思い切ってする
自他の勇気ある行為を鮮やかに表す表現。
頻出には至らないが、そこそこ出てくる感がある。
経済ニュースでよく見聞きするのは、
◇ take a plunge
よりプライベートな場面では、
◇ take the plunge
が目立つ。
違いは前置詞のみだが、意味は異なる。
よい機会なので、両方とも学んでしまおう。
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◆ “plunge” には 、他動詞・自動詞・名詞がある。
語源は、ラテン語「鉛」(plumbum)。
「鉛で水を計る」が本義。
※ 「鉛」の元素記号=”Pb”
【発音】 plʌndʒ (1音節)
基本的意味は、
– 他動詞「突っ込む」「陥れる」
– 自動詞「突っ込む」「陥る」「急に下落する」
– 名詞「飛び込み」「失墜」「急な下落」
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◆ 細かく言えば、いずれの品詞も多義である。
しかし、共通イメージがある。
思いっきり < 頭から飛び込む >
そして「 急激にガクンと落ち込む 」
これが “plunge” の共通イメージ。
上記の基本的意味にも感じられるはず。
“plunge” の印象は、文脈次第で良くも悪くもなる。
経済ニュースで使われる場合は、
暗い雰囲気が漂うことが多い。
- “WHO declares virus crisis a pandemic, U.S. stocks plunge”
(WHOのパンデミック宣言で米国株が急落)
※ ニュース見出し
「急激にガクンと落ち込む」
→ 「下落」する
名詞 “plunge” は可算名詞のみ。
よって、原則は不定冠詞 “a” がつく。
経済分野での “a plunge” は、「急な下落」。
他動詞 “take”「見舞われる」を伴うと、
“take a plunge” =「急落する」となる。
経済ニュースでは、文面・音声問わず多用される
ため、覚えておくとよい。
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◆ “plunge” は可算名詞なので、冠詞 “a” つきが
原則と記したが、”the” がつく場合もある。
それが、表題「思い切ってする」。
原則と異なり、<3語ワンセット>の慣用句で、
“the” が通例となる。
“take the plunge”
to decide to do something important or risky,
especially after thinking about it for a long time.
(ロングマン、LDOCE6)
※ 下線は引用者
ずっと考えた末に、思い切って行動する
先程の絵を、再度ご確認いただきたい。
思いっきり <頭から飛び込む> 姿。
原則 “a” と 慣用句 “the” では冠詞は別だが、
“plunge” のイメージは重なる。
どちらも <思いっきり> の勢いがある。
■ “take the plunge”(思い切ってする)は、
「清水の舞台から飛び下りるよう」
に似ている。
「きよみずのぶたいからとびおりるよう」
- 非常な決意をして物事をするときの気持の形容。
(広辞苑 第七版)
– - 非常な決意で思いきって物事を実行する。
(大辞林 第四版)
– - ひじょうに思いきった決心をすることのたとえ。
(三省堂国語辞典 第七版)
思い切った決意(日英の青字)が一致しており、
ともに飛び込んでいる。
飛び下りる際は、恐怖が襲う。
だから、大いなる決意と勇気を要する。
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◆ 実際には、「思い切ってした」と事後に描写する
ケースが多いため、過去形 “took” が多用される。
【活用形】 takes – taking – took – taken
行動を起こすことが、周囲を刺激することが少なくない。
退屈さを突き破る勢いで、目覚まし効果があるようだ。
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–
「 思い切ってやる方が、やらないで終わるよりも、
後悔は少ない 」
–
同様の結論の研究結果は複数存在する。
–
◆ 特に、 ホスピス看護師 ( a palliative carer )
の『 死ぬ間際に後悔する5つのこと 』
は、世界中で 引用 されるほど有名なもの。
※ ” palliative ” = 緩和ケア
–
【発音】 pǽliətiv
【音節】 pal-li-a-tive (4音節)
–
–
The Top Five Regrets of the DyingI wish …
- I’d had the courage to live a life true
to myself, not the life others expected of me.- I didn’t work so hard.
- I’d had the courage to express my feelings.
- I had stayed in touch with my friends.
- I had let myself be happier.
【参考和訳】
-
- 他人の期待でなく、自分らしく生きる 勇気
をもつべきだった - 働きすぎなければよかった
- 自分の気持ちを表す 勇気 をもつべきだった
- 友情を保ち続けるべきだった
- 自分をもっと幸せにすべきだった
- 他人の期待でなく、自分らしく生きる 勇気
<原文>
http://www.bronnieware.com/regrets-of-the-dying
<YouTube>
https://www.youtube.com/watch?v=nayz3xJxRTA
<TED>
https://www.youtube.com/watch?v=tAcQfn96yFk
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■ 『 死ぬ瞬間の5つの後悔 』( 邦題 )
” courage “( 勇気 ) が2つも出てくることは、 注目に値する。
勇気を出して「思い切った」行為を、大勢が
応援したくなるのも、当然なのかもしれない。
- “I took the plunge and asked her out.”
(思い切って彼女をデートに誘ってみた。)
– - “She took the plunge and bought him a car.”
(彼女は思い切って彼に車を買ってあげた。)
– - “It’s never too late to take the plunge.”
(思い切って始めるのに、遅すぎることなんてない。)
◆ なお、”take the plunge” の格別な意味として、
「プロポーズする」がある。
take the plunge
pop the question
- pop the question
- pop the big question
「プロポーズする」として、これらの表現も押さえておくとよい。
青春映画などに出てくる。
- “Did he pop the question ? ”
(彼はプロポーズした?)
(彼にプロポーズされた?)
“pop” は多義で、自動詞・他動詞・名詞・副詞があるが、
ここでは他動詞「突然~する」。
【発音】 pɑːp (1音節)
【活用形】 pops – popping – popped – popped
それぞれの直訳は「突然、質問をする」と
「突然、大きな(重大な)質問をする」。
主に、口語で用いる言い回し。
–
◆ “take the plunge” と “pop the question”。
両方とも 究極の思い切った行為 として、
人生を飾るにふさわしい表現であろう。
この内容からして、冠詞が “the” になる理由は、
中級学習者であれば、難なく理解できるだろう。
- “John took the plunge and she said yes.”
- “John popped the question and she said yes.”
(ジョンがプロポーズすると、彼女は受け入れた。)