~の新入りである、~したばかりである
I’m new to here.
(ここに来たばかりなのです。)
(ここの新人なのです。)
新入りなので、まだよく分かっていません。
だから、お手柔らかにお願いしますね。
こんな希望が潜んでいたりする。
趣味の習い事やサークル活動に限らず、
職場でも聞く言い回し。
額面通り受け取れば、自分の立場を
率直に述べた言葉で、変哲もない。
–
◆ “new” には、形容詞・副詞・名詞がある。
【発音】 nuː
語源は、古英語「新しい」(nīwe)。
–
形容詞が圧倒的多数の使われ方で、
副詞と名詞はマイナー用法。
カタカナ「ニュー」も、日本社会に
定着して久しい。
おニュー【御ニュー】
服飾品などで、おろしたてのもの。新品。
(広辞苑 第七版)
– 形容詞「新しい」「初めての」
– 副詞「新しく」「~したばかりの」
– 名詞「新しさ」 ※ “the new” として
いずれも語源を貫く意味合いなので、
理解は難しくない。
形容詞ゆえ、「be動詞」に続くのが基本パターンになる。
※「be動詞」= be、am、was、been、will be、is、
なぜ「be動詞」に続くのかは、”aware” や ”vocal about” で詳述した。
–
◆ 形容詞 “new” に、前置詞 “to” を加える。
ここでの “to” は、行為などの対象を示す。
「~にとって」「~に対して」
■ 日本人学習者の典型的な疑問
I’m new here.
(ここの新人です。)
これとの相違点とは?
一体、どう違うのか。
後述のように、実質的な意味は変わらない。
だが、ニュアンスは異なるので、解説してみる。
“I’m new to here.“
(ここに来たばかりです。)
–
→「新人」を示すことに違いはない。
対象の前置詞 “to” によって、「ここにとっては」
の意味合いが加わる。
【直訳】「ここにとっては、私は新しい」
ー
対象の前置詞 “to”
「~にとって」「~に対して」
→ 形容詞または名詞に伴う
・“She is kind to others.”
(彼女は他人に対して親切)
–
・“He is second to none as a dancer.”
(ダンサーとして、彼は誰にも負けない。)
–
・“His story is known to everyone.”
(彼の話は全員にとって知っていること。)
–
・“He seems nice to me.”
(私にとって、彼はいい人に思える。)
ー
※ 緑字は形容詞
- “I’m new here.”
(ここの新人です。)
–
→ 新人である自分の状態を、
自己の視点で説明している。
現在の<状態>のみに着目すれば、
どちらも「ここの新人」に違いない。
とすれば、和訳が同然になっても不思議はない。
しかし、”to” 入りの場合、「ここにとって」
と自分以外の存在を前面に押し出している。
“here” であれば、「ここ」とは場所や組織。
“to” は<行為などの対象>を指すため、
その範囲は場所に限らない。(例文参照)
もっとも、”I’m new here.” にも “here” はあるものの、
こちらはあくまで「私」が主軸で、自己完結に近い。
趣旨は重なるが、ニュアンスが異なる。
–
◆ 日本語にも、このような側面が普通にある。
例えば、
- 私は英語が好き。
- 私が好きなのは英語。
言わんとしていることは、ほぼ同じ。
両方とも、大まかには “I like English.” と英訳できる。
「は」「が」は、助詞。
でも、両者が違うことは、中級の英語力を有する
日本語ネイティブであれば感覚的に分かるだろう。
外国語を学び続けると、こうした機微に敏感になる。
言い方の微妙な違いで、相手に与える印象が
変わってくることが、体感できるようになる。
その結果、母国語の言葉遣いにも留意する気
になるのが、語学学習の副産物のひとつ。
–
◆ 和訳は文脈に合わせて工夫する。
和訳を2文添えたものでは、
ニュアンスに僅差が見られる。
どちらが的確かは、当事者でなければ
分からない場合も多い。
- “She is new to our company.”
(彼女は弊社の新人です。)
≒ Our company is new to her.
– - “He is new to skydiving.”
(彼はスカイダイビングの初心者。)
※ 直訳「スカイダイビングに対して、
彼は新しい。」
≒ Skydiving is new to him.
– - “They are new to this city.”
(彼らはこの市には初めて来た。)
(彼らはこの市に来たばかり。)
≒ This city is new to them.
– - “I am new to fatherhood.”
(私は初めて父親になった。)
(私は父親になったばかり。)
≒ Fatherhood is new to me.
– - “She is new to this industry.”
(彼女にとって、この業界は初めて。)
(彼女はこの業界では新人だ。)
≒ This industry is new to her.
– - “I am new to programming.”
(私はプログラミングを始めたばかり。)
(私はプログラミングの初心者。)
≒ Programming is new to me.