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Revere

      2025/07/05

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 4 minutes

尊敬する、  敬愛する

人物紹介記事で目にする褒め言葉の動詞。

【発音】  rivíər
【音節】  re-vere  (2音節)

口頭よりは文面中心。

主要な英和辞書には 「 あがめる 」 とある。

次の「 大辞典 」3冊とも、「 あがめる 」 を筆頭に挙げる。

また 「 崇敬する 」 をトップに置くのが、

英語の専門家なら、誰もがご存知の4冊。

押しも押されもせぬ 「 大辞典 」 である。

「 あがめる 」 は、 漢字で「 崇める 」。

表外音訓 ( ひょうがいおんくん ) である。

常用漢字表 にない読み方を指し、 常用外( じょうようがい ) とも称す。


  あがめる【 崇める 】

1.  非常に尊いものとして扱う。
2.  寵愛する。

  すうけい【 崇敬 】

あがめうやまうこと。

  ちょうあい【 寵愛 】

特別に愛すること。

  けいあい【 敬愛 】

うやまい、 親しみの心を持つこと。

( 広辞苑  第七版 )


◆  日本語で 「 あがめる 」 「 崇敬する 」 と聞くと、

ふと、こんなイメージが浮かぶ。

褒めよ 讃えよ 崇め奉れ


崇め奉るは、「 あがめたてまつる 」と読む。

「 アイドルをあがめる 」感じか。

一般人の日常にそぐわない情景かもしれない。

少なくとも 「 あがめる 」「 崇敬する 」は、
日本語の常用語とは言い難い。

もし、” revere ” の使用場面がこんな具合であれば、
恐れ多くて、常用などしにくいだろう。

既記のように、実際には人物紹介で普通に目につく。

とすれば、英和辞典や上図と使い方が異なると推測できる。

ここで考察してみたい。

◆  ” revere ”  は他動詞 ( transitive verb ) のみ。

自動詞 ( intransitive verb )はない。

【発音】  rivíər
【音節】  re-vere  (2音節)

語源は、 ラテン語 「 恐れる 」 「 畏敬する 」( reverērī )。

語源の意味をほぼ引き継ぎ、 これ以外に意味はない。

したがって、 辞書の語義はことごとくシンプル。

英英は1文、 英和は2~3語で完結する。

単義に近いため、簡潔にならざるえないのである。

今回調べた英英9点すべての語釈は、1文完結
( 同義語と注意点の表示は除く )。

3大学習英英辞典( EFL辞典 )も、この通り。


revere

■  formal
to respect and admire someone or something
very much.
( LDOCE6、 ロングマン )

■  formal
to feel great respect or admiration for something /
somebody.
( OALD9、 オックスフォード )

■  formal
to very muchrespect and admire someone or something.
( CALD4、 ケンブリッジ )

【発音】  rivíər
【音節】  re-vere  (2音節)

※  下線は引用者


皆一様に  ” formal “( 格式張った ) とある。

また、 各辞書のキーワード ( 下線部 ) も同然で、
誰かまたは何かを大変 respect > として一致する。

ここでの ” respect ” は、 カタカナ「 リスペクト 」と
ちょうど重なる。


リスペクト【respect】

尊敬。 敬意。 敬意をはらうこと。

( 広辞苑 第七版 )


この内容が日常用法の ” revere ” である。

「 あがめる 」 よりも、 よほど的確である。

しかるに、  上掲 「 大辞典 」 4冊の語釈は、


revere

■  ( 強い尊敬・愛情・敬意の念で )
崇( あが )める、 崇拝する、 尊敬する
( 新英和大辞典 第6版 )

■  ( 畏怖の念で )あがめる、 畏敬( 崇敬 )する
( ランダムハウス英和大辞典 第2版 )

■  あがめる、 尊ぶ
( 新編 英和活用大辞典 )

■  ~ を ( …のことで ) 崇敬する、 あがめる
( ジーニアス英和大辞典 )

【発音】  rivíər
【音節】  re-vere  (2音節)


「 あがめる 」 が定訳なのが見て取れる。

しかし日常的には、 先の「 リスペクト 」の語釈
の方がよく合う。

◆  定訳 「 あがめる 」に、 私は物言いたい。

語源には忠実だが厳かすぎて、 場違いになりやすい。

特に、 近くの人物を対象とする場合はそうである。

一方、< 神様 > や < 物故者 > のような手に届かない存在、
または < 山 > や < 海 > のような自然を含む 「 無生物 」であれば、
「 あがめる 」「 崇敬 」「 崇拝 」でも、 さほど大仰に聞こえない。

そもそも 「 あがめる 」 などと言われたら、
褒められた側は、 きっと困る。

あたかも < 教祖 > < 導師 > < guru > 扱いされるかのようで、
真っ当な社会人なら、 気恥ずかしいどころか、気持ち悪いだろう。

  •  He is revered by his friends.

