プロ翻訳者の単語帳

Professional Interpreter / Translator at Government Agency

Overly

      2019/06/22

過度に   

<行き過ぎ>を表す副詞。

主たる定訳は「過度に」。

行為や状態そのものでなく、過剰な要素を問題視
するために用いるのが基本的な使い方。

「過度に」と同様に、
好意的なで使われる機会は少ない。

これぞ、同義の副詞 toovery との違いである。

  たった1語で、さらりと指摘非難できるから便利。

使い方は比較的簡単なので、ご自分で使えるように
しておくとよい。

 

◆ 手始めに、辞書チェック。

定訳があるので、最初は国語辞典から。

  かど【過度】

適切な程度を超えていること。度を過ごすこと。
また、そのさま。
(大辞林 第三版)

普通の程度を超えていること。また、そのさま。
いきすぎるさま。なみはずれ。
(精選版 日本国語大辞典)

  度が過ぎる 

■ 限度をひどく超えている
(広辞苑 第七版)

普通の程度はなはだしく超える。
(大辞林 第三版)

※ 下線は引用者

俗語なら「ぶっとぶ」のイメージが近いだろう。

  ぶっとぶ【(打っ)飛ぶ】
〔俗〕
3. 常識では考えられないほど、めちゃくちゃになる。
(三省堂国語辞典 第七版)

※ 下線は引用者

どの語釈も苛烈な点に着目。

独自性や努力を認める温かい眼差しはなく、
「なにやってんのよ」と呆れ果てている感じ。

本来ならば、賞賛に値する行為であっても、
「過度」がつくと逆効果になってしまう模様。

その際、本人の健康のためなど、もっともらしい理由
がついて回るのは言うまでもない。

辞書の例文を示すと、

  • 過度の勉強」(三省堂国語辞典 第七版)
  • 過度の運動」(明鏡国語辞典 第二版)

「勉強せよ」「運動せよ」との掛け声を形なし
にしてしまう内容である。

「普通」「常識」から外れると、「適切な程度」を越える。

そうなると、爪弾きを受けやすくなるのが、衆生界の掟。

頑張る人なら、不満が生じても不思議でない。

  • 人並み外れた努力がいけないの?
  • 「過度」って誰の基準?

外れ値(outliers)的な存在が警戒されるのは、
世界の歴史が証明している。

心ない評を物ともせず、次元を突き抜ける覚悟と才能
がなければ、開花結実は難しい。

過ぎたるはなお及ばざるが如し」などと御託を並べる
凡百の外野に負けてしまうケースが大半。

「過度」扱いで、あえなく終了。

かくして異材はつぶされる。

無残なものである。

 

◆ では「過度」を前提に、8点の英英辞典を見ていこう。

  “overly”  

too or very.
(LDOCE6、ロングマン)

■ (before an adjective) too; very
(OALD9、オックスフォード)

too; very
(CALD4、ケンブリッジ)

Overly means more than is normal, 
necessary, or reasonable.
(COB9、コウビルド)

■ very much, or too much
(Macmillan、マクミラン)

to an excessive degree : TOO
(Merriam-Webster)

too; excessively
(Collins English Dictionary, 12th Edition)

too or too much; excessively
(Webster’s New World College Dictionary, 5th Ed.)

【発音】óuvərli

非常にすっきりとした語釈ばかりである。

“overly” の初出は、1050年以前。
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
見かけによらず、古い単語である。

too“、”very“、”excessively” が共通語。
英英8点中、7点がいずれかの副詞を含む。

ここでは、”COBUILD” のユニークな解説が際立つ
(→ 短所解説)。
それでも、”more than is normal” とあるので、
先述の「普通の程度を超えている」の通り。

共通語の3語は、中級学習者にとっては、常用語レベル。

既に触れたように、”too” と “very” はネガポジ不問。

 

