プロ翻訳者の単語帳

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Integrity

      2020/09/25

(1)  誠実、高潔     (2)  完全性

産学官軍を問わず、アメリカのリーダー
の演説に付き物なのが “integrity”。

【発音】   intégrəti
【音節】   in-teg-ri-ty  (4音節)

語源は、中世フランス語(intégrité)または
ラテン語(integritatem)の「 完全 」。

初出は14世紀。

これから見ていくように、そこそこ重要なものの、
とにかく訳しにくい。

和訳が難しい単語の代表格である。

翻訳者として、毎度もどかしく感じている。


◆  “integrity” は名詞のみで、基本的意味は冒頭の2つ。

  頻出なのは  (1) 誠実、高潔 

よって、本稿では(1) 中心に取り上げる。

(1)  誠実、高潔

The quality of being honest and strong
about what you believe to be right.
(ロングマン、LDOCE6)

理想の人格や心構えを示す際に使われる。

  心が清くて、後ろ暗いところがない。

“integrity” は、アメリカ人リーダーの大好きな言葉。
そんな印象が強い。

それを端的に表す表現がこちら。

  • a man of integrity
    (清廉潔白な人物)

英和辞典に欠かせない言い回し。

と並び、人品骨柄への最大級の賛辞に起用される。

“integrity” は、不可算名詞。

“a man of integrity” の “a” は、
可算名詞 “man” についたもの。

格言・成句・ことわざに使われる “man” で、
男女不問の不特定な「人」。


◆  人の性格や態度を言葉で表現するのは容易でない。

いずれも無形ゆえ、不可視的で抽象的。
イメージばかりが先行し、つかみどころがないのだ。

ポジティブな言葉で飾り立てると、眉唾物になりがち。

白黒つけがたいことだらけの、厳しい現実を生きる人々
にとって、自ずと疑いが生じやすくなるからであろう。

とりわけ人格面は、斜に構えた見方をする大人が少なくない。


◆  にもかかわらず、アメリカの指導者たちは、
事も無げに “integrity” を多用する。

東西文化の違いなのだろうか。

孔子一門いわく「水清ければ魚棲まず」。

人格が清廉すぎると、人に親しまれなくなってしまう。

おまけに、受け手の嫉妬・ひがみを刺激しないよう、
細心の配慮を要するのが日本社会。

称賛しあうような色合いに乏しい文化だからである。

【参照】  “stand tall“、  “well-liked

そのため、和訳は難しい。

反発を遠ざけ、美点を汲み上げて訳出
するのに難儀する。

この辺りは、語学力以外に「異文化理解力」も問われる。

だが結局、定訳をそのまま使ってしまう のが、私の常。

歯がゆく、もどかしい理由はここにある。

◆  長年、新聞・雑誌・ウェブ記事における
“integrity” の和訳に注目してきた。

“integrity”  頻出和訳  <トップ6
 (1990〜2019年)
※  私見

  1.  誠実
  2.  高潔
  3.  品位
  4.  真摯
  5.  清廉潔白
  6.  公正

直近5年(2015~2019年)は、
「誠実」と「真摯」が目立ってきている。

しっくりこない気もするが、大概この6つに収まる。

  • “professional integrity
    (仕事上の誠実さ → 意訳:高いプロ意識)

  • “personal integrity
    (個人の誠実さ ← 人としての品性)
  • “moral integrity
    (道義面の誠実さ ← 善悪基準などがまとも)
  • “We have to behave with integrity.”
    (私たちは公正に行動しなければならない。)
  • “I expect every employee to act with integrity.”
    (各従業員には誠実に行動することを期待する。)
  • “You are the only custodian of your own integrity.”
    (自分の品位を管理できるのは自分自身のみ。)
  • “I never doubted his integrity.”
    (彼の品位を疑ったことはありません。)

【類似表現】

“Do the right thing.”
https://mickeyweb.info/archives/1552
(正しいことをする。)

“Honest with – ”
https://mickeyweb.info/archives/472
(〜に対して正直である)


