One’s system
2020/01/02
〜の心身(頭の中、性格を含む)
I want him out of my system.
(彼のこと、完全に忘れ去りたいの。)
恋愛にもがき苦しんだ女性の悲嘆である。
“system” が「心身」を指すとなれば、
何だかエロい印象の “out of my system”。
だが、そうでない。
過去の記憶から何から、自分という生命体に関係
するすべてから、完全削除したいとの切望が
言語化されている。
“I want him out of my life.”
(私の人生から、彼を追い出したいの。)
と同趣旨で、10~30歳代の若い女性中心に
使われる2つの言い回しである。
「この先、二度とあいつと関わりたくない。
思い出すのも嫌!
できれば、この世から抹殺してやりたい。
自分の人生も、リセットできれば。」
本音はこんな具合だろう。
惚れた腫れたで楽しんだ挙句、一転して
このような言葉を吐くのが人間。
まさに、”Things change.” である。
ー
◆ 上記の2文の “out of” は、文法的に重要。
この “out” は副詞。形容詞や前置詞ではない。
分離の前置詞 “of” を伴い「離れる」「外に出す」。
“be動詞 + out” では、”out” を形容詞とする
解釈もある。
【参照】
“Get out of here ! “(ここから出て行け!)
“He is out today.”(彼は今日おりません。)
–
◆ “system” は、名詞のみの単語。
可算と不可算を兼ねるが、原則は可算名詞。
最頻出かつ最重要な英単語のひとつ。
口語・文面とも、頻出度は<トップ1000語以内>。
重要度も<トップ3000語以内>
どれも最高ランクの位置づけにある。
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
語源は、ギリシア語「結合してできた全体」
(systēma)。
基本イメージは、語源とカタカナ「システム」通り
で、複数の部分が結合したもの。
「体系」「体制」「系統」「~網」「制度」
が定訳の一部だが、カタカナのまま使われる
ことも多い。
表題 “one’s system” の場合、人間。
「誰々のシステム」。
“one’s” には、所有格を入れる。
つまり、その「システム」の持ち主。
人称代名詞なら、
my / your / his / her / our / their / its。
この場合、”system” は当人の「心身」を指す。
「複数の部分が結合したもの」の人体版である。
これには、具体的な器官の組織系統との解釈もあるが、
上掲2文のような日常使用では、もっと大まか。
「身体」「心」ひいては「全身」「生命体」。
精神面の作用、例えば不可視の「思考」も含む。
“one’s system” を調べると、臓器や作用を特定している
辞書もある。例えば、
“one’s system”
性格、人格、人柄
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
だが、これらは “one’s system” の構成要素の一部。
後述の例文で見るように、用途と意図から考えても、
狭くとらえていないのが通常。
実際に、拡大解釈して使われている感がある。
平たく言えば、今のその人を構成する「すべて」。
“somebody’s system”
someone’s body – used when you are talking
about its medical or physical condition.
(ロングマン、LDOCE6)
“one’s / the system”
身体、体(body)
(ジーニアス英和大辞典)
先述の『ランダムハウス英和大辞典』でも、
「生物」の項目下の記載はこうなっている。
“the system, one’s system”
(人・動物の)身体、全身、体
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
このように、本来は「身体」を指す。
だが、既述通り、精神面も含むため、
「心身」=精神と身体(広辞苑 第七版)の方が
多用される用法と考える。
–
◆ “one’s system” の筆頭フレーズを、次に挙げる。
3大EFL辞典(LDOCE、OALD、CALD)を含む
主な英英辞典に載っている。
確認した英英辞典6冊すべてに “informal”
(非正式、くだけた表現)表記があり、
主に口頭で使われる。
“get something out of your system”
informal
to do something that helps you get rid of
unpleasant strong feelings.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
【参考和訳】
強い不快感を取り除くために、何かをすること
他動詞 “get” は、ある状態にすること。
方向・移動の副詞 “out“(外に)を伴い、
「外に出す」。
外に出したいのだから、当人にとってネガティブ
な対象が基本となる。
“something” の代わりに、”someone“(誰か)
でもよい。
こちらは目的格。代名詞なら、
me / you / him / her / us / them / it。
この “system” は、「身体」ばかりでなく、
「頭の中」など感情面を指す場合も多い。
- “I got very angry so I went for a walk
to get it out of my system.”
(ものすごく怒ったので、散歩に出て発散させた。)
ー - “I hated him so much but I’ve got it out of
my system now.”
(彼を憎んでいたが、その気持ちは今は消えた。)
この2文の “it” は、それぞれ「怒り」と「憎しみ」
を指す。
“out of my system” で「私の身体から外に出す」。
つまり、
「怒り」と「憎しみ」を「私の身体から外に出す」。
これらは情動(emotions)なので、「身体」という
よりも、「頭」や「心」の方が的確と考えられる。
無論、感情以外も対象となる。
“one’s system” の和訳が一筋縄ではいかないことは、
想像できるだろう。
–
–
- “I work out to get the stress out of my system.”
(私はストレス解消のため運動する。)
–
- “He need to get drugs out of his system to
pass a urine test.”
(尿検査にパスするためには、彼は自分の体内から
薬物を出さなければならない。)
–
- “She is on a diet to clear out her system.”
(彼女は体の中からきれいになろうとして、
ダイエットしている。)
– - –“I just wanted to get her out of my system.”
(とにかく彼女のことは忘れ去りたかった。)
–
- “Let’s talk so you can get it out of your system.”
(そのことを振り切るため、私と話しましょう。)
– - “I thought the alcohol had left my system.”
(アルコールは体内から排出したと思ってました。)
→ DUI(飲酒運転)の言い訳に多用される
– - “They need a few more games to get the
loss out of their system.”
(あの敗北を克服するには、もう少し試合を
重ねる必要がある。)
–
※ 複数形主格 “they” に呼応する “system” は、
このように原則単数だが、複数形でも使われている