Exonerate
2021/01/04
容疑を晴らす、 免除する
見慣れない単語かもしれない。
一般の日本人学習者の日常には無縁に近い。
だが、ニュース報道ではちょくちょく顔を出す。
今朝(2018年7月3日 初稿時)、
通勤中にAPを聴いていたら出てきた。
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これを奇貨として取り上げてみたい。
目で見て分からない単語であれば、聞き取りは困難。
発音もユニークなため、聞きそびれてしまうこと必至。
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【発音】 igzɑ́nərèit
【音節】 ex-on-er-ate (4音節)
ー
–
◆ 私自身、”exonerate” の意味は長年知っていた。
ところが、ニュースを視聴していて、即座に「あれだ」と
認識できるようになるまでに、かなりの時間を要した。
若干専門的な動詞である。
だが、 一般人の押さえるべき用法 は限られている。
個性が強いゆえ、一度学べば記憶に残りやすい側面もある。
意味からして、自ら使う機会はめったに訪れないだろう。
したがって、まずは目視における理解を目標 とする。
次いで、音声ニュースなどで把握できるようになれば、
“exonerate” の基本はよしとみなしてよいと考える。
同時に習得できれば、なおよい。
ー
◆ “exonerate” を「大辞典」で引くとこうなる。
そろってシンプルな語釈である。
ハイライトしたのは、ニュースで多用される意味。
“exonerate”
- 他動詞
1. <人を>[非難・罪などから]解放する[免れさせる]
[from, of]。
2.[義務・責任・支払いなどから]免除する、解除する
(relieve, exempt)[from]。
(新英和大辞典 第6版)
– - 他動詞
<人>を[義務・責任などから]免除する
(ジーニアス英和大辞典)
– - 他動詞
1. <人を>(非難から)解放する、無実の罪を
晴らす、身のあかしをたてる《from, of …》
2. <人を>(義務・責任・仕事などから)
免除する、解除する(relieve) 《from, of …》
(ランダムハウス英和大辞典 第2版)
– - 動詞
(非難・罪などから)免れさせる
(新編 英和活用大辞典)
※ 太字・ハイライトは引用者
【発音】 igzɑ́nərèit
【音節】 ex-on-er-ate (4音節)
英語の専門家なら、誰もがご存知の4冊。
私はタブレットに入れて、持ち歩いている。
ーー
【参照】 辞書の「自炊」と辞書アプリ
◆ 4冊の大辞典から明らかなことは、主な意味が2つある点。
1)解放する
2)免除する
ニュース用途では「免除」より「解放」が多用される。
とりわけ、
◇ 「速報」の中心 :
■ (非難から)解放する
■ 無実の罪を晴らす
その一因は、「解放」の方が優先すべき
ニュースであるからと推測できる。
つまり、「免除」に比べて、報道価値が高い
と考えられているのであろう。
発生件数の差よりも、こちらの方が主要因と私は考える。
ー
◆ この傾向は、3大学習英英辞典(EFL辞典)の語釈
からも、うかがい知ることができる。
“exonerate”
- to state officially that someone who has
been blamed for something is not guilty.
(LDOCE6、ロングマン)
– - to show or show that someone or something
is not guilty of something.
(CALD4、ケンブリッジ)
“exonerate somebody (from something) “
(formal) to officially state that somebody is not
responsible for something that they have been
blamed for.
(OALD9、オックスフォード)
–
–※ 下線は引用者
–
・ “blamed for” = 非難される
・ “not guilty” = 無罪である
【発音】 igzɑ́nərèit
【音節】 ex-on-er-ate (4音節)
3冊が記すのは、先の「(非難から)解放する」と
「無実の罪を晴らす」の意味合いのみ。
「免除する」は明記されていない。
主な同義語は、同じく他動詞の
無論、「免除する」の意味が存在しないわけでない。
そうではなく、英語学習者にとって「解放する」
の方が重要であることを、EFL辞典は示している。
したがって、先に触れた「一般人の押さえるべき用法」
として、「免除する」以上に「解放する」を優先すべき
と考えられる。
ー
◆ “exonerate” は、他動詞のみ (自動詞なし)。
「若干専門的」と指摘したものの、
主な意味は「解放する」と「免除する」の2つだけ。
法律辞典の解説も、簡潔明快。
アメリカには、“Black’s Law Dictionary“
(ブラックス法律辞典)という有力な法律辞典
が存在する。
1891年に発刊され、100年以上の歴史を誇る。
判例などに最も引用される辞典である。
英米法を学ぶ学生で知らない者は皆無レベルの存在感。
現時点(2018年7月)における最新版(第10版、2014年刊)
の解説は、以下の通り。
“exonerate“
verb (16c)
-
To free from responsibility.
-
To clear of all blame.
-
To free from encumbrances.
“Black’s Law Dictionary, 10th Edition” p. 696
(West Group 2014)
・ “encumbrance” = 負債
–
【発音】 enkʌ́mbrəns
【音節】 en-cum-brance (3音節)
拍子抜けするほど、一本調子である。
- 責任を免除する
- 非難から解放する
- 負債を免除する
天下の法律辞典すら、これで完結している。
“exonerate” は多義でないと考えてよい。
結局のところ、
ラテン語「荷を下ろす」「免じる」 (exonerātus)
こちらの<語源>に忠実なまま、さほど発展しなかったのである。
とにかく、この2つがすべて。
1) 解放
2) 免除
似通った意味なので、両方覚えるのも、そう難しくはないだろう。
身晴れ
<解放>
- “He was exonerated based on DNA evidence.”
(彼はDNAの証拠に基づき、無実の罪を晴らした。)
– - “She was exonerated of charges of wrongdoing.”
(彼女は不正行為の容疑から解放された。)
– - “Over 150 people on death row have been
exonerated since 1973.”
(1973年以来、死刑囚150名以上が罪を晴らした。)
– - “His testimony exonerated her from all
charges of bribery.”
(彼の証言により、彼女のすべての贈賄容疑が晴れた。)
– - “She had proof which exonerated him completely.”
(彼の容疑を完全に晴らした証拠を彼女は持っていた。)
– - “He was exonerated from the accusation of theft.”
(彼の窃盗の疑いが晴れた。)
ー
<免除>
- “He cannot be exonerated from responsibility as
parents.”
(親としての責任から彼を免除することはできない。)
– - “The bank exonerated him from the payment
of the debt.”
(銀行は彼のその債務の支払いを免除した。)
– - “I’m not going to exonerate them entirely.”
(彼らを完全に免除する気はないです。)
– - “Fulfilment of the legal responsibility did not
exonerate Japan from its moral responsibility.”
(法的責任を満たしたからといって、日本が道義的
責任を免除されたわけではない。)
– - “Wet signatures of all his creditors are needed to
exonerate him.”
(彼を免除するには、債権者全員の直筆サインが
必要となります。)
– - “She exonerated him from his oath.”
(彼女は彼の宣誓を免除した。)
ー
◆ 以上は、それぞれ代表的な使われ方。
ニュース報道として、耳目を引くのはどちらか。
これに気づけば、使われがちの用途が見えてくる。
さらに、学習上重点を置くべき用法も分かる。
答えは本稿にて、はっきり述べている。
分からなければ、再度ご確認いただければと思う。
【名詞】exoneration ( ɪɡzɑnɚéɪʃən )
- 無実の罪を晴らすこと
- 免除、免責
他動詞 “exonerate” の名詞形。
不可算名詞である。
そのまま対応しているから、一緒に身につけてしまおう。