など、 その他いろいろ、 その他もろもろ
頻出に至らないが、予め知らないと
まず聞き取れない。
「 ワッ ナッ 」などと聞こえる。
【発音】 wɑːt.nɑːt
【音節】 what-not (2音節)
例示によく使う名詞。
この用法では、不可算名詞 である。
–
◆ 語源は ” what not ” で、
” what may I not say “
の省略表現。
【参照】 https://www.etymonline.com/search?q=whatnot
–
◆ たとえ理解できなくても、さほど支障はないのが普通。
しかし、これからご案内するように、” whatnot ”
に込められるニュアンスは、一応押さえておくとよい。
相手が言外に匂わせる感情の機微をとらえる
ことができる から。
ニュアンスを学んでおけば、その使い手が、
なぜ ” whatnot ” と表現したか、考察する
きっかけができる。
特にビジネス場面にて、大切となる考え方である。
利害関係のうごめく相手からは、額面通りに
受け取ってはならない状況は少なくない。
複眼的にニュアンスがつかめると、
有利になる機会は確かにある。
それに気づくか気づかないかが、
商談の成否を分けたりする。
【参考】 ” sketchy ”
◆ 例示として事物をいくつか並べた後に、
” and whatnot ” と置くパターンが最多。
この <2語ワンセット>で覚えるとよい。
” and whatnot “
spoken
an expression used at the end of a list of
things when you do not want to give the
names of everything.
(ロングマン、LDOCE6)
【発音】 wɑːt.nɑːt
【音節】 what-not (2音節)
–
※ 下線は引用者
上掲LDOCE6の説明(青字)通り、口語中心の表現である。
文面に落とす際は、直前のコンマがあったりなかったり
する。その適否は、文法書により論が分かれる。
メディア報道を含む日常使用を調べると、両方ありな感じ。
“and whatnot” は「すべての名を挙げたくない」(下線部)
場面で使う表現とある。
◆ 注意すべきは、なぜ「すべての名を挙げたくない」
かという点。
つまり、背後にひそむ動機が案外大切になる。
- 面倒くさい
- それ以外は知らない
- 得体の知れない対象の 総称として
このような動機が、最も一般的な使われ方だと考える。
用途別の統計は、なかなか見つからないが、
この中立的な意味合いこそ、原則的な用法であると推測できる。
英英辞典の語釈の中心をなすので、外れてはいないだろう。
◆ 厄介なのは、「 言及する価値を認めない 」から。
すなわち「 軽蔑を表す用法 」としての “whatnot”。
今回調べた6点の英英辞典(オンライン版含む)のうち、
この「軽蔑用法」に触れているのが、コリンズ。
また、5点(LDOCE6以外)には “informal” 表示がある。
“whatnot” がくだけた表現であることは間違いない。
” whatnot “
noun, informal
1. Also called: what-d’you-call-it informal
a person or thing the name of which is unknown,
temporarily forgotten, or deliberately overlooked.
【発音】 wɑːt.nɑːt
【音節】 what-not (2音節)
「 わざと見落とされた 」が青字部分。
忘れたわけでなく、ちゃんと意識に上がったが、
あえて言わなかった様子。
ちなみに、こちらの ” whatsit ” (あのなんとかいうもの、例のあれ)
の語釈も酷似する。
” What’s its name ” の略である。
辞書によっては、2語とも「 代名詞 」扱いしている。
” whatsit ”
noun, informal
a thing the name of which is unknown,
temporarily forgotten, or deliberately overlooked.
