プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Talk out of –

      2019/03/23

説得して~をやめさせる  

I tried to talk her out of it.
(彼女にやめさせようとしたんだ。)

よからぬことが起きた後、関係者がよく漏らす。

その内容は、事故など人身に関わる不幸から事業の
失敗まで多岐に及ぶ。

「彼女を救うため、私はやるべきことをやった」

こんな思いの込められた言い分だが、どこか言い訳
がましく、聞き苦しい印象がよどむ。

この点、日本語でも英語でも似たようなもの。
周囲をうずまく感情にも大差ないだろう。

すべてが後の祭。 今さら、何をか言わんや。
下衆の後知恵ばりに片腹痛し。

一方、関係者側に立てば、もっともな弁解である。
無駄に終わってしまったものの、きちんと努力はした。

We have worked really hard
to talk her out of it.

(やめさせようと我々は必死で説得した。)

事の真偽を確かめる意義は、既に失われている場合が多い。
それでも、無関心さながら無言で押し通せば、誰も浮かばれない。
それゆえに、このような釈明の出番となる。

もし本人が聞き入れていれば、おそらく防げた。

老婆心で忠告をしようとした、その心遣いをふいにした果て。
となれば、多分に自業自得との見方もできる。

何か起きてからでは遅いのだから、一応言ってあげたい。
しかし、口出しして反発食らうよりは、静観する方がまし。

この辺の兼ね合いは、実に難しい。

かわせたはずの悲惨な結末から、人生の教訓を噛みしめる
重苦もまた、衆生界にありがちな現実の姿。

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“talk out of” は、以上のような言い開きに用いられること
の多い句動詞。 すなわち、無残な結果の弁明に顔を出す。

“talk” も “out” も、カタカナで定着しており、基本的意味は
周知である。

LDOCE6(ロングマン)の指標によれば、両語とも、
最頻出かつ最重要レベルの英単語。

  • 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>

“talk” には、自動詞・他動詞・名詞がある。
「話す」の意味合いで共通している。

語源は、中期英語「話す」(talken)。
名詞 “tale”(物語)と同源である。

– 自動詞「話す」「相談する」「うわさ話をする」
– 他動詞「話す」「論じる」「説得する」
– 名詞「話」「話し合い」「うわさ」 ※ 可算・不可算

“speak” に比べると、気軽なおしゃべりも広く含む。
表題では、自動詞「話す」または「相談する」。

“out” には、副詞・形容詞・前置詞・名詞・他動詞・
自動詞がある。

“talk out of – ” は句動詞なので、副詞。

2018年12月現在までに、弊サイトで取り上げた
句動詞の副詞 “out” から、30件を例示する。

句動詞としては、どれも基礎から中級レベル。
普段から見聞きする表現ばかり。

中級学習者であれば、ぜひ押さえておきたい。

 

◆ 副詞 “out” は多義であるが、句動詞の副詞 “out”
の主な意味合いは3つ。

  1. 完全に、徹底的に、最後まで
  2. 離れて、外して、外に出して
  3. 消えて、廃れて、衰えて

上掲30件の句動詞の “out” も、
このうちのいずれかに当てはまる。

複数に該当しそうなものもある。
(”black out“、”smooth out” など)

表題では「2. 外に出して」。
自動詞 “talk”(話す)に添えると、
「話して外に出して」が直訳。

これに、分離の前置詞 “of”(~から)を加え、
「話して~から外に出して」。

話すことで、何かの中から外に出す行為
talk                         of        out          

これが “talk out of – ” の構造。
転じて、何かをしないように説得すること。

“of” の直後に来るのが「何か」(“something”)。
やめさせたいものを指す。

概ね都合の悪いことであるのは言うまでもない。
「忠言」を趣旨とする点には、冒頭から触れている。

外に出してあげないと、とんでもないことになる …
本人のために、”talk” で “out” してあげたい …
ーー

◆ 3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈はシンプル。

“somebody”(誰か)には目的格が入る。人称代名詞では、
me / you / him / her / us / them / it 。

“talk somebody out of something”

to persuade someone not to do something.
(LDOCE6、ロングマン)

to persuade somebody not to do something.
(OALD9、オックスフォード)

to persuade someone not to do something.
(CALD4、ケンブリッジ)

