プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Integrity

      2021/05/12

(1)   誠実、  高潔       (2)   完全性

産学官軍を問わず、アメリカのリーダー
の演説に付いて回るのが、” integrity “。

【発音】   intégrəti
【音節】   in-teg-ri-ty  (4音節)

語源は、中世フランス語( intégrité )または
ラテン語( integritatem ) の 「  完全  」。

初出は14世紀。

これから見ていくように、そこそこ重要なものの、
とにかく訳しにくい。

和訳が難しい、英単語の代表格である。

翻訳者として、毎度もどかしく感じている。


◆  ” integrity ” は  名詞のみ  で、基本的意味は冒頭の2つ。

  一般社会で、より頻出なのは  (1)  誠実、高潔 

よって、本稿では(1) 中心に取り上げる。

(1)   誠実、高潔

The quality of being honest and strong
about what you believe to be right.

( ロングマン、LDOCE6 )

理想の人格や心構えを示す際に使われる。

  心が清くて、後ろ暗いところがない。

“integrity” は、アメリカ人リーダーの大好きな言葉。

そんな印象が強い。

それを端的に表す表現がこちら。

  • a man of integrity
    ( 清廉潔白な人物 )

英和辞典に欠かせない言い回し。

ともに、人品骨柄への最大級の賛辞に起用される。

“integrity” は、不可算名詞。

“a man of integrity” の “a” は、
可算名詞 “man” についたもの。

格言・成句・ことわざに使われる “man” で、
男女不問の不特定な「人」。


◆  人の性格や態度を、言葉で表現するのは容易でない。

いずれも無形ゆえ、不可視的で抽象的。
イメージばかりが先行し、つかみどころがないのだ。

ポジティブな言葉で飾り立てると、眉唾物になりがち。

白黒つけがたいことだらけの、厳しい現実を生きる人々
にとって、自ずと疑いが生じやすくなるからであろう。

とりわけ人格面は、斜に構えた見方をする大人が少なくない。


◆  にもかかわらず、アメリカの指導者たちは、
事も無げに  ” integrity ”  を多用する。

東西文化の違いなのだろうか。

孔子一門いわく 「 水清ければ魚棲まず 」。

人格が清廉すぎると、人に親しまれなくなってしまう。

おまけに、受け手の嫉妬・ひがみを刺激しないよう、
細心の配慮を要するのが日本社会。

称賛しあうような色合いに乏しい文化であるから。

【参照】
stand tall “、 ” well-liked “、 ” dazzling “、 ” against all odds

そのため、和訳は難しい。

反発を遠ざけ、美点を汲み上げて訳出
するのに難儀する。

この辺りは、語学力以外に「 異文化理解力 」も問われる。

結局、定訳をそのまま使う のが、私の常。

歯がゆく、もどかしい理由はここにある。

◆  長年、新聞・雑誌・ウェブ記事における
” integrity ” の和訳に注目してきた。

  ” integrity ”  頻出和訳  < トップ6 > 
 ( 1990 – 2020年 )     ※  私見

  1.  誠実
  2.  高潔
  3.  品位
  4.  真摯
  5.  清廉潔白
  6.  公正

◇  名詞をつくる接尾辞 「 ~ さ 」 及び
~ 性 」などの接尾辞的な語を加えた形も含む


◆  直近5年( 2016-2020年 )は、
「 誠実 」 と 「 真摯 」 が目立ってきている。

しっくりこない気もするが、これら6つに大概収まる。

  • “professional integrity
    (仕事上の誠実さ  →  意訳 : 高いプロ意識)

  • “personal integrity
    (個人の誠実さ  ←  人としての品性)
  • “moral integrity
    (道義面の誠実さ  ←  善悪基準などがまとも)
  • “We have to behave with integrity.”
    (私たちは公正に行動しなければならない。)
  • “I expect every employee to act with integrity.”
    (各従業員には誠実に行動することを期待する。)
  • “You are the only custodian of your own integrity.”
    (自分の品位を管理できるのは自分自身のみ。)
  • “People are raising questions about her integrity.”
    (彼女の人間性について、人々は疑問を投げかけている。)
  • “I never doubted his integrity.”
    (彼の品位を疑ったことはありません。)


◆  「経営学の父」 ピーター・F・ドラッカー (1909-2005) の
数ある作品中の “integrity” で、定訳扱いされているのは「真摯さ」。

主要著作の和訳を長年担当された、上田 惇生 (1938-2019)が、
「真摯さ」と和訳している。

世界で一番読まれた経営学書は、言わずと知れた『 マネジメント 』。

英文原著の発売は、1973年。

They may forgive a person for a great deal:
incompetence, ignorance, insecurity, or bad manners.
But they will not forgive a lack of  integrity  in that person.

