Give - chills
2021/03/23
~ をぞくぞくさせる、 ~ をぞっとさせる
- This movie gives me chills.
- This movie gives me the chills.
(この映画にはぞくぞくする。)
ぞくぞくする時に使う名詞が “chill”。
その原因を問わない(後述)ため、
文面のみでは詳しくは分からない。
その映画が、恐怖系なのかアクション系
なのか、はたまたピンク映画なのか。
この発言だけでは、詳細不明ということ。
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冷蔵「チルド」は “chilled” で、”chill” の形容詞。
「冷たい」イメージを貫くので、理解は難しくない。
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◆ “chill’ には、名詞・形容詞・他動詞・自動詞がある。
【発音】 tʃíl (1音節)
語源は、古英語「冷たい」(cele)。
基本的意味は、この語源に沿う。
– 名詞 「冷気」「悪寒」「恐怖」
– 形容詞 「冷たい」「憂鬱な」
– 他動詞 「冷やす」「冷ます」
– 自動詞 「冷える」「冷静になる」
全品詞で意味合いが一貫する。
まさに「チルド」な感じ。
一方で、”chill” には俗語も多い。
意味が単純な上、発音しやすい摩擦音の
1音節なので、派生しやすかったのだろう。
< 俗語 “ chill ” の代表例 >
- 殺す
- 気絶させる
- かっこいい
どれも語源「冷たい」を下地にしている。
例えば、「殺す」と冷たくなるから、他動詞「殺す」。
また、” chill ” → “ cool ” で、形容詞「かっこいい」。
上掲の基本的意味にも通じるので、分かりやすい。
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◆ 表題では名詞。
「冷気」「悪寒」「恐怖」のどれを取っても
ぞくぞくするため、
「ぞくぞく」「ぞくっと」「ぞっと」する感じ
をも意味する可算名詞(※)。
“chill” を単数名詞とする英英辞典も多い。
「単数名詞」(singular noun)とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
英英辞書では “S” または “sing” と略記される。
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◆ 先述のように、ぞくぞくの原因は不問。
そこで、『広辞苑 第七版』(※) を用いて、
ネガティブ感情(青)、ポジティブ感情(赤)
に色分けしてみた。
区分けは、常識的な感覚に基づく。
※ 2018年1月18日 初稿時点の最新版
■ 「ぞくぞく」
1.寒さや恐怖で、肌が粟立つような震えや冷気を
感じるさま。
2.期待や快い興奮で気持が高ぶるさま。わくわく。
【参照】 “tingling sensation“(ぞくぞくする感覚)
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■ 「ぞくっと」
副詞
1.身震いするような寒気を感じるさま。
2.身震いするような恐怖や感動を覚えるさま。
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■ 「ぞっと」
]副詞
1.寒気・畏怖・恐怖などで瞬間的に心身が縮む
ような冷気を感じるさま。
2.身体が震えるほど感動するさま。
(広辞苑 第七版)
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ネガポジ両方をカバーすることが明らか。
冒頭の映画が、怖いのかエロいのか不明なわけだ。
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第七版( 2018年1月発売 )に 初登場 !
◆ なお、日本語の「ぞくっと」と「ぞっと」は副詞。
表題 “give – chills” の “chills” は名詞だが、
他動詞 “give”(与える)を伴っている。
“give – chills” 全体で、「ぞくっとする」
「ぞっとする」なので、副詞と名詞の違いは
さほど問題ではない。
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◆ “give – chills” のダッシュ部は目的格。
つまり、ぞくぞくした人を入れる。
人称代名詞の目的格は、
me / you / him / her / us / them / it
具体的な人名(John など)でもよい。
実際には、人称代名詞が多めの印象がある。
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◆ “chills” の “chill” は可算名詞。
よって、単数は “a chill”。
“give – a chill” でも間違いではない。
だが、複数形の方が一般的で、出番も多い。
そのため、表題も複数形にした。
他動詞 “give”(与える)の活用形は、
gives – giving – gave – given
ぞくぞくの発生状況から、”give” と “gave”
が中心となる。
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◆ “give – chills” と “gave – chills” のいずれ
にしても、和訳は工夫する必要がある。
なぜなら、他動詞 “give” の直訳「与える」または
「させる」のままでは、不自然な日本語となる場合
が多いから。
日本語の助動詞「させる」は「使役(しえき)」。
何らかのの動作を他者にさせる意味。
主語が人間またはその言動であれば、不自然でもない。
しかし、それ以外の場合、特に無生物の場合、
誤訳と言えないまでも、奇妙に聞こえがち。
冒頭の2文を例にとる。
【直訳】 この映画は私をぞくぞくする感じを与える
→ この映画は私をぞくぞくをさせる
→ この映画に私はぞくぞくする
より自然にするため、主語「私」を削り(※)、
「この映画にはぞくぞくする」。
※ 日本語では、主語をやたらとつけない
“the” の有無は問わない。どちらも使われている。
何度も述べているように、状況次第で解釈が
違ってくる言い回しだが、それは日本語でも同じ。
ご紹介した広辞苑の語釈の通り、さまざまな「ぞくぞく」がある。
具体的な様子が判明した際に、
- 恐怖におののく
- 残忍さに身の毛がよだつ
- めちゃくちゃ興奮する
などと的確に訳せばよい。
- “Your sad story gives me chills.”
(あなたの悲しい話にはぞくぞくする。)
– - “Her songs give John chills.”
(彼女の歌はジョンをひどく興奮させる。)
– - “His sharp glance gave her chills.”
(彼の鋭い視線に彼女はびびった。)
– - “Turbulence gave me the chills.”
(乱気流におののいた。)
– - “The picture of the bodies gave me chills. ”
(死体の写真を見て、身の毛がよだった。)
– - “Her thank-you letter gave me chills.”
(彼女の感謝の手紙にいたく感動した。)
【類似表現】
- “send a chill down – spine“
- “send chills up – spine“
( ~ をぞっとさせる )
【直訳】 脊柱( spine )にぞっとする感じを送る
ダッシュ部には、所有格。
人称代名詞なら、
my / your / his / her / their / our
※ ここでも “chill” は単複不問。
多用されるのは、<down> 単数、<up> 複数
- “Chill out ! “
https://mickeyweb.info/archives/2023
(落ち着いて!)
- “a chilly stare“
- “a chilly look“
(冷たい視線)
※ “look” の方は「 冷たい面持ち 」も意味する