プロ翻訳者の単語帳

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Shrug off

      2019/05/08

受け流す、あしらう、一笑に付す、相手にしない
スルーする

“shrug” とは「肩をすくめる」こと。
すなわち、両肩をちぢめる動作。

欧米人がよく見せるこの身振りは、
多くの日本人には馴染みのないもの。

肩って、ちぢむ部位なのか?
首なら分かるけど。

説明の煩いを避けるため、ぶっつけから図示する。

 

◆ まずは、筋トレの “shrug”。

上背部の筋肉を鍛える上で欠かせない種目である。
特に、首から肩、背中に伸びる僧帽筋trapezius
に効果がある。

「腕を伸ばしたまま、肩を真上に上げる」のがポイント。

肩を高く上げる際に、肩をすぼめてちぢませる。
肩をすくめる運動なので、名付けて “shrug”。

日本でも、昔から「シュラッグ」。

image.pngーーーーー僧帽筋を鍛える肩の筋トレ

使用器具により、バーベル・シュラッグ(左上)、ダンベル・
シュラッグ、さらにケトルベル・シュラッグ(右下)などがある。

 

◆ お次は、絵文字の “shrug”。

日本発祥の絵文字は、”emoji” として世界中に普及している。
【参照】“emoji” のスペルが、拡散を促進

ユニコードに定義された絵文字がこれ。

ーーーーーーーー¯\_(ツ)_/¯

2016年に unicode 入りした “shrug”(U+1F937)である。

実際の絵文字は、使用機器やソフトウェアの種類でデザイン
の異なる場合がほとんど。

ここで、主要企業の “shrug” 女子をご紹介したい。

十人十色の名花、と堂々披露の晴れ舞台になるはずが、
一様にぽかんとした顔持ちで、万歳する絵姿。

Appleimage.png

Googleimage.png

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Twitterimage.pngFacebookimage.png

EmojiOneimage.png

Emojipediaimage.png

emojideximage.png

【出典元】  https://emojipedia.org/shrug/けだが
※ 2018年10月23日アクセス

 

けったいな美女10名。

何だかもったいない。
十把一絡げの駄作に感じてしまう。

もうちょい丁寧な絵図に仕上げられなかったのだろうか。

それでも、肩をすくめる姿勢は確かに認められる。

 

◆ なお、「降参」する際に、両手を挙げることがある。

こちらは両肩をすくめずに「お手上げ」するだけ。
多くの国で共通する手振りである。

  • throw up one’s hands
  • throw one’s hands up
    (降参する)

複数形 “hands” で、まさに「お手上げ」。
※ “one’s” は所有格

おてあげ【御手上げ】
(両手をあげて、降参を表すことから)
全くどうにもしようがなくなり、途方にくれること。
(大辞林 第三版)

旗幟鮮明で、分かりやすい。

 

◆ “shrug off” は「お手上げ」と違い、意味深長である。

のっぺりした無表情のオンパレードから推察できるが、
あまり感じのよい仕草とは言えない。

“shrug” 女子の残念な表情は、単に絵柄の問題ではない。
その内心を反映しているのである。

  • さあね
  • 知らんわ
  • 分かんない
  • ばっかみたい
  • こいつ何なの

明け透けな無関心(indifference)をうそぶく態度。
これが「肩をすくめる」= “shrug” の含む意味合い。

具体的な言動は、

どれも定訳に近い。状況に応じて適用する。

 うけながす【受け流す】
まともに応じないようにして、さりげなくかわす。
ほどよくあしらう。

かわす【躱す】
身をひるがえして避ける。

あしらう
いい加減にあつかったり、応対したりする。

いっしょうにふす【一笑に付す】
笑ってとりあげない。

いなす【去なす・往なす】
相手の攻撃・追及を軽くあしらう。

(広辞苑 第七版)

