Well-established
2024/08/25
確立した、 定評のある
「 確立した 」「 定評のある 」が定訳。
官公庁の公式文書から堅めのニュース・評論、
さらに企業紹介・人物プロフィールまで、
ありとあらゆる文書に起用される。
組織や製品・サービスであれば、長い歴史に基づく
高い認知度と人気、さらに折り紙つきの品々を長年
提供できる確かな技術力と資力。
「 老舗 ( しにせ ) 」 が典型。
–
確立
しっかりとうち立てること。
たしかに定まって動かないこと。
定評
多くの人がそうだと認めている評判または評価。
老舗
1. 先祖代々の業を守りつぐこと。
2. 先祖代々から続いて繁盛している店。
またそれによって得た顧客の信用・愛顧。
( 広辞苑 第七版 )
※ 下線は引用者
–
人物であれば、見事な実績に裏打ちされた華々しい
経歴と個性的なキャラなど、とかく世間の関心を
引き寄せる立派なキャリア。
揺るぎない評判と不動の地位を称える上で欠かせない
表現が ” well-established ” である。
ちょっとやそっとでは参らない、どっしり安定した印象
を与えるため、 受け手に安心感を与える効果 がある。
–
” well-established ”
something that is well-established has
existed for a long time and is respected
or trusted by people.
( LODCE6、 ロングマン )
【発音】 wel ɪˈstæb.lɪʃt
【音節】 well-es-tab-lished (4音節)
※ 下線は引用者
–
「 久しく存在し 」 かつ 「 人々に尊敬または信頼され 」
と下線部にある。
つまり、両方の美点を兼ね備える必要がある。
イメージは、 先の広辞苑の 「 老舗 」 と重なる。
組織であれ、人であれ、定評を築くことに成功した
対象を描写するには、 ぴったりの形容詞。
この用途では、” well-established ” 自体が 「 確立した 」
表現に他ならない。
つまり、決まり表現である。
実際、 数ある 「 複合形容詞 」( compound adjective )
のうち、 重要なもののひとつである。
2語以上の語が他の語を修飾する場合、
「 ハイフネートの原則 」に従って、
その2語以上の語をハイフンで結ぶ。
これを 「 複合修飾語 」( compound modifier )と呼ぶ。
特に、修飾される語が名詞の場合が、 先ほどの「 複合形容詞 」。
私たちは英語学習者であるから、 ハイフンの基礎知識 を
押さえておきたい。
【発音】 háifn
【音節】 hy-phen (2音節)
–
◇ 形容詞 ” well-established “
- 重要度 : <6001~9000語以内>
- 書き言葉の頻出度 : 3000語圏外
- 話し言葉の頻出度 : 3000語圏外
( LDOCE6 の表記より )
【発音】 wel ɪˈstæb.lɪʃt
【音節】 well-es-tab-lished (4音節)
–
一見、大したことのない位置づけに思える。
けれども、 英単語全体から見た重要度であり、
複合形容詞がランクインすること自体が珍しい。
2018年10月までに、弊サイトで取り上げてきた
複合形容詞(※)のうち、 ” LDOCE6 ” の重要度の指標に
ランクインしているのは、” so-called “ のみである。
–
【例】
laid-back、 unheard-of、 fill
self-explanatory、 worst-case、 wake-up、
long-overdue、 well-done、 so-called、 go-to、
unhea
shell-shocked、 self-inflicted、 hassle-free
–
※ 上記は、複合名詞 ( compound noun ) 兼用も含む
–
◇ 形容詞 ” so-called “
- 重要度 :<3001~6000語以内>
- 書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
- 話し言葉の頻出度:3000語圏外
( LDOCE6 の表記より )
【発音】 sóukɔ́ːld
【音節】 so-called (2音節)
–
重要度・頻出度ともに、 ” so-called ” に劣る。
使用場面が異なるため、 比較は参考程度だろう。
–
◇ ” well-established ” の 4ポイント
- 定訳 「 確立した 」 「 定評のある 」
- 称賛 の常套表現
- 重要な 複合形容詞
- ” well ” は 連結形 ( 接頭辞でない )
–
◆ 上掲の LDOCE6 と広辞苑の 下線部から明らか
なのは、 ほとんど 最高級の褒め言葉 に値すること。
大した実績のない対象には不似合いである。
” well-established ” が複合形容詞であることは
既に述べたが、成り立ちはこうなる。
初出は、1709年。
–
◇ 複合形容詞 ” well-established “
- 連結形 ” well- ” ( 十分に、よく )
- 形容詞 ” established ” ( 確立した )
–
ここから分かることは、 形容詞 ” established “
自体が「 確立した 」を意味する 点である。
これは、 他動詞 ” established ” の過去分詞が
そのまま形容詞となったもの。
英文法的には、「 過去分詞の形容詞化 」 と称する。
” establish ” には、 他動詞と自動詞がある。
自動詞はマイナー用法で、 ほとんど他動詞。
- 他動詞 「 設立する 」 「 確定する 」 「 確立する 」
- 自動詞 「 定着する 」
語源は、 中期フランス語 「 強固にする 」( establir )。
成り立ちから、 盤石なイメージが一貫する。
すなわち、 長い歴史と強い勢力を基盤している。
この名詞化が ” establishment ” ( 可算・不可算兼用 )。
日本語の評論にも出てくるので、 触れておきたい。
–
エスタブリッシュメント 【establishment】
既成勢力。 国家・市民社会のさまざまな次元で意志決定
や政策形成に影響力を及ぼす既成の機構・組織・体制・
秩序など。
( 広辞苑 第七版 )
※ 「 意思決定 」の方が一般的だろう
–
形容詞 ” well-established ” の成り立ちに話を戻す。
” established ” は、 他動詞 ” establish ” の過去分詞
が形容詞となったもの。
意味は 「 確立した 」。
–
