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Miss out

      2025/01/24

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 5 minutes

逃す、   ~ し損なう

「 うっかり逃した 」 といえば、 ” miss out “。

日常会話でもビジネスでも頻出の句動詞。

発音しやすく語勢もぴったりで、
いかにも英語ネイティブが好みそうな表現である。

◆  ” miss ” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】   mís  (1音節)

語源は、 古英語 「 的を当て損なう 」 ( missan )。

 どの品詞も、 意に反して 「 ~ し損なう 」
 という  残念で悔しい要素  を含む。


そこそこ多義だが、

語源に忠実で、 ネガティブイメージ を貫く


したがって、 分かりやすい。


◆  ” miss out ” は、

享受できたはずの好機を逃した


場合に用いる句動詞 ( phrasal verb )。

「 ~ し損なう 」 の意味では、 主に自動詞として使うので、
「 句自動詞 」( intransitive phrasal verb )。

動詞については、 別稿 “ follow through ” に事細かに述べている。

 

◆  自ら放棄したのでなく、 「 あたら (=可惜) 好機を逃してしまった 」 様子。


あたら 【可惜】

(副)
〔 立派なものが相応に扱われていないのを惜しむ意 〕
残念なことに、 価値のあるものを失うことが惜しまれる
さま。 惜しいことに。 もったいなくも。 あったら。

( 大辞林  第四版 )

  •  残念なことに
  •  惜しいことに
  •  もったいなくも
  •  せっかくの
  •  うっかりと

こうして  不本意な感じ  を伴うのがポイント。

硬軟不問で広範な分野に応用でき、 実に便利。


miss out

to not have the chance to do something
that you enjoy and that would be good for you.

( ロングマン、 LDOCE6 )


ここでの副詞  “ out ” は、常態から離脱した「外れて」。

やり損ねた ことを強調し、心残り 未練 を深める役割。


◆  ” miss out  on ”  のパターンが典型。

この ” on ” は、 関連の前置詞 「 ~ を 」 「 〜 について 」。

取り逃した対象 ( 名詞の他に、動詞なども可 ) を直後に置く。

代わりの前置詞が見つからないほど、”on” の独壇場。

同等の 「 関連の前置詞 」 である、 “about” では、代替不可。

  • ” She missed out on a great chance.”
    ( 彼女は素晴らしいチャンスを逃した。)
  • ” They miss out on a lot of fun in life.”
    ( 彼らは人生の多くの楽しみを逃した。)
  • ” I missed out on watching the movie.”
    ( その映画を観損ねたわ。)
  • ” He missed out on getting an English-related job.”
    ( 彼は英語関係の仕事に就きそびれた。)
  • ” We missed out on the trend.”
    ( 我が社は流行に乗り損ねた。)
  • ” He missed out on being the best player.
    ( 最高の選手になるチャンスをふいにした。)
  • ” I didn’t want my son to miss out on this experience.”
    ( この経験を息子にしてもらいたかった。)
    -“
  • ” Don’t miss out on important information.”
    ( 重要な情報を逃さないようにしてください。)
  • ” My daughter missed out on the field trip.”
    ( 娘は遠足に行きそびれた。)
  • ” The role she missed out on went to another actress.”
    ( 彼女が逃した役は、別の女優が得た。)
  • ” The upshot is,  I am missing out on what is essential in my life.”
    (人生で大切なものを逃しているというのが結論。)
  • ” We missed out on the last party due to COVID-19.”
    ( 前回のパーティーは、新型コロナウイルスのため、
    開催できなかった。)
  • ” I missed out on meeting my favorite actress.”
    ( 大好きな女優に会い損ねてしまった。)
  • ” Don’t miss out on getting a ticket.”
    ( チケットのご入手をお忘れなく。)
  • ” We’re missing out a lot on sales.”
    ( 我々は売上げをだいぶ取り逃している。)
  • ” Don’t miss out on our freebies ! ”
    ( 弊社の景品をお見逃しなく。)
  • ” I missed out on this item on the auction.”
    ( この商品を落札し損ねた。)
  • Don’t miss out on opportunities.
    ( 好機逸すべからず。)

 

Don’t miss out !

( お見逃しなく– ※  宣伝文句

  • Don’t miss out on coupons !
    ( クーポンをお見逃しなく!)

