プロ翻訳者の単語帳

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Take action

      2020/09/19

行動を取る、 行動を起こす 

颯爽と行動する姿はかっこいい。

あれこれ理由をつけて、実行しない輩が大勢いる中、
果敢に動ける気っ風は痛快で、見ていて気持ちよかったりする。

腰が重く、屁理屈をこねてばかりの人々に比べれば、
行動する者の方が、概ね得るものが大きいと考えられる。

これを裏付ける言葉の一例。

There are risks and costs to action.
But they are far less than the long range
risks of comfortable inaction. 

(行動にはリスクとコストが伴う。だが長期的に見れば、
何もしない安逸より、リスクもコストもはるかに低くなる。)

John F. Kennedy(1917-1963)
ジョン・ケネディ 第35代米国大統領


◆  先日、偶発的な作業を終えてみて、改めてそう感じた。

訳あって、早朝に出勤したところ、通路口の廊下に何やら
黒い物体が転がっている。

なんだろう

近づいてみると、犬のフンのよう。
どこかのワンコの置き土産らしい。

一般向けの行政用語として、よく “dog waste” と称される。
ペット全般のフンであれば、”pet waste“。

“waste” は可算名詞でもあるが、この用途では不可算名詞

【発音】    wéist
【音節】  waste  (1音節)

飼い主に後始末を促す標識は、住宅街の至る所に散見される。






まさか … なんで、こんな場所に? 

人影なく閑散としている始業時刻前の職場。
うららかな初夏の空気が心地よいはずのオフィス。

誰かが踏んづけたら大変。

ぷうんと悪臭が立ち込めたら最悪。
生ものだから、放っておくと腐るかも。

ああ、どうしよう。

これぞまさに、今そこにある危機

私は、第一発見者なのだ。
知ら
存ぜぬでは済まされない。

私たちの職場環境を守らなければ

 Get action.  Seize the moment. 

(行動を起こせ。 きっかけをつかめ。)

Theadore Roosevelt(1858-1919)
セオドア・ルーズベルト 第26代米国大統領

天啓のごとく舞い降りた名言。  

そうだ、自分できれいにしよう。

いつやるか   今でしょ。

  • “The time for action is now.”
  • “Now is the time to act.”
  • “I must act now.”

頭に渦巻く怒りと焦りを抑えつつ、
トイレのモップを勝手に拝借してくる。

  • “I took action quickly to clean the dirty floor.”
    (汚れた床を掃除するため、私はすばやく行動を起こした。)


モップを洗い、デスクに戻り、そ知ら顔して終日従事した。

なんだか不思議なくらい、気分爽快。

その日は、驚くほど仕事がはかどった。

 Action is eloquence. 

(行動は雄弁である。)

William Shakespeare(1564-1616)
ウィリアム・シェイクスピア  劇作家

こうは言っても、変に知れ渡ると今回は困る。

とりわけ、早番出勤の朝イチの仕事として、

  • “I got rid of dog waste.”
    (犬のフンを一掃しました。)

と業務報告するのは、ちょっとはばかられる。

結局、皆に黙っていたものの、勇を鼓してやってよかった。


◆  行動を起こすには、目的や動機を要する。

活動の源となる、体力などのエネルギーも欠かせない。

意欲があっても、ある程度の条件が整わない限り、
身動きできない難関が降って湧くのが人生。

制約要因は、資力と時間ばかりでない。 

それゆえに、万難を排して前進する人は評価される。

行動には、ありとあらゆる要因が作用し、もたらす影響は様々。
本人の資質に左右されるケースも少なくない。

とにかく行動を起こせば、座視では得がたい何かを吸収できる。


◆  行動を推奨する言い回しは、数多く存在する。

  • Any action is often better than no action.
  • Thinking will not overcome fear but action will.
  • Action is a great restorer and builder of confidence.
  • Action will delineate and define you.
  • Vision without action is merely a dream.
  • High achievers move into action immediately.
  • Action without a name is meaningless.
  • Action breeds confidence and courage.
  • We have total control over how we take action.
  • Infuse your life with action.

ふつふつたぎるエネルギーがほとばしる、威勢のよい英文。
リズム感にあふれ、和訳するのが差し出がましい気がする。

中級学習者であれば、ひと目でさっと読み取れるだろう。

表題の “take action” は、これらの要約に近い。
行動力が放つ前向きな気概を、2語で一挙に示す印象。

定訳は「行動を取る」または「行動を起こす」。

take action

to do something;
to act in order to get a particular result.