◆  LDOCE6(ロングマン)の指標によると、
名詞 “integrity” の位置づけは、

  • 重要度:<6001~9000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】   intégrəti
【音節】   in-teg-ri-ty  (4音節)

“integrity” の意味合いからして、日々出番が
生じるはずはない。

したがって、頻出度がランク外であることに
不思議はない。

一方、重要度は<6001~9000語以内>にランクイン。

上掲の指標は、英単語全体における立ち位置なので、
先の「そこそこ重要」たる所以になると考える。

加えて、<Academic Word List>(※)入りしている。
※  英語圏の大学教科書の頻出単語570語

演説では「キーワード」となったりする。

ーー

(2)  完全性

formal: the state of being united as
one complete thing.

(ロングマン、LDOCE6)

※  “formal” = 正式な表現、堅めの表現

全体的に欠けてるものがなく、ぴしっと整っている具合。

システム構築をはじめとする、
技術分野に使われることが多い。

データの正確性の維持を目指す「情報セキュリティ」
では、情報が改ざんされていない状態を指す。

保全性 ともいう。

ソフトウェアなどの「 整合性 」を意味する
「インテグリティ」は、 IT業界 で定着済み。

◆  英語では「4音節」。

intégrəti

in – teg – ri – ty  
イン – グ – リ – ティ
1 2 3 4 音節

第2音節に、アクセント(強勢)を置く。

音節(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。

◆  片や、日本語では「6音節」。

平板で、均一なリズムが、日本語の持ち味

ティ
12 3 45 6 音節

初っ端の第1音節「イ」にアクセントが来る感じ。

アクセントも音節も異なるカタカナ発音では、
英語母語話者(ネイティブ)には、まず通じない語。

◇  日本語母語話者が、英語を学ぶ上で、一段と留意
  する必要があるのは、音節 (syllable、シラブル)

音節がおかしいと、まったく通じないケースが多々ある。

時に、発音(pronunciation)以上に大事だったりする。

日本語の場合、原則として「仮名一字が1音節」。

日頃、音節を意識する機会はなきに等しい。


◆  弊サイトで取り上げた単語のうち、日英の音節
の差異が著しい4語を例示してみる。

■  strike  stráik /

【日】  5音節 「 –
【英】  1音節

ストライクッ

「ライ」を強調。

https://mickeyweb.info/archives/11891

■  spike  / spáik /  

【日】  4音節 「 –  –  – 
【英】  1音節

パイ

「パイ」を強調。

https://mickeyweb.info/archives/38396

 

■  trump  / trʌmp /  

【日】  4音節 「 –  –  – 
【英】  1音節

米国の第45代大統領の姓 “Trump” も同様。

https://mickeyweb.info/archives/3272

 

■  ink íŋk  /

【日】  3音節 「 –  – 
【英】  1音節

イン

https://mickeyweb.info/archives/6217

 

4語すべて「1音節」(one-syllable) 。

どれも、腹の底から ゲロする 勢いで、
思いっきり吐き出し、一息に発声する。

 


◆  (1)  誠実、高潔  異なり、(2)  完全性 の場合、
人格の描写に使われる場面を、ほとんど見かけない模様。

(1)  誠実、高潔 

The quality of being honest and strong
about what you believe to be right.
(ロングマン、LDOCE6)

(2)  完全性

formal: the state of being united as
one complete thing.

(ロングマン、LDOCE6)

※  “formal” = 正式な表現、堅めの表現

全体的に欠けてるものがなく、ぴしっと整っている具合。

主な類義の不可算名詞は、
completeness“、”unity“、”solidarity“。

  • “the integrity of the nation”
    (国家としての統一性)
  • “data integrity
    (データの完全性)  (データの整合性)
  • “the territorial integrity of the country”
    (領土の保全)   ※  定訳
  • “skin integrity
    皮膚統合性)   ※  定訳

    → 「皮膚統合性障害(impaired skin integrity)」
    をもたらすのが「褥瘡(床ずれ)」などの皮膚損傷

    ・  “impaired”(~に障害のある)… 形容詞
    【発音】  ɪmˈperd
    【音節】  im-paired  (2音節)

 

 

 

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