プロ翻訳者の単語帳

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Shrug off

      2022/06/22

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 8 minutes

受け流す、あしらう、一笑に付す、相手にしない
スルーする

” shrug ” とは「 肩をすくめる 」こと。

すなわち、 両肩をちぢめる動作。

欧米人がよく見せるこの身振りは、
多くの日本人には馴染みのないもの。

肩って、 ちぢむ部位なのか
首なら分かるけど。

説明の煩いを避けるため、 ぶっつけから図示する。

 

◆  まずは、筋トレの  “ shrug ”。

上背部の筋肉を鍛える上で欠かせない種目である。
特に、首から肩、背中に伸びる 僧帽筋trapezius
に効果がある。

「 腕を伸ばしたまま、肩を真上に上げる 」のがポイント。

肩を高く上げる際に、 肩をすぼめてちぢませる。

肩をすくめる運動なので、 名付けて ” shrug “。

日本でも、昔から「 シュラッグ 」。


僧帽筋を鍛える肩の筋トレ


使用器具により、 バーベル・シュラッグ( 左上 )、
ダンベル・シュラッグ、さらに ケトルベル・シュラッグ( 右下 )
などがある。

 

◆  お次は、絵文字の  “ shrug ”。

日本発祥の絵文字は、” emoji ”  として世界中に普及している。

【参照】  “ emoji ” のスペルが、  拡散を促進

ユニコードに定義された絵文字 がこちら。

ーーーーーーーー¯\_(ツ)_/¯

2016年に ” unicode ” 入りした、 “ shrug ”( U+1F937 )である。

実際の絵文字は、使用機器やソフトウェアの種類でデザイン
の異なる場合がほとんど。

ここで、主要企業の  “ shrug ” 女子をご紹介したい。

十人十色の名花、と堂々披露の晴れ舞台になるはずが、
一様にぽかんとした顔持ちで、  万歳する絵姿。

Apple

Google

Microsoft

Samsung

WhatsApp

TwitterFacebook

EmojiOne

Emojipedia

emojidex


【出典元】  https://emojipedia.org/shrug/けだが

※  2018年10月23日 アクセス

全部この時点の図柄  →  その後、 改善されている

 

けったいな美女10名。

なんだかもったいない。

十把一絡げの駄作に感じてしまう。

もうちょい丁寧な絵図に仕上げられなかったのだろうか。

それでも、肩をすくめる姿勢は確かに認められる。

 

◆  なお、「 降参 」する際に、 両手を挙げることがある。

両肩をすくめず、「 お手上げ 」するだけ。

多くの国で共通する手振りである。

  •  throw up one’s hands
  •  throw one’s hands up
    ( 降参する )

複数形  ” hands ” で、 まさしく「 お手上げ 」。

両手を、上に( up ) 投げ出す感じ。

◆  ” one’s ” には、通常は人称代名詞の 所有格 を入れる。

すなわち、次のいずれか。

  •  my   私の
  •  your   あなたの
  •  his   彼の
  •  her   彼女の
  •  their   彼らの
  •  our   我々の
  •  its   それの

” one’s ” は、所有格の代表形 として、
辞書などで起用される。

具体的には、不定代名詞( an  indefinite  pronoun
” one ”  の所有格が  ” one’s “。

上記の所有格を代表する。

いわば、所有格のワイルドカードとして使われる。

【参照】  ” On one’s terms

おてあげ【御手上げ】

( 両手をあげて、降参を表すことから )
全くどうにもしようがなくなり、途方にくれること。
( 大辞林 第四版 )


旗幟鮮明で、分かりやすい。

 

◆  ” shrug off ” は「 お手上げ 」と違い、 意味深長である。

のっぺりした無表情のオンパレードから推察できるが、
あまり感じのよい仕草とは言えない。

” shrug ” 女子の残念な表情は、 単に絵柄の問題ではない。

その内心を素直に反映しているのである。

  •  さあね
  •  知らんわ
  •  分かんない
  •  ばっかみたい
  •  こいつ何なの

明け透けな無関心(indifference)をうそぶく態度。
これが「肩をすくめる」= “shrug” の含む意味合い。

具体的な言動は、

どれも定訳に近い。状況に応じて適用する。

 うけながす【受け流す】

まともに応じないようにして、さりげなくかわす。
ほどよくあしらう。

■  かわす【躱す】

身をひるがえして避ける。

■  あしらう

いい加減にあつかったり、応対したりする。

■  いっしょうにふす【一笑に付す】

笑ってとりあげない。

■  いなす【去なす・往なす】

相手の攻撃・追及を軽くあしらう。

( 広辞苑 第七版 )


