プロ翻訳者の単語帳

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He is in a better place now.

      2019/10/07

今はもっと快適な場所にいます。

典型的な弔辞(condolenceeulogy)の一句。
有名人の逝去時の弔意として、引用されたりする。

欧米人の示す哀悼の意(pay tribute)は、
日本人とは視点が異なると以前より感じてきた。

そこに興味を抱き、長らくメディア報道より
悼辞を収集してきた。

これまで集めた文言から、5点をご案内したい。

<選択基準>
a. 当事者の信仰宗教は不問
b. 適切かつ印象的な弔慰
c. 遺された者を慰め、勇気づける内容
d. 基礎的な英文
e. 一般人でも使用可能

設定上、故人は男性(he)とした。
女性ならば、主格を “she” に置き換える。

  1. He is in a better place now.
    (今はもっと快適な場所にいます。)
  2. He will never be in pain again.
    (もう二度と苦しむことはないでしょう。)
  3. He is in a safer and happier place now.
    (今はもっと安全で幸せな場所にいます。)
  4. He lived long enough to see you succeed.
    (あなたの成功を見届けるまで長生きしました。)
  5. He died doing what he really loved.
    (大好きなことをしつつ旅立ったのです。)

◆ 直前には、次のような表現が置かれたりする。

1~5と考えることで、遺された者たちが救われる
と考える発言者の願いを反映する。

  • It makes me happy to know that –
    (~と思えば、私はうれしいです。)
  • We have the comfort of knowing that –
    (~と思うと、私たちも安心できます。)
  • I take comfort in knowing that –
    (~なので、私も安心できます。)
  • We are at peace knowing that –
    (~と思い、私たちも安心しています。)

以上の使用対象は、有名人限定ではない。
普遍性のある内容なので、私たちも使える。
この点、上の「選択基準 e.」に掲げた通り。

中身が無難であることは、自明であろう。
どれも実際に多用されている。

◆ では、1~5 を一つずつ見ていこう。

基本的な英文ばかりなので、それぞれ
ポイントを絞って解説してみたい。

1.
He is in a better place now.

(今はもっと快適な場所にいます。)

“a better place” がポイント。

可算名詞 “place”(場所)なので、
不定冠詞 “a” がつく。

定冠詞 “the” で “He is in the better place now.”
と表すこともある。

この場合、特定された「もっと快適な場所」の印象
を帯びる。

名詞 “place” には、不可算名詞もある。
語源は、ラテン語「広い通り」(plātea)。

つかみどころのない、抽象概念の「場所」は不可算。
例えば、「時間と場所」は “time and place”。
特定の場所を示すのではなく、あくまでも概念。

in place” でも不可算。
不可算なので、不定冠詞はつかない。

表題では、物故者が「今いる場所」。
よって、用途が特定された具体的な場所として、
可算名詞となる。

“better” は、名詞 “place” を直接飾るため、
副詞でなく形容詞。
“good” の比較級の形容詞「よりよい」。

「よりよい場所」だから、弔意としての用途を考慮
すると、和訳は「より快適な場所」くらいになる。

キリスト教であれば、神のもとで霊魂が永久の
祝福を受ける天国、すなわち神の国が該当する。

“a better place” 自体は一般的な表現である。

現世であるこの世、つまり「地上」よりも、
“better” な場所を指すのみ。

したがって、宗教の別は問わない。

2.
He will never be in pain again.

(もう二度と苦しむことはないでしょう。)

“be in pain” がポイント。

“pain” には、名詞・他動詞・自動詞がある。
語源は、ギリシア語「罪」(poinē)。

身体または精神の激しい苦痛を幅広く表す語。

先述の “place” 同様、可算名詞と不可算名詞
がある。

原則は不可算名詞で、特定箇所の痛みが可算名詞。
それが基本的な考え方。
【参照】“worry“、”concern“、“wonder

ここでも不可算。 特定の苦しみでないから。

生きる苦しみや病む苦しみという、誰の人生にも
つきまとう抽象的な苦痛を指す。

不可算名詞のため無冠詞。

状態を示す前置詞 “in”(~の状態で) を伴う
“in pain” の直訳は「苦痛の状態で」。
転じて、「痛みがある」「苦しむ」の意。

be動詞つきの “be in pain” は「苦しんでいる」。

“I am in pain.”(私は苦しんでいます。)
と同じ自動詞 “be” である。

will never be in pain” は「二度と(決して)
苦しむことはないでしょう」と単純未来を示す。

イギリス英語なら “shall never be in pain”
とも言える。

3.
He is in a safer and happier place now.
(今はもっと安全で幸せな場所にいます。)

これは「1」と同じ構造。

“a better” の代わりに、
“a safer and happier place” なので、
「もっと安全で幸せな場所」となる。

“better” と同じく、比較級を用いる。

  • “safe” → “safer”(もっと安全な)
  • “happy” → “happier”(もっと幸せな)