Management: Tasks, Responsibilities, Practices
Harper Business  (Reprint ed. 1993).

※  原著初版は、1973年刊


無知や無能、態度の悪さや頼りなさには、寛大たりうる。
だが、 の欠如は許さない。

[エッセンシャル版]  マネジメント – 基本と原則  』 
上田 惇生 (翻訳) 、ダイヤモンド社、 2001年刊

マネジャーに絶対不可欠な素質は、 ” integrity ”  =  「 真摯さ 」。

integrity in leadership ” であり、「 真摯さ なくして組織なし 」。

有名なくだりである。

直前の一文も、相当怖い。

The people with whom a person works, and especially subordinates,
know in a few weeks whether he or she has  integrity  or not.

ともに働く者、特に部下に対しては、真摯 であるかどうかは
二、三週間でわかる。

(同上)


◆  奈良大学の教授が書いた、次の和文論文も興味深い。

300万部超えのベストセラー『 もしドラ 』と併せて、
キーワードの「 真摯さ(Integrity)」を解明している。

2020年発表。

領内 修 (2020)「 『 もしドラ 』の Integrity  」、
『奈良大学紀要』 48、p.75-97、2020-02

http://repo.nara-u.ac.jp/modules/xoonips/download.php
/AN00181569-202002-1006.pdf?file_id=7400

※  PDF 全24頁、1.5MB

読みどころは、「 Ⅲ  Integrity 」 解説 (83~86頁)。



◆  LDOCE6( ロングマン )の指標によると、
名詞 ” integrity ” の位置づけは、

  •  重要度:<6001~9000語以内>
  •  書き言葉の頻出度:3000語圏外
  •  話し言葉の頻出度:3000語圏外

【発音】   intégrəti
【音節】   in-teg-ri-ty  (4音節)

“integrity” の意味合いからして、日々出番が生じるはずはない。

したがって、頻出度がランク外であることに不思議はない。

一方、重要度は < 6001~9000語以内 > にランクイン。

上掲の指標は、英単語全体における立ち位置なので、
先の「 そこそこ重要 」たる所以になると考える。

加えて、< Academic Word List >(※)入りしている。

※  英語圏の大学教科書の頻出単語570語

演説では、キーワードになったりする。

ーー

(2)   完全性

formal: the state of being united as
one complete thing.

( ロングマン、LDOCE6 )

※  ” formal ”  =  正式な表現、堅めの表現

全体的に欠けてるものがなく、ぴしっと整っている具合。

システム構築をはじめとする、技術分野に使われることが多い。

JIS・ISOの工業規格やIT(情報技術)の分野では当たり前
でも、世間一般では今ひとつ馴染みのない日本語であろう。

ISO/IEC 27001( 情報セキュリティマネジメントシステム )
の3大要素( 機密性 ・完全性 ・可用性 )の一つでもある。

対応する 日本工業規格(JIS)を引用すると、

2.33  情報セキュリティ(information security)
情報の機密性(2.12),完全性(2.40)及び可用性(2.9)を維持すること。

2.40  完全性 (integrity)
正確さ及び完全さの特性。

JIS Q27000:2014
情報技術−セキュリティ技術
−情報セキュリティマネジメントシステム−用語
https://kikakurui.com/q/Q27000-2014-01.html


英文の ” ISO/IEC 27001:2013 ” に当てはめると、

  •  機密性 (Confidentiality)
  •  完全性 (Integrity)
  •  可用性 (Availability)

