プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Talk out of –

      2022/03/19

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 4 minutes

説得して ~ をやめさせる  

I tried to talk her out of it.
( 彼女にやめさせようとしたんだ。)


◆  よからぬことが起きた後、関係者がよく漏らす。

その内容は、事故など人身に関わる不幸から事業の
失敗まで多岐に及ぶ。

「 彼女を救うため、私はやるべきことをやった 」

こんな思いの込められた言い分だが、どこか言い訳
がましく、聞き苦しい印象がよどむ。

この点、日本語でも英語でも似たようなもの。

周囲をうずまく感情にも大差ないだろう。

  •  すべて、 後の祭
  •  今さら、 何をか言わんや
  •  下衆の 後知恵 ばりに、 片腹痛し

◆  一方、関係者側に立てば、もっともな弁解である。

無駄に終わってしまったものの、きちんと努力はした。

We have worked really hard
to talk her out of it.

( やめさせようと我々は必死で説得した。)


事の真偽を確かめる意義は、既に失われている場合が多い。

それでも、無関心さながら無言で押し通せば、誰も浮かばれない。

それゆえに、このような釈明の出番となる。

もし本人が素直に聞き入れていれば、おそらく防げた。

老婆心で忠告をしようとした、その心遣いをふいにした果て。

となれば、多分に 自業自得 との見方もできる。

何かが起きてからでは遅いのだから、やはり 一応言って あげたい。

しかし、口出しして反発食らうよりは、静観する 方がまし。

この辺の兼ね合いは、実に難しい。

かわせた はずの悲惨な結末から、人生の教訓 を噛みしめる
重苦もまた、衆生界によく見る現実の姿。

 

うっせぇわ

 

◆  ” talk out of ” は、以上のような言い開きに用いられること
の多い句動詞。

すなわち、無残な結果の弁明に顔を出す。

” talk ”  も  ” out ”  も、カタカナで定着しており、
基本的な語意は周知であろう。

LDOCE6( ロングマン )の指標によれば、両語とも、
最頻出かつ最重要レベルの英単語。

  • 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>

 talk には、自動詞・他動詞・名詞がある。
「話す」の意味合いで共通している。

【発音】  tɔk  (1音節)

語源は、 中期英語「 話す 」( talken )。

名詞  ” tale “( 物語 )と同源である。

–   自動詞「 話す 」「 相談する 」「 うわさ話をする 」
–   他動詞「 話す 」「 論じる 」「 説得する 」
–   名詞「 話 」「 話し合い 」「 うわさ 」   ※  可算・不可算

“ speak ” に比べると、 気軽なおしゃべりも広く含む。

表題では、自動詞「 話す 」または「 相談する 」。

◆  outには、副詞・形容詞・前置詞・名詞・他動詞・
自動詞がある。

【発音】  áut  (1音節)

語源は、 古英語「 外へ 」「 追放する 」( ūt )。

” talk out of – ”  は句動詞なので、 ここでの  ” out ” は副詞。


◆  2018年12月現在までに、弊サイトで取り上げた
句動詞の副詞 ” out ” から、30件を例示する。


句動詞としては、どれも基礎から中級レベル。

普段から見聞きする表現ばかり。

中級学習者 であれば、ぜひ押さえておきたい。

 

◆  副詞 “ out ” は多義であるが、 句動詞の副詞  ” out “
の主な意味合いは3つ。

  1. 完全に、 徹底的に、 最後まで
  2. 離れて、 外して、 外に出して
  3. 消えて、 廃れて、 衰えて

上掲30件の句動詞の ” out ” も、
このうちのいずれかに当てはまる。

複数に該当しそうなものもある。

black out“、 “smooth out”  など。

表題では「 2. 外に出して 」。

自動詞  ” talk ” ( 話す )に添えると、
「 話して外に出して 」が直訳。

これに、分離の前置詞  of( ~ から )を加え、
「 話して ~ から外に出して 」。

話すことで、何かの中から外に出す行為
talk                         of        out          

これが  ” talk out of – ” の構造。

転じて、何かをしないよう説得すること。

” of ” の直後に来るのが「 何か 」( “ something ” )。
やめさせたいものを指す。

概ね都合の悪いことであるのは言うまでもない。

「 忠言 」を趣旨とする点には、冒頭から触れている。

  •  外に出してあげないと、 とんでもないことになる  …
  •  本人のために、” talk ”  で  ” out ” してあげたい  …
    ーー

◆  3大学習英英辞典( EFL辞典 )の語釈はシンプル。

” somebody “( 誰か )には目的格が入る。

人称代名詞では、
me / you / him / her / us / them / it 。

この  “ something ” も、先ほどの  “ somebody ” も、
不定代名詞( an indefinite pronoun )の複合語。

” talk somebody out of something “

■  to persuade someone not to do something.
( LDOCE6、ロングマン )

  to persuade somebody not to do something.
( OALD9、オックスフォード )

  to persuade someone not to do something.
( CALD4、ケンブリッジ )