◆ 一方、 これに伴う ” well ” は、 連結形( combining form )。
接頭辞( prefix )でないので要注意。
独立した副詞・形容詞 “ well ” から生じた点で、
単独使用できない 「 接頭辞 」 と異なる。
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■ 「 接頭辞 」 prefix
単語の 意味を変えたり、広げたりする。
【例】 ” un ” ( 否定する )
■ 「 連結形 」 combining form
組み合わせて 新しい用語を作りだす。
技術・科学・医学など、 理系の専門分野で重宝される
【例】 ” self “( 自ら )
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この2つを混同して説明する日本の参考書は少なくない。
普段はそう意識しなくてもよいとはいえ、 英文法上、
「 連結形 」 と 「 接頭辞 」 ( prefix ) は区別すべきものである。
「 連結形 」 と 「 接尾辞 」 ( suffix ) も混同されがち。
例えば、
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『 NHK やさしいビジネス英語実用フレーズ辞典 』 p.276.杉田 敏 (編集)、 NHK出版、 2003年刊
■ 四六判 1,216頁 → 自炊後 311MB ( OCR済み )
<出版社HP> <アマゾン> <楽天>※ 下線は引用者
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” -driven ” は、 過去分詞の形容詞化からの連結形 ( combining form )。
【発音】 drívn
【音節】 driv-en (2音節)
上図の下線部 「 接尾語 」 は、 通常 「 接尾辞 」 ( suffix ) と同義だが、
ここは 「 接尾語 」 よりは、 「 連結形 」 の方が的確であると考える。
本書では、 「 連結形 」 と 「 接頭・ 接尾語 」 をごっちゃにしている。
「 混同して説明 」 しているが、 学者ではない実務家の著書にはよくある。
もっとも、 ” -driven ” を 「 接尾辞 」 ( suffix ) 扱いする辞書もある。
かの有名なケンブリッジもその一つ。
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https://dictionary.cambridge.org/dictionary/english/driven※ 下線は引用者
※ 2024年6月20日 アクセス–
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◆ 日常的に多用される複合形容詞を、15件挙げる。
- well-balanced ( バランスのとれた )
- well-behaved ( 行儀よい )
- well-done ( よく焼けた、よくできた )
- well-dressed ( 身なりのよい )
- well-educated ( 教養のある )
- well-fed ( 栄養十分な )
- well-founded ( 根拠の確実な )
- well-informed ( 精通している )
- well-intentioned ( 善意の )
- well-kept ( 隠し通された、 手入れされた )
- well-known ( 有名な )
- well-liked ( 人に好かれている、 人気がある )
- well-meant ( 善意の )
- well-off ( 裕福な )
- well-paid ( 給料のよい )
◆ 連結形 ” well “( 十分に )を加えて、
「 十分に確立した 」を意味する ” well-established “。
” established ” のみでも「 確立する 」であり、 それを
さらに強調した形容詞なので、 程度が図り知れるだろう。
繰り返すと、 相当高いレベルを表すため、
大した実績のない対象には不似合い である。
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適度な運動
- “It is now well-established that moderate
exercise is good for our health.”
(適度な運動が、健康によい点は今では確立されている。)
※ 副詞的用法として、ハイフンなしの表記もある
– - “It’s well-established that adequate sleep is imperative.”
(十分な睡眠が不可欠だということは、確立されている。)
※ 副詞的用法として、ハイフンなしの表記もある
– - “This is a well-established economic theory.”
(これは確立した経済理論です。)
– - “She works for a well-established company.”
(彼女はある老舗会社で働いている。)
– - “I talked with a well-established figure yesterday.”
(昨日、ある著名人と話したの。)
※ “figure” = 人物
– - “He has a well-established career.”
(彼は確立したキャリアを持っている。)
– - “I usually buy well-established products.”
(普段は定評のある商品を買います。)
– - “It’s been well-established that he often
acted like a bully.”
(彼がしばしばいじめっ子のように振る舞って
いたことはよく知られている。)
– - “We stayed at a well-established hotel.”
(ある老舗ホテルに泊まったの。)
– - “This school has a well-established tradition of
providing scholarships to students from overseas.”
(この学校には、留学生に奨学金を提供するという
確立した伝統があるのです。)
– - “Meditation is a well-established method for stress reduction.”
(瞑想は、ストレス軽減のための確立した手法です。)