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Rip-off

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ぼったくり、ぱくり 

名詞 “rip-off” と「ぼったくり」「ぱくり」は、
意味ばかりでなく、俗語に近い語感と使用場面
が驚くほど共通する。

日常使用では、そのまま置き換えて使えるほど。

今回調べた英英辞典6冊中5冊に “informal”
表示があるが、実際にはAPなどのニュース
にも普通に出てくる。

一方、「ぼったくり」「ぱくり」を日本の
ニュース報道で見聞きする機会はめったに
ないが、これらも日常的に使われている。

3語とも正式な言い回しでないものの、特に
下品でもない。

“rip-off”

informal
1. something that is not worth what
you pay for it.

2. a copy of something, especially one
that is less expensive or not as good as
the original thing.

(オックスフォード、OALD9)

・語釈 1 → ぼったくり
・語釈 2 → ぱくり

【発音】  ˈrɪp.ɒf

「ぼったくり」
名詞
脅して金を取ること。また、法外な値段を
払わせること。

「ぱくり」
名詞
1. 盗むこと、かっぱらいをいう俗語。
2. 俗に、そっくりそのまま真似すること。
先人の剽窃をすること。

(精選版 日本国語大辞典)

「ぼったくり」も「ぱくり」も、実は戦前から
存在する言葉で、歴史は長い。

とりわけ「ぼったくり」は、宮武外骨の発行
した『滑稽新聞』(1903年)にも出てくる。

他方の “rip-off” は、名詞としての初出は
1970年で、ずっと新しい。

とはいえ、その成り立ちは動詞 “rip” と
副詞 “off” がハイフンでつながった複合名詞
(compound noun)。

“rip” は、15世紀には英語として確立しており、
句動詞 “rip off” は名詞以前に使われている(後述)。

◆ “rip” には、他動詞・自動詞・名詞がある。

【発音】  rɪp

語源は、フラマン語「荒々しく引き裂く」(rippen)。

比較的多義だが、基本的意味は語源に沿う。
すなわち、びりびり裂く荒々しいイメージ。


– 他動詞「裂く」「もぎ取る」「はぎ取る」
– 自動詞「裂ける」「破れる」「突進する」
– 名詞「裂け目」「詐欺」

裂くだけでなく、もぎ取る、はぎ取るという
乱暴な意味合いにまで発展。

そこから「盗む」の意味が生じ、
名詞には「詐欺」が含まれるようになった。

名詞 “rip” は、可算名詞のみ。
<俗語>が多いのが特徴。

【例】 罰金、やじ、試み、マリファナ、酒宴

◆ “rip-off” は、句動詞 “rip off” から生じた。

よって、”rip-off” は、句他動詞(transitive phrasal verb)。

rip off” の意味は複数あるが、

一貫してネガティブなイメージ

  1. もぎ取る、はぎ取る
  2. 盗む、奪う
  3. だます
  4. 法外な値をふっかける → ぼったくる
  5. 暴行する
  6. 盗用する → ばくる

上述のように「ぼったくり」「ぱくり」
の意味合いは “informal”(非正式、くだけた)。

しかし、先のリストに挙げた “rip” の<俗語>
よりも位置づけは上で、完全定着している。

くだけた言い方だが、ニュースにも起用され、
下品とは言えない点も既に説明した。

 

◆ 正式ではないが、下品でもなく、日常語である点で、
“rip-off”、「ぼったくり」、「ぱくり」は共通する。

語感が似ているもうひとつの理由として、
発声(音声)面が挙げられる。

まず、”rip-off” の頭字の “r” は、接近音
(approximant)で、上顎とそらせた舌が
接近して発声される。

多くの日本人にとっては容易ではないが、
英語ネイティブが発音すると、確かな迫力
を感じる。

次に、「ぼったくり」「ぱくり」。

日本語の音声学からは、
ったくり」
→ [b] 両唇・破裂音・有声

くり」
→ [p] 両唇・破裂音・無声

両方とも、呼気を止めた状態から、
上下の唇(両唇)を使い、急に息を破裂させて
発声する。

閉じた唇の声帯の振動の有無で、有声無声
に分かれる。

「ぼ」「ぱ」ともに、破裂させて出すので、
日本語としては、迫力のある音声と言える。

したがって、”rip-off”、「ぼったくり」
「ぱくり」の3語すべてに勢いがあり、
言語の違いはあれど、非常に似た印象を受ける。


◆ 以上の説明から、意味・語感・使用場面が
相当共通するのが分かっていただけたのでは
ないだろうか。

英語学習が進んでくると、このような一致を
体験する機会が増え、言語の差を感じなく
なる不思議な瞬間が度々訪れる。

語学学習のご褒美くらいに私は考えている。


“Their wines were rip-offs.”
(あの店のワインはぼったくりだった。)

“That drama is a rip-off of the movie.”
(あのドラマはあの映画のぱくりだ。)

“1,000 Yen for an hour of parking ?
That’s a rip-off price.”
(1時間駐車で1,000円?ぼったくり価格だ。)

“This book is a rip-off of the best-seller ‘X’.”
(この本はベストセラー『X』のぱくりです。)

“His single is a rip-off of her music.”
(彼のシングルは彼女の音楽のぱくりです。)

“Avoid : Rip-off ! ”
(避けるべし:ぼったくり!)
※ 注意喚起のため、旅行ガイドなどの
フィードバックに用いられる文言

“How can I avoid rip-off dealers ? ”
(どうすればぼったくり業者を回避できる?)

【類似表現】

■ “scam“、”fraud”  ※ 名詞
https://mickeyweb.info/archives/12095
(詐欺)
【発音】  skǽm

■ “deceptive”  ※ 形容詞
https://mickeyweb.info/archives/8375
(1)人をだまそうとする
(2)誤解を招く
【発音】 diséptiv

■ “swindle”  ※ 名詞・自動詞・他動詞
詐欺、金・財産をだまし取る
【発音】  swíndl

fleece”  ※ 他動詞
金品を巻き上げる、ふんだくる
【発音】  flíːs

 

 

 

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