【発音】 wɑːt.sɪt
【音節】 what-sit (2音節)
どちらも「軽蔑」とは明記されていない。
「わざと見落とされた」(青字)のみ。
果たして、大目に見たのか、それとも軽くみたのか。
他動詞 “overlook” は、どちらとも解釈できる。
基本は「大目に見る」。
– 「大目に見る」 ( condone、forgive、pardon )
– 「見下す」 ( ignore、neglect、skip )
実使用における “deliberately” の印象はあまりよくない。
「 わざと 」「 故意に 」 が定訳で、 ニュアンスも重なる。
“deliberately overlooked”(わざと見落とす) は、
「 わざと見逃した 」とも「 わざと無視した 」とも解釈できる。
とがめるはずのことを、大目に見て「 見逃す 」。
見て見ぬふりをするから、「 目溢し 」である。
めこぼし 【目溢し】
1. とがめるべきことを故意にとがめないこと。
見のがすこと。
( 広辞苑 第七版 )
※ 語釈の該当項のみ引用
「 わざと見逃した 」ではなく、「 わざと無視した 」が、
「 軽蔑用法 」に該当する。
映画・ドラマのシーンには、この用法の ” whatnot ” が目立つ。
それは、役者の表情やストーリーから明らかである。
◆ “whatnot” には、さらに次の動機もある。
- 不都合だから、相手に隠したい
- 苦手で不快だから、口にしたくない
- 例示件数を最少にして、追及を免れたい
「軽蔑用法」ほど、露骨なネガティブ要素はないものの、
これらの “whatnot” も中立的とは言いがたい。
不都合を回避する婉曲用法 に準じる。
不定称の代名詞 ” so-and-so ” ( 後述 ) と似通う用法である。
–
◆ これまでの説明で気づくことは、日本語の助詞
「 など 」と”whatnot” の機能が非常に似ている点。
言語(英日)と品詞(名詞と助詞)の違いがあるため、
文法上の役割に違いはあるものの、基本的機能はすべて
該当すると考えられる。
『 広辞苑 』で比較してみよう。
青字が ” whatnot ” との共通部分。
など【等・抔】
[助詞](副助詞)
1. ある語に添えて、それに類する物事が
他にもあることを示す。
2. それだけに限定せずやわらげている。
3. (引用句を受けて)「 大体そんなことを 」
の意を表す。
4. その価値を低めていう。相手の言ったことを
しりぞける心持で、特にとり立てて示す。
否定的・反語的表現を伴うことが多い。
(広辞苑 第七版)
2 は「婉曲用法」。
また、4は「軽蔑用法」だが、「など」そのものよりは、
例示される事物に対する軽蔑が主となる。
この点で、主に言及しない事物を低める意図の
“whatnot” とは異なる。
だが、文法的な厳密さが求められない
日常使用においては、同様と考えられる。
両者とも、話題の価値を低める趣旨 で起用する語
である点は同じだから。
ほぼ同機能と考えると、「など」からも「婉曲用法」
と「軽蔑用法」を検討できる。
例文を見ていこう。
- 「我々が改善すべきは、コミュニケーション
や教育訓練 など です。」–
→ 婉曲用法:全部を断言しないで、やわらげる
– - 「コミュニケーション など 知るか。」
→ 軽蔑用法:価値を低める
「 など 」のありふれた使い道で、なんら難しくない。
各発言に伴う感情も推察しやすい。
–
◆ “whatnot” を用いて、この2文を英訳すると、
- “We need to improve communication,
training and whatnot.”
– - “Who cares about communication
and whatnot.“
言語は違うといえど、上記の感情面は変わらない。
繰り返すが、言語と品詞の違いにもかかわらず、
基本的機能は同然。
したがって、ここまでの説明と「など」の用途が分かれば、
” whatnot ” の基礎はクリアしている。
–
◆ 以上より、” whatnot ” はニュアンスが 大切であることが、
ご理解いただけたと思う。
その場の当事者であれば、おおよそは把握できるだろう。
中立的な意味合いの ” whatnot ” が普通であり、
「 婉曲 」「 軽蔑 」ばかりでないことは、再度強調しておきたい。
以下の和訳は、あくまでも一例。
状況次第で、意味するところが違ってくる場合もある。
和食なんぞ、知らんわ
- “They serve sushi and whatnot.”
(あの店はお寿司など、いろんな料理があります。)
– - “There is no relationship and whatnot.”
(男女関係なんて、ありませんよ。)
– - “We need to prepare pens, pencils and whatnot.”
(ペンや鉛筆、その他もろもろを用意しなければならない。)
– - “Those people are full of cheaters and whatnot.”
(この人たちは、浮気者などだらけ。)
– - “My son wants a dog, a cat, a rabbit and whatnot.”
(息子は犬、猫、うさぎ、その他いろいろ欲しがっている。)
–
◆ 冒頭で、”whatnot” は 不可算名詞 とした。
マイナー用法の可算名詞として、「 飾り棚 」「 置き棚 」
を意味する。
不可算名詞 “whatnot” に比べると、重要度と頻出度が
低いため、本稿では割愛した。
< 類似表現 >
■ 軽蔑用法を含む不定称
- so-and-so ( 誰それ、 誰々、 なんとか )
■ 中立的 = 他意のない 「 など 」
- etc. / et cetera ※ ラテン語「その他」
→ “et (and) cetera (the others)” - and more
- and others
- and so on
- and so forth
■ 同類の人・物を指す「 など 」