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Integrity

      2019/08/19

(1) 誠実、高潔  (2) 完全性

産学官軍を問わず、アメリカのリーダー
の演説に付き物なのが “integrity”。

【発音】 intégrəti

語源は、中世フランス語(intégrité)または
ラテン語(integritatem)の「完全」。

初出は14世紀。

これから見ていくように、そこそこ重要なのだが、
とにかく訳しにくい。

和訳が難しい頻出単語の代表格である。

翻訳者として、毎度もどかしく感じている。


◆ “integrity” は名詞のみで、基本的意味は冒頭の2つ。

  頻出なのは  (1) 誠実、高潔 

よって、本稿では(1) 中心に取り上げる。

(1) 誠実、高潔

The quality of being honest and strong
about what you believe to be right.
(ロングマン、LDOCE6)

理想の人格や心構えを示す際に使われる。

  心が清くて、後ろ暗いところがない。

“integrity” は、アメリカ人リーダーの大好きな言葉。
こんな印象が強い。

それを端的に表す表現がこちら。

  • a man of integrity
    (清廉潔白な人物)

英和辞典に欠かせない言い回し。

と並び、人品骨柄への最大級の賛辞に起用される。

“integrity” は不可算名詞。
“a man of integrity” の “a” は、可算名詞 “man” についたもの。


◆ 人の性格や態度を言葉で表現するのは容易でない。

いずれも無形ゆえ、不可視的で抽象的。
イメージばかりが先行し、つかみどころがないのだ。

ポジティブな言葉で飾り立てると、眉唾物になりがち。

白黒つけがたいことだらけの、厳しい現実を生きる人々
にとって、自ずと疑いが生じやすくなるからであろう。

とりわけ人格面は、斜に構えた見方をする大人が少なくない。


◆ にもかかわらず、アメリカの指導者たちは、
事も無げに “integrity” を多用する。

東西文化の違いなのだろうか。

孔子一門いわく「水清ければ魚棲まず」。

人格が清廉すぎると、人に親しまれなくなってしまう。

おまけに、受け手の嫉妬・ひがみを刺激しないよう、
細心の配慮を要するのが日本社会。

【参照】 “stand tall

だから、和訳は難しい。

反発を遠ざけ、美点を汲み上げて訳出
するのに難儀する。

結局、定訳をそのまま使ってしまうのが常。
歯がゆく、もどかしい理由はここにある。

◆ 長年、新聞・雑誌・ウェブ記事における
“integrity” の和訳に注目してきた。

“integrity” 頻出和訳 <トップ6
 (1990〜2018年)
※ 私見

  1. 誠実
  2. 高潔
  3. 品位
  4. 真摯
  5. 清廉潔白
  6. 公正

直近5年(2014~2018年)は、
「誠実」と「真摯」が目立ってきている。

どれもしっくりこない気もするが、
大概この6つに収まる。

  • “professional integrity
    (仕事上の誠実さ → 意訳:高いプロ意識)

  • “personal integrity
    (個人の誠実さ ← 人としての品性)
  • “moral integrity
    (道義面の誠実さ ← 善悪基準などがまとも)
  • “We have to behave with integrity.”
    (私たちは公正に行動しなければならない。)
  • “I expect every employee to act with integrity.”
    (各従業員には誠実に行動することを期待する。)
  • “I never doubted his integrity.”
    (彼の品位を疑ったことはありません。)

【類似表現】
“Do the right thing.”
https://mickeyweb.info/archives/1552
(正しいことをする。)

“Honest with – ”
https://mickeyweb.info/archives/472
(〜に対して正直である)


◆ LDOCE6(ロングマン)の指標によると、
名詞 “integrity” の位置づけは、

  • 重要度:<6001~9000語以内>
  • 書き言葉頻出:3000語圏外
  • 話し言葉頻出:3000語圏外

【発音】 intégrəti

“integrity” の意味合いからして、日々出番が
生じるはずない。

したがって、頻出度がランク外であることに
不思議はない。

一方、重要度は<6001~9000語以内>にランクイン。

上掲の指標は、英単語全体における立ち位置なので、
先の「そこそこ重要」たる所以になると考える。

加えて、<Academic Word List>(※)入りしている。
※ 英語圏の大学教科書の頻出単語570語

演説では「キーワード」となったりする。

ーー

(2) 完全性

formal: the state of being united as
one complete thing.

(ロングマン、LDOCE6)

※ “formal“= 正式な表現、堅めの表現。

全体的に欠けてるものがなく、ぴしっと
整っている感じ。

システム構築をはじめとする、
技術分野に使われることが多い。

データの正確性の維持を目指す「情報セキュリティ」
では、情報が改ざんされていない状態を指す。

保全性ともいう。

ソフトウェアなどの整合性を意味する
「インテグリティ」は、IT業界で定着済み。

英語のアクセントは「te」
intégrəti

カタカナの「インテグリティ」では、
「イン」にアクセントを置くこともある。

(1) と異なり、人格の描写に使われることは
ほとんどない。

主な類義の不可算名詞は、
completeness“、”unity“、”solidarity“。

  • “the integrity of the nation”
    (国家としての統一性)
  • “data integrity
    (データの完全性)
  • “the territorial integrity of the country”
    (領土の保全) ※定訳

 

 

 

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