定義上の「完全性」とは、情報が 正確かつ完全 な状態を指す。

「完全性」が保たれていないと、情報としての信頼性を欠く。

この対策の一例は、情報の ダブルチェック を義務づけること。

近年のビジネスでは、デジタル署名や電子署名 などの導入により、
改ざん・虚偽のデータ作成を予防し、「完全性」を維持している。

保全性 ともいう。

ソフトウェアなどの「 整合性 」を意味する
「インテグリティ」は、 IT業界 で定着済み。

◆  2019年発行の国語辞典では、

インテグリティ  [integrity]

完全な状態。   統一(性)。

大辞林 第四版 』  ( アプリ版
松村 明(編集)三省堂、  2019年刊
<三省堂HP>

これが、語釈全文である。

 

◆  2020年発行の「カタカナ語辞典」では、

インテグリティー  [integrity]

完全。  不可欠性。  統一(性)。

コンサイス  カタカナ語辞典  第5版
三省堂編修所(編集)三省堂、  2020年刊
<三省堂HP>

同じく、語釈全文。

この「第5版」は、2020年9月10日に発行された。

それから、ちょうど26年前の1994年9月10日に発行
された「初版」の全文はこちら。

インテグリティー  [integrity]

完全。  不可欠性。

『 コンサイス カタカナ語辞典  初版 』
三省堂編修所(編集)三省堂、  1994年刊


「   統一(性) 」 がない。

◆  英語では「 4音節 」。

intégrəti

in – teg – ri – ty  
イン – グ – リ – ティ
1 –  2 3 4  音節

第2音節に、アクセント( 強勢を置く。

音節( syllable、シラブル )とは、発音の最小単位

◆  片や、日本語では「 6音節 」。

平板で、均一なリズムが、日本語の持ち味

ティ
1 2   3 5 6   音節

初っ端の第1音節「イ」にアクセントが来る感じ。
第4音節「グ」に置く人もいるかもしれない。

アクセントは、言語体系によって、大きく二分される。

音の強弱か高低かで、「 強弱 アクセント 」 または 「 高低 アクセント 」。

英語は強弱、 日本語は高低。   ドイツ語は強弱、 中国語は高低。

  •  英  ←  音の 強弱 による、
    「 強さアクセント 」  =  「 強弱アクセント 」
  •  日  ←  音の 高低 による、
    「 高さアクセント 」  =  「 高低アクセント 」

アクセントも、音節も、異なる「 カタカナ発音 」( 後述 )
では、英語母語話者(ネイティブ)には、まず通じないのが、
integrity ” 。

◇  日本語母語話者が、英語を学ぶ上で、一段と留意
  する必要があるのは、音節 ( syllable、シラブル )


◆  「 音節 」がおかしいと、通じないケースが多々ある。

私たち日本人は、やたらと「 発音( pronunciation ) 」
のせいにしがちだが、

 ★★★ 「 音節 」も 大きな課題  ★★★ 

実際のところ、発音以上に影響することすら珍しくない。

日本語の場合、原則として「 仮名一字が1音節 」。

日頃、音節を意識する機会はなきに等しい。

日本の英語教育は、「 音節 」をもっと重視するとよい

本質的に、「 音節 」は 「 発音 」 と一緒に学ぶべきもの。

「 音節 」とは 「 発音の最小単位 」 だから、それが道理である。


◆  日本語の「 音節 」は、 「  拍( はく ) とも称する。

英語では  ” clap ” (1音節)。

拍手 」(可算名詞)と「 拍手する 」(動詞)の意味もある。

  •  「 1拍 」  →   a clap
  •  「 半拍 」  →   half of a clap
  •  「 1拍半 」  →   a clap and a half
  •  「 3拍 」  →   three claps

【参考】     ※  外部サイト

【 ご注意 】

ローマ字表記と音声記号表記は、別物。

いわゆる「発音記号」とは、音声記号のこと。

英語用として、大正時代以降の日本で有力視されて
きた音声記号は、以下3つ。

  •  言語不問の IPA  ( 国際音声記 )
  •  IPAの変異形のジョーンズ式 ( 音量表記 )
  •  IPAの変異形のギムソン式 ( 音質音量表記 )

音声記号は、角カッコ  [ ] で括るルールがあり、
ローマ字表記とは区別されている。

例えば、日本語の「う」 のローマ字表記は  “u”。
IPA記号では、通常は [ɯ] 、まれに [u] 。

  •  口を丸めない 「う」 …  [ɯ] ( 非円唇母音 ) ※  後述
  •  口を丸める 「う」 …  [u] ( 円唇母音 )

