予期せぬ影響、悪影響、副産物
主要な英和辞典と英英辞典の語釈トップには、
「放射性物質」(radioactive)の
「降下物」 (dust、particles)
などと書いてある。
【発音】 ˈfɔːlaʊt
3大学習英英辞典の “LDOCE”、”OALD”、”CALD”
を含む6つのオンライン英英辞典も同様。
調べた合計10点の英和及び英英辞典のうち、
「放射性降下物」が冒頭を飾らないものは
皆無であった。
◆ しかし、”fallout” が出てくるニュースは、
放射性物質と無関係な話題が多い。
そもそも人体に有害な「放射性降下物」が、
通年ニュースに出るほど降り注ぐとは考えにくい。
そのため、初めて辞書を引くと混乱必至。
なぜに「放射性降下物」?
英単語全体から見れば、頻出には至らないが、
割方ニュースには出てくるため、取り上げてみる。
◆ “fallout” は、不可算名詞のみ。
初出は、1949年または1950年(2説ある)。
核実験が本格的に始まる夜明け前である。
南太平洋から始まり、米ネバダなどで繰り返し実施
された核実験。
建物・動物などへの影響を調べるため、
測定されたのが “fallout”(放射性降下物)。
当時、米国で発行されたプロパガンダ ポスター
【出典元】https://www.redbubble.com
動詞 “fall”(落ちる)+ 副詞 “out”(外へ)
だから、外側へ落ちる「降下物」。 これが語源。
“radioactive” を加えなくても、”fallout” 単独で
「放射性降下物」を意味するのは、先の英英辞典
からも分かる。
日本でも「フォールアウト」と表す記事は少なくない。
広辞苑の語釈は次の通り。
フォールアウト【fallout】
放射性降下物に同じ。また、それが降下する過程。
ほうしゃせいこうかぶつ【放射性降下物】
核爆発や原子力発電所事故などで大気中に
排出された放射性微粒子が地表に落下したもの。
フォールアウト。
(広辞苑 第七版) ※ 2018年1月発売
2018年発売の「第七版」で、大幅に書き換えられている。
これより10年前、2008年発売の「第六版」はこうだった。
フォールアウト【fallout】
成層圏または対流圏に浮遊する放射性微粒子が
地表に降下する過程。また、放射性降下物。
(広辞苑 第六版) ※ 2008年1月発売
この10年間に、日本で起きた大災害を
反映させた改訂と推察される。
以上の内容が「予期せぬ影響」の語釈につながる
のは、想定できるだろう。
“fallout” = 「射性降下物」
の俗称は「死の灰」
先述のように、人体に有害とされるが、その測定こそ
核実験の主な目的であった。
そのため、”fallout” とは、核実験の「副産物」そのもの。
通俗的な言い回しでは、「置き土産」「おこぼれ」。
とにかくその過程で得られるもので、印象はよくなくても、
必要とされる一面もある。
測定対象となる「放射性降下物」の場合、必要に違いない。
先のオンライン辞書6点による「副産物」は、
“fallout”
- the results of a particular event,
especially when they are unexpected.
ロングマン(LDOCE)
– - the bad results of a situation or an action.
オックスフォード(OALD)
– - the unpleasant results or effects
of an action or event.
ケンブリッジ(CALD)
– - the unpleasant consequences that follow it.
コウビルド(COBUILD)/ Collins
– - the unpleasant effects of something
that has happened.
マクミラン(MEDAL)
– - a bad effect or result of something.
メリアム ウェブスター
【発音】 ˈfɔːlaʊt
LDOCE6 以外は、すべて否定的な形容詞入り。
赤字の部分である。「悪影響」ということ。
だが、”fallout” の実際の使用例を調べると、
悪い影響に限らない。
この意味で、LODCE6 は唯一適切である。
それでもやはり、圧倒的に「悪影響」で使われている。
よって、”fallout” は、基本的にネガティブと考えてよい。
◆ 今月2018年3月発表のニュース見出しで実証する。
- “Fallout for X Airlines Continues After
Death of the Bulldog”
(ブルドッグ死去による X航空への悪影響は続く)
→ 乗客のペット犬が頭上棚で死亡した事故
– - “Bank Fraud Fallout Spreads to Market
for Trade Finance”
(銀行詐欺の余波が貿易金融市場に広がる)
– - “Rumor Roundup: X name change fallout”
(うわさのまとめ:X の名前変更の影響)
– - “Bank scam fallout: Here’s why banks
must review at indemnity policies.”
(銀行詐欺の余波:銀行が損害賠償規定を
見直すべき理由)
– - “Advice: Dealing with the insurance fallout
from the storm”
(アドバイス:大雪後の保険面の取り扱い)
– - “X’s firing by President spurs growing fallout:
Who’s next? ”
(大統領のX解任が脱落者増加に拍車:次は誰?)
→ “fallout” のマイナー用法「脱落者」
※ 「見出し」英語の解説は、ここが秀逸 ↓
英語ニュースの読み方(見出し編)RNN時事英語