Round up
2020/01/02
総括する、まとめる、要約する
ニュース番組や新聞・雑誌記事で見聞きするのが、
可算名詞の “roundup”。
【発音】 ˈrɑʊndˌʌp
ハイフン入りの “round-up” とも表記する
報道メディアでは、次のように多用される。
- a news roundup
- a sports roundup
- a weekly roundup
- a monthly roundup
- a roundup of today’s news
多忙な現代人が短時間で概観するための「総括」
が “roundup”。
多くのメディアで採用されている。
“round-up”
a summary of the most important points
of a particular subject, especially the news.
(オックスフォード、OALD9)
【発音】 ˈrɑʊndˌʌp
※ 下線は引用者
まとめなので、「要約」「総集編」「ダイジェスト」
と訳されることが多い。
可算名詞 “roundup” は、句動詞 “round up” が名詞と
なったもの。意味はそのまま引き継ぐ(後述)。
“round up” の構造は、他動詞 “round” + 副詞 “up”。
他動詞の句動詞(verbal phrase)なので「句他動詞」である。
【参考】
「句動詞」「句自動詞」「句他動詞」について
https://mickeyweb.info/
◆ 句他動詞 “round up” の主な意味は、次の4つ。
3は意味からしてニュース中心だが、それ以外は常用語。
- 寄せ集める
- 総括する、要約する
- 一斉検挙する
- 端数を丸める(切り上げる)
これら4つには、一見脈略のない模様。
しかし、語源から考えると、つながりが見えてくる。
“round” は、形容詞・副詞・名詞・前置詞・
他動詞・自動詞がそろい、非常に多義。
語源は、ラテン語「円形の」(rotundus)。
形容詞・副詞・名詞の基本的意味は、カタカナ「ラウンド」と重なる。
ラウンド【round】
- 丸いさま。円形の。
- 一周。一巡。
- 運動競技で、勝負を構成する単位。
ア. ボクシング試合の各回(1回3分間)
イ. ゴルフの1コース(18ホール)
ゥ. サッカー・ラグビーなどの大会で、
—-予選・決勝などの各段階。 - 一連の会議。特に、関税などについての一括交渉。
–
(広辞苑 第七版)
この中には動詞用法がないが、英語 “round” でも
主要用途は形容詞と副詞。
それぞれの重要度と頻出度の高い順に、
<形容詞 → 副詞・前置詞 → 名詞 → 動詞>
(ロングマン、LDOCE6 の表記より)
一方、表題は他動詞。
他動詞 “round” の基本的意味は、
- 丸くする、円形にする
- まとめて完成させる
- 囲む
- 端数を丸める
- 一周する
どれも、語源「円形の」から何とか連想できる範囲内。
–
◆ 他動詞 “round” に、副詞 “up” を加える。
句動詞に多い副詞 “up” も多義だが、
ここでは「集めて」「まとめて」を意味する。
ばらばらの多数を一つにまとめる様子を表す。
同じ用法の副詞 “up” には、次のような句動詞がある。
【例】
◆ 句動詞 “round up” の語源は「牛追い」。
つまり、牛を駆り集める行為。
https://www.etymonline.com/word/roundup
他動詞 “round”(囲む)+ 副詞 “up”(集めて)
で、散り散りばらばらの牛を「囲い集める」。
すなわち、一箇所にまとめる。
–
「牛追い」を端緒として、4つの意味に派生した
–
「牛追い」→ 寄せ集める → 総括・要約する → 切り上げる
– ——————-↓
—————-一斉検挙する
鮮やかな流れではないだろうか。これぞ語学の面白さ。
多義の表現には、このような連鎖が存在するのが一般的。
ところが、一般的な辞書は紙面に限りがあるため、
そのつながりをほとんど解説しない。
その結果、学習者は<丸暗記>する羽目になる。
だが、広がりの流れを理解すれば、負担は軽くなるもの。
特に常用語の場合、比較的分かりやすい派生パターンが多い。
“round up” はその一例である。
◆ 先述の通り、”round up” の4つの意味は、
人々の日常に根付いている。
英単語全体から見れば、頻出には至らないが、
どれもごく普通に使われている用法。
以下、3つずつ例文を添えた。
1. 寄せ集める
to find and gather together a group of
people, animals, or things.
(LDOCE6)
- “My dog helped me round up the cattle.”
(愛犬が牛の群れを集めるのを助けてくれた。)
※ “cattle” は、複数扱いの「複数名詞」。
→ “a cattle” と “cattles” は間違い
– - “Let’s round up volunteers.”
(ボランティアの人たちを集めようよ。)
– - “Teachers are rounding up funds for the program.”
(そのプログラムのため、先生方が資金をかき集めている。)
–
2. 総括する、要約する
- “We will round up the news of the day.”
“Here is a roundup of today’s news.”
(今日のニュースをまとめてお伝えします。)
– - “I have to round this up for the presentation.”
(プレゼン用に、これを要約しなければならない。)
– - “She needs to round up the survey results.”
(彼女は調査結果をまとめる必要がある。)
3. 一斉検挙する
to find and arrest people.
(マックミラン)
・「検挙」
捜査機関が被疑者を特定し、必要な捜査を遂げること。
被疑者を漢書に引致することもいう。
・「被疑者」
犯罪の嫌疑を受けた者でまだ起訴されない者。容疑者。
(広辞苑 第七版)
- “The police rounded up the suspects.”
(警察が容疑者を一斉に検挙した。)
– - “They were rounded up and questioned.”
(彼らは検挙され、取り調べを受けた。)
– - “All criminals were rounded up.”
(すべての犯人が検挙された。)
4. 切り上げる
to increase an exact figure to the
next highest whole number.
(LDOCE6)
※ “whole number” = 整数
- “Round up if the value is 5 or greater.”
(その数値が5以上なら切り上げる。)
– - “Round up dollar amounts that have 50 to 99 cents.”
(端数が50~99セントの場合、1ドルに切り上げる。)
– - “Use the ‘ROUNDUP function’ to round up 123 to 130.”
(123を130に切り上げるには「ラウンドアップ関数」を使え。)
「ラウンドアップ関数」 2018年現在、我が職場は “Excel 2013” のまま
–
【関連表現】
“Whoa ! ”
https://mickeyweb.info/archives/4701
(どうどう)→ 牛や馬を停止させる時の掛け声
(ちょっと待った!)
“round down”
(端数を切り捨てる)→ “round up”(切り上げ)の反対
※ 副詞 “up” と “down” が対
–
–
<同義語の比較>
- “summary”(名詞・形容詞)
「要約」の最も一般的な単語
文書・口頭
— - “outline”(名詞・他動詞)
概略を示す
文書・口頭 ※ 文書が多め
— - “overview”(名詞・他動詞)
全体像を示す
文書・口頭 ※ 文書が多め
ーー - “summarize”(自動詞・他動詞)
要約する
文書・口頭
– - “brief“(名詞・他動詞)※ 形容詞「短い」もある
口頭で端的に状況説明する
文書・口頭
– - “sum up“(句自動詞・句他動詞)
要約する
文書・口頭 ※ 口頭が多め
ーー - “recap“(自動詞・他動詞)
要約する
口頭中心
— - “rundown“(名詞)
要約
口頭中心
—
※ 日常的には、厳密に区別されていない印象