閉鎖する、遮断する
ツイッター・フェースブック・ユーチューブで、
面倒な人を「ブロック」。
その相手からの通信を遮断すること。
これが、動詞 “block” の基本イメージ。–
だが、SNSの「ブロック」が普及するはるか昔から、
日本社会に根づいていた。
例えば、おもちゃの「ブロック」で遊んだことない
人は珍しいだろう。
さらに専門用語として、多岐に渡る産業分野で
長年使われてきたのが「ブロック」。
多義の一証拠として、広辞苑の語釈をご覧に入れたい。
ブロック【block】
- かたまり。角塊。
- コンクリート・ブロックの略。
- おもちゃの積木。
- 印刷で、版木。印材。
- 市街などの区画。一郭。
- 列車の安全確保のため、線路の一定区画を1列車に
占有させること。 - 競技で、相手の動きを妨害したり攻撃を封じたり
すること。→ ブロッキング - 心臓の刺激伝導に器質的または機能的に障害が
あって伝導時間が延長し、または刺激が伝わら
なくなること。刺激が全く中断することを完全
ブロックという。 - 神経伝達の遮断。麻酔薬を用いるものは三叉神経・
星状神経叢・肋間神経・坐骨神経などに行う。
神経ブロック。
(広辞苑 第七版)
土木、技術、印刷、都市計画、スポーツ、医学
に及ぶ意味を含んでいる。
この中に和製英語はなく、すべて英語の和訳。
つまり、英語の “block” に共通する意味ばかり。
したがって、カタカナ「ブロック」以上に多義
なのが、本家 “block” ということになる。
◆ “block” には、名詞・他動詞・自動詞・形容詞
がある。
【発音】 blɑːk
語源は、古フランス語「厚材」(bloc)。
広辞苑の語釈 1、2、3 に重なる名詞。
名詞は、可算名詞のみである。
“block” は非常に多義であるものの、先の
広辞苑の全7つが基本的意味をほぼカバーする。
– 名詞「塊」「ブロック」「積木」「版木」「障害物」
– 他動詞「妨害する」「(障害物で)ふさぐ」
「(情報を)知らせない」
– 自動詞「ふさぐ」「妨害する」
– 形容詞「塊の」
“block off” では、他動詞。つまり、句他動詞。
「妨害する」「ふさぐ」「(情報を)知らせない」
のすべてが該当する。
従前の名詞中心の「ブロック」に加え、SNSの普及
により、動詞「ブロック(する)」も、今や大半の
日本人が感覚的に理解できる。
繰り返すが、それが “block” の基本的イメージ。
これを前提に話を進めていこう。
–
◆ “off” も非常に多義で、前置詞・副詞・名詞・
形容詞・他動詞・自動詞がずらりとそろう。
どの品詞も “off” の原義「離れて」から
派生する意味中心なので、比較的理解しやすい。
単語としては、”block” 以上に重要なのは言うまでもない。
比較してみる。
- “off“
重要度:最上位 <トップ3000語以内>
書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
– - “block“
重要度:最上位 <トップ3000語以内>
書き言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
話し言葉の頻出度:<2001~3000語以内>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
“off” がすべてトップランクで、最頻出かつ最重要
レベルの英単語であるのに対し、”block” の頻出度
はワンランク下がる。
“block off” の “off” は、副詞。
句動詞に伴う副詞 “off” に頻出の「分離する」意。
同じ用法の副詞 “off” を用いた句他動詞
- “close off“
(閉鎖・封鎖・遮断・隔離する) - “shut off“
(閉鎖・封鎖・遮断・隔離する)
※ その他「スイッチを切る」「水道を止める」 - “fence off”
(柵で仕切る) - “mark off”
(線で区切る)
最初の2つは、“block off” の同義語として、
多くの辞書に挙げられている(※の意味は除く)。
これらの副詞 “off” が「分離する」感覚は、
中級学習者であれば、身についているはず。
“block off”
to completely close something such as
a road or an opening.
(ロングマン、LDOCE6)
to close a road or an opening by placing
a barrier at one end or in front of it.
(オックスフォード、OALD9)
to close a road, path, or entrance
so that people cannot use it.
(ケンブリッジ、CALD4)
※ 下線は引用者
このように、3大学習英英辞典(EFL辞典)
の説明は似ている。
下線の “road”(道路)は、3冊とも明示。
とすれば、
■ 代表的な使用場面がこちら。
- “We have to block off the street.”
(その道路を閉鎖しなくてはならない。)
日常的に見聞きする場面は、視覚的に想起しやすい。
以下の例文も難しくないだろう。
- “Let’s block off that area in the theater.”
(劇場のあの区域を隔離しようよ。)
※ 招待客用の席の確保など
– - “They blocked off my USB port.”
(USBポートを遮断されてしまった。)
– - “The sole elevator was blocked off.”
(唯一のエレベーターが閉鎖されていた。)
– - “Main Street had been blocked off by the police.”
(警察により「中央通り」が閉鎖されていた。)
–
- “Snow had blocked the gate off.”
(門が雪でふさがれた。)
– - “The laundry room should be blocked off
from small children.”
(洗濯場に幼児が入れないよう施すべき。)
–
- “I need to block off the parking spaces for them.”
(彼らのために駐車場を確保しなければ。)