[ ]  の代わりに、スラッシュ  // で括る場合もある。

[ ]  は、最も正確な表音の「 精密表記 」。

本稿では、[ ] と // を併用している。

 

◆  弊サイトで取り上げた単語のうち、日英の音節の
差異が著しい「 12語 」を例示してみる。

■  strike  stráik / 1音節

【日】  5音節 「  –
【英】  1音節

ストライ

「ライ」を強調。

https://mickeyweb.info/archives/11891

■  spike  / spáik / 1音節

【日】  4音節 「  –  –  – 
【英】  1音節

パイ

破裂音[p]に力を込めて「パイ」。

https://mickeyweb.info/archives/38396

 

■  stand  / stǽnd / 1音節

【日】  4音節 「  –
【英】  1音節

タン

破裂音[ t ]で「タン」を強調。

https://mickeyweb.info/archives/40016

 

■  trump  / trʌmp / 1音節  

【日】  4音節 「  –  –  – 
【英】  1音節

第45代米国大統領  “Trump” も同様。

https://mickeyweb.info/archives/3272

 

■  blast  / blǽst / 1音節  

【日】  4音節 「  –  –
【英】  1音節

ブラ

表面処理の「エアブラスト」「ショットブラスト」「サンドブラスト」
がこれ。

https://mickeyweb.info/archives/7795

 

■  chance  / tʃǽns / 1音節

【日】  3音節 「 チャ –  – ス 
【英】  1音節

チヤ

複数形  “chances”  は「2音節」になる。

https://mickeyweb.info/archives/20490

■  thrill θríl / 1音節

【日】  3音節 「  – – ル 
【英】  1音節

スリッル

過去形・過去分詞形・形容詞の “thrilled” も「1音節」。

https://mickeyweb.info/archives/50437

 

■  slam  / slǽm / 1音節

【日】  3音節 「  – 
【英】  1音節

「スラム街」も「1音節」だが、別単語の “slum“。

https://mickeyweb.info/archives/14790

 

■  test  / tɛst / 1音節

【日】  3音節 「  –  
【英】  1音節

 テ

破裂音[ t ]が、殊に強調される感覚。

https://mickeyweb.info/archives/7468

 

■  time  / taɪm / 1音節

【日】  3音節 「  –  –  
【英】  1音節

 タイ

「ム」は消え入るようで、聞こえないくらい。

https://mickeyweb.info/archives/7468

 

■  help  / hélp / 1音節

【日】  3音節 「  –  
【英】  1音節

カタカナ発音でも、ぎりぎり通じるかも。

https://mickeyweb.info/archives/6691

 

■  ink íŋk / 1音節

【日】  3音節 「  –  – ク 
【英】  1音節

イン

同義扱いの 「イン」は、オランダ語 “inkt” より。

https://mickeyweb.info/archives/6217

 

◇  12語 すべて「 1音節 」(one syllable)  

どれも、腹の底から ゲロする 勢いで、
思いっきり吐き出し、一息に発声する。

発音の最小単位 」に切れ目がない
ため、一気にゲロするような迫力が出る。

◇  もし分からなければ、ペットに耳を傾けてみよう。

     (1音節)

      (1音節)

 ハムスター    (1音節)

 インコ    (1音節)

◆  日本語母語話者が、擬音語 ( オノマトペ、 onomatopoeia )
で表現すると、

    / 1音節

【日】  2音節 「  
【犬】  1音節

【参考動画】     ※  YouTube (10秒)
https://www.youtube.com/watch?v=UtT6EG9wjIQ

   / 1音節

【日】  2音節 「 ニャ  
【猫】  1音節

【参考動画】     ※  YouTube (40秒)
https://www.youtube.com/watch?v=Yie9Bgo69m8

 