【類似表現】

  • Take advantage of this special offer !
    ( この機会をお見逃しなく!)


◆  なお、 句動詞  ” miss out ”  には、

見落とす 」 「 忘れる の意味もある。

こちらは、 主として他動詞で使うので、

「 句他動詞 」( transitive phrasal verb )。

※  句動詞  →  別稿 “ follow through

この場合、 ” miss ” と ” out ”  の間に目的語を入れる

使い方が目立つ。

  • ” Don’t miss anything out.”
    ( 何事も見落とすな。)

目的語を中間に置かなくても、大抵は問題なく使える。

  • ” Don’t miss out anything.”
    ( 何事も見落とすな。)

表題に比べれば、 マイナーな印象。

大基本である 「 逃す 」「 ~ し損なう 」

に通じるため、 本稿では取り上げない。

◆  ” FOMO ” という言葉をご存知だろうか。

fear of missing out “( 見逃す恐怖 ) の略語 ( abbreviation )。

2011年頃より、米国で話題に上りはじめたバズワード。

SNSのチェックを怠ると不安になる心理を指す。

「 ソーシャル依存症 」 と似通う。


FOMO

informal
abbreviation for ” fear of missing out “:

a worried feeling that you may miss
exciting events that other people
are going to, especially caused by
things you see on social media.

[example]
Don’t get FOMO. Get a ticket now!

ケンブリッジ、 CALD オンライン版 )

◇  アプリ版書籍版 の ” CALD4 ” に記載なし

【発音】    fəʊ.məʊ


” informal ”  とは、「 非正式 」 「 くだけた表現 」の意。

性質上、” informal ” なのはやむを得ないだろう。

“ FOMO ” は、こんな症状らしい。


■  16~35歳という広い範囲の年代に起こり、
極端な場合、数十秒~数分ごとにモバイル端末を
チェックせずにいられなくなり、
ストレス症状が起きたり日常生活に支障を来すことがある。
( 2013-9-10 )

知恵蔵mini

■  ネットに四六時中自分を接続していないと取り残される、
情報やチャンスを逃す、他人はその間に成功に近づいて
いくかもしれないという焦り。

グロービス 知見録


◆  ちなみに、 カタカナ語の 「 ミス 」。

事実上、 和製語に近いと考えられるため、 要注意。


ミス 【miss】

失敗すること。 過失。

( 広辞苑 第七版 )


上記『 広辞苑 』には “miss” と添えてある。

これらの国語辞典も同様。


ミス 【miss】

(名)
失敗すること。  やりそこなうこと。

( 大辞林 第四版 )

 

  ミス 【miss】

《名・自他サ変》
やりそこなうこと。  失敗。

( 明鏡国語辞典  第二版 )


日本最大の国語辞典と名高い『 日国 』も確認してみる。

前出の国語辞典と同じく、 語釈全文。


日本国語大辞典 第二版 』 第12巻、 p. 662.

小学館( 2001年刊 ) より転載


(2)に「 取り逃がすこと 」とあるのが新鮮。

本稿の主題  ” miss out ”  そのものである。

さすが、『 日国 』 ( にっこく )。

◆  その『 日国 』であっても、 語釈の(1)は、上掲の
『 広辞苑 』、『 大辞林 』、『 明鏡 』と一緒で、
失敗 」の意。

確かに、 英語の名詞  ” miss ” には、 この意味も含む。

可算名詞である。

しかし、 動詞用法に比べると、 かなりマイナー

「 ミス 」 に相応する英語は、” mistake ” の方が適切。

【発音】  mistéik
【音節】  mis-take  (2音節)

名詞・他動詞・自動詞がある。

やはり可算名詞。

【参照】   ” complaint

 

◆  一方、 以下の国語辞典には、「 ミステーク 」 も書いてある。

黄ハイライトを施した。


ミス 【miss】

(名・自他サ) [ miss,   mis-  ]
やりそこない。  まちがい。  ミステイク

( 三省堂国語辞典  第七版 )

 

  ミス (英語表記) miss  

[名]  (スル)  誤ること。  まちがえること。  失敗。  ミステーク

デジタル大辞泉


「 ミステークの略 」と明記する辞書もある。


ミス  

miss
失敗。「 ミステーク 」の略   [常]

( 角川類語新辞典 )

 

【関連表現】

 

 

 

 

 

 

 

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