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We parted ways.

      2024/02/07

・ Estimated Read Time ( 推定読了時間 ): 4 minutes

我々は別の道に進んだ。


We had a disagreement how to handle
a situation and  we parted ways.

( ある状況にどう対処するかで意見が食い違い、
我々は別の道に進むことになった。)


日本でも人気のある、あるベテラン俳優を
担当する男性マネージャーの発言である。

自分たちが別々の道を進むことになった旨を
説明する < 3語ワンセット > が青字部分。

シンプルな決まり文句なので、覚えておくとよい。

勧奨する理由は 「 人生は別れの連続だから 」
などと、 うそぶきたいからではない。

そうでなく、
相手の追及を かわす 効果が期待できる表現
だから。

◆  ” We parted ways. ” と静かに述べれば、
相手は突っ込んでこない可能性が高い。

「 別れたのです 」 に似た感じ。

こう言われて食い下がるのは、 よほど失敬な人だろう。

まともな社会常識と思いやりのある大人であれば、
ちゃんと察してくれる。

「 えっ 」 と驚いても、 それ以上は聞かないようにする。

別れた理由を根掘り葉掘り尋ねるのは、 幼稚でみっともない。

当人が味わったであろう離別の苦しみに思いを馳せれば、
どうして無神経に執拗に問い詰めることができよう。

  •  ” Neither have elaborated on the details behind their
    decision to part ways.”
    ( 両者とも、別れを決断した背景について詳しく語っていない。)

” We parted ways “

  •  他人の好奇心を無難に振り切ることができる
  •  暗い内容にもかかわらず、からっとした言い回し
  •  暗鬱な段階を乗り越え、吹っ切れた様子をほのめかす
  •  多様な別離をカバー: 仕事関係、 男女関係、 友達関係


実用的な表現である。

これらの美点を知ってしまうと、きっとものにしたくなる。

じゃあね

  • ” The movie famously ends with Andy parting ways with Miranda.”
    ( この映画はアンディがミランダと別れるところで終わる。)
  • ” Smith’s talent agency denies that they are parting ways with the actor.”
    ( スミスの所属事務所は、俳優と決別したことを否定している。)
  • ” Team X part ways with head coach Y ”
    ( Xチーム、 ヘッドコーチ Yと決別 )

◆  冒頭の発言に続くのは、


We have had a 35-year friendship
and I love him.

I wish him nothing but the best.

( 友情は35年間に及んだ。
彼のことが大好きだよ。
ただただ彼の幸せを祈ってる。)


もう、わだかまりはない。
すべてが過去。
道は分かれたが、今後の彼の幸せを願っている。

35年も続いた友情。

この俳優がアイドルだった、10代からの付き合いである。

◆  ” have had ”  に漂う悲しみ。

中級学習者 なら、 瞬時に感じ取りたい。

この  ” have had ” は、 「 現在完了形 」( present perfect )である。

助動詞 ” have” の後に、 動詞の過去分詞形  ” had “。

時制の基本なので、 詳しく見ていこう。

< 時制の復習のためのお勧めサイト >
・  英語の時制はたったの12種類

 


” had ”  の原形である他動詞  ” have ” は、
ここでは 「( 35年の友情を ) 経験する 」 の意。

その ” have ” の 「 過去分詞形 ( past participle ) が  ” had “。

I’ve had it. ” ( もうたくさんだ。) と同じ構造。

複数主格 “ we ” に呼応し、 助動詞は複数形の have。

助動詞 ” have ” の語形変化は、 動詞 ” have ” と同じ。

◆  「 現在完了形 」( present perfect ) は、

過去の時点から 現在までの、継続、経験、完了・結果   を示す。

別稿  ” He is in a better place now. ”  で事細かに解き明かした。

一部再掲。


◆  「 過去形 」 と 「 現在完了形 」 のニュアンスの違いは、

  • 「 過去形 」 →  単に 過去の事実 」 を  そのまま  述べている
  • 「 現在完了形 」 → 「 過去の事実 に対し、  現在の視点

過去のことなのに、 視点は現在


話題は 「 過去 」 の出来事なのに、 話者の頭の中では、
「 その時から現在までに伴う感情 」 も混じっている。

It’s something at a particular moment in the past about which
I am talking now.



◆  「 現在完了形 」 は日本語にない概念。

過去と現在の視点が合わさった、 情緒的で曖昧な表現。

「 現在完了形 」を用いると、

過去のある時点から現在までの、 継続した状態・動作

が表せる。

過去に起きたことを、 今なお忘れず、 ずっと追いかけている

一度きりではダメで、 現在至るまで、 絶えず続いている状態 が必要。

Events that started in the past and continue up to the present.

