Puke / Barf
2021/01/02
ゲロ、 ゲロする
体調不良・食中毒・酔った時など、
嘔吐したことのない成人は皆無であろう。
生きている限り、いつ催すか分からないのが、
■ 吐き気 ” nausea “
【発音】 nɔ́ːziə
【音節】 nau-se-a (3音節)
吐くのは、実は卑近な行為なのだ。
汚いとばかり言ってられない。
嘔吐の場合、身振り手振りの意思疎通は、
ちょっと恥ずかしい。
だから、次の4つの表現を覚えておきたい。
■ 動詞 「嘔吐する」 = ゲロする
- vomit–(自動詞・他動詞)
- throw up–(句動詞)
- puke–(自動詞・他動詞)
- barf–(自動詞・他動詞)
■ 不可算名詞 「嘔吐」 = ゲロ
- vomit
- throw-up – ※ 通例はハイフン追加
- puke
- barf
■ 不可算名詞 「嘔吐物」 = ゲロ
- vomit
- throw-up
- puke
- barf
中級学習者なら、”vomit” と “throw up” は既習のはず。
すなわち、日常使用の正式な「嘔吐」。
【活用形】
vomits – vomited – vomited – vomiting
throws – threw – thrown – throwing
よって、過去形「ゲロした」は、”vomited” と “threw up“。
◇ エログロ描写 にはよくあることだが、
<俗称> も定着している。
それが、“puke“ と “barf“。
【発音】 pjúːk (1音節)
【発音】 bɑ́ːrf (1音節)
2語とも、「1音節 (one syllable)」
◇ 発音の際は、 腹の底から、
ゲロする迫力 で、 一気に吐き出す
「音節」(syllable、シラブル)とは、発音の最小単位。
日本語は、原則として「仮名一字が1音節」。
そのため、音節を意識する機会は乏しい。
→ 音節の差異が顕著な日英比較は、”integrity” 参照
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–
◆ 大人による表現であれば、言うまでもなく、
“vomit” と “throw up” が主。
基本的には、”vomit” と “throw up” だけで、
名詞・動詞とも対応できる。
しかしながら、「ゲロ」が常用語であるように、
“puke” と “barf” も意外に見聞きする。
プライベートでなら、大人も両方使うだろう。
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♪ ゲゲゲのゲ~ ♪
ーー
重要度と使用頻度は「ゲロ」並みであるものの、
一度は学んでおくとよい。
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◆ “puke” には、他動詞・自動詞・名詞がある。
【発音】 pjúːk (1音節)
–
意味は「嘔吐」関連がすべて。
人を罵る「ゲロ野郎」などにも派生している。
“puke” は、早くも16世紀から使われている。
語源は不詳だが、おそらく 擬音語 (ぎおんご)とされている。
擬音語 (onomatopoeia) とは、実際の音を真似た言葉。
「擬声語」とも言う。–
【参照】 “tingling sensation (ASMR)”、 “ring a bell”
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となれば、覚え方はこう。–
ピューと吐くから “puke”
【発音】 pjúːk (1音節)
「1音節」なので、腹の底から ゲロする勢い で一息に発音。
ー
◆ “barf” にも、他動詞・自動詞・名詞がある。
–
さらに、間投詞「げっ」「ちぇっ」が加わる。
【発音】 bɑ́ːrf (1音節)
「間投詞」(interjection)とは、
感動や応答を表す語で、単独で文となりうる呼掛け言葉。
【例】 ”Oh ! “、”Oops ! “、”Alas ! “、
“Whoa ! “、”Gross ! ” 、“Welcome back ! ”、
”Well done ! ”、”Snap ! “、”Check!”
“barf” は、1960年初出。
これまた、擬声語由来とされる。
比較的新しい言葉だけあり、「嘔吐」の他に、
ハッカー用の「エラーメッセージ」を意味する。
ー
◆ “puke” と “barf” は、ほとんどの英和辞典に【 俗 】、
そして英英辞典の一部に ” slang ” と記載されている。
確かに、
“informal” → 非正式、くだけた表現
ただし、
卑語ではなく、格別下品でもない
まさしく「ゲロ」。
イメージも、語感も、「ゲロ」そのもの。
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上掲「堅さ」ランキング(私見)の通り、
“puke” の方が若干上品な印象を帯びる。
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◆ これを裏付けるため、世界最大の英語辞典 “OED” を挙げる。
“barf” には、初っ端から “slang” とある。
動詞 “v.“(verb)も、名詞 “sb.“(substantive)も、
まず “slang” (スラング)と明示されているのだ。
◇ “sb.” = “substantive”
「実質的な」「かなりの」に加え、文法用語としては、
「名詞の」「名詞的な」を意味する形容詞。
◇ 動詞 “barf“ / bɑ́ːrf / 1音節
“Barf.” The Oxford English Dictionary. 2nd ed. 1989.
一方、”puke” の場合、”vomit” を意味する語義( 1 と 2 )
に “slang” 表記はない。
“puke” の “slang” は、別語義の「嫌な奴」( 3. U.S. a slang )
などに当てられている。
◇ 動詞 “puke” / pjúːk / 1音節
“Puke.” The Oxford English Dictionary. 2nd ed. 1989.–
以上は、“OED“ (オーイーディー)の略称で名高い、
“The Oxford English Dictionary” (オックスフォード英語辞典)。
–[公式サイト] → http://www.oed.com/
1884年にイギリスで刊行が始まり、最新版の第2版は1989年刊。
全20巻、2万1730頁、29万1500の見出し語、62kg。
世界最大の英語辞典である。
語義の配列は、頻出順ではなく、発生順の「歴史主義」。
成り立ちを、系統的にたどれる利点がある。
“OED” 編集主幹の James Murray 博士 (1837-1915)
については、”in place” で触れている(写真入り)。
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◆ お次は「げろ」。
「げろ」
■ へど。 嘔吐。
(広辞苑 第七版)
■ [俗]
一(名・自サ)
1. へど。
2. 自白。
二(造語)
ひどく
(三省堂国語辞典 第七版)
先の世界最大 “OED” と同じく、語釈の全文である。
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◇ 『 日国 』 と “ OED ” は、入手済み → 辞書の「自炊」と辞書アプリ–
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◆ ちなみに、飛行機などの備品「 エチケット袋 」。
英語では ” nausea bag ” が一般名称。
【発音】 nɔ́ːziə
【音節】 nau-se-a (3音節)
だが例のごとく、英日それぞれ <俗称> がある。
◇ ” barf bag ” と「 鬼太郎袋(きたろうぶくろ)」がそれ。
♪ ゲゲゲのゲ~ ♪
の鬼太郎で、擬声語に準じる。
「鬼太郎袋」は、プロの客室乗務員も使っている語らしい …
↑ 「 エチケット袋 」の俗称
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“I’m going to puke.”
“I’m going to barf.”
(ゲロ吐きそう。)
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“Sorry, I puked on your bed.”
“Sorry, I barfed on your bed.”
(ごめん、ベッドでゲロしちゃった。)
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“He puked all over the place.”
“He barfed all over the place.”
(彼はそこら中にゲロしたんだ。)
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“You make me puke.”
“You make me barf.”
(あんたはゲロを催させる。)ー ※ 罵倒
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ピューと吐くから “puke”