◆ 単語としてもジェスチャーとしても、この有様。

「相手にしない」素振りをむき出しにする。

状況にもよるが、一応の礼儀に欠けるに違いない。
「一応の」と書いたのは、「相手にしない」方が
よい場面も、往々にして生じるのが現実社会だから。

“shrug” することで、不快な相手を上手にかわす
ぷいと横を向いたり、さっと席を立つ具合。

罵詈雑言を浴びせるよりも、よほど品がある。

こうした態度も “shrug” で描写できる。
したがって、悪いばかりではない行為と考えられる。

 時にあっぱれな振る舞いとして、称賛されることすらある。
※ 例文参照

例えば、挑発された時や事実無根のうわさを流された時。
うまく “shrug” して、相手にしないこと。

 

◆ こんなに意味満載な “shrug”。

基本的印象は、はりよくないことを押さえておきたい。

絵文字をずらり並べたのも、全員の冷たげな表情が
それを象徴しているからである。

人数からして、1人くらい笑顔を見せてもよさそうな
ものだが、皆無である事実が原則ネガティブを示唆する。

 

◆ これまで “shrug” の説明ばかりしてきた。

表題の “off” はどうなったのだろうか。
それでは、各単語を見ていこう。

“shrug off” は句動詞初出は1902年

句動詞の基本的定義は、
「前置詞または副詞一緒に用いるこで、
元々の動詞異なる意味となる複数の単語」。

“shrug off” の場合、”shrug” の意味をそのまま引き継ぐ。
副詞 “off” を加えることで語義は拡大するが、
骨子は “shrug” 同然。

よって、定義通りの句動詞から少々外れる。

4大学習英英辞典(EFL辞典)では、

“shrug something off / aside”
to treat something as if it is not important.
(OALD9、オックスフォード)

“shrug something off”
to treat something as if it is not important 
or not a problem.
– to get rid of something unpleasant that 
you do not want.
(CALD4、ケンブリッジ)

“shrug off”
If you shrug something off, you ignore it or treat
it as if it is not really important or serious.
(COB9、コウビルド)

“shrug something ↔ off”
to treat something as unimportant and not worry about it.
(LDOCE6、ロングマン)

「 ↔ 位置の入れ替え可能  

※ 下線は引用者

下線部がポイント。

  • not important / unimportant
    (重要でない)
  • unpleasant
    (不快な)
  • ignore
    (無視する)

ネガティブな中身で、上述した内容と一致する。

 

◆ “shrug” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

語形変化は、shrugs – shrugged – shrugged – shrugging。

語源は、中期英語「肩をすくめる」(schruggen)。
どの品詞も語源に沿った意味ばかり。

– 他動詞「肩をすくめる」
– 自動詞「肩をすくめる」
– 可算名詞「肩をすくめること」

“shoulders” があってもなくても「肩をすくめる」
なので、次の2文の基本的意味は同じ。

・ “He shrugged his shoulders.”
・ “He shrugged.”
(彼は肩をすくめた。)

英英辞典の語釈も似たり寄ったりなので、
列挙するに及ばない。
代表して、CALD4をご案内。最も簡潔だったから。

“shrug”
verb [Intrasitive or Transitive]
to raise your shoulders and then lower them in
order to say you do not know or are not interested.

“shrug”
noun [Countable]
the action of raising and lowering your shoulders
to express something.

(CALD4、ケンブリッジ)

【発音】ʃrʌ́g

※ 下線は引用者

verb [Intrasitive or Transitive] = 自動詞または他動詞
noun [Countable] = 可算名詞

 “not interested” →「興味ない」→「無関心」
で、”unimportant” や “unpleasant” と同様に、
つれない言葉。

“shrug off” では、他動詞の “shrug” で「肩をすくめる」。
他動詞の句動詞なので、句他動詞。

 

◆ 副詞 “off” は非常に多義。

ここでは「離れて」という空間的な分離を示す。

この副詞 “off” と同じ用法には、次の句動詞がある。

  • back off(引っ込んでろ、後ろに下がれ)
  • stand off(近寄るな)
  • keep off(立ち入るな、立入禁止)
  • hands off(触るな)
  • laugh off(笑い飛ばす、笑ってごまかす)
  • fend off(かわす、寄せ付けない )
  • ward off(かわす)※ “fend off” とほぼ同義
  • fight off(撃退する)※ “fend off” とほぼ同義