要は、  過去と現在のなんらかの変化  について言いたい。


  完了形  「 過去はこうだったけど、 現在はこんな状態よ 」 

  現在の状況説明 ( 今は、こうなっています )

当時から見て、

「 その後 」 にあたる、 今の有様( 現状 )まで、 一気に案内

できてしまうのが、 完了形の利点。


He is in a better place now. ”  より


< 基点となる現在 >までの継続。
現在に至る
35年間、 ずっと続いていた。

こんな状態を表す 「 現在完了形 」( present perfect )。

反面、 「 ここでいったん、 お開き 」 区切る表現にもなる

< 基点となる現在 > から過去を振り返る

め、未来については不明。

だが、 区切る以上、 未来は期待薄。

現に  “ we parted ways. ” と明言しており、
今までの関係が終了したのは間違いない。

先に触れた、 ” have had ”  に漂う悲しみ
が、 これで感じられるようになっただろうか。

一方、 仕事上の関係が終わっても、個人としての
彼は大好きなまま。

ここに救いがあるのかもしれない。

何十年も続いた契約の終了にあたり、
互いに修羅場をくぐったはずにもかかわらず。

苦難を経て得た 安らぎ には、人の心を打つ力がある。

 

◆  表題  ” We parted ways. ”  の使い勝手の
よさは、これまでの解説より推察可能だろう。

単語も文法もシンプルである。

” We parted ways “
( 我々は道を分けた )

  •  人称代名詞  ” we “( 我々は )
    →  一人称複数主格
  •  他動詞 ” parted “( 分けた )
    →  過去形 ( past tense )
  •  可算名詞  ” ways ( 道 )
    →  2つ以上の道だから複数形 ( plural


◆  動詞  ” part ” には、 他動詞と自動詞がある。

【発音】  pɑ́rt  (1音節)

語源は、ラテン語 「 分割する 」( partīre )。

ここでは、 目的語 ” ways ” を伴う他動詞「 分ける 」。

” parted ” は、 その過去形 「 分けた 」。

 

◆  ” ways ” は、 可算名詞「 道 」の複数形。

【発音】  wéi  (1音節)

語源は、 古英語 「 道路 」( weg )。

これまで一緒に突き進んでいた1本の道が、
離別によって複数に分かれるため、
複数形 “ways” に。上図をご参照のこと。

【 名詞  “ way ”  例 】


以上より、 ” We parted ways ”  の直訳は、
「 我々は道を分けた 」。

3語の基本的意味を、そのまま適用している。

◆  意図的に道を分けた以上、 進路が別になるのは
当然の結果であり、 往々にして強い希望の末である。

そのため、”We parted ways” は、
「 我々は 袂を分かつ ことになった。」
などと和訳されることもある。

  たもとをわかつ【 袂を分かつ 】

  • わかれる。 離別する。 人との縁を切る
    袖を分かつ。
    ( 広辞苑 第七版 )
  • 行動を別にする。 絶交する
    ( 大辞林 第四版 )
  • 今までいっしょだった人と 関係を絶つ
    人と別れる。
    ( 精選版 日本国語大辞典 )

    ※  青字は引用者

 –
「 我々は道を分けた 」 は、「 別れた 」 と換言できるため、
「 袂を分かつ 」 でも適切。

3冊の語釈を比較すると、 程度に微差が見られるものの、
それぞれ 「 縁を切る 」「 絶交する 」「 関係を絶つ 」
とある( 青字 )。

よって、交際を完全に絶つことを含む意味合い。

◆ 冒頭のマネージャー氏のように、相手の幸せを
願う別れ方もあれば、それっきり忘却の喧嘩別れ
もあるだろう。

“We parted ways.” が述べるのは、彼らが
何らかの理由で別々になった点にとどまる。

余計な情報提供はない。

いらぬ詮索をはねつける勢いがあるため、
使い手にとって好都合。

“We parted ways.” の利点については、既記の通り。

覚えておくと心丈夫である。

 

 

【参考記事】      ※  外部サイト

” SoftBank’s Masayoshi Son and Alibaba’s Jack Ma part ways
https://www.japantimes.co.jp/news/2020/06/25/business/corporate-business/softbank-masayoshi-son-alibaba-jack-ma#.Xz4hREFS-Uk
2020年6月25日付

 

 

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