彼は( 彼女 )は近くにいますか ?
–
Is X around ?( Xさん、 お近くにいます? )
2018年に入ってから、 職場に間違い電話が多くかかってくる。
毎日最低1回は 「 Xさんはいますか 」。
どこの国の誰だか、 さっぱり分からない。
大規模な組織なので、 内線を用いて世界中の
関連組織に電話できるシステムとなっている。
受電ごとに、
–
I think you’ve got the wrong number.( 電話番号が間違っていると思いますよ。)
と返答する。
どうやら、 どこかのXさんの連絡先として、
間違って私の直通番号が記載されたらしい。
とすれば、 見方によっては、 ” the wrong number ”
と言えないかもしれない。
電話相手 は、 教わった番号に正しくかけているのだ。
しかし、 私にとっては、 間違い電話に他ならない。
” I think “( 思います )は一切不要と知りつつ、
露骨な応答にならないよう、 一応添えておく。
なぜなら、 にべもなく断定すると、 反発食らう から。
Xさんとは性別が異なるため、 こちらの第一声で
別人だと伝わり、「 Xさんはいますか 」になる。
–
◆ 連日こうして目立つのが、 冒頭の言い回し。
Is X around ?
「 Xさん、近くにいる ? 」 くらいの気軽さ。
日常的には失礼でないものの、 丁寧でもない。
–
皆様きっと、私をXさんの同僚ほどに思っているはず。
受け手側としては、もう 煩わしい だけなので、
–
–
No ! Wrong number. Bye !
と切口上でガチャ切りしたいのが本音。
それでも、「 英語の練習 」 くらいに考えて、
毎日丁寧に応対するようにしている。
毎回違う相手なので、 しかたがない。
こんな日々が、 2ヶ月以上続いている。
見知らぬXさんに、 お駄賃を請求したい気分。
うっせぇわ
でも、 題材として面白いフレーズかも、 と昨日ふと思いついた。
だから、 本稿で取り上げてみたい。
–
◆ ” around ” には、
副詞 ( adverb ) と 前置詞 ( preposition ) がある。
–
<語源>
中期英語 「 円に沿って 」
■ 接頭辞 “ a “ ( ~ の方へ、 ~ に )
– 名詞につけて、 方向を示す副詞・形容詞を作る
– 海洋語に多い用法
- adrift ( 流されて )
- aground ( 座礁して )
- afloat ( 浮かんで )
- astern ( 船尾に )
■ 名詞 ” round ” ( 円、 輪っか )
–
【発音】 əráund
【音節】 a-round (2音節)
–
◆ ” around ” は、 最頻出かつ最重要レベルの英単語。
・ 重要度:最上位 <トップ3000語以内>
・ 書き言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
・ 話し言葉の頻出度:最上位 <トップ1000語以内>
( ロングマン、LDOCE6 )
すべて最高ランクである。
非常に多義だが、 基本的意味は、
– 副詞 「 近くに 」「 あちこちに 」「 巡って 」
– 前置詞 「 ~ の周囲に 」「 およそ 」
基本的意味は、先の語源から推測可能な範囲である。
副詞と前置詞の境界があいまいなのが ” around ” の特色。
どちらの品詞とも解釈できる用法が珍しくない。
3大学習英英辞典 のうち “ LDOCE6 ”(ロングマン)は、
両者を一緒くたに示しているくらい。
だが表題では、間違いなく 副詞。
疑問文なので、語順は入れ替わっているものの、
be動詞に続く副詞 である。
・ be動詞 ” is “( いる ) → 存在を示す
・ 人称代名詞の主格 ” he ” または ” she “( 彼・彼女 )
・ 副詞 ” around “( 近くに )
【参考】
人称代名詞の主格 ” she ” と ” he ”
を合体し、s/he と表記することがある。
赤字のスラッシュを抜けば、she になる。
つまり、she/he を略記したもの。
” she ” または ” he ” を指す。
【参照】
英英辞典の基本:スラッシュ( / ) = 「 または (or) 」
→ ” she ” or ” he ”
◆ 表題の場合、
Is s/he around ?
比較的堅めのビジネス文書でも目にする。
だが、少しでも誤解を招きそうな時は、
省略せずに書き出す 方がよい。
–
◆ ” around ” が多義である点は既に触れた。
表題の副詞「 近くに 」の 3大学習英英辞典 の語釈をご紹介する。
–
” around “
- 4 a) in an area near a place or person.
SYN: round
ーb) if someone or something is around,
they are somewhere in the place where you are.
(ロングマン、LDOCE6)
– - 7. present in a place; available.
(オックスフォード、OALD9)
– - in or near a place.
(ケンブリッジ、CALD4)
–
【発音】 əráund
【音節】 a-round (2音節)
※ SNY = synonym = 同義語
–
この副詞用法の例文は、次の通り。
- ” I don’t want him around. ”
( あの男に周囲にいてもらいたくないの。)
( 私の周りをうろちょろしてもらいたくないの。)
「 元彼 」に対する酷な扱い。
- ” No one was around then. “
( 当時、誰も近くにいなかった。)
– - ” She must be somewhere around. “
( 彼女はこの辺りにいるはずです。)
– - ” Don’t cry when kids are around. “
( 子どもたちが近くにいる時は泣くなよ。)
– - ” We no longer see cassette tapes around these days. “
( 近頃、カセットテープを見かけることもなくなった。)
【関連表現】 ※ 副詞 ” around ”
- stick around ( 近くにいる、ぶらつく )
– - ask around ( 聞いて回る )
– - up and around
( 病気が治り、 普通に動けるようになって )
– - “See you around.“ ( またね。)
– - shop around ( 物色する )
– - hang around ( うろつく )
– - lie around ( そこら中に転がる )
– - sit around ( のらくらする )
– - stand around ( 突っ立っている )
– - wait around ( ぶらぶらしながら待つ )
– - push around ( こき使う、 振り回す )
–
–
【関連表現】 ※ 電話応対
- ” May I ask who is calling ? “
- “ Who am I speaking to ? ”
( お名前を伺ってもよろしいですか ? )
( お名前をお聞かせいただけますか ? )
https://mickeyweb.info/archives/2745