大騒ぎする、オーバーに扱う
We don’t have to make a big deal out of this.
(こんなことで大騒ぎする必要はないよ。)
大組織の場合、大抵どの職場にも冷静な人はいる。
難儀な仕事を前にして、ああでもないこうでもない
と騒いでいると、一声掛けてくれたりする。
「オーバーだよ。お前らバカか。」
本音はこんな感じかもしれない。
◆ “make a big deal” のイメージは「オーバー」な様子。
オーバー【over】
2. 態度・動作がおおげさである。
(広辞苑 第7版)
■ ただし、この意味での “over” は、英語では不自然。
この用途では、ほぼ和製英語である。
“He is over.“ などと述べてしまうと、
「彼(のキャリア)は終わった。」
と解釈される可能性が高い。
大変危険。
この点、こちらと似通う。
- “over the hill“(盛りを過ぎた)
- “My time is up.“(私の時代は終わった。)
■ より適切な言い回しと考えられるのは、
- 自他動詞 “overdo”、”exaggerate”
- 他動詞 “overstate”
- “go overboard“
- 名詞・自他動詞 “overkill“
【参照】
“overly”
https://mickeyweb.info/archives/32305
(過度に)
“make a big deal” の “make” は、他動詞「作り出す」。
その状態を自ら作ってしまっている状態。
よって、「”big deal” を作り出す」が直訳で、
意訳すると「”big deal” に仕立てる」。
“a big deal” とは「大きな取引」のこと。
可算名詞 “deal”(取引)を形容詞 “big” で飾ったもの。
「ディーラー」(dealer、業者)の “deal” である。
「大きな取引」から派生した数々の意味合いが、以下の通り。
青字すべてが日常的に使われている。
“big deal”
1. 大きな取引
↓
2. 大したもの
↓
3. 大物(重要人物、重大事件)
↓
4. 重大事
【例】
1. “Don’t miss out on this big deal.”
(こんな重要な取引を逃すな。)
2. “It’s no big deal”
(大したことはない。)
3. “She is a big deal in the fashion world.”
(彼女はファッション界では大物です。)
4. “This test is a big deal for me.”
(この試験は私にとって重大事なのです。)
表題の “a big deal” は、4の「重大事」「一大事」。
したがって、先ほどの和訳はこうなる。
「”big deal” に仕立てる」→「一大事に仕立てる」。
冷静な人の目からは、「一大事(a big deal)」でもないのに、
ギャーギャー騒いでいるように見える。
すなわち「大騒ぎする」。
わざわざ “a big deal” に “make” した大騒ぎ。
その醜態に「お前らバカか」と冒頭発言のお出ましとなる。
なお、2語完結で “Big deal ! ” と言えば、
通常は皮肉。
「大したものだ!」→「ご立派!」
その心は「つまんねー!」。
日本語にも共通する嫌味だろう。
【例】
“I lifted 100kg in the bench press.”
“Big deal ! I lifted 140kg.”
(ベンチプレスで 100kg 挙げたぜ。)
(ご立派!俺は 140kg 挙げたよ。)
以上より、”make a big deal” の意味合いが
だいたい把握できたのではないだろうか。
実際には<4語ワンセット>で終わるケースは少ない。
後に続くパターンは3つ。違いは青字部分。
“make a big deal of / out of / about something”
to get too excited or upset about something,
or make something seem more important than it is.
(ロングマン、LDOCE6)
“make something into a big deal” とも言う。
(オックスフォード米語辞典 第8版、OAAD8)
3つの青字に共通する役割は、「大騒ぎ」の根源を示すこと。
つまり、騒動の原因・動機や出所を表している。
- of (原因の前置詞)~のため、~で
- out of (副詞 “out”+前置詞 “of”)~から
- about (関連の前置詞)~について
前置詞の役目に基づき、厳密に分析すると、
3つの青字は同一視できない。
例えば、「原因(~のため)」と「関連(~について)」
は異なる。日本語でも同様。
そのため、青字部分は完全に代替可能とは言えない。
ところが、3大学習英英辞典である “LDOCE6”
の上記項目では、ひとまとめになっている。
通常の使用では、3つの青字に<有意の差>はない
と判断したからに他ならない。
確かに、どれも「~のことで、大騒ぎする」を意味する。
前置詞の細かい区別などに神経質にならないのが日常用途。
英語学習者としては、一度は区別を考えてみるべきだが、
この程度に大雑把であるのも、衆生界の現実。
LDOCE 以外の英英辞典も、同レベルでざっくりしている。
これ以上、詳しく分析するのは学者に任せて、
例文を見ていこう。
- “Why are you making a big deal out of
someone winning first place ? ”
(誰かが優勝したからって、
なぜそんなに騒いでるのよ。)
– - “That winner is our brother and
it is a big deal for us.”
(あの優勝者は僕たちの兄だから、
大ごとなのです。)
– - “My brother never wants to make a big
deal of it, though.”
(でも、兄はそのことで騒ぎ立てることを
一切望んでいません。)
– - “But we made such a big deal about him
winning the game, because he is our brother
after all.”
(それでも、僕たちが彼の勝利について、こうして
大騒ぎしたのは、やはり自分たちの兄だからです。)
– - “He will always be a big deal for all of us.”
(僕たち3人にとって、彼はずっと重要人物で
あり続けるでしょう。)
【類似表現】
”make a fuss”
https://mickeyweb.info/archives/10282
(騒ぎを起こす)