(メリアム ウェブスター)
https://www.merriam-webster.com/dictionary/take%20action


◆  “take” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】    téik
【音節】  take  (1音節)

語源は、古ノルド語「つかむ」「取る」(taka)。

「何かをつかみ取る」という意味合いの他動詞こそ、
“take” の最も基本となる。

  • 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
    (ロングマン “LDOCE6” 指標より)

他動詞 “take” は、数ある英単語全体から見ても、
最頻出かつ最重要。

【活用形】   takes – took – taken – taking

“take” は、どの品詞も極めて多義であり、語源にとどまらず、
幅広い分野に存分に派生した語。

◆  表題の “take” も他動詞。

ただし、語源そのままの「何かをつかみ取る
よりは、「手段を講じる」の語義がここでは適切。

  こうじる【講じる】
「講ずる」に同じ。
(広辞苑 第七版)

〈考え/くふうし〉ておこなう。はかる。
(三省堂国語辞典 第七版)

  こうずる【講ずる】
考えをめぐらせて行う
方法・手段を考える。
(広辞苑 第七版)

問題を解決するための手段・方法を考えて
実施する
(大辞林 第三版)

※  語釈該当引用

以下の他動詞 “take” と同じ用法。

  • take measures  (措置を講じる
  • take a precautionary measure  (予防措置を講じる
  • take every possible means  (できる限りの手段を講じる
  • take a precaution  (予防策を講じる
  • take emergency steps  (緊急措置を講じる

下線部「講じる」は、すべて「取る」に置き換えることができる。

語源通りの「何かをつかみ取る」ではなく、実施する「講じる」方
とはいえ、”take” で「取る」だと、
日本語と重なるため覚えやすい。

【参照】   “take a stand

◆  “action” は、名詞及び他動詞。

【発音】    ǽkʃən
【音節】  ac-tion  (2音節)

語源は、ラテン語「行われた」(āctus)。

“act” はもとより、”actual”、”exactly”、”react”、”agent”、
“agitate” も同源(『ジーニアス英和大辞典』より)。

他動詞「実行する」は、「主に商業関係者用語」
(『ランダムハウス英和大辞典 第2版』より)。

つまり、普段使いでは名詞用法がほとんど。
ここでもそう。

名詞 “action” もまた、最頻出かつ最重要レベルの英単語。

  • 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
  • 書き言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
  • 話し言葉頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
    (”LDOCE6″ 指標より)

これまた多義だが、他動詞 “take” と異なり、
広がりは限定されている。

すなわち、語源の「行われた」から想像できる語義中心。

  • 行動
  • 手段
  • 活動
  • 動き
  • 行い

加えて、専門性を帯びる意味は、

  • 法的手段・訴訟
  • 戦闘
  • 競技
  • 作用
  • 影響

感覚的に分かるものが多い。
カタカナ「アクション」が根付いているおかげでもある。
「行動」「動作」「演技」を意味するので、矛盾はない。

  • アクション映画
  • アクションフィギュア
  • アクションゲーム
  • アクションスター
  • アクションヒーロー

共通点は活発な動きが顕著な様子。
先述の「行動力が放つ前向きな気概」に満ちている。

これらのイメージと相まって、”action” が
動的な「行動」
である点の理解は難しくない。


演技始め!



◆  表題の “take action” には冠詞がない。

とすれば、”action” は不可算名詞なのだろうか。

実は、”不可算名詞と可算名詞を兼ねる。
そのため、”action” の内容に応じて冠詞の有無が決まる

ところが、この区別が厄介。
判然としないケースが多くて一筋縄ではいかない。

可算・不可算が明記してある辞書に従い、
先ほどのリストを振り分けてみる。

使用辞書は『ジーニアス英和大辞典』及び 3大学習英英辞典
(EFL辞典)の “LDOCE6″、”OALD9″、”CALD4” の合計4点。

有力な『リーダーズ英和辞典 第3版』、『研究社 新英和大辞典 第6版
新編 英和活用大辞典には、可算・不可算は明記されていない。

  • 行動  →  不可算
  • 手段  →  不可算
  • 活動  →  不可算
  • 動き  →  不可算 
  • 行い  →  可算  
  • 法的手段・訴訟  → 可算及び不可算  
  • 戦闘  →  可算及び不可算  
  • 競技  →  不可算  
  • 作用  →  不可算  
  • 影響  →  不可算  

◆  論が分かれた名詞がいくつかあった。

例えば、法的手段・」は『リーダーズ英和辞典 第3版
では、可算名詞。

片や “LDOCE6” と “OALD9” と “CALD4” では、
可算及び不可算
(countable, uncountable)。

実例を調べると、確かに両方見られる。

「法的手段を取る」として、可算名詞の “take an action”、
“bring an action”、”raise an action” と表現されている。