以上より、句他動詞 “shrug off” の直訳は、

肩をすくめて離れる
肩をすくめて離す

関わり合いになりたくないとの意思表示である。
勢揃いした女子の冷淡な面持ちを、今一度思い出そう。

“shrug off” の心は、

  • さあね
  • 知らんわ
  • 分かんない
  • ばっかみたい
  • こいつ何なの

その結果、

いずれも “shrug” の説明に挙げた内容である。

句動詞 “shrug off” に重なる旨は既に触れたが、
英和辞典の自他動詞 “shrug” は、「肩をすくめる」
にとどまる記述が多いので注意。

実際には “shrug” 1語のみでも、これらの意味まで
カバーし、日常的に使われている。

もっとも、英和辞典ではカッコを加えることで、
含意を明示する語釈が多い。

以下は、錚々たる「英和大辞典」4点の動詞。

“shrug”

新英和大辞典 第6版

不快・絶望・驚き・疑惑・冷淡などを表して
(両)肩をすくめる。

1. <両肩を>すくめる。
2. 両肩をすくめて~を表す。

ランダムハウス英和大辞典 第2版

無関心・軽蔑・疑問・不快などを表して
(手のひらを上にして)<両肩を>すくめる。

両肩をすくめる。

ジーニアス英和大辞典

<人が><肩>をすくめる
《両肩をあげ、手のひらを上に向けて両手を広げ、
不快・疑い・絶望・無関心・当惑・不賛成などを示す

1. 両肩をすくめる。

新編 英和活用大辞典
肩をすくめる;無視する, 軽視する.

【発音】ʃrʌ́g

各カッコ書き(緑字)の補足説明を勘案すれば、”shrug off”
の意味合いに通じる。

“shrug” も “shrug off” も、基本はすげない態度。
その一方で、状況次第では「あっぱれ」な評価もなされる
ことに触れた。

例えば、

  1. “He shrugged off their racial slurs.”
    (彼らの口にした人種差別的な中傷を彼は受け流した。)
  2. “She managed to shrug off all the pressure.”
    (彼女はあらゆるプレッシャーを見事かわした。)
  3. “He shrugged the pain off.”
    (彼は痛みを無視した。)
  4. “She shrugged off sleep and continued her work.”
    (彼女は眠気を意に介せず、仕事を続けた。)
  5. “They shrugged off the problem.”
    (彼らはその問題をかわした。)
  6. “He shrugged off the bullies.”
    (彼はいじめっ子たちを相手にしなかった。)

小気味よい勝ちっぷり。
鮮やかな対抗手段として、”shrug off” は使えるのである。

反対側から表現すると、それぞれこうなる。

  1. “Their racial slurs were shrugged off by him.”
    (彼らの人種差別的な中傷は彼に受け流された。)
  2. “All the pressures were shrugged off by her.”
    (あらゆるプレッシャーは彼女にかわされた。)
  3. “The pain was shrugged off by him.”
    (痛みは彼に無視された。)
  4. “Sleep was shrugged off as she continued her work.”
    (眠気は振り払われ、彼女は仕事を続けた。)
  5. “The problem was shrugged off by them.”
    (その問題は彼らに無視された。)
  6. “The bullies were shrugged off by him.”
    (いじめっ子たちは彼に相手にされなかった。)

上記の言い換えには、不自然なものもある。
“shrug off” の受け身用法は、あまり一般的ではないのだ。

あくまでも比較目的なので、ご了承いただければと思う。

 

◆ ここで考えていただきたいのは、”shrug off” の印象が
立場によって大きく異なる点である。

対抗手段として用いると、胸のすく清々しさが伴ったりする。

和製俗語として定着したスルーに似通う効果がある。

  スルー【through】 

〔原義は通過などを意味する前置詞・副詞・形容詞〕
俗に、やり過ごすこと。気にしないこと。無視すること。
(大辞林 第三版)

〔俗〕聞き流すこと。やり過ごすこと。無視。
(明鏡国語辞典 第二版)

「原則ネガティブ」な印象を伴うものの、使い方次第で、
すこぶる痛快な気持ちが込み上げてくるのが “shrug off”
の持ち味。それが既記の「あっぱれ」である。

 

 

 

 

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