「1」と同じく、”in” は場所の前置詞「~に」。
“is” は、三人称の単数現在形のbe動詞「~ある」。

“safer and happier”(もっと安全かつ幸せ)
との全体が可算名詞 “place” にかかるので、
不定冠詞 “a” はひとつだけ。

“a safer and a happier place” とする場合、
「もっと安全な場所ともっと幸せな場所」
と2つに分かれるはずだが、日常使用では
同義扱いされている感がある。

「もっと安全で幸せな場所」とは、
「1」と同様、苦しみの絶えない人間界から
解放された楽園を指す。

4.
He lived long enough to see you succeed.

(あなたの成功を見届けるまで長生きしました。)

受け手 “you” よりも、故人がずっと年配に
あたるケースが多い。

祖父母や親、恩師など。

本人が、まだ海の物とも山の物とも知れない頃から
目を掛け、温かく見守り、成長に目を細めつつ支援。

ついに功成り名遂げた後、ほどなく他界。

ああ、あれほどお世話になったのに …
まともに恩返しする前に、死んじゃった …

本人の自責の念が尽きないことは、容易に想像できる。
もう取り返しがつかない。

なんとも泣かせる話である。

激しい後悔と悲嘆に暮れている姿に、声を掛ける
としたら、この「4」だろう。

ポイントは、”to see you succeed”。

“to” は他動詞 “see”(見る)にかかる前置詞。
“succeed” は、自動詞「成功する」。
語源は、ラテン語「後に続く」(succēdere)。

– 自動詞「成功する」「相続する」
– 他動詞「後任になる」「次いで起こる」

“lived” は、自動詞「生き延びる」の過去形。
特に<主語+live+to do>の場合、
生きた結果~する」の意味がある。

さらに、”live long enough to” は、
長生きして~する」。

  • 主格 “he”(彼は)
  • 他動詞の過去形 “lived”(生きた)
  • 形容詞 “long”(長い)
  • 副詞 “enough”(十分に)
  • 結果の前置詞 “to”(~になるまで)
  • 他動詞 “see”(見る)
  • 目的格 “you”(あなたが
  • 自動詞 “succeed”(成功する)

よって「彼は長生きした結果、あなたが成功したことを見た」
が直訳。

弔文としてはそっけないので、少々工夫して、
「彼はあなたの成功を見届けるまで長生きしました」など。

< 立派になったあなたを、しっかり見てもらえた。
あんなに喜んでいたから、ちゃんと恩返しできた。
だから、そんなに悲しまなくてもいいんだよ。>

5.
He died doing what he really loved.

(大好きなことをしつつ旅立ったのです。)

比較的若くして、事故死した人を悼む言葉。

いわゆる “an untimely death“(早すぎる死)
である。

危険の伴う仕事の他、スポーツや趣味を
している最中の死が該当する。

“died” は、”die” の過去・過去分詞形。
ここでは、自動詞「死んだ」。

“doing what he really loved” がポイント。
“doing” は、他動詞 “do” の現在分詞。
ここでは「~しながら」。

その対象となる “what he really loved” は、

  • 関係代名詞 “what”(こと、もの)
  • 主格 “he”(彼が)
  • 副詞 “really”(本当に)
  • 他動詞の過去形 “loved”(愛した)

よって「彼が本当に愛したこと」。

日本語の「愛した」は強すぎるため、
「彼が大好きだったこと」くらい。

死は悲しいが、遅かれ早かれ訪れるもの。
大好きなことをしつつ昇天したのだから、
本人としては、それほど残念でないはず。

日本人には新鮮味を感じるような慰め方だが、
「5」は事故死の早世によく出てくる。



◆ 最後に、個人的にぐっときた弔詞をご紹介したい。

————-神様を笑わせてやれ

2014年8月に亡くなった米俳優の
ロビン・ウィリアムズを悼む掲示版。

抱腹絶倒の傑作コメディを幾多も残してくれた、
ロビンを称える力強い3語である。

MAKE GOD LAUGH


【「死」関連表現 】

“passed away”
https://mickeyweb.info/archives/347
(亡くなりました)

“with regret”
https://mickeyweb.info/archives/318
(残念ですが)

“declared dead”
“Pronounced dead”
https://mickeyweb.info/archives/1636
(死亡宣告された、死亡した)

“Confirmed dead”
https://mickeyweb.info/archives/2131
(1. 死亡が確認された 2. 確認された死者)

“took his / her own life”
https://mickeyweb.info/archives/4466
(自殺した)

“do away with oneself”
https://mickeyweb.info/archives/15503
(自殺する)

“a moment of silence”
https://mickeyweb.info/archives/3513
(黙祷)

“My prayers are with -.”
My thoughts and prayers are with – . ”
https://mickeyweb.info/archives/3471
(~のために心からお祈りいたします。)

“the beyond”
https://mickeyweb.info/archives/29487
(あの世)

“final resting place”
https://mickeyweb.info/archives/28844
(墓、埋葬地)

“terminally ill”
https://mickeyweb.info/archives/29801
(末期症状の)

 

 

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