3点の酷似ぶりがすごい。 ままあること。

◆ 表題の “talk out of – ” に似ているが意味の異なる
“talk out” もある。

弊サイトでは、次の項目でご紹介済みである。

同じく句動詞だが、これは他動詞(句他動詞)。
表題は、句自動詞。

こちらの副詞 “out” は「1. 徹底的に」。
したがって、”talk out” で「徹底的に話し合う」。
ひいては「話し合って、解決する」。

同じ “talk out” でも、副詞 “out” の中身が違う。
そのため、句動詞の意味も違ってくる。

“talk out”

If you talk out something such as a problem,
you discuss it thoroughtly in order to settle it.

(COBUILD9、コウビルド) ※ 下線は引用者

黄枠内の次の句動詞と内容がだいぶ重なる。

このように、同一単語を使っている句動詞であっても、
伴う副詞や前置詞の語義が異なる場合もある。

こうなると、句動詞として別物となり、区別を要する。

◆ ついでに、表題と逆の句動詞も学んでしまおう。

“talk into – “(~をするように説得する)

話すことで、何かの中に行くようにする行為
talk                     into                           

“into”(~の中に) は副詞ではなく、前置詞
“out”(~の外に)が副詞なので、妙な気がする。

“into” を辞書で引くと、英英、英和ともに「前置詞」しか
記載してないものが大半。

副詞 “in” + 前置詞 “to” が成り立ちであり、
16世紀までは2語に分けて用いられてきた。
(ランダムハウス英和大辞典 第2版、及び
新英和大辞典 第6版 より)

“into” は、動きと動作の結果を同時に表現。
動的な状態を示唆する前置詞。

副詞または形容詞に近い前置詞と考えられる。

【発音】ìntə | ìntu

be into –” で詳述しているので、適宜ご参照
いただければと思う。
ーー

◆ 再び、3大学習英英辞典(EFL辞典)のお出まし。

“talk somebody into something”

to persuade someone to do something.
(LDOCE6、ロングマン)

to persuade somebody to do something.
(OALD9、オックスフォード)

to persuade someone to do something.
(CALD4、ケンブリッジ)

既視感にめまいがする

◆ これまで強調してきたように、”talk out of – ” は
予防措置的なアドバイスに多用される。

その反面、言い訳めいたニュアンスを帯びる特色も述べた。

実際には受け手の立場次第。

以下を第三者の見地で読むと、どう感じられるだろう。

  • “I managed to talk my son out of quitting school.”
    (どうにか息子に中退を思いとどまらせた。)
  • “I’ve been trying to talk her out of moving to Japan.”
    (日本へ引っ越すと言って聞かない彼女を説得してきた。)
  • “My teacher is trying to talk me out of my decision.”
    (私の決断を先生がやめさせようとしている。)
  • “My parents talked me out of marrying her.”
    (両親に説得されて彼女との結婚をあきらめた。)
  • “Let’s talk him out of selling the car.”
    (車を売らないように、彼を説得しようぜ。)
  • “No one tried to talk him out of taking his own life.”
    (誰も彼に自殺を思いとどまらせようとしなかった。)

先述のように、他者に忠告するのは難しい。

介入の必要なケースも少なくないが、最終的な決定権は
本人に属するのが原則であろう。 自己決定権である。

とすれば、こんな気負いに行き着く。

  • “Don’t let them talk you out of it ! ”
    (彼らに自分をやめさせようとするな!)
    →   うるさい外野なんか振り切れ!

 

 

 

 

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