我々は別の道に進んだ。
–
We had a disagreement how to handle
a situation and we parted ways.( ある状況にどう対処するかで意見が食い違い、
我々は別の道に進むことになった。)
–
日本でも人気のある、あるベテラン俳優を
担当する男性マネージャーの発言である。
自分たちが別々の道を進むことになった旨を
説明する < 3語ワンセット > が青字部分。
シンプルな決まり文句なので、覚えておくとよい。
勧奨する理由は 「 人生は別れの連続だから 」
などと、 うそぶきたいからではない。
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そうでなく、
相手の追及を かわす 効果が期待できる表現
だから。
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◆ ” We parted ways. ” と静かに述べれば、
相手は突っ込んでこない可能性が高い。
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「 別れたのです 」 に似た感じ。
こう言われて食い下がるのは、 よほど失敬な人だろう。
まともな社会常識と思いやりのある大人であれば、
ちゃんと察してくれる。
「 えっ 」 と驚いても、 それ以上は聞かないようにする。
別れた理由を根掘り葉掘り尋ねるのは、 幼稚でみっともない。
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当人が味わったであろう離別の苦しみに思いを馳せれば、
どうして無神経に執拗に問い詰めることができよう。
- ” Neither have elaborated on the details behind their
decision to part ways.”
( 両者とも、別れを決断した背景について詳しく語っていない。)
–
” We parted ways “
- 他人の好奇心を無難に振り切ることができる
- 暗い内容にもかかわらず、からっとした言い回し
- 暗鬱な段階を乗り越え、吹っ切れた様子をほのめかす
- 多様な別離をカバー: 仕事関係、 男女関係、 友達関係
–
実用的な表現である。
これらの美点を知ってしまうと、きっとものにしたくなる。
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じゃあね
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- ” The movie famously ends with Andy parting ways with Miranda.”
( この映画はアンディがミランダと別れるところで終わる。)
– - ” Smith’s talent agency denies that they are parting ways with the actor.”
( スミスの所属事務所は、俳優と決別したことを否定している。)
– - ” Team X part ways with head coach Y ”
( Xチーム、 ヘッドコーチ Yと決別 )
–
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◆ 冒頭の発言に続くのは、
–
We have had a 35-year friendship
and I love him.
I wish him nothing but the best.( 友情は35年間に及んだ。
彼のことが大好きだよ。
ただただ彼の幸せを祈ってる。)
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もう、わだかまりはない。
すべてが過去。
道は分かれたが、今後の彼の幸せを願っている。
35年も続いた友情。
この俳優がアイドルだった、10代からの付き合いである。
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◆ ” have had ” に漂う悲しみ。
–
中級学習者 なら、 瞬時に感じ取りたい。
この ” have had ” は、 「 現在完了形 」( present perfect )である。
助動詞 ” have” の後に、 動詞の過去分詞形 ” had “。
–
時制の基本なので、 詳しく見ていこう。
< 時制の復習のためのお勧めサイト >
・ 英語の時制はたったの12種類
- have( 助動詞 auxiliary verb )
- had( 他動詞 ” have ” の 過去分詞形( past participle )
→ 現在完了形 ( present perfect )
–
” had ” の原形である他動詞 ” have ” は、
ここでは 「( 35年の友情を ) 経験する 」 の意。
その ” have ” の 「 過去分詞形 」( past participle ) が ” had “。
“ I’ve had it. ” ( もうたくさんだ。) と同じ構造。
複数主格 “ we ” に呼応し、 助動詞は複数形の have。
助動詞 ” have ” の語形変化は、 動詞 ” have ” と同じ。
–
◆ 「 現在完了形 」( present perfect ) は、
過去の時点から 現在までの、継続、経験、完了・結果 を示す。
別稿 ” He is in a better place now. ” で事細かに解き明かした。
一部再掲。
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◆ 「 過去形 」 と 「 現在完了形 」 のニュアンスの違いは、
- 「 過去形 」 → 単に 「 過去の事実 」 を そのまま 述べている
- 「 現在完了形 」 → 「 過去の事実 」 に対し、 「 現在の視点 」
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過去のことなのに、 視点は現在
–
話題は 「 過去 」 の出来事なのに、 話者の頭の中では、
「 その時から現在までに伴う感情 」 も混じっている。It’s something at a particular moment in the past about which
I am talking now.–
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◆ 「 現在完了形 」 は日本語にない概念。過去と現在の視点が合わさった、 情緒的で曖昧な表現。
「 現在完了形 」を用いると、
過去のある時点から現在までの、 継続した状態・動作
が表せる。
過去に起きたことを、 今なお忘れず、 ずっと追いかけている。
一度きりではダメで、 現在に至るまで、 絶えず続いている状態 が必要。
Events that started in the past and continue up to the present.
