向こう側
自分の対極の位置や立場を表すフレーズ。
相手側を指して、代名詞のような使い方
でよく出てくる。
一見シンプルだが、初めて見聞きして、すぐ
意味が分かるほど容易とは思えないため、
ここで取り上げてみたい。
一度学習しておけば、次回出会った際には、
自力で把握できるだろう。
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◆ 構造は分かりやすい。
あっち こっち
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自分の立ち位置を「 こっち の端っこ 」と考えると、
相手は「 あっち の端っこ 」。
だから、 ” my end ” に対し、” the other end “。
- ” I will correct the Japanese translation on my end.”
( その和訳は私の方で訂正します。)
後ほど、詳しく見ていく。
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◆ なぜ、 あえて 「 端 」 なのかは不詳だが、
自分を端に据えれば、相手も端の方が自然で明解。
このような極端な二分割思考は、確かに理解しやすい。
関係者が自分と相手の二者のみであれば、
双方両端で考えるとすっきりする。
もっとも、実際の世の中はグラデーションだらけ。
大勢の利害関係者が入り組むことも珍しくなく、
第三者を考慮することが欠かせない。
“the other end” は、そのような第三者を省いた、
<点>の視点を基本とする。
「構造は分かりやすい」と述べた通りである。
◆ 文法も分かりやすい。
“the other end” は、文法も用法もシンプル。
使い方に明らかなパターンがあるので、
それらを押さえておけば、基本はOK。
基本パターンはすべてご紹介する。
まずは、”the other end” の文法面について。
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定冠詞 ” the “
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形容詞 ” other “(もう一方の)
-
可算名詞 ” end “(端)
3語とも、最頻出かつ最重要の英単語である。
口語・文面とも、頻出度は < トップ1000語以内 >。
重要度も < トップ3000語以内 >。
いずれも最上位に位置する。
( ロングマン、LDOCE6 の表記より )
まず、”other” の語源は、
古英語「もう一方の」(ōther)。
原義は「二者のうちの一方」。
形容詞・代名詞・副詞がある。
表題では、形容詞「もう一方の」。
“the” を伴い、”the other” が通例。
この場合、単数名詞を修飾して、
<2つのうちのもう一方>を意味する “the other”。
「単数名詞」( singular noun )とは、
単数形で使われるのが一般的な名詞。
英英辞書では “S” または “sing” と略記される。
表題の “end”(端)は、可算名詞かつ単数名詞。
(後述)
単数名詞を飾る “the other” と異なり、
3つ以上の「残りすべて」「その他すべて」の
“the other” は、複数形の名詞に伴う。
- the other three students (残りの生徒3名)
- the other four countries (他の4国)
- the other five questions (その他の5つの質問)
派生した意味が 「 向こう側の 」「 反対側の 」。
形容詞 ” opposite ” と同義。
- the other side of the road (道路の向こう側)
- the other side of the paper (紙の裏側)
- the other hand (もう片方の手)(反対の手)
- the other eye (もう一方の目)(反対の目)
- the other party (他方の当事者)(先方)
この意味合いは、代名詞の “the other” も引き継ぐ。
代名詞とは、人・事物などの一般名称の代わりに
起用される品詞。
よって、”the other” の2語完結で、
- 「 (2つのうちで) もう一方の人 」
- 「 (2つのうちで) もう一方の物 」
形容詞用法の ” the other ” と異なり、
その直後に名詞は不要。
名詞の代わりが代名詞だから。
表題では、名詞 “end” が続くので、2語完結の
代名詞ではなく、形容詞の “other”。
◆ “end” には、名詞・他動詞・自動詞・形容詞がある。
語源は、古英語「末端」(ende)。
表題の “end” は「 可算名詞 かつ 単数名詞 」と上述した。
名詞 “end” は可算名詞が基本である。
さらに単数名詞であるのが、ここでの使われ方だが、
時には複数名詞(=複数扱い)になる。
例えば「目的」「目標」を意味する場合は、
“ends” と 「複数名詞」扱いが一般的。
- for military ends (軍事目的のために)
- for political ends (政治的目的のために)
- for common ends (公益のために)
とはいえ、単数形 “end” が「目的」で使われることもある
今回の “end” についても言えることだが、
「単数名詞」の辞書表記には、ばらつきが大きい。
本稿の説明は、調べた6冊の最大公約数の解釈である。
「単数名詞」の区別は、概して英和辞典よりは、
英英辞典の方が分かりやすく表示されている。
ここでは、語源そのものの「末端」や「端」の意。
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◆ “the other end” の代表例を挙げる。
基本は、次のパターン。
” on ” と ” at ” のどちらでも使える場合が多い。
- on the other end of the phone
- on the other end of the line
( 電話の向こうにいる )
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◇ ” line ” = 通話中の電話 ( 回線 )
—・ ” She is on the other line. ”
——( 彼女は別の電話に出ています。)
以下の2つは、文脈次第で意味合いに差が出るが、
大意はこの通り。
- “When I answered the phone,
my professor was at the other end.”
(電話を取ったら、教授からだった。)
– - “I heard their screams on the other end of the phone.”
(電話の向こう側から、彼らの叫び声が聞こえた。)
– - “My daughter was crying at the other end of the line.”
(娘が電話の向こうで泣いていた。)
–
- “My wife is going to meet me at the other end.”
(行先で妻と落ち合うんだ。)
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- “Her office is the room at the other end of the hallway.”
(彼女のオフィスは、この廊下の反対の端です。)
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- “At the other end of the scale, there is a penalty.”
(その反面、ペナルティもある。)
– - “On the other end of the spectrum,
there are many jobless people.”
(その対極には、大勢の失業者がいる。)
–
- “I will see you again at the other end.”
(目的地でまた会いましょう。)
–
- “There is an English speaker available at the other end.”
(先方には英語を話せる人がいます。)
–
- “We have to factor in any issues at the other end.”
(先方で起こりうる問題も考慮しなければならない。)
– - “Imagine being a patient at the other end
of that discussion.”
(自分がその話し合いの反対側にいる患者
であると想像してみてください。)
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◆ 以上の10例でも明らかだが、この用法の前置詞は、
場所・地点を示す ” at ” または ” on “ がほとんど。
” at ” と ” on ” の基本的用法に従って区別する。
繰り返すが、両者を兼用できる場合も多い。