誤解を防ぐため、形容詞 “legal”(法律上の)を追加して、
“take a legal action”、”bring a legal action”、”raise a legal action”。

しかし、不可算名詞の “take legal action”、”bring legal action”、
“raise legal action” も普通に出てくる。

特に “take legal action” は、無冠詞・単数が目立つパターン。

違いを調べたが、通常の使用では同義扱いされている模様。
となると、3大学習英英辞典の両様説に軍配が上がる。

こうして、錚々たる辞書間でも争いがある場合の珍しくない
のが、可算名詞と不可算名詞の区別。

私たち日本人学習者が不得意とする「冠詞」に直結するため、
本来であれば表記は欠かせないはず。

単純に割り切れない以上の性質を思えば、先の有名どころ
英和辞書が、
この記載を避ける一因となっていると推察できる。


◆  上記の調査結果によると、多用されがちの “action” は、
「不可算名詞」
が主流と考えられる。

同時に、

“action” の中身次第で、”take an action” もある

“take actions” も日常的に見聞きする

  • “We are taking actions to protect students.”
    (学生を守るために、さまざまな対策を行っています。)
  • “Set goals and take actions to accomplish your dream.”
    (夢を実現するには、目標を立て、対策を講じることだ。)

それでも、ごく抽象的な行動を取る」は不可算名詞が原則。

同様に、漠然として、つかみどころのない「手段を取る」も、
無冠詞・単数の “take action”。

◇  日頃、取り立てて考えることなく用いる
行動を取る」「行動を起こすなら

  take action  

冠詞なしの2語が自然

この場合の “action” は、不可算名詞

【参照】   in place“、 “paperwork“、 “acting

 

◆  何度も述べるように、”take action” は能動的な行動を表す2語。

その力強さを、さらに感じ取っていただければと思う。

次の回覧は、典型的な行政用途。

台風への備えに必要な用品を紹介し、事前準備を促している。

 


  • “We must take action to stop bullying.”
    (いじめをやめさせるため、行動を起こさねばならない。)
  • “My teacher took action to stop bullying.”
    (私の先生はいじめをやめさせるため行動を起こした。)

  • “The government has taken drastic action.”
    (政府は思い切った行動を取っている。)

  • “The school has taken action against bullying.” 
    (その学校はいじめに対処している。)

  • “There are a lot people out there taking action
    against this president.”
    (今の大統領に反対する行動を取っている人がこの世に大勢いる。)
  • “Students are taking action for change.”
    (学生たちは変化に向けて行動を起こしている。)
  • “There is no need to take action.”
    (行動を起こす必要はない。)(対応は不要。)

  • “To follow through is to take action that has been planned.”
    (遂行するとは、計画された行動を起こすことです。)

  • “Their team took action based on feedback.”
    (彼らのチームはフィードバックに基づき行動した。)

  • “Don’t just wait.  We need to take action.”
    (待つばかりでなく、我々も行動しないと。)

  • “If you want to voice opposition, take action here.
    (異議申し立てをするには、こちらをクリックしてください。)

  • “Please take action to review your apps.”
    (使用アプリのレビューをお願いいたします。)

  • “We are prepared to take action to protect the safety
    of our employees.”
    (従業員の安全を守るために行動する用意はできている。)

  • “The government has decided to take action to stem
    the outbreak of Coronavirus.”
    (政府は、コロナウイルス流行を阻止する行動を取る
    ことを決めた。)
  • “G7 ready to take action to stem coronavirus risks”
    (G7、コロナウイルスの危険を阻止する態勢)
    ※  ニュース見出し

 

 

◆  これまでは、行動することの大切さをご案内してきた。

だが時には、世間一般に「無行動」「不作為」を要請する場面もある。

例えば、凶悪犯の指名手配。

今月2019年7月公表の実物がこちら。

否定の形容詞 “no” を加えると、”take action” の逆に

※  顔写真はモザイク加工

  • “If seen, take no action.  
    Do not approach.

    Call 911 immediately.”

    (見かけたら、なにもしない こと。近寄るな。直ちに110番。)


◆  次いで、外付けHDD(ハードディスク)の “take no action”。

HDDをパソコンに接続した直後に出てくる、操作の選択画面である。

 

 

 

【関連表現】

“Action Required”
https://mickeyweb.info/archives/3719
(要行動、対応必須)

 

 

 

 

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