鳴き声に乗せて、1音節のリズムをつかむとよい。

   / 1音節 

ワンコと合唱し、練習しましょう。


◆  身近な犬猫の鳴き声と、日本語表記の隔たりからも、先述

平板で、均一なリズムが、日本語の持ち味

をなんとなく体感できると思う。

聞く音声と表記のギャップこそ、我らが母語の特色の反映。

違和感めいた感触があれば、英語の「音節」に近づける。

◆  立場を逆にして、普通の英語ネイティブの皆様に、私が
日本語をお教えすると、最初のうちは、こんな風に仕上がる。

【日】  5音節 「  –
【?】  2音節

        / 2音節

皆一様に、「2音節」で発声する。

幾度となく、繰り返してもらっても、なかなか改善しない。

お互い様ね。

 

◆  お手持ちの「 虎の巻 」を見せていただいた。

  •  Excuse me
    sue-me-mah-sehn
    ( すみません )


学術的な教本ではなく、旅行ガイドに準じる実用書。

旅行者向けなので、無論、音声記号とは無縁である。

ローマ字表記( su-mi-ma-se-n )と驚くほど異なる。

sue-me-mah-sehn

英語母語話者にとっては、この方が把握しやすい
ということだろう。

◆  日本語を習いたての外国人の発音が不自然なのも、
実は「音節」に問題があることが多い。

そろいもそろって「     ッ  」 と返されるので、
なにふざけているんだと、始めの頃は本気で憤慨していた。

両言語の  音節構造の違い  を、当時の私は知らなかったのである。

  •  英  →  「 子音の連続 」 が目立つ
  •  日  →  「 子音 + 母音 」 が基調で、「 子音の連続は不可

既出単語のうち、「子音の連続」の好例は、” strike ”  stráik / 1音節

  •  /CCC/   →  「 子音 + 子音 + 子音 」 ( 例  ” s t r i k e ” )

のっけから、子音の3連発 str- ) で、日本語ならありえない  / CCC / 。

  •  子音  /C/   →  consonant  / kɑ́nsənəntcon-so-nant  (3音節)
  •  母音  /V/   →  vowel  / váuəlvow-el  (2音節)


◆  日本語の音声の大部分は、母音で終わる開音節 」( open syllable )。

ただし、子音で終わる音節「 閉音節 」( close syllable )は、日本語にもある。

すなわち、「 促音 」 と 「 撥音 」。

母音が付かなくても、1拍分の長さを持ち、1拍とカウントされるのが特徴。

  •  促音 ( そくおん )
    →  「つまる音」  =  小さい「」の直後に出てくる子音。
    ( 例 「待った」  matta  )
    小さい「」自体を促音と称することもある。
  •  撥音 ( はつおん )
    →  「はねる音」  =  「ん」
    ( 例 「本」  hon

日本語で、子音だけを表す表記は、以上の

  •  促音 「
  •  撥音 「ん」

を除いて存在しない。

もっとも、これらを音声記号( IPAなど )で表す際は、
そう単純でなく、複数の音声記号に分かれたりする。

既述の通り、ローマ字と音声記号表記は、まったく別。

 

◇  「 子音 」多めの英単語の発音が苦手で、
無意識にも、「 母音 」を添えたカタカナ発音

をしてしまう
日本人が大勢いる、根本原因

 は、 日英の  音節構造の違い  にある。

 /CV/  →  「 子音 + 母音

日本語の音の基調
( 結合音節 )


1音節
の英単語  ” strike ” を、日本語の語彙の中に組み込むためには、
子音の間と語尾に「 母音 」を挿入し、5音節組み替える しかない

なぜなら、 日本語音は「 母音 」と組む のが大原則   なので、
基本的に、 「 母音 」がつかないと、日本語になりえない。

◆  英語の ” strike ” は、 [ stráik ]  →  / CCCVSC / で、 1音節。

“S” は、” semivowel ” ( 半母音 )。

  子音3連発 の1音節  ” strike ” を
日本語に 迎え入れる ため、 無理やり、
ウ [ɯ]  と オ [o]  という 母音 添加 

【日】  5音節    [ sɯtoraikɯ ]
【英】  1音節    [ stráik ]          

  •  [ɯ] ( 非円唇母音 ) …  口を丸めない 「う」


こうして、日本語に取り入れるため  に、

子音3連発 str- strike ” に、
母音ɯoɯ 突っ込んだ結果、

1音節 から 5音節 になってしまった。

  [ stráik ]  →  [ sɯtoraikɯ ]


もはや、どうしようもない開き。

英語の音の原形をとどめていない。

これでは、通じるわけない。

 

