おそらく ~ だろう
「おそらく~だろう」
「多分~だろう」
と言いたい時に多用される<2語ワンセット>
の決まり文句。
口頭が目立つが、文面でも問題ない。
ポジティブな響きを帯びる “chances” に
be動詞 “are” をつけたシンプル構造。
–
◆ 摩擦音の “ch” から始まるため、言葉に勢いが出て、
言い出しには打ってつけ。
語勢が強いと、他者の注意を引く効果が高まる。
1990年代、「ちゃんと、ちゃんとの味の素」
のCMが話題となった。
当時のコーポレートスローガンをそのまま
織り込んだ、印象的なキャッチコピー。
日本語の「ちゃ」は 破擦音 だが、 “ch” の特長
は共通しており、それを活かした例と考えられる。
「破擦音(はさつおん)」とは、破裂音と摩擦音
の両方を持ち合わせ、破裂音の直後に摩擦音が来る。
–
◆ “chances” は、名詞 “chance” の複数形。
“chance” には、名詞・形容詞・自動詞・他動詞がある。
【発音】 tʃǽns (1音節)
平板で、均一なリズムの日本語では、
3音節の「 チャ – ン – ス 」。
ところが、英語では「1音節(one syllable)」。
腹の底から ゲロする 迫力で、一息に発声する。
チヤンスッ
「チャ」よりは「チヤ」と聞こえたりする。
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
単複で音節数が変わらない英単語もあるが、
複数形 “chances” では、2音節に増える。
チヤン セス
–
◆ 語源は、ラテン語「出来事」(cadentia)。
「チャンス」とは、「機会」「好機」(広辞苑 第七版)。
英語でも、この2つが基本。
同義語は “opportunity“。
肯定文の場合、”chance” の方が偶然性が強い。
つまり、「偶然または運よく起こる」様子。
– 名詞「機会」「好機」「偶然」「可能性」
– 形容詞「偶然の」
– 自動詞「偶然~が起こる」
– 他動詞「思い切ってやってみる」
–
◆ このうち、圧倒的に使われるのは名詞。
可算名詞と不可算名詞を兼ねる。
◇ 名詞 “chance” は、最頻出かつ最重要 の英単語
全3項目すべて最高ランク。
- 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
- 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
- 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
表題でも名詞で、「可能性」の意味合い。
直訳は「可能性は~である」。
「~という可能性である」と換言でき、
転じて、「おそらく~だろう」。
「可能性」の名詞 “chance” は、可算・不可算兼用。
“Chances are – ” では、可算名詞の複数形。
- “A chance is – ”
(ある可能性は~である)
– - “The chance is – “
(その可能性は~である)
では、意味合いが違ってくる。
このフレーズは、複数が通例となる。
複数形に定冠詞をつけた “The chances are – ” も同義扱い。
こちらは<3語ワンセット>。
次の通り、CALDでは カッコ入りの “the”
を加えて項目立てしている。
“(the) chances are”
informal
it is likely.
(ケンブリッジ、CALD4)
“Chances are”
it is likely that.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
“likely” には、形容詞と副詞があるが、
ここでは形容詞「ありそうな」「起こりそうな」。
「絶対確実とはいえないが、起こりうる」レベル。
蓋然性(がいぜんせい)を示す一般語が “likely”、
すなわち “chances are” である。
「蓋然」
おそらくそうであろうと思われるさま。
(広辞苑 第七版)
したがって、”it is likely that – ” は、
「~はありそうである」「~は起こりそうである」。
まとめると、
“chances are“
- おそらく~だろう
- 多分~だろう
- ~はありそうである
- ~は起こりそうである
“are” 以降に続く内容に合わせて、和訳を当てはめる。
–
◆ 文法上は、be動詞 “are” の直後に従属接続詞 “that”(that節)
を置くのが原則となる。
だが、実際の使用では、“that” を省略することが多い。
以下の例文では、カッコに入れて示したが、いずれも
削って問題ない。
- “Chances are (that) she will be late again.”
(おそらく彼女はまた遅刻するだろう。)
–
- “Chances are (that) he has heard the news already.”
(おそらく彼は既にその知らせを聞いているだろう。)
– - “Chances are (that) he has left there by now.”
(おそらく彼は既にそこを去っているだろう。)
–
- “Chances are (that) she will leave me soon.”
(おそらく彼女は僕を振るだろう。)
–
◆ “chances” が「好機」「機会」なら、こんな感じ。
- “Chances are increasing.”
(機会が増えている。)
(好機が増えている。)
(可能性が増えている。)
– - “Chances are slim.”
(機会は少ない。)
(好機は少ない。)
(可能性は低い。)
【関連表現】
“when you get a chance”
https://mickeyweb.info/archives/132
(ご都合の良い時に)
“Take a chance.”
https://mickeyweb.info/archives/3329
(一か八かやってみなさい。)
“have a fat chance”
“have no chance”
(可能性なし)(見込みなし)