笑い飛ばす、笑ってごまかす
「一笑に付す」を意味する句動詞。
すなわち「笑ってとりあげない」(広辞苑 第六版)
こと。
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◆ “laugh” の語源は、古英語「大声をあげる」(hlæhhan)。
【発音】 lǽf
【活用形】 laughs – laughed – laughed – laughing
名詞・自動詞・他動詞がある。
大意は「笑う」で一貫している。
朗らかで楽しい笑いだけでなく、
嘲笑・冷笑など、印象のよくない笑いも
“laugh” で表現できる。
“laugh off” の “laugh” は、他動詞「笑う」。
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◆ “off” は副詞。
副詞の “off” は非常に多義である。
ここでは「離れて」という空間的な分離を示す。
この副詞 “off” と同じ用法には、次の句動詞がある。
- fend off(かわす、寄せ付けない)
- ward off(かわす)
※ “fend off” とほぼ同義、後述OALD参照 - fight off(撃退する)
※ “fend off” とほぼ同義、後述OALD参照 - back off(引っ込んでろ、後ろに下がれ)
- stand off(近寄るな)
- keep off(立ち入るな、立入禁止)
- hands off(触るな)
- shrug off(受け流す、あしらう、一笑に付す、
相手にしない、スルーする)
「離れる」転じて「飛ばす」となり、
“laugh off” は「笑い飛ばす」。
似通った感情の「笑ってごまかす」も意味する。
さらに、マイナー用法として「笑って退場させる」。
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◆「笑い」とは、非常に複雑な感情表出とされる。
人間固有の奥深い感情で、昔から分析されてきている。
フランスの哲学者、ベルクソンの名著『笑い』(1900年刊)
が有名だが、はるか以前にプラトン(前427~前347)
が考察済みである。
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◆「笑い飛ばす」本人の胸中は推察しがたい。
一見、歯牙にもかけない強気の笑いに見えても、
本心を簡単に推し量ることはできない。
焦燥・屈辱・痛恨・憎悪・悲嘆・諦念・憤怒
その笑いの裏に、別の感情をひた隠しているかもしれず、
実は笑い事でなかったりする。
そんな多重的な笑いだが、辞書の説明はすっきり単純だ。
“laugh off“
to pretend that something is less serious
than it really is by laughing or joking about it.
(ロングマン、LDOCE6)
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◆ 人間の感情を理解するのは容易でない。
無形ゆえ、不可視的で抽象的 (“integrity” 参照)。
それを言葉で表すのは、まさしく “challenging”
に他ならない。
- “She laughed off the rumor.”
(彼女はそのうわさを笑い飛ばした。)
– - “Don’t laugh off your mistake.”
(自分のミスを笑ってごまかすなよ。)
– - “He tried to laugh off his troubles.”
(彼は自分の悩みを笑い飛ばそうとした。)
– - “She laughed off his proposal.”
(彼のプロポーズを彼女は一笑に付した。)}
– - “I just had to laugh off his request.”
(彼の要求は笑い飛ばすしかなかったのよ。)
【関連表現】
“crack up”
https://mickeyweb.info/archives/20422
(爆笑する、爆笑させる)