◆  単語としても、 ジェスチャーとしても、 この有様。

「 相手にしない 」素振りをむき出しにする。

状況にもよるが、一応の礼儀に欠けるに違いない。

「 一応の 」と書いたのは、「 相手にしない 」方が
都合よい場面も、 往々にして生じるのが衆生界だから。

” shrug ” することで、 不快な相手を 上手にかわす

ぷいと横を向いたり、 さっと 席を立つ 具合。

罵詈雑言を浴びせるよりも、よほど品がある。

こうした態度も ” shrug ” で描写できる。

したがって、 悪いばかりではない行為と考えられる。

 時に あっぱれな振る舞い として、称賛される ことすらある。

※  例文参照

例えば、挑発された時や事実無根のうわさを流された時。

うまく ” shrug ” して、相手にしないこと。

 

◆  こうして意味満載な  ” shrug “。

基本的な心証は、 好ましくないことは押さえておきたい。

絵文字をずらり並べたのも、全員の冷たげな表情が
それを象徴しているからである。

人数からして、1人くらい笑顔を見せてもよさそうなものだが、
皆無である事実が 原則ネガティブ を示唆する。

 

◆  これまで  ” shrug ” の説明ばかりしてきた。

ところで、 表題の  ” off ”  はどうなったのだろうか。

それでは、 各単語を見ていこう。

” shrug off ” は 句動詞( phrasal verb )

初出は、1902年

句動詞の基本的定義は、
「 前置詞または副詞一緒に用いるこで、
元々の動詞異なる意味 となる複数の単語 」。

” shrug off ” の場合、” shrug ” の意味をそのまま引き継ぐ。

副詞 ” off ” を加えることで語義は拡大するが、
骨子は ” shrug ” 同然。

よって、定義通りの句動詞から少々外れる。

【参照】  句動詞の詳細  →  “ follow through

◆  4大学習英英辞典( EFL辞典 )では、

” shrug something off / aside “

to treat something as if it is not important.
( OALD9、オックスフォード )

” shrug something off “

–  to treat something as if it is not important 
or not a problem.
–  to get rid of something unpleasant that 
you do not want.
( CALD4、ケンブリッジ )

” shrug off “

If you shrug something off, you ignore it or treat
it as if it is not really important or serious.
( COB9、コウビルド )

” shrug something  ↔  off “

to treat something as unimportant and not worry about it.
( LDOCE6、ロングマン )

◇  「  ↔  」位置の入れ替え可能

※  下線は引用者


下線部がポイント。

ネガティブな中身で、上述した内容と一致する。

 

◆  ” shrug ” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【活用形】  shrugs – shrugged – shrugged – shrugging

語源は、中期英語「 肩をすくめる 」( schruggen )。

どの品詞も、語源に沿った意味ばかり。

–  他動詞 「 肩をすくめる 」
–  自動詞 「 肩をすくめる 」
–  可算名詞 「 肩をすくめること 」

” shoulders ” があってもなくても「 肩をすくめる 」なので、
次の2文の基本的意味は同じ。

  • “He shrugged his shoulders.”
  • “He shrugged.”
    ( 彼は肩をすくめた。)

英英辞典の語釈も似たり寄ったりなので、列挙するに及ばない。

代表して、CALD4 をご案内。

最も簡潔だったからである。

” shrug “

verb  [ Intransitive or Transitive ]
to raise your shoulders and then lower them in
order to say you do not know or are not interested.

” shrug “

noun  [ Countable ]
the action of raising and lowering your shoulders
to express something.

( CALD4、ケンブリッジ )

【発音】  ʃrʌ́g  (1音節)

・  verb  [ Intransitive  or  Transitive ]  =  自動詞または他動詞
・  noun  [ Countable ]  =  可算名詞

※  下線は引用者


not interested ”  → 「 興味ない 」 → 「 無関心 」

で、” unimportant ”  や  ” unpleasant ”  と同様、 つれない言葉。

” shrug off ” では、 他動詞の ” shrug ” で「 肩をすくめる 」。

他動詞の句動詞なので、句他動詞( transitive  phrasal verb )。

 

◆  副詞  “ off ” は、非常に多義。

ここでは「 離れて 」という 空間的な分離 を示す。

この副詞  “ off ” と同じ用法には、 次の句動詞がある。

  •  back off  ( 引っ込んでろ、後ろに下がれ )
  •  stand off ( 近寄るな )
  •  keep off ( 立ち入るな、立入禁止 )
  •  hands off ( 触るな )
  •  laugh off ( 笑い飛ばす、笑ってごまかす )
  •  fend off ( かわす、 寄せ付けない )
  •  ward off ( かわす )    ※  “ fend off ” とほぼ同義
  •  fight off ( 撃退する )    ※  “ fend off ” とほぼ同義


