ぶったまげる、ひどく驚く
XX blew my mind !
(XXにはぶったまげたよ!)
尋常ならざる興奮を相手に伝える表現。
“blew” は “blow” の過去形。
10~30代の若い男女が多用するが、
それ以上の年代が使ってもおかしくはない。
「ぶったまげる」も同様。
俗語または若者言葉に聞こえるが、
実はそうでない。
ぶったまげる(打っ魂消る)
「たまげる」を強めていう語。
ひどく驚く。
(広辞苑 第六版)
–
“blow somebody’s mind”
spoken: to make you feel very surprised
and excited by something.
(LDOCE6、ロングマン)
–
“blow your mind”
(informal)
to produce a very strong pleasant or
shocking feeling.
(OALD9、オックスフォード)
※ spoken = 話し言葉、口語体
※ informal = 非正式、くだけた言い方
通常ひらがなで書く「ぶったまげる」は、
漢字では「打っ魂消る」。
“blow one’s mind” と共通点があるのは、
中級学習者であれば、ご推察できるだろう。
これから2つを比較しつつ、見ていきたい。
–
◆ “blow” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
–
語源は、古英語「(風が)吹く」(blāwan)。
※ ボディブローの「強打」は、スペルも
発音も同じだが、語源が異なる別物。
語源は、中期英語「打つ」(blaw)。
語形変化は、blow-blew-blown。
「ぶったまげた」こと、つまり過去に起きた
ことを描写する場面が多いため、
過去形 “blew” が多用される。
- 自動詞「(風が・息を)吹く」「(物が)吹かれる」
「(警笛を)鳴らす」「パンクする」 - 他動詞「(風が)吹き飛ばす」「(息を)吹き付ける」
- 名詞「鼻をかむこと」「吹奏」「一吹き」
ここでは、他動詞「吹き飛ばす」。
LDOCE6によれば、動詞 “blow” は、
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:<1001~2000語以内>
【発音】blóu
◆ “mind” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
–
語源は、中期英語「記憶」(mynd)。
【発音】máind
ここでは名詞「精神」「心」で、語源を引き継ぐ。
名詞は、可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
- “mind” 理性・知性の宿る心
- “soul” 魂の宿る心
最頻出かつ最重要な英単語のひとつで、
名詞 “mind” は口語・文面ともに、
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
いずれも最上位に位置する。
(LDOCE6 の頻出度表記より)
“blow one’s mind” の “mind” は、
上述のように「理性・知性の宿る心」。
どこか抽象的でつかみどころがないのは、
性質的なもので、日本語でもそうだろう。
ひと言で言えば、「理性」または「心」。
【参照】”right mind“(正気、まとも)
ー
◆ “one’s“(または somebody’s)の部分には所有格。
ー
大半は人称代名詞の所有格、
his / her / my / our / their / your
のいずれかを入れる。
表題では、会話の流れから “my” と “your”
が多用される。
ー
◆ 以上より、”blow one’s mind” は、
- 他動詞 blow「吹き飛ばす」
- 所有格 one’s 「誰々の」
- 名詞 mind「理性」または「心」
驚きなどで<理性・心がぶっ飛ぶ>様子
直訳は「誰々の理性(心)を吹き飛ばす」。
「打っ魂消る(ぶったまげ~)」イメージ。
「ぶったまげ~」もそうだが、
“blow one’s mind” の用途は幅広い。
文脈上、良くも悪くも使える。 禍福は問わないということ。
ー
< 禍(misfortunes)>
- “It was so terrible. It nearly blew my mind.”
(それはあまりにひどく、理性を吹き飛ばしそうだった。)
→ ひどすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
– - “She blew her mind on drugs.”
(彼女は薬物で理性を吹き飛ばした。)
→ 薬物で正気を失った。
– - “The movie was just awful, it blew my mind.”
(その映画はもう最悪で、ぶったまげた。)
– - “This bad news will blow his mind.”
(この悪い知らせは、彼をとても驚かせるだろう。)
ー
< 福(fortunes)>
- “It was so fun. It nearly blew my mind.”
(それはあまりに楽しく、理性を吹き飛ばしそうだった。)
→ 楽しすぎて、頭がおかしくなりそうだった。
– - “His intelligence blew my mind.”
(彼の知性に心を吹き飛ばされた。)
→ 知性に驚愕した。
– - “His dazzling good looks blew her mind.”
(彼の見事な男ぶりに彼女は驚いた。)
– - “I heard him sing and it blew my mind.”
(彼の歌を聞いて、ぶったまげ~。)
ー
定訳はないので、和訳時は文脈を読み取りつつ、
慎重に行う。
先述の通り「ぶったまげる」同様、ネガポジ両用なので、
まずはどちらの意味合いかを識別するとよい。
例文に1つ挙げたが、薬物関係にもよく出てくる。
“blow one’s mind” =「その人の正気を奪う」
この用途では、”slang” 扱いする辞書もあるものの、
基本的には下品さはない。
ー
◆ なお、ハイフンを用いた複合形容詞もある
(compound adjective)。
“mind-blowing“
informal : very exciting, shocking or strange.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
「ひどく興奮させる、驚かせる、不思議な」の意。
<理性を吹き飛ばす>感じが共通し、意味合いは重なる。
ー
初出は、1967年。
- “It was a mind-blowing challenge.”
(とても興奮する挑戦だった。)
– - “Her performance was positively mind-blowing.”
(彼女の演技は、良い意味で驚きだった。)
【関連表現】
“blow out of proportion”
https://mickeyweb.info/archives/26987
(大げさに言う、大げさに騒ぐ)