サイトアイコン プロ翻訳者の単語帳

One’s system

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 3 minutes

〜の心身(頭の中、性格を含む) 

I want him out of my system.
(彼のこと、完全に忘れ去りたいの。)

恋愛にもがき苦しんだ女性の悲嘆である。

“system” が「心身」を指すとなれば、
何だかエロい印象の “out of my system”。

だが、そうでない。

過去の記憶から何から、自分という生命体に関係
するすべてから、完全削除したいとの切望が
言語化されている。

I want him out of my life.
(私の人生から、彼を追い出したいの。)

と同趣旨で、10~30歳代の若い女性中心に
使われる2つの言い回しである。

「この先、二度とあいつと関わりたくない。
思い出すのも嫌!
できれば、この世から抹殺してやりたい。
自分の人生も、リセットできれば。」

本音はこんな具合だろう。
惚れた腫れたで楽しんだ挙句、一転して
このような言葉を吐くのが人間。

まさに、”Things change.” である。

◆ 上記の2文の “out of” は、文法的に重要。
この “out” は副詞。形容詞や前置詞ではない。
分離の前置詞 “of” を伴い「離れる」「外に出す」。

“be動詞 + out” では、”out” を形容詞とする
解釈もある。

【参照】
Get out of here ! “(ここから出て行け!)
“He is out today.”(彼は今日おりません。)

◆ “system” は、名詞のみの単語。
可算と不可算を兼ねるが、原則は可算名詞。

頻出かつ最重要な英単語のひとつ。

口語・文面とも、頻出は<トップ1000語以内>。
重要も<トップ3000語以内>
どれも最高ランクの位置づけにある。
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)

語源は、ギリシア語「結合してできた全体」
(systēma)。

基本イメージは、語源とカタカナ「システム」通り
で、複数の部分が結合したもの

「体系」「体制」「系統」「~網」「制度」
が定訳の一部だが、カタカナのまま使われる
ことも多い。

表題 “one’s system” の場合、人間。
「誰々のシステム」。

“one’s” には、所有格を入れる。
つまり、その「システム」の持ち主。
人称代名詞なら、
my / your / his / her / our / their / its。

この場合、”system” は当人の「心身」を指す。
「複数の部分が結合したもの」の人体版である。
これには、具体的な器官の組織系統との解釈もあるが、
上掲2文のような日常使用では、もっと大まか。

「身体」「心」ひいては「全身」「生命体」。
精神面の作用、例えば不可視の「思考」も含む。

“one’s system” を調べると、臓器や作用を特定している
辞書もある。例えば、

“one’s system” 
性格、人格、人柄
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)

だが、これらは “one’s system” の構成要素の一部。
後述の例文で見るように、用途と意図から考えても、
狭くとらえていないのが通常。

実際に、拡大解釈して使われている感がある。
平たく言えば、今のその人を構成する「すべて」

“somebody’s system” 
someone’s body – used when you are talking
about its medical or physical condition.
(ロングマン、LDOCE6)

“one’s / the system” 
身体、体(body)
(ジーニアス英和大辞典)

先述の『ランダムハウス英和大辞典』でも、
「生物」の項目下の記載はこうなっている。

“the system, one’s system” 
(人・動物の)身体、全身、体
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)

このように、本来は「身体」を指す。

だが、既述通り、精神面も含むため、
心身」=精神と身体(広辞苑 第七版)の方が
多用される用法と考える。

◆ “one’s system” の筆頭フレーズを、次に挙げる。

3EFL辞典(LDOCE、OALD、CALD)を含む
主な英英辞典に載っている。

確認した英英辞典6冊すべてに “informal”
(非正式、くだけた表現)表記があり、
主に口頭で使われる。

“get something out of your system” 
informal
to do something that helps you get rid of
unpleasant strong feelings.
(ロングマン、LDOCE6)

※ 下線は引用者

【参考和訳】
強い不快感を取り除くために、何かをすること

他動詞 “get” は、ある状態にすること。
方向・移動の副詞 “out“(外に)を伴い、
「外に出す」。

外に出したいのだから、当人にとってネガティブ
な対象が基本となる。

“something” の代わりに、”someone“(誰か)
でもよい。

こちらは目的格。代名詞なら、
me / you / him / her / us / them / it。

この “system” は、「身体」ばかりでなく、
「頭の中」など感情面を指す場合も多い。

この2文の “it” は、それぞれ「怒り」と「憎しみ」
を指す。

“out of my system” で「私の身体から外に出す」。

つまり、
「怒り」と「憎しみ」を「私の身体から外に出す」

これらは情動(emotions)なので、「身体」という
よりも、「頭」や「心」の方が的確と考えられる。

無論、感情以外も対象となる。

“one’s system” の和訳が一筋縄ではいかないことは、
想像できるだろう。


 

 

 

 

モバイルバージョンを終了