後知恵
あとぢえ【後知恵】
事のすんだあとに出る知恵。
(広辞苑 第六版)
◆ 形容詞 “hind”(後ろ)+ 名詞 “sight”(見ること)。
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すなわち「後から見る」で「後知恵」。
この用法では不可算名詞。
よって、無冠詞が通例。
初出は19世紀で、比較的新しい単語。
【発音】 háindsàit
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◆ 同義語の代表格は、”afterthought”。
こちらも額面通り「後からの思いつき」。
【発音】 ǽftərθɔ̀ːt
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◆ 反意語は、”foresight”(見通し、先見)。
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形容詞 “fore”(前の)+ 名詞 “sight”(見ること)
すなわち「前から見る」で「先見」。
初出は14世紀で、”hindsight” に比べるとずっと早い。
【発音】 fɔ́ːrsàit
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◆ “hindsight” の語感にずるさが漂うのは、日英共通。
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“hindsight” のみだと、基本的にネガティブイメージである。
結果は既に出ている。そこから逆算すれば、正答は容易。
答えを見ながら、試験を解くようなもの。
事前に必要とするアイデアを、事後に出すような
「後出しジャンケン」に似ている。
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◆ 様態の前置詞 “in”(~のように)を加えた
“in hindsight“(後から考えると)
が基本表現。
副詞用法である。
“hindsight” 単独の場合と異なり、
ネガティブに偏ることなく、中立的な意味合い。
主な類似表現は、次の3つ。
- with the benefit of hindsight
- with the wisdom of hindsight
- with hindsight
※ 3 は縮約形
“hindsight” は、人生訓や評論で重宝される言葉。
「後知恵」から学ぶことは多いからだろう。
逆に言えば、その場で適切に判断するのは難しい。
<後から>なので、ことわざなどを除けば、
過去形が目立つ。
急速に移ろう日々の生活。
タイミングを逃すと、あっという間に後の祭。
有能な人が、適宜の処置に長けているのは、
この流れを知悉しているからだろう。
後知恵の多い人に信用を置けない。
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◆ 次のことわざも押さえておくとよい。
“Hindsight is 20/20.“
(事後なら何とでも言える。)(後悔先に立たず。)
“20/20″=”twenty twenty” と読む。
正常視力1.0と同等。「よく見える」ことの比喩。
“It’s always easy to be smart in hindsight.”
(後出しジャンケンなら、常にうまくいく。)
“Hindsight is easy to preach if you were not there.”
(後からなら、偉そうなことは何とでも言える。)
“In hindsight, I was so immature.”
(後から考えると、私はとても未熟だった。)
“In hindsight, I misjudged the situation.”
(今から振り返ると、私は状況判断を間違った。)
“I know it looks self-explanatory in hindsight.”
(後知恵なら、それは自明に見えるけどね。)
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【類似表現】
- “wise after the event”
(下衆の後知恵)
– - “It’s easy to be wise after the event.”
“Fools are wise after the event.”
(愚者の後知恵)