◆  以上より、句他動詞  “ shrug off ”  の直訳は、

肩をすくめて離れる
肩をすくめて離す


要は、 関わり合いになりたくないとの意思表示 
である。

勢揃いした女子の冷淡な面持ちを、 今一度思い出そう。

” shrug off ” の心は、

  •  さあね
  •  知らんわ
  •  分かんない
  •  ばっかみたい
  •  こいつ何なの

その結果、

いずれも ” shrug ” の説明に挙げた内容である。

句動詞 ” shrug off ” に重なる旨は既に触れたが、
英和辞典の自他動詞  ” shrug ” は、「 肩をすくめる 」
にとどまる記述が目立つ。

実際には ” shrug ” 1語のみでも、これらの意味まで
カバーし、 ごく日常的に使われている。

もっとも、 英和辞典ではカッコを加えることで、
含意を明示する語釈が多い。

以下は、日本が誇る錚々たる「 英和大辞典 」4点。

” shrug “

研究社  新英和大辞典  第6版

不快・絶望・驚き・疑惑・冷淡などを表して
( 両 )肩をすくめる。

1.  < 両肩を >すくめる。
2.  両肩をすくめて ~ を表す。

ランダムハウス英和大辞典  第2版

無関心・軽蔑・疑問・不快などを表して
( 手のひらを上にして )< 両肩を >すくめる。

両肩をすくめる。

ジーニアス英和大辞典

< 人が >< 肩 >をすくめる
《 両肩をあげ、手のひらを上に向けて両手を広げ、
不快・疑い・絶望・無関心・当惑・不賛成などを示す

1.  両肩をすくめる。

新編  英和活用大辞典
肩をすくめる; 無視する,  軽視する.

【発音】  ʃrʌ́g  (1音節)


各カッコ書き( 緑字 )の補足説明を勘案すれば、
” shrug off ”  の意味合いに通じる。

前述の通り、 ” shrug ” も ” shrug off ” も、大抵すげない態度。

その一方で、状況次第では「 あっぱれ 」な評価もなされる。

例えば、

  1.  ” He shrugged off their racial slurs. ”
    ( 彼らの口にした人種差別的な中傷を彼は受け流した。)
  2.  ” She managed to shrug off all the pressure. ”
    ( 彼女はあらゆるプレッシャーを見事かわした。)
  3.  ” He shrugged the pain off. ”
    ( 彼は痛みを無視した。)
  4.  ” She shrugged off sleep and continued her work. ”
    ( 彼女は眠気を意に介せず、 仕事を続けた。)
  5.  ” They shrugged off the problem. ”
    ( 彼らはその問題をかわした。)
  6.  ” He shrugged off the bullies. ”
    ( 彼はいじめっ子たちを相手にしなかった。)
  7.  ” She shrugs off the President’s insults. ”
    ( 彼女は大統領の侮辱を無視する。)

小気味よい勝ちっぷり。

快哉を叫ぶとは、こういうこと。

鮮やかな対抗手段として、” shrug off ” は有効。

反対側から表現すると、それぞれこんな風。

  1.  ” Their racial slurs were shrugged off by him. ”
    ( 彼らの人種差別的な中傷は彼に受け流された。)
  2.  ” All the pressures were shrugged off by her. ”
    ( あらゆるプレッシャーは彼女にかわされた。)
  3.  ” The pain was shrugged off by him. ”
    ( 痛みは彼に無視された。)
  4.  ” Sleep was shrugged off as she continued her work.”
    ( 眠気は振り払われ、彼女は仕事を続けた。)
  5.  ” The problem was shrugged off by them.”
    ( その問題は彼らに無視された。)
  6.  ” The bullies were shrugged off by him.”
    ( いじめっ子たちは彼に相手にされなかった。)
  7.  ” The President’s insults are shrugged off by her.”
    ( 大統領の侮辱は彼女に無視される。)

上記の言い換えには、やや不自然なものもある。

” shrug off ” の 受け身用法は、さほど一般的でない

あくまでも学習上の比較目的なので、 ご了承いただければと願う。

 

◆  ここで考えていただきたいのは、” shrug off ” の印象が
立場によって大きく異なる点である。

対抗手段として用いると、胸のすく清々しさが伴ったりする。

和製俗語として定着した スルー に似通う効果がある。

  スルー【 through 】

■  〔 「 通過 」 「 通す 」 などの意 〕
俗に、やり過ごすこと。気にしないこと。無視すること。
( 大辞林 第四版 )

■  (3)〔新〕聞き流すこと。  やり過ごすこと。  無視。
( 明鏡国語辞典 第三版 )

※  語釈の該当項のみ引用


「 原則ネガティブ 」な印象を伴うものの、 使い方次第で、
すこぶる痛快な気分 が込み上げてくる。

これぞ ” shrug off ” の持ち味で、 既記の「 あっぱれ 」である。

 

 

 

 

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