■  「 母音 」を組み合せる「 結合音節 」が、日本語の音  

日本語に取り込むには「 母音 」必須



強引すぎるが、やむを得ない、母音添加。

かくして、おあつらえ向きの 「  カタカナ語  」 の 出来上がり。

前掲のその他 「 11語 」 も、同様のパターン。

◆  こうした流れを踏まえると、行き着く先はこうなる。

◇  日本語が母語だと、
どうしても
母音を添加 」して
発音してしまう

「 カタカナ発音 」の正体だ。



日本語音の性質上、
必然の言語習慣  
ゆえに、

子音だらけの英語発音のハードルは、ひときわ高くなる。

日本語ネイティブならば、当然の成り行き。


◆  音節構造の違い  を再掲すると、

  •  英  → 子音の連続 」 が目立つ
  •  日  →  「 子音 母音 」 が基調で、子音の連続は不可

子音 」の取り扱いが、真逆  に近い。


さらに、日本語の母音は 5個 しかないのに対し、
英語の母音は 10個以上 ある。

 

◆  先ほどの「 虎の巻 」の続き。

英語母語話者には、次のように聞こえているらしい。

  •  Good Morning
    oh-HI-oh goh-zigh-mahs
    ( おはようございます )

  •  Good Afternoon
    kon-nee-chee-wah
    ( こんにちは )

  •  Good Evening
    kon-bahn-wah
    ( こんばんは )

  •  Good Bye
    Sigh-oh NAH-rah
    ( さようなら )

  •  How are you ?
    oh-GEHN-kee dess kah ?
    ( おげんきですか ?

  •  Nice to meet you
    hah-jee-meh-MAHSH-teh
    ( はじめまして )

  •  Please
    Oh-nee GUY-ee shee-mahs
    ( おねがいします )

  •  Thank you
    Ah-ree-gah-toh goh-zye-mahs
    ( ありがとうございます )

  •  I’m sorry
    goh-men nah-sigh
    ( ごめんなさい )

  •  You are welcome
    doy dah-shee-mahsh-teh
    ( どういたしまして )
  •  Do you speak English ?
    Ey-ee-goh oh hah-nahs sehmahs kah ?
    ( えいごをはなしますか ?


日本語母語話者が見ると、思わず笑ってしまうほど、滅茶苦茶。

もう強烈で、突っ込みどころ満載。

私たちのカタカナ英語と、どっこいどっこい。

ジョン万次郎(1827-1898)の  英会話教本 (1859年刊)
を彷彿させる、ユニークな発音表記の長所と短所。

ここで、ローマ字表記との大差を、再び指摘しておきたい。

やはり、子音の連続  が目に付く。

とりわけ、” gh ”  と  ” hs “。
加えて、語末の  ” h ”  と  ” y “。   

日本語には、ありえないのに。

言語習慣  及び  音節構造  の相違点を見せつけられた感。

 

◆  英語ネイティブの発する英語音が、なんだか短く、不足気味
に聞こえる一因は、文単位でも 強弱 が激しく作用しているから。

そして、言語習慣上母音 を加えたくなる日本語ネイティブ
と裏腹に、連続する単語の発音時に、子音 が挿入されたりする。

  •   thereðεə  is iz ]    [ ðεəriz
  •   thereðεə  are  [ ɑː ]    [ ðεərɑː

これは、「 リエゾン ( liaison ) 」という、「 連音 ( れんおん ) 」の一種。

音韻論の現象で、英語よりはフランス語で顕著である。

◇  英語の不得手な日本人が
過半を占めるのは、自然の数

■  「 本能的に 」 習い覚えた第一言語( 母語 )の影響力は、常に絶大 
■  人間は言語を用いて考えるため、母語こそ「 思考の土台 」を形作る 

  •  発音・音節のみならず、日英は、文法から何から共通点が乏しい
  • 言語系統が別次元 」なので、糸口を得がたく、習得が困難


◆  英語教育の内容の適否は、第二義的な問題にすぎない。

受験英語の弊害 」 ?

