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Take the plunge

      2020/11/18

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 3 minutes

思い切ってする

自他の勇気ある行為を鮮やかに表す表現。

頻出には至らないが、そこそこ出てくる感がある。

経済ニュースでよく見聞きするのは、

◇  take a plunge

よりプライベートな場面では、

◇  take the plunge

が目立つ。

違いは前置詞のみだが、意味は異なる。
よい機会なので、両方とも学んでしまおう。

◆  “plunge” には 、他動詞・自動詞・名詞がある。

語源は、ラテン語「」(plumbum)。
「鉛で水を計る」が本義。

※ 「鉛」の元素記号=”Pb

【発音】  plʌndʒ  (1音節)

基本的意味は、
–  他動詞「突っ込む」「陥れる」
–  自動詞「突っ込む」「陥る」「急に下落する」
–  名詞「飛び込み」「失墜」「急な下落」

◆  細かく言えば、いずれの品詞も多義である。

しかし、共通イメージがある。


思いっきり < 頭から飛び込む

そして「 急激にガクンと落ち込む

これが “plunge” の共通イメージ。
上記の基本的意味にも感じられるはず。

“plunge” の印象は、文脈次第で良くも悪くもなる。

経済ニュースで使われる場合は、
暗い雰囲気が漂うことが多い。

  • “WHO declares virus crisis a pandemic, U.S. stocks plunge”
    (WHOのパンデミック宣言で米国株が急落)
    ※  ニュース見出し

急激にガクンと落ち込む
→ 「下落」する

名詞 “plunge” は可算名詞のみ。

よって、原則は不定冠詞 “a” がつく。

経済分野での “a plunge” は、「急な下落」。

他動詞 “take”「見舞われる」を伴うと、
take a plunge” =「急落する」となる。

経済ニュースでは、文面・音声問わず多用される
ため、覚えておくとよい。

◆  “plunge” は可算名詞なので、冠詞 “a” つきが
原則と記したが、”the” がつく場合もある。

それが、表題「思い切ってする」。

原則と異なり、<3語ワンセット>の慣用句で、
“the” が通例となる。

“take the plunge”

to decide to do something important or risky, 
especially after thinking about it for a long time.

(ロングマン、LDOCE6)

※  下線は引用者


ずっと考えた末に、思い切って行動する

 

先程の絵を、再度ご確認いただきたい。
思いっきり <頭から飛び込む> 姿。

原則 “a” と 慣用句 “the” では冠詞は別だが、
“plunge” のイメージは重なる。

どちらも <思いっきり> の勢いがある。

■  “take the plunge”(思い切ってする)は、
清水の舞台から飛び下りるよう
に似ている。

「きよみずのぶたいからとびおりるよう」

  • 非常な決意をして物事をするときの気持の形容。
    (広辞苑 第七版)
  • 非常な決意で思いきって物事を実行する。
    (大辞林 第四版)
  • ひじょうに思いきった決心をすることのたとえ。
    (三省堂国語辞典 第七版)

思い切った決意(日英の青字)が一致しており、
ともに飛び込んでいる。

飛び下りる際は、恐怖が襲う。
だから、大いなる決意と勇気を要する。

◆  実際には、「思い切ってした」と事後に描写する
ケースが多いため、過去形 “took” が多用される。

【活用形】  takes – taking – took – taken

行動を起こすことが、周囲を刺激することが少なくない。

退屈さを突き破る勢いで、目覚まし効果があるようだ。

「思い切ってやる方が、
やらないで終わるよりも、
後悔は少ない」

との研究結果は複数存在する。

◆  特に、ホスピス看護師(a palliative carer
ブロニー・ウェア の死ぬ間際に後悔する5つのこと
は、世界中で引用されるほど有名なもの。

※  “palliative” = 緩和ケア

The Top Five Regrets of the Dying

I wish …

  1.  I’d had the courage to live a life true
    to myself, not the life others expected of me.
  2.  I didn’t work so hard.
  3.  I’d had the courage to express my feelings.
  4.  I had stayed in touch with my friends.
  5.  I had let myself be happier.

【参考和訳】

  1.  他人の期待でなく、自分らしく生きる勇気
    をもつべきだった
  2.  働きすぎなければよかった
  3.  自分の気持ちを表す勇気をもつべきだった
  4.  友情を保ち続けるべきだった
  5.  自分をもっと幸せにすべきだった

<原文>
http://www.bronnieware.com/regrets-of-the-dying
<YouTube>
https://www.youtube.com/watch?v=nayz3xJxRTA
<TED>
https://www.youtube.com/watch?v=tAcQfn96yFk

■  『死ぬ瞬間の5つの後悔』(邦題)
Bronnie Ware (原著)、新潮社、2012年刊

courage“(勇気) が2つも出てくることは、注目に値する。

勇気を出して「思い切った」行為を、大勢が
応援したくなるのも、当然なのかもしれない。

  • “I took the plunge and asked her out.”
    (思い切って彼女をデートに誘ってみた。)
  • “She took the plunge and bought him a car.”
    (彼女は思い切って彼に車を買ってあげた。)
  • “It’s never too late to take the plunge.”
    (思い切って始めるのに、遅すぎることなんてない。)

 

◆  なお、”take the plunge” の格別な意味として、

プロポーズするがある。

 

take the plunge

pop the question

 

  •  pop the question
  •  pop the big question

「プロポーズする」として、これらの表現も押さえておくとよい。

青春映画などに出てくる。

  • “Did he pop the question ? ”
    (彼はプロポーズした?)
    (彼にプロポーズされた?)

“pop” は多義で、自動詞・他動詞・名詞・副詞があるが、
ここでは他動詞「突然~する」。

【発音】  pɑːp  (1音節)
【活用形】  pops – popping – popped – popped

それぞれの直訳は「突然、質問をする」と
「突然、大きな(重大な)質問をする」。

主に、口語で用いる言い回し。


◆  “take the plunge” と “pop the question”。

両方とも 究極の思い切った行為 として、
人生を飾るにふさわしい表現であろう。

この内容からして、冠詞が “the” になる理由は、
中級学習者であれば、難なく理解できるだろう。

  • “John took the plunge and she said yes.”
  • “John popped the question and she said yes.”
    (ジョンがプロポーズすると、彼女は受け入れた。)

 

 

 

 

 

 

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