要は、 過去と現在のなんらかの変化 について言いたい。
–
–
→ 完了形 「 過去はこうだったけど、 現在はこんな状態よ 」 ↓現在の状況説明 ( 今は、こうなっています )
–
当時から見て、「 その後 」 にあたる、 今の有様( 現状 )まで、 一気に案内
できてしまうのが、 完了形の利点。
–
” He is in a better place now. ” より
–
< 基点となる現在 >までの継続。
現在に至る35年間、 ずっと続いていた。
–
こんな状態を表す 「 現在完了形 」( present perfect )。
反面、 「 ここでいったん、 お開き 」 と 区切る表現にもなる 。
< 基点となる現在 > から過去を振り返る
ため、未来については不明。
だが、 区切る以上、 未来は期待薄。
現に “ we parted ways. ” と明言しており、
今までの関係が終了したのは間違いない。
先に触れた、 ” have had ” に漂う悲しみ
が、 これで感じられるようになっただろうか。
一方、 仕事上の関係が終わっても、個人としての
彼は大好きなまま。
ここに救いがあるのかもしれない。
何十年も続いた契約の終了にあたり、
互いに修羅場をくぐったはずにもかかわらず。
苦難を経て得た 安らぎ には、人の心を打つ力がある。
◆ 表題 ” We parted ways. ” の使い勝手の
よさは、これまでの解説より推察可能だろう。
単語も文法もシンプルである。
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” We parted ways “
( 我々は道を分けた )
- 人称代名詞 ” we “( 我々は )
→ 一人称複数主格
– - 他動詞 ” parted “( 分けた )
→ 過去形 ( past tense )
– - 可算名詞 ” ways “( 道 )
→ 2つ以上の道だから複数形 ( plural )
–
◆ 動詞 ” part ” には、 他動詞と自動詞がある。
【発音】 pɑ́rt (1音節)
語源は、ラテン語 「 分割する 」( partīre )。
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ここでは、 目的語 ” ways ” を伴う他動詞「 分ける 」。
” parted ” は、 その過去形 「 分けた 」。
◆ ” ways ” は、 可算名詞「 道 」の複数形。
【発音】 wéi (1音節)
語源は、 古英語 「 道路 」( weg )。
これまで一緒に突き進んでいた1本の道が、
離別によって複数に分かれるため、
複数形 “ways” に。–上図をご参照のこと。
【 名詞 “ way ” 例 】
–
以上より、 ” We parted ways ” の直訳は、
「 我々は道を分けた 」。
–
3語の基本的意味を、そのまま適用している。
–
◆ 意図的に道を分けた以上、 進路が別になるのは
当然の結果であり、 往々にして強い希望の末である。
そのため、”We parted ways” は、
「 我々は 袂を分かつ ことになった。」
などと和訳されることもある。
たもとをわかつ【 袂を分かつ 】
- わかれる。 離別する。 人との縁を切る。
袖を分かつ。
( 広辞苑 第七版 )
– - 行動を別にする。 絶交する。
( 大辞林 第四版 )
– - 今までいっしょだった人と 関係を絶つ。
人と別れる。
( 精選版 日本国語大辞典 )
–
※ 青字は引用者
–
「 我々は道を分けた 」 は、「 別れた 」 と換言できるため、
「 袂を分かつ 」 でも適切。
3冊の語釈を比較すると、 程度に微差が見られるものの、
それぞれ 「 縁を切る 」「 絶交する 」「 関係を絶つ 」
とある( 青字 )。
–
よって、交際を完全に絶つことを含む意味合い。
–
◆ 冒頭のマネージャー氏のように、相手の幸せを
願う別れ方もあれば、それっきり忘却の喧嘩別れ
もあるだろう。
“We parted ways.” が述べるのは、彼らが
何らかの理由で別々になった点にとどまる。
余計な情報提供はない。
いらぬ詮索をはねつける勢いがあるため、
使い手にとって好都合。
“We parted ways.” の利点については、既記の通り。
覚えておくと心丈夫である。
【参考記事】 ※ 外部サイト
” SoftBank’s Masayoshi Son and Alibaba’s Jack Ma part ways ”
https://www.japantimes.co.jp/news/2020/06/25/business/corporate-business/softbank-masayoshi-son-alibaba-jack-ma#.Xz4hREFS-Uk
2020年6月25日付