Overly
2021/01/03
過度に
<行き過ぎ>を表す副詞。
主たる定訳は「過度に」。
【発音】 óuvərli
【音節】 o-ver-ly (3音節)
行為や状態そのものでなく、過剰な要素を問題視
するために用いるのが基本的な使い方。
「過度に」と同様に、
好意的な流れで使われる機会は少ない。
–
これぞ、同義の 副詞 ” too “ や ” very “ との違いである。
たった1語で、さらりと指摘・非難できるから便利。
使い方は比較的簡単なので、ご自分で使えるように
しておくとよい。
◆ 手始めに、辞書チェック。
–
定訳があるので、最初は国語辞典から。
かど【過度】
■ 適切な程度を超えていること。度を過ごすこと。
また、そのさま。
(大辞林 第三版)
■ 普通の程度を超えていること。また、そのさま。
いきすぎるさま。なみはずれ。
(精選版 日本国語大辞典)
度が過ぎる
■ 限度をひどく超えている
(広辞苑 第七版)
■ 普通の程度をはなはだしく超える。
(大辞林 第三版)
※ 下線は引用者
俗語なら「ぶっとぶ」のイメージが近いだろう。
ぶっとぶ【(打っ)飛ぶ】
〔俗〕
3. 常識では考えられないほど、めちゃくちゃになる。
(三省堂国語辞典 第七版)
※ 下線は引用者
どの語釈も苛烈な点に着目。
独自性や努力を認める温かい眼差しはなく、
「なにやってんのよ」と呆れ果てている感じ。
本来ならば、賞賛に値する行為であっても、
「過度」がつくと逆効果になってしまう模様。
その際、本人の健康のためなど、もっともらしい理由
がついて回るのは言うまでもない。
辞書の例文を示すと、
- 「 過度の勉強 」(三省堂国語辞典 第七版)
- 「 過度の運動 」(明鏡国語辞典 第二版)
「勉強せよ」「運動せよ」との掛け声を形なし
にしてしまう内容である。
「普通」「常識」から外れると、「適切な程度」を越える。
そうなると、爪弾きを受けやすくなるのが、衆生界の掟。
頑張る人なら、不満が生じても不思議でない。
- 人並み外れた努力がいけないの?
- 「 過度 」って誰の基準よ?
外れ値( outliers )的な存在が警戒されるのは、
世界の歴史が証明している。
心ない評を物ともせず、次元を突き抜ける覚悟と才能
がなければ、開花結実は難しい。
「過ぎたるはなお及ばざるが如し」などと御託を並べる
凡百の外野に負けてしまうケースが大半。
「 過度 」扱いで、あえなく終了。
かくして異材はつぶされる。
–
無残なものである。
◆ では「過度」を前提に、8点の英英辞典を見ていこう。
“overly”
■ too or very.
(LDOCE6、ロングマン)
■ (before an adjective) too; very
(OALD9、オックスフォード)
■ too; very
(CALD4、ケンブリッジ)
■ Overly means more than is normal,
necessary, or reasonable.
(COB9、コウビルド)
■ very much, or too much
(Macmillan、マクミラン)
■ to an excessive degree : TOO
(Merriam-Webster)
■ too; excessively
(Collins English Dictionary, 12th Edition)
■ too or too much; excessively
(Webster’s New World College Dictionary, 5th Ed.)
