恐れ多くて常用などできないだろう。

既記のように、実際には人物紹介で普通に目につく。
とすれば、英和辞典や上図と使い方が異なると推測できる。

ここで考察してみたい。

◆ “revere” は他動詞のみ。 自動詞はない。

【発音】  rivíər

語源は、ラテン語「恐れる」「畏敬する」(reverērī)。
語源の意味をほぼ引き継ぎ、これ以外に意味はない。

したがって、辞書の語義はことごとくシンプル。
英英は1文、英和は2~3語で完結する。

単義に近いため、簡潔にならざるえないのである。

今回調べた英英9点すべての語釈は1文完結
(同義語と注意点の表示は除く)。

3大学習英英辞典(EFL辞典)もこの通り。

“revere”

■ formal
to respect and admire someone or something
very much.
(LDOCE6、ロングマン)

■ formal
to feel great respect or admiration for something / 
somebody.
(OALD9、オックスフォード)

■ formal
to very much respect and admire someone or something.
(CALD4、ケンブリッジ)

【発音】  rivíər

※ 下線は引用者

軒並み “formal”(格式張った) とある。
また、各辞書のキーワード(下線部)も同然で、
誰かまたは何かを大変 respect >として一致する。

ここでの “respect” は、カタカナ「リスペクト」と
ちょうど重なる。

  リスペクト【respect】
尊敬。敬意。敬意をはらうこと。
(広辞苑 第七版)

この内容が日常用法の “revere” である。
「あがめる」よりも、よほど的確である。

しかるに、上掲「大辞典」4冊の語釈は、

“revere”

■(強い尊敬・愛情・敬意の念で)
崇(あが)める、崇拝する、尊敬する
(新英和大辞典 第6版)

■(畏怖の念で)あがめる、畏敬(崇敬)する
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)

■ あがめる、尊ぶ
(新編 英和活用大辞典)

■ ~を(…のことで)崇敬する、あがめる
(ジーニアス英和大辞典)

「あがめる」が定訳なのが、はっきりと分かる。
しかし日常的には、先の「リスペクト」の語釈
の方がよく合う。

◆ 定訳「あがめる」に、私は物言いたい。

語源には忠実だが、厳かすぎて、場違いに
なりがちな和訳である。

特に、近くの人物を対象とする場合はそうである。

一方、<神様>や<物故者>のような手に届かない
存在、または<山>や<海>のような無生物であれば、
「あがめる」「崇敬」「崇拝」でもそれほど大仰に聞こえない。

そもそも「あがめる」などと言われたら、
褒められた側も困るだろう。

<教祖><導師><guru>扱いされるかのごとく、
まともな社会人なら、気恥ずかしいどころか、気持ち悪い。

He is revered by his friends.” の和訳として、
「彼は友人からあがめられています。」
なんて紹介された時には、からかわれている感じ。

いい迷惑である。

だから「あがめる」は都合悪い。
日本語としては非日常すぎる。

これは、devastated” =「打ちひしがれた」
と共通する問題であり、定訳をそのまま使用すると、
不自然な印象
となる。

「使いづらい定訳」として弊サイトで詳説したものには、

などがある。

◆ 無論、英和辞典が間違っているのではない。

語源の観点からは正しいのだが、もう一歩工夫が
必要なだけ。

このうち唯一『新英和大辞典 第6版』が示した通り、
「尊敬する」の記載が必要だったと私は考える。

「あがめる」「崇敬する」よりは、
尊敬する」「敬愛する」。

さらには「褒める」「評価する」など、
もっと身近な褒め言葉をもってこないと、
日常から浮いてしまう。

大げさな称賛は、往々にして逆作用をもたらす。

すなわち「褒め殺し」。

  ほめごろし【褒殺】
〚名〛
いやみになるほどほめること。極端にほめることで、
かえって相手をひやかしたりけなしたりすること。
(精選版 日本国語大辞典)

純な尊重や好意が、皮肉っぽく和訳される
のは、絶対避けたいことである。

“revere” の和訳時に気をつけるべき点なのだが、
英和辞典のみ参考にすると、気づきにくい。

なぜなら、これまで見てきたように、どの辞書も
「あがめる」とあるから。

「定訳」の落とし穴について注意喚起するべく、
ここで取り上げてみた。

  • “Her parents are revered by her.”
    (彼女の両親は彼女に敬愛されている。)
    (彼女は両親を敬愛している。)
  • “He is revered as a great national hero.”
    (彼は偉大なる国民的英雄として尊敬されている。)
    (彼は偉大なる国民的英雄として崇めら得ている。)
    ※ この内容ならば「あがめる」でも可
  • “His final resting place is revered by students.”
    (彼のお墓は学生に崇拝されている。)
  • “She was revered for her huge success.”
    (彼女は大成功したことで、尊敬されていた。)
  • “His can-do spirit was revered by all of us.”
    (彼のなせばなる精神は、私たち全員から
    敬われていた。)


◆ 例文にも該当するが、”revere” は原則受け身で使う。

LDOCE6 と OALD9 は “usually passive” と明記する。
だから、過去分詞形 “revered” がかなり目立つ。

能動態でも使えるものの、あまり一般的ではない。

  • “He reveres his parents.”
    (彼は両親を敬愛する)
  • “We revered her for her success.”
    (成功した彼女を尊敬した。)
  • “I revered his can-do attitude.”
    (彼の意欲を尊敬した。)

 

【同義語】

■「あがめる」意味合いでは、「他動詞」中心
→ “revere” に自動詞はない

盲目的な称賛が

idolize“ ※ 他動詞・自動詞
偶像視する

worship“ ※ 他動詞・自動詞
集団的に崇拝する

adore“ ※ 他動詞・自動詞
敬愛する、大好きである

 

【関連表現】

reverence
– 名詞「尊敬」「崇敬」「敬愛」
牧師・僧侶の敬称
– 他動詞「崇敬する」

【発音】  révərəns

 

 

 

 

 

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