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Crack up

      2020/01/02

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 2 minutes

1. 爆笑する、爆笑させる   2. 精神的に参る 3. 衝突する 

句動詞 “crack up” の主な意味は上記3つ。

日常的に多用されるのは「爆笑」の方。
よって、本稿ではこちらを中心に取り上げる。

1語の可算名詞 “crackup” との区別に注意。
2語の句動詞が名詞化されたものなので、
意味はほぼ共通する。これも同時に見ていく。

“crack up” と “crackup” のイメージは、
まとまりなく取り乱した様子。

それは “crack” の次の語源から来る。
古英語「鳴り響く」(cracian)
クラッカー(cracker)もここから派生。

crackdown“(取り締まり、弾圧、検挙)と等しい。

“crack” には、名詞・自動詞・他動詞・形容詞・副詞
があり、いずれも非常に多義である。

まず、押さえるべきは名詞。
鞭や銃などが鳴る「鋭い音」を示す。
パーン、ピシャッ、ガツン、パチン

そこから「ひび」「割れ目」「裂け目」をも意味する。
いずれも可算名詞。

– 自動詞「鋭い音を立てる」「炸裂する」「砕ける」
– 他動詞「鋭く鳴らす」「ぴしゃりと叩く」「押し入る」
– 形容詞「一流の」※ まれ
– 副詞「バチンと」

“crack” の基本的意味のどれを取っても、
騒々しく尖っている
これが “crack” の共通イメージ。

副詞 “up”(すっかり)(完全に)を伴い、
その騒がしさを強調したのが、句動詞 “crack up”。

その結果、こうなる。

一見、3つの語義に何の脈絡もないが、流れはこう。

“crack” の語源「鳴り響く
→「バーン」→「割れ目」→「バラバラ
→「衝突」・「崩壊」・「爆笑

“crack up”

fall apart” (バラバラになる。崩壊する。だめになる。)
と同じ意味合いから派生した “crack up”。

物心両面のバラバラ崩壊した状態を表せるため、
衝突・崩壊・爆笑をカバーする。

crack up” 
informal
1. to become ill, either physically or mentally,
because of pressure.
2. to start laughing a lot.

(オックスフォード、OALD9)

“crackup” 
countable noun
1. nervous breakdown.
2. an accident involving one or more vehicles.

(ロングマン、LDOCE6)

まず、車の「衝突」。大破(米俗 “totaled”)
までには至らなくても、相当壊れた状態になること。

次に、心身の「崩壊」。
「神経衰弱」などの神経症が中心となるが、
肉体的な病にも用いることができる。

最後の「爆笑」は、バラバラ崩壊した様子とは
結びつきにくいかもしれない。
しかし、現に「腹筋崩壊」という若者言葉がある。

さらに、次の語釈はどうだろうか。

「爆笑」
はじけるように大声で笑うこと。

「げらげら」
無遠慮に大声で笑う声。

(広辞苑 第七版)

「ゲラゲラ笑う」の語調は「バラバラ」に似る。

良くも悪くも取り乱しており、騒がしい。
ニュアンスは、やはり共通する。

インターネット上のコメントや私的メールに
よく出てくる “lol“(または “LOL”)と同義。

すなわち、”laughing out loud” の頭字語である。

“lol” の使い方は、日本の(爆)や “ww” とほぼ同じ。
これらの絵文字(emoji)は世界的に人気がある。

“crack up” の日常用法では、この「爆笑」が目立つ。

だが、上記 OALD9 の通り、ほとんどの英英辞典
には、”informal” 表記のある使い方である。

この点、「神経衰弱」も同様。

“crack up” =「バラバラに崩壊」から発展した
用法のため、正式ではない言い回しとなるものの、
特に下品さはない。

まさに「ゲラゲラ笑う」感じ。

「爆笑」の “crack up” は、他動詞と句動詞を兼ねる。
つまり、句他動詞と句自動詞の両方で使える。

“crack up”

  • 句自動詞「爆笑する
    to laugh at something.
  • 句他動詞「爆笑させる
    to make someone laugh a lot.

(英文:LDOCE6)

句動詞(phrasal verbs)は多数存在するが、
自他動詞を兼ねる句動詞は実は多くない。

自他動詞兼用で、使いやすいのが、
“crack up” が多用される一因である。

また、1音節の単語2つで構成されるため、発音しやすい。

さらに、先述のように、”crack” の語感が、
腹を抱えて「ゲラゲラ」笑う姿をうまく描写する。

楽しい気分をもたらし、思わず使いたくなるのが、
“crack up”。

 

◆ 次の例文から、その愉快な雰囲気をとらえる
ことができるだろうか。

<句自動詞>

  • “I cracked up for her joke.”
    (彼女の冗談に大笑いした。)
  • “We all just cracked up at the scene.”
    (そのシーンに私たちはただただ爆笑した。)
  • “The students cracked up when they saw me.”
    (生徒たちは私を見てゲラゲラ笑った。)

<句他動詞>

  • “His dance is so funny. It cracks me up.”
    (彼の踊りはかなりおかしくて、爆笑もの。)
  • “Those girls just crack me up with the things they do.”
    (あの少女たちはやることなすこと大笑いさせてくれる。)
  • “You crack me up ! ”
    (超笑わせてくれるね!)

 

 

【類似表現】

laugh off“(笑い飛ばす、笑ってごまかす)

 

【参考】

「句動詞」「句自動詞」「句他動詞」について
https://mickeyweb.info/archives/43508

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