◆ 一方、”excessively” は “overly” に近似している。

すなわち、中立的でなく、ネガティブに偏る用途。
“excessive” と “over” の語源が似通うからこうなる。

  • excessive“(過度の、過大な)※ 形容詞
    【語源】
    名詞 “excess”(超過)+ 接尾語 “ive”(~の性質をもつ)
    → “excess” の語源は、ラテン語 “excessus”(逸脱)
  • over“(~を越えて、~より上で)※ 前置詞・副詞
    【語源】
    古英語 “ofer”(~を越えて上に)

「越える」→「行き過ぎ」の成り立ちが、もろに重なる。
様態を表す接尾語 “ly” を加えても、語源はそのまま。

したがって、ネガ寄り用法は変わらない。
2語そろって、悪口に最適。

◆ さっそく、悪態チェック。

会議中、せっせと集めた表現である。

社内だが、公式の場。
当事者が事の背景を説明していた。

槍玉に挙げられた側は、それなりの地位におられる方も多い。
物言いに注意するはずだ。

image.png

  • “He was being overly friendly and I guess kind of groping me.”
    (彼はなれなれしくなり、私を触っていたような気がします。)
    ※ “guess” 及び “kind of” で言葉をにごしている
  • “She is overly sensitive and I really don’t know what to do.”
    (彼女は極端に神経質なので、もうお手上げなのです。)
    ※ 女性職員によるパワハラ告発に上司が弁明
    ーー
  • “He was overly ambitious and overly confident.”
    (彼は野心的すぎで、自信過剰でした。)
    ※ 同僚の暴走で、顧客からクレーム
  • “He is an overly judgemental boss.”
    (彼は批判的すぎる上司なのです。)
    (彼は決めつけすぎる上司なのです。)
    (彼は細かすぎる上司なのです。)
    ※ やたら管理したがる上司は “a micro manager
    ーー
  • “I was overly naive back then.”
    (あの頃の私は、あまりにも世間知らずでした。)
    ※ 純真さを示す「ナイーブ」は和製語に近い
  • “They are overly optimistic about this project.”
    (このプロジェクトに対して彼らは楽観的すぎです。)
    ※ 怠惰な相手チームを批判
  • “But I didn’t want to get overly involved in the project.”
    (しかし、そのプロジェクトに携わりすぎるのも嫌だった。)
    ※ 自己保身
  • “Japanese staff was overly polite and wouldn’t
    leave us alone.”
    (日本人スタッフは丁重すぎて、放っておいてくれなかった。)
    ※「おもてなし文化」の弊害としてよく聞く話。 うざいらしい。
  • “We got overly excited and broke the window.”
    (私たちははしゃぎすぎて、窓を割りました。)
    ※ 社内イベントで器物損壊
  • “She seemed overly concerned about the upcoming audit.”
    (彼女は今度の監査について、ひどく心配していた様子でした。)
    ※ 突然退職した部下に対する思い

◆ 努めて自制する話し手の姿勢を看取でき、好印象である。

 “too” に比べて、知的な言い回しであるのも利点。

繰り返すが、行為(動詞)や状態(形容詞)そのものでなく、
過剰な要素を取り上げるために用いるのが基本。

雑言抜きの状況説明は、雰囲気をかき乱さないので、
出席者を安心させる。

さらりと指摘・非難できるから便利と上述したのは、
このようなメリットを指す。

品位を保ちつつ、行き過ぎを指摘するのに役立つ “overly”。
この点、日本語の「過度に」も同じだろう。

日英とも応用が効くので、ぜひ押さえておきたい。

 

【類似表現】

overdo”  ※ 自動詞・他動詞
(やりすぎる)

overkill”  ※ 名詞・自動詞・他動詞
https://mickeyweb.info/archives/7206
(行き過ぎ、過剰)

go overboard
https://mickeyweb.info/archives/831
(やり過ぎる。行き過ぎる。)

 

 

 

Sponsored Link




Jetpack

 - 英単語, 英語