あとはご自由にどうぞ。 あとはお任せします。
” It is all yours. ” の省略形。
直訳は「 それはすべてあなたのもの 」。
表題のように、省略形のまま用いるのが通例。
原則として、心のこもった温かみのある声掛け である。
「 それはすべてあなたのもの 」なので、
「 あとは ご自由になさって 」ということ。
状況を指す場合もあれば、物品の貸借・譲渡の場合もある。
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◆ 「 ご自由に 」というと、状況によっては突き放す
意味合いを帯びる。
あたかも < 勝手にしやがれ > の世界。
–
相手を突っぱねる表現例を挙げると、
- Have it your way.
( どうぞご勝手に )
– - Do what you want.
( 好きにすれば。)
– - Do as you like.
( 好きにすれば。)
– - Have fun.
( ご勝手に。)
– - So be it.
( 好きにすれば。それならそれでよい。)
– - Whatever.
( どうでもいいけど。)
– - You are on your own.
( 今後は自力でやりなさい。)
– - Suit yourself.
( 好きにすれば。)
– - That’s all I’ve got to say.
(自分には、それしか言いようがない。)
–
◆ 表題 ” It’s all yours. ” には、 このような影は含まれにくい。
あくまで ” friendly and casual “( 好意的で打ち解けた )
な表現であり、冷淡さにそぐわない。
無論 < 嫌味 > に使う、へそ曲がりは常に存在する。
だが、これは例外。
上に例示した表現は、他人を跳ね返す場面で多用されるが、
表題は違う。
額面通り、「 ご自由になさって 」 なのである。
所有権移転のように、全面的に相手に権利を移す感覚。
もちろん、貸し借りであれば、使用上の自由に限られる。
同じく他意のない、基本ポジティブな類似表現には、
-
Please feel free to –
( ご自由に、 ご遠慮なく ) -
as you see fit
( お好きに )
この2つも、相手の自由意思に任せる気持ち満々である。
「 私は完全に手を引くので、 あとはお好きに 」
こんな感じ。
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◆ 使用単語と文法は、基礎レベル。
- 主格代名詞 ” it “
- 三人称単数直説法現在形のbe動詞 ” is ”
= 縮約形 ” it’s “( それは )
– - 代名詞 ” all “( すべて、 全部 )
– - 所有代名詞 ” yours ”
( あなたのもの )( あなたたちのもの )
→ 単数・複数いずれもありうる
–
冒頭で「 それはすべてあなたのもの 」と直訳した。
■ ここでの ” it ” は、特定の単数の何かを指すとは限らない。
その場の状況を漠然と表す 場合も多い。
そのため、通常は訳出しない。
文法的には、「 前方照応的 代名詞 」。
状況であれば、単数 ” it ” が通例。
” It’s your turn.”( あなたの番です。)と同じ用法。
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■ ” all ” は形容詞でなく、代名詞。
前出リスト中の “ That’s all I’ve got to say. ” と同じ。
” is ” なので、単数扱いの ” all “(すべて)。
総括的である。
総括的な ” all ” には、複数扱いの代名詞もある
【参照】 ” All rise. ”
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■ ” yours ” は所有代名詞。
単複( 単数形・複数形 )兼用。
よって、「 あなた のもの 」も「 あなたたち のもの 」もありうる。
–
◆ 以上より伺えることは、その場にいる当事者でもない限り、
今ひとつ分かりにくいのが ” It’s all yours.”。
” it ” が指す内容、及び ” yours ” の単複が不詳であるから。
したがって、この < 3語ワンセット > の字面のみでは、
正確な和訳はしがたい のである。
- it → 「 物品 」 か 「 状況 」 か
- yours → 「 君のもの 」 か 「 皆様のもの 」 か
一見微差に思えるが、代名詞の中身次第で、実態は随分変わる。
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◆ 想定しやすい ” It’s all yours. ” ならば、 例えば、
- ここにあるもの、すべてお前にやる。
- 今後の運営をあなたに任せます。
- 貸してあげるから、自由に使っていいよ。
- 私の分担は完了したから、引き継ぎますね。
- 本当にすべて差し上げるのです。
- では、あとはよろしくね。
- よきに 計らえ。
- 今後は、ご自分で管理してください。
- どうぞ よしなに。
- あなたが 新オーナーです。
- これからは、皆様にお願いします。
- ぜんぶ、あげる。
–
–
全部 あなたのもの
どうだろう。
イメージはこれほど多岐に渡る。
翻訳はそう単純ではない。
共通点は、
- あとはお好きに
- どうぞご自由に
と、相手に一任する心意気である。
嫌味に悪用される余地はあるものの、基本的に好意的発言。
この点は再度強調しておきたい。
更新後は「 あなたのもの 」