本当は、そんな程度の話ではないのだ。

大胆に例えると、ワンコ ニャンコ に仕立てようとするくらい、
一般的な環境に育った日本人にとって、英語習得は難易度が高い。

母語に比べて、「 言語系統が別次元 」とは、こういうこと。

conclusive ” に、詳しく記した。


◆  英学界の巨人、斎藤秀三郎(1866-1929)いわく、

  • ” English, though a comparatively easy language,
    is far from being so to the Japanese student.
     ”
    ( 英語は比較的平易な言語であるが、日本人学習者に
    とっては、平易から程遠い。 )
  • a pronunciation wholly alien to that of his mother-tongue
    ( 母語の発音に対し、完全に異質な発音 )

p. 5  “PREFACE”

正則英文教科書 第4冊 ( 第4学年用 )
斎藤秀三郎 (著)
興文社、  1908年刊


同感します。

◆  日本語音の 基調 / CV /  を十分に理解した外国人は、
「 外国人なまり 」が減り、みるみるうちに上達していく。

特に熱心な学習者だと、別人並みに変わるから、こっちはびびる。

目を見張る見事な変身ぶりに、 発音のポイントは「 音節 」
に宿ると改めて気づかされる。

 

◆  やや際どいが、大事な器官も、発音練習しておこう。

初めて耳にすると、きっと分からない。

■  penis  / píːnispe-nis  (2音節)

【日】  3音節 「   –
【英】  2音節

ピー   ニス
ピー   ナス

「ぺ」 でなく 「ピ」


語源は、ラテン語 「 尾 」 ( pēnis )。

https://mickeyweb.info/archives/18907

 

■  vagina  / vədʒáinəva-gi-na  (3音節)

【日】  3音節 「  
【英】  3音節

ヴァ   ジャイ   ナ

———-「ギ」 でなく 「ジャイ」
「ワ」 でなく 「ヴァ」


語源は、同じくラテン語 「 鞘  =  さや 」 ( vāgīna )。

「 お袋 」に似通う発想で、あそこの形状と機能を示唆する。

https://mickeyweb.info/archives/18907

なお、「 お袋 」の語源説は、複数存在する。
( 男性生殖器 を指すこともある )

 

◆  ” vagina ” は、甘い香りの 「 バニラ 」 ( vanilla ) と同源。

既記の通り、ラテン語 「 鞘  =  さや 」 ( vāgīna ) が出自。

■  vanilla  / vəníləva-nil-la  (3音節)

【日】  3音節 「  – ラ 
【英】  3音節

ヴァ      

両方とも、第2音節に強いアクセント(強勢)

ヴァ       
ヴァ   ジャイ   ナ
1       2      3  音節

3音節同士で、真ん中に強勢、リズムはやんわり重なる。

 

◆  今後は、バニラを食すたびに、

vanilla,  vagina,  vanilla,  vagina

と小声でささやき、発音を反復練習しよう。

これで、第2音節に強勢を置く3音節単語は、大丈夫。

◆  ご自分の生活の中に、学習機会を見出し、あたかもパズル
みたいに、巧みに練り込んでいけば、ストレスなく学べる。

ほどよい弾みが気分を盛り上げ、心身の不調を遠ざけてくれる。

見慣れているはずのいつもの光景に、趣のある変化が訪れる。

良くも悪くも心が躍り、軽微な不平不満にかまう隙が消えたりする。

心地よいリズムが暮らしに加わり、生きることが楽しくなってくる。

これが「 語学 」の喜び。

◆  私自身、日常のふとした隙を突いて、いろいろ訓練する毎日。

【参照】  ” hiatus “、  「自分の世界」が広がる英語 、  単語の覚え方


” vanilla ” と聞いて、ぱっと即座に ” vagina ” を想起する
レベルにないと、プロの通訳翻訳官は務まらない気がする。


◆  本題  ” integrity ”  に戻る。

(1)  誠実、高潔  異なり、(2)  完全性 の場合、
人格の描出に使われる場面を、ほとんど見かけない模様。

(1)  誠実、高潔 

The quality of being honest and strong
about what you believe to be right.
( ロングマン、LDOCE6 )

(2)  完全性

formal: the state of being united as
one complete thing.

( ロングマン、LDOCE6 )

※  “formal” = 正式な表現、堅めの表現

主な類義の不可算名詞は、
completeness“、  “unity“、  “solidarity“。

  • “the integrity of the nation”
    (国家としての統一性)
  • “data integrity
    (データの完全性)  (データの整合性)
  • “the territorial integrity of the country”
    (領土の保全)   ※  定訳
  • “skin integrity
    皮膚統合性)   ※  定訳

    →  「皮膚統合性 障害(impaired skin integrity)」
    をもたらすのが「褥瘡(床ずれ)」などの皮膚損傷

    ・  “impaired”( ~に障害のある ) …  形容詞
    【発音】  ɪmˈperd
    【音節】  im-paired  (2音節)

 

◆  締めくくりに、世界最大の英語辞典 “ OED ” をご紹介。

 ” integrity ” 全文である。

“Integrity.”  The Oxford English Dictionary.  2nd ed. 1989.


これぞ、 “ OED ” ( オーイーディー )の略称で名高い、
“ The Oxford English Dictionary ” ( オックスフォード英語辞典 )。

[ 公式サイト ]  →   http://www.oed.com/

1884年にイギリスで刊行が始まり、最新版の第2版は1989年刊。

全20巻、2万1730頁、29万1500の見出し語、62kg。

語義の配列は、頻出順ではなく、発生順の「歴史主義」。
成り立ちを、系統的にたどれる利点がある。

◆  「発生順」「歴史主義」の “OED” によれば、
“integrity” の成立は、世間的な「頻出順」と逆になる。

つまり、既に述べた下記は、二の次。

  一般社会で、より頻出なのは  (1)  誠実、高潔 

すなわち、

【成立】   完全性   →   誠実、 高潔
【頻出】   誠実、 高潔   →   完全性


上記 “OED” の語釈 ( sense 123 に当てはめると、

【成立】   完全性  [ 1 2 ]   →   誠実、 高潔  [ 3 ]
【頻出】   誠実、 高潔  [ 3 ]   →   完全性  [ 1 2 ]

◆  前出の “OED” の語釈全部を転記する。

キーワードには、ハイライトを施した。

1.  The condition of having no part or element
taken away or wanting;  undivided or unbroken
state;  material wholeness,  completeness,
entirety.

b.  Something undivided;  an integral whole.

2.  The condition of not being marred or
violated;  unimpaired or uncorrupted condition;
original perfect state;  soundness.

3.  In moral sense.   a. Unimpaired moral state;
freedom from moral corruption;  innocence,
sinlessness.

b.  Soundness of moral principle;  the character or
uncorrupted virtue, esp. in relation to truth
and fair dealing;  uprightness,  honestysincerity.


“OED” には、難解な記述がままあるのが常例。

ところが、”integrity” の語釈は、シンプルな文章で構成されている。

中級学習者の実力があれば、一目で把握できるレベル。

◆  語義の配列は、各辞書の編集方針に従う。

手元の 著名英和を調べると、概ね以下の模様。

学習者対象の 学習英英辞典(EFL辞典)は、大方「頻度順」。
英語ネイティブ向けの英英辞典は「発生順」が目立つ印象。

弊サイトが日本人にお勧めするネイティブ用辞書は、

国語辞典では、『 広辞苑 』は 発生順、『 大辞林 』は 頻度順

発生順(歴史主義)は、語義を系統的にたどるには最適。
しかし、
一般的な英語学習者には、頻度順の方が実用的。

【参照】  ” initial “、  ” just checking in

“ OED ” 編集主幹の James Murray 博士   (1837-1915)
については、” in place ” で触れている(写真入り)。

 

◆  世界最大 “OED” に比肩する偉大な存在として、日本最大
の国語辞典『 日国 』(※)の語釈も、ぜひご案内したかった。

※  『 日本国語大辞典 第二版(全13巻+別巻)
小学館、2000~2002年刊、B5判変型、平均 1,456頁


残念ながら、見出し「インテグリティ 」「 インテグリティー 」
のどちらも設けられていなかった。

 

◇  『 日国 』 と  “ OED ” は入手済み   →   辞書の「自炊」と辞書アプリ

 

 

【類似表現】

“Do the right thing.”
https://mickeyweb.info/archives/1552
(正しいことをする。)

“Honest with – ”
https://mickeyweb.info/archives/472
(〜に対して正直である)

 

 

 

 

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