3点の酷似ぶりがすごい。   ままあること。

◆  表題の ” talk out of – ” に似ているが意味の異なる
” talk out ”  もある。

弊サイトでは、 次の項目でご紹介済みである。

同じく句動詞だが、これは他動詞( 句他動詞 )。
表題は、句自動詞。

こちらの副詞  ” out ” は「 1. 徹底的に 」。

したがって、” talk out ” で「 徹底的に話し合う 」。

ひいては「 話し合って、解決する 」。

同じ  ” talk out ”  でも、
副詞  ” out ”  の中身が違う。


そのため、句動詞の意味も違ってくる。

” talk out “

■  If you talk out something such as a problem,
you discuss it thoroughly in order to settle it.

( COBUILD9、コウビルド )

※  下線は引用者


黄枠内の次の句動詞と内容がだいぶ重なる。

このように、同一単語を使っている句動詞であっても、
伴う副詞や前置詞の語義が異なる 場合もある。

こうなると、句動詞として別物となり、区別を要する。

◆  ついでに、表題と逆の句動詞も学んでしまおう。

talk into – ”  ( ~ をするように説得する )

話すことで、何かの中に行くようにする行為
talk                     into                           

into( ~ の中に ) は副詞ではなく、前置詞

” out “( ~ の外に )が副詞なので、妙な気がする。

“ into ” を辞書で引くと、英英、英和ともに「 前置詞 」しか
記載してないものが大半。

副詞  ” in “ + 前置詞 ” to ” が成り立ちであり、
16世紀までは2語に分けて用いられてきた。

( 『 ランダムハウス英和大辞典 第2版 』 及び
『 新英和大辞典 第6版 』 より )

into ” は、動きと動作の結果を同時に表現

動的な状態 を示唆する前置詞

副詞または形容詞に近い前置詞と考えられる。

【発音】  ìntə | ìntu
【音節】  in-to  (2音節)

 

be into – ” で詳述しているので、適宜ご参照いただければと思う。
ーー

◆  再び、3大学習英英辞典( EFL辞典 )のお出まし。

” talk somebody into something “

■  to persuade someone to do something.
( LDOCE6、ロングマン )

  to persuade somebody to do something.
( OALD9、オックスフォード )

  to persuade someone to do something.
( CALD4、ケンブリッジ )


既視感に めまいがする

◆  これまで強調してきたように、” talk out of – ” は
予防措置 的な アドバイス に多用される。

その反面、言い訳めいたニュアンスを帯びる特色も述べた。

実際には受け手の立場次第。

以下を第三者の見地で読むと、どう感じられるか。

  • “I managed to talk my son out of quitting school.”
    (どうにか息子に中退を思いとどまらせた。)
  • “I’ve been trying to talk her out of moving to Japan.”
    (日本へ引っ越すと言って聞かない彼女を説得してきた。)
  • “My teacher is trying to talk me out of my decision.”
    (私の決断を先生がやめさせようとしている。)
  • “My parents talked me out of marrying her.”
    (両親に説得されて彼女との結婚をあきらめた。)
  • “Let’s talk him out of selling the car.”
    (車を売らないように、彼を説得しようぜ。)
  • “No one tried to talk him out of taking his own life.”
    (誰も彼に自殺を思いとどまらせようとしなかった。)

 

◆  先述のように、他者に忠告するのは難しい。

介入の必要なケースも少なくないかもしれないが、
最終的な決定権は本人に属するのが原則であろう。

自己決定権the right to self-determinationである。

人間の特性としてもっとも価値あるものは、
自分で自分の生き方を決める能力である。

アルフォンス・デーケン 上智大学名誉教授
Alfons Deeken ( 1932-2020 )

わたしの乳房再建 』  p. 167.
千葉 敦子(著)、文春文庫、1988年刊


とすれば、こんな気負いに行き着く。

  • Don’t let them talk you out of it ! 
    ( 自分のやりたいことを、奴らにやめさせようとするな

→  うるさい外野なんか、振り切れ!

 

 

【参考】    ※  外部サイト、  「 自己決定 」 がらみ

 

【関連表現】

■  ” Don’t judge – ”
https://mickeyweb.info/archives/23068
( ~ を勝手に判断するな。   ~ を勝手に評価するな。 )

 

 

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英語, 英語フレーズ