の和訳として、

  •   彼は友人からあがめられています。

なんて紹介された時には、 なんだかからかわれている気分。

いい迷惑である。

だから 「 あがめる 」 は、 やや都合悪い。

日本語として、 非日常すぎる。

これは、 devastated ”  = 「 打ちひしがれた 」

と共通する問題であり、定訳をそのまま使用すると、

不自然な印象 を帯びる。

「 使いづらい定訳 」 として弊サイトで詳説したものには、

などがある。

◆  無論、 英和辞典が間違っているのではない。

語源の観点からは正しいのだが、 もう一歩工夫が必要なだけ。

このうち唯一 『 新英和大辞典 第6版 』 が示した通り、

「 尊敬する 」 の記載が必要だったと私は考える。

あがめる 」 「 崇敬する 」 よりは、

尊敬する 」 「 敬愛する 」 が自然。

さらに、「 褒める 」「 評価する 」 などの、

身近な褒め言葉を用いないと、 日常から浮きがち。


大げさな称賛は、 往々にして逆作用をもたらす。

すなわち 「 褒め殺し 」。


ほめごろし【褒殺】

〚名〛
いやみになるほどほめること。
極端にほめることで、
かえって相手をひやかしたりけなしたりすること。

( 精選版 日本国語大辞典 )


純な尊重や好意が、 皮肉っぽく和訳されるのは避けたい。

” revere ”  の和訳時に気をつけるべき点なのだが、
英和辞典のみ参考にすると、 気づきにくい。

なぜなら、 これまで見てきたように、どの辞書も
「 あがめる 」 とあるから。

「 定訳 」 の落とし穴について注意喚起するべく、
ここで取り上げてみた。

  •  ” Her parents are revered by her.”
    ( 彼女の両親は彼女に敬愛されている。)
    ( 彼女は両親を敬愛している。)
  •  ” He is revered as a great national hero.”
    ( 彼は偉大なる国民的英雄として尊敬されている。)
    ( 彼は偉大なる国民的英雄として崇めら得ている。)
    ※  この内容ならば「あがめる」でも可
  •  ” His final resting place is revered by students.”
    ( 彼のお墓は学生に崇拝されている。)
  •  ” She was revered for her huge success.”
    ( 彼女は大成功したことで、尊敬されていた。)
  •  ” His can-do spirit was revered by all of us.”
    ( 彼のなせばなる精神は、私たち全員から
    敬われていた。)


◆  例文にも該当するが、”revere” は原則として、
受け身 ( 受動態 )で使う。

LDOCE6 と OALD9 は ” usually passive ” と明記する。

だから、 過去分詞形 ” revered ” が目立つ。

能動態でも使えるものの、 あまり一般的ではない。

  • ” He reveres his parents.”
    ( 彼は両親を敬愛する)
  • ” We revered her for her success.”
    ( 成功した彼女を尊敬した。)
  • ” I revered his can-do attitude.”
    ( 彼の意欲を尊敬した。)

 

【同義語】

◇  「 あがめる 」意味合いでは、「 他動詞 」中心
→  表題  ” revere ”  に自動詞はない

ほとんど盲目的な称賛は、

  •  ” idolize    ※  他動詞・自動詞
    偶像視する
    【発音】  áidəlàiz
    【音節】  i-dol-ize  (3音節)

  •  ” worship “   ※  他動詞・自動詞
    集団的に崇拝する
    【発音】  wə́rʃip
    【音節】  wor-ship  (2音節)

  •  ” adore “   ※  他動詞・自動詞
    敬愛する、 大好きである
    【発音】  ədɔ́r
    【音節】  a-dore  (2音節)

 

【関連表現】

reverence

–  名詞 「 尊敬 」「 崇敬 」「 敬愛 」
–  名詞 「 牧師・僧侶の敬称 」

–  他動詞 「崇敬する」

【発音】  révərəns
【音節】  rev-er-ence  (3音節)

 

 

 

 

 

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