【発音】 óuvərli
【音節】 o-ver-ly (3音節)
非常にすっきりとした語釈ばかりである。
“overly” の初出は、1050年以前。
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
見かけによらず、古い単語である。
◇ ” too “、” very “、” excessively ” が共通語
英英8点中、7点がいずれかの副詞を含む。
ここでは、”COBUILD” のユニークな解説が際立つ。
※ → 短所 もある
それでも、” more than is normal ” とあるので、
先述の「普通の程度を超えている」の通り。
3つの共通語は、中級学習者にとっては、常用語レベル。
既に触れたように、”too” と “very” はネガポジ不問。
◆ 一方、”excessively” は、”overly” に近似している。
–
すなわち、中立的でなく、ネガティブに偏る用途。
“excessive” と “over” の語源が似通うからこうなる。
- ” excessive “(過度の、過大な) ※ 形容詞
–
【語源】
名詞 “excess”(超過)+ 接尾語 “ive”(~の性質をもつ)
→ “excess” の語源は、ラテン語 “excessus”(逸脱)
–
ー - ” over “(~を越えて、~より上で) ※ 前置詞・副詞
–
【語源】
古英語 “ofer”(~を越えて上に)
「越える」 → 「行き過ぎ」の成り立ちが、もろに重なる。
様態を表す接尾語 ” ly ” を加えても、語源はそのまま。
したがって、ネガ寄り用法は変わらない。
2語そろって、悪口に最適。
ー
◆ さっそく、悪態チェック。
会議中、せっせと集めた表現である。
当事者が、事の背景を説明していた。
社内だが、公式の場。
槍玉に挙げられた側は、それなりの地位におられる方も多い。
当然、物言いに注意するはずだ。
いやらしいわ–
- “He was being overly friendly and I guess kind of groping me.”
(彼はなれなれしくなり、私を触っていたような気がします。)
–
◇ “guess” 及び “kind of” で、言葉をにごす
※ “guess” → 他動詞・自動詞・名詞 「 推測(する)」
–
ー - “She is overly sensitive and I really don’t know what to do.”
(彼女は極端に神経質なので、もうお手上げなのです。)
–
◇ パワハラ告発に、上司が弁明
–
ー - “He was overly ambitious and overly confident.”
(彼は野心的すぎで、自信過剰でした。)
–
◇ 同僚の暴走で、顧客からクレーム–
–
ー
- “She is overly jealous of other people who approach her boss.”
(自分の上司に近づく人々に、彼女はやけに嫉妬するのです。)
–
◇ 周囲ともめる、同僚女性を分析
–
ー - “He is an overly judgemental boss.”
(彼は批判的すぎる上司なのです。)
(彼は決めつけすぎる上司なのです。)
(彼は細かすぎる上司なのです。)
–
◇ やたら管理したがる上司は、 ” a micro manager ”
–
ーー - “I was overly naive back then.”
(あの頃の私は、あまりにも世間知らずでした。)
–
◇ 純真さの「ナイーブ」は、和製語に近い
–
ー - “They are overly optimistic about this project.”
(このプロジェクトに対して彼らは楽観的すぎです。)
–
◇ 怠惰な相手チームを批判
–
ー - “But I didn’t want to get overly involved in the project.”
(しかし、そのプロジェクトに深入りするのも嫌だった。)
–
◇ 自己保身
–
ー - “Japanese staff was overly polite and wouldn’t
leave us alone.”
(日本人スタッフは丁重すぎて、放っておいてくれなかった。)
–
◇ 「おもてなし文化」の弊害。 うざい らしい。
–
ーー - “We got overly excited and broke the window.”
(私たちははしゃぎすぎて、窓を割りました。)
–
◇ 社内イベントで器物損壊
–
ー - “She seemed overly concerned about the upcoming audit.”
(彼女は今度の監査について、ひどく心配していた様子でした。)
–
◇ 突然、退職した部下に対する思い
–
ー
◆ 自制する話し手の姿勢を看取でき、なかなか好印象。
◇ ” too ” に比べ、知的な言い回しが利点
繰り返すが、行為(動詞)や状態(形容詞)そのものでなく、
過剰な要素を取り上げるために用いるのが基本。
雑言抜きの状況説明は、雰囲気をかき乱さないので、
出席者を安心させる。
「さらりと指摘・非難できるから便利」と上述したのは、
このようなメリットを指す。
品位を保ちつつ、行き過ぎを指摘するのに役立つ “overly”。
この点、日本語の「 過度に 」同然といっても過言ではない。
日英とも応用が効くので、ぜひ押さえておきたい。
【類似表現】
- ” overdo ” ※ 自動詞・他動詞
(やりすぎる)
– - ” overkill ” ※ 名詞・自動詞・他動詞
https://mickeyweb.info/archives/7206
(行き過ぎ、過剰)
– - ” go overboard ”
https://mickeyweb.info/archives/831
